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旅に出て初めて理解した「旅の意味」——4ヶ月のヨーロッパ・ゲイ・ツアーを振り返って

スペインの巨大なパレードやケルンのゲイゲームズをレポートしてくれた円山てのるさんが、最後の滞在先であるイスタンブールから、約4ヶ月にも及ぶヨーロッパ・ツアーの「旅のまとめ」とも言うべきエッセイを送ってくれました。そうした希有な体験をした方だからこその含蓄深い言葉を、ぜひ味わってみてください。

旅に出て初めて理解した「旅の意味」——4ヶ月のヨーロッパ・ゲイ・ツアーを振り返って

 僕らは彼氏やゲイ友達といっしょに観光地やリゾート地に出かけたり、地方のゲイイベントに参加したり、海外旅行に行って現地のゲイバーやイベントに行ってみたり、という「ゲイ旅行」を楽しむことがあります。中には、シドニーのマルディグラ・ツアーのように参加者が口をそろえて「人生観が変わった」と言うような、素晴らしい体験を約束するものもあります。シドニーに限らず、ニューヨークやサンフランシスコ、ロサンゼルスなどのゲイシーンを体験した方は、その「スゴさ」に感銘を受け、少なからずゲイとしての生き方が変わった(旅の経験が人生に影響を及ぼしてきた)と思います。
 今年の5月末から、スイス、スペイン、モロッコ、フランス、オランダ、ドイツ、オーストリア、イタリア、トルコといったヨーロッパ(およびその周辺)の国々を、約4ヶ月間も彼氏さんと旅してきた円山てのるさん(なんて幸せなことでしょう!)。彼氏と二人で長期の海外旅行ってだけでも楽しそうですが、世界で最も自由で寛容なオランダを中心とするヨーロッパのゲイシーンの(しかもタイミングよくパレードやゲイゲームズの)空気をたっぷりと吸ってきたことは、本当にスペシャルな経験だったハズです。そんなてのるさんが、「旅のまとめ」とも言うべきエッセイを送ってくれました。希有な体験をした方だからこその含蓄深い言葉を、ぜひ味わってみてください。(後藤純一)

【関連記事】
円山てのるのバルセロナ&マドリード・パレード・レポート
http://gladxx.jp/column/371/372.html

円山てのるのゲイゲームズ@ケルン開会式レポート
http://gladxx.jp/column/371/477.html

「ゲイふうふ・二人旅」の詳細はblog「てのる【Gay】タイムズ」でご覧ください。
http://tapten.at.webry.info/


旅に出て初めて理解した「旅に出ることの意味」  

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アムステルダムのゲイバー
 114日間におよぶ、我がパートナー(♂)と僕との長期旅行は、もうまもなく終わりを迎えます。今、最後の逗留地であるイスタンブール(トルコ)で、この記事を書いています。たくさんの旅の記憶を紐解きながら。そして、いろいろな思いに浸りながら。

 僕らが旅に出た理由をあえて一言にまとめるならば、「ただ、旅に出たかったから」としか言いようがありません。付け加えるなら、「旅に出られるときに出ておかないと、あとで後悔しそうだったから」とも言えます。詳細には申しませんが、とにかく出るのは「今」しか、ありませんでした。「観たことのない場所を観てみたい/行ったことのないところへ行ってみたい」という、ごくごく単純な動機をもとに、僕らそれぞれの人生を構成する多くの要素の中から、例えば「職(収入源)」だとか「キャリア」だとか、あるいは「築いてきた人間関係」だとか、さまざまなものを失うであろうことを承知の上で、長期にわたって日本を飛び出してみたのです。
 もちろん、そんな「アホなこと」をみなさんにお勧めするために、この文章を書いているわけではありません。僕が申し上げたいのは、もっともっと別のことなのです……

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パリのゲイストリートにて
 今回のヨーロッパ旅行(注:ヨーロッパ以外の地域にも足を運んでいますが、近接しているので、概ねヨーロッパということで)をプランニングする際、初めから意識していた「ゲイ・イベント」は、7月上旬開催の「マドリード・プライドパレード」だけでした。とは言え、絶対に観たい/参加したいと決めていたわけではなく、タイミングが上手く合ったらなんとなく観てみようかしら……といったアバウトな考え方しかしていませんでした。日程が合わなくて観られなければ/参加できなければ、それはそれで仕方ないだろう……と。
 ですから、こちらのサイトに、これまで2本もの「海外ゲイ・イベント参加報告記」を寄稿したのは、「計画的に」ではまったくなく、連続した偶然の結果でした。旅に出た当初は、そんなこと、微塵も想定していなかったのです。
 さらに申し上げると、そもそも僕らは、訪れる海外の街々で、二人して一緒にゲイバーへ行ってみようという気持ちになろうなどとは、ちっとも思っていませんでした。なぜなら、僕のパートナーは酒が一滴も飲めないからです。

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マドリードのゲイタウン、チュエカ
 前置きが長くなりましたが、ここで結論を述べさせていただきます。
「みなさん、どんどん旅に出ましょう。そして、海外のゲイ・イベントに、できる限り積極的に参加して、海外のゲイシーンというものを、身をもって体験してみようじゃありませんか!」

 こう申し上げたのは、ある種、僕の「反省の念」に基づいている……と言っても過言ではないと思います。
 すなわち、バルセロナとマドリードの2つのプライドパレードに参加して初めて、「スケールがハンパじゃなくでっかくて、めちゃめちゃすごかったなぁ。エキサイティングだったなぁ。ホントに行ってよかった」と、心から断言できるようになったからです。
 ケルンで開催されたゲイゲームズを観に行って、ようやく、「技量や成績なんて度外視して、参加者たちは心から楽しそうに競い合っていたなぁ。付随する催しもいっぱいあって、ゲイ同士の愉快な出会いもたくさんあったし」と、今になって素晴らしい思い出がたっぷり蓄えられているのを知るからです。
 あるいは、海外のいろいろな街のゲイバーへ潜り込んでみて、「なるほど、どこの土地でもゲイは同じなんだなぁ。悩んだりはめを外したり、やっぱりみんな頑張って生きているんだなぁ」と、思いがけず、言語を超えた連帯感を覚えることができたからです。

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スペインのシッチェス海岸にて
 スペイン・バルセロナの郊外に、シッチェスという海岸リゾート地があります。夏になるとヨーロッパじゅうから、ゲイ/ストレート問わず、大勢の海水浴客が集まります。強烈な日差し、そしてクリーム色の砂浜と穏やかで青い地中海が美しく、とても魅力的です。
 シッチェス海岸は、ヨーロッパ屈指のゲイビーチとしても有名です。ゲイが集まるレストラン、バー、カフェ、そしてクラブなどがたくさん軒を連ねています。ホテルが充実しており、一時的に借りて過ごせるコンドミニアムも大人気です。あたかも、新宿二丁目にきれいな砂浜と海が備わり、宿泊施設がたくさん用意されて、毎晩毎夜、バーやクラブで大盛り上がりをしているかのような風情です。
 隣国フランスはもちろん、ヨーロッパ各地から大勢のゲイたちが、真夏のシッチェスの地へ遊びに訪れています。まるで、毎日がパレードみたいなものです。訪れるゲイの誰もが、ゲイであることを隠そうと神経質にならず、堂々と自然に振る舞っている様子が素敵です。隠す必要がないのです。
 シッチェスの人たちの多くは、一般社会にゲイがいくらでも存在している事実を素直に受け容れ、順応できているように思えます。そうしたストレートの人たちの「意識の進化」を肌で感じられるところが、さすがスペインだと感じました。

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スペインのシッチェス海岸にて
 オランダのアムステルダムでは、街のあちらこちらで大きなレインボーフラッグをなびかせたバーやレストランを見つけることができました。そうした「ゲイの集まるスポット」が街じゅうに点在しているため、わざわざ「どこどこがゲイストリートです」といった区分けをする必要がないのです。あえて言うなら、街全体がゲイストリートみたいなもの。驚くべきことだと思います。
 そして、マリファナが事実上解禁されていることや、公娼制度とも言うべき売春産業の公認化が進んでいること——これらの「現実」と合わせ、同性婚をほかのどの国よりも早く認めたオランダ社会の「自由度の高さ」について、誰しも実感してみる価値があると、僕は考えています。
 日本社会の常識を超越し、はるかに自由な発想に基づく「ぶっ飛んだ」常識が成り立っているオランダ社会。日本にそっくりそのままを当てはめることはできなくとも、同じ地球上に「意識の進化」を実現した社会があることを体験してみるのは、僕たちの閉ざされがちな視野を拡げるという点で、とても意義のあることだと思います。

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ケルンのゲイゲームズに参加した
日本人選手(ドイツの方が撮影)
 もっと平たく申せば、ゲイカップルが日頃から、街中のどこであろうと、臆することなく手をつないで歩ける上、その様子が日常のごく当たり前な光景の一つとして、ほとんどわだかまりなく受け容れられていると思われる(スペインやオランダのように)進んだ意識水準を持つ社会が、いったいどのようなものであるか、その雰囲気を知るだけでも大いに意味があると思うのです。
「しょせん、ヨーロッパと日本は別ものだし、もともとまったく違う社会なんだから、そんなの、わざわざ比べてみたってしょうがないわ」なんて、どうか言わないでください。
 たしかに、日本の世の中を一朝一夕に変えることはできません。逆にまた、日本の世の中を変えよう変えようと意地を張ること「だけ」が、正しい方向性だとも言えません。
 それに、もとより、たとえ日本の社会を変えようと思っても、まず自分(たち)自身が、もっと主体的に変わってゆこうというモチベーションを維持しなければ、どうすることもできないように、僕は思います。
 旅に出て「海外のゲイ・イベントに、できる限り積極的に参加してみること」「海外の進んだ『対ゲイ意識水準』を持つ社会がたたえる雰囲気を知ること」——それらによって、もしかすると……ですが、自分(たち)自身を前向きに変えてゆくためのきっかけを、それぞれに何か、得られるかもしれないのです。

 訪れるべき先は、なにもヨーロッパだけに限られているわけではありません。最近は、隣国の台湾で、台北のプライドパレードが「激アツ」になっていると聞いています。今年の「台湾プライドパレード(台湾同志遊行)」は10月30日(土)に開催されるそうです。
 スペイン・マドリードの「巨大」プライドパレードに度肝を抜かれてしまった我がパートナーと僕なのですが、すっかり味をしめてしまったのを言いわけに、この際、台北のプライドパレードにも参加しに行っちゃおうかな……なんてね。
 みなさんも、「お気軽に」検討されてみてはいかがでしょうか?
(円山てのる)

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