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伏見憲明の太腕繁盛記:第4回「まるでAKB!? ミセコの命ははかなくて」

伏見憲明さんの連載「太腕繁盛記」。第4回目は、いかに飽きられないように次の手を繰り出すかという、芸能界さながらのゲイバー戦略について。シビアなお色気営業を求められるミセコたちの行く末やいかに?

伏見憲明の太腕繁盛記:第4回「まるでAKB!? ミセコの命ははかなくて」

猛暑続きのこの夏、エフメゾでは競パン営業が続いております。いえ、もちろんアラフィフの伏見ママがそんな分不相応な格好はしませんが(←アタリマエ)、肉体派のスタッフには思いっきりフェロモンを振りまいてもらっております。やはり、色気のある子たちが脱ぐと、店が華やぎますし、ドリンクのオーダーにも勢いがつきます(←ハゲタカ)

流行るゲイバーというのは、たいていはママというかマスターの性的な魅力で集客するものです。もう店じまいしてしまった伝説のゲイバーMとかBとかのマスターなんて、まるで芸能人のようなだだもれのフェロモンと、神々しいまでのオーラで二丁目に君臨したものです。伏見のようなブスゲイにとって、彼らは垂涎の的でありました。

しかし、例外的なケースをのぞき、たいていの人気マスターは数年と経たないうちにあきられて、オカマたちの移り気に消費されてしまうものです。そこも芸能人と同じですね。そう、終わるゲイバーか続くゲイバーかの分かれ道は、ママのフェロモンが衰えたあとの戦略にかかっています。アイドル女優が次の段階に進むのが難しいように、ゲイバーの世界でもマスターが主役の座を降りて脇に移行する時期を見誤らないのが、その先を生き残るためのポイントといえるでしょう。そしてふつうは、そこにマスターの衰えを補うべくお色気担当の若い店子を導入していくことになります。

エフメゾの場合、お客様は最初から伏見ママにフェロモンなど求めていませんでしたから(←アタリマエ)、かえって店の戦略が立てづらい面がありました。熟女(ママ)ならではの会話を売りにしながら、ときたまイベント的にエロも導入する、みたいな展開でやって来ましたが、やはりエロ方面が弱い。リブっ気のある伏見ママは、開店当初から苦楽をともにしたスタッフへの仲間意識が強く、彼らといっしょに店をずっと続けていこうと思っていました。が、その「仲良しグループ」意識は、経営者としては問題だったのでしょう。結果、その甘い態度ゆえに職責を果たしていない店子を放置することになり、開店一年目くらいで、店内によどんだ空気感と、常連さんのあいだにもマンネリの気分が漂っていきました……

問題だったのは、最年少スタッフのツカサ。見た目はそう悪くなく、ジムで鍛えた人工の筋肉もなかなか立派なイカホモ系です。ちょっと尻軽なところはありますが、店内を走り回って働くいい子です。けれど、いかんせんファンがつかない。上に伏見ママとチーママがいて、シニア組はコミュニケーション担当で(チーママはお色気担当も兼務)、ツカサがアイドル的なポジションでいなければならないのにもかかわらず、彼目当てのゲイ客が全然つかない。そして彼自身、外からお客様を連れてくることができない。第一印象は悪くないのですが、どうも、彼のキモオタでコミュニケーション不全の対応に、皆引いてしまうようなのです。

不況が著しい昨今、店子に集客のノルマを課している店も少なくないわけですが、エフメゾはたいしたバイト料も払っていないので、そこまでスタッフに負担はかけたくないと思っていました。しかしいくらなんでも二年で一人(本当に!)しかお客様を連れてこれなかったのはどんなものかと、さすがの伏見ママもいら立ちはじめ、あきれが募っていったのです。

もちろん、おりにふれ、少しは新しい友人など連れてきてくれ、とツカサにも求めたわけですけが、実行しようとする気配がとんとない。彼には巨根という武器もあるのですが(一緒に温泉に入った友人が証言)、それがまったく意味を持たない代物であることがよけい腹立たしい! 不器用な性格面を差し引いても、2年で1人はねーだろッ!!と、しまいには、伏見ママも怒りを爆発させました。

「ツカサ、あんたね、そこまで客を連れて来ない、ファンを作れないのはいくら何でも怠慢でしょ! ジムで作った人工ものとはいえ20代の筋肉はただの飾り物? 枕営業でも何でもしてひとりくらいイケメン客を連れてこーーーい!! せっかくの巨根を無駄にするなーーーッ!!!」と檄を飛ばしたわけです。

それで彼も心を改めて他店に営業に行ったり、有名宅飲みで名刺をばらまいたり……と努力してみたものの、ギラギラしすぎていると男運が落ちるように、どこでも相手にされず、むしろ引かれるばかり。……結局、ツカサには「無駄巨根」の烙印を押し、補欠への降格を勧告いたしました。初めてスタッフを切る決意をしたのです。それが、伏見ママが惻隠の情を捨てて、ビジネスとしてゲイバー経営をまっとうしようとした瞬間でした(「そのとき歴史が動いた!」)。やはり、ママを慕って来店してくださるお客様とは別に、お色気担当の若い店子に集客力がなければ、ゲイバーは成り立たない商売なのです。友情だけでは利益は上がらない。ボランティア活動ではないのだから、そこに甘えがあってはならないのです。

ということで、以来、伏見ママは二丁目の秋元康になるべく「AKB方式」を採用するこにしました(笑)。お色気担当の若い店子は競争させることにし、お客様に人気のあるうちはバイトをお願いし、求める声がなると他の若い子にチェンジするという非情なビジネス。すっかり人間をモノみたいにあつかう女衒になってしまったわけですが、それでもお客様に楽しんでいただけるのなら本望。ママは鬼にでも蛇にでもなりましょう。結果、店にも活気が取り戻せたし、空間のエロ度もだいぶ増してきました。それに、例のツカサもたまに臨時でバイトに入れていて、レギュラー復活のチャンスも与えています。彼も一度首にした効果があったのでしょう、最近では自分のお客様をちゃんと連れて来ることをするようになりました(もっとも、発展場とかでからだを使った営業をしているようなのですが、笑)

この頃は、超エロエロなオーラを発しているT君(30代)と、元アメフト部のノンケ大学生君(23歳)が、二大看板になっています。T君は近所のスーパーでもタイプがいると発展してしまうというアクティブ淫乱で、そのお色気にはノンケ女子のお客様までが股間を濡らすほど。一見マッチョなのだけど、どこかフェミニンな味わいが見え隠れしているところが、なんとも不思議な色気を醸し出している兄貴です。

ノンケ大学生君のほうは、鍛えていた筋肉に薄く脂肪がのったボディがなんともゲイ好みで、なおかつ素朴で甘いマスクが大人気! 性格も素直でやさしいので、評価の厳しいゲイ客のあいだでも赤丸急上昇中の注目株です。最初は某作家先生に連れられて飲みに来た子だったのですが、伏見ママがバイトを募集しているというのを聞きつけて自ら志願してきたという強者。猜疑心が強い伏見ママは当初、ノンケがなんで? 冷やかし?と疑いの目を向けていたのですが、働かせたら、実にまじめに仕事をするし、接客もとても丁寧。競パンを指定されても嫌な顔ひとつせず、モッコリをさらしています。「一回くらいだったら男とやってもいいかも」などとぽろりと言うあたりが、なかなかの魔性子っぷりです(笑)

彼らお色気チームと、知的で対応のやさしいチーママ(アラフォーのイケメン)に、大魔神の伏見ママが加わって接客させてもらっているのが、現在のエフメゾです。こんな置屋みたいなゲイバーですが、読者のみなさんも、ぜひぜひ遊びにお越し下さい。ゲイ客は優先して大歓迎であります。あるいは、お色気組ヘの受付も随時行っております。蛮勇のある若者、来たれ!

 

 

伏見憲明:1963年生まれ。作家。ゲイバーのママ。『プライベート・ゲイ・ライフ』で物書きデビュー。2003年に『魔女の息子』(河出書房新社)で文藝賞。『さびしさの授業』『男子のための恋愛検定』(理論社/よりみちパン!セ)など著書多数。近著に『団地の女学生』(集英社)

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伏見さんがママをつとめるお店「エフメゾ」

ゲイバー「mf(メゾフォルテ)」(東京都新宿区新宿2-14-16タラクビル2F 03-3352-2511
毎週水曜日のみ、伏見さんがママをつとめます
17時~カフェタイム/19時~バータイム