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特集:アジアンクィア映画祭

5月24日(金)から第4回アジアンクィア映画祭が開催されます。アジアで製作された、ここでしか観られない作品がたくさん上映されます。アジア映画ならではの熱さや感動をぜひ、体験してみてください。

特集:アジアンクィア映画祭

5月24日(金)からシネマート六本木で4回目となるアジアンクィア映画祭(AQFF)が開催されます。東京国際レズビアン&ゲイ映画祭が欧米の作品を中心としているのに対し、AQFFはアジア作品(とりわけインディペンデント作品)を発掘し、日本や世界へ紹介するものです。このAQFFでしか観られない作品もたくさんあります。アジア映画ならではの熱さや感動をぜひ、体験してみてください。(後藤純一)


再上映される短編映画『蛍の光』。
本当に泣けます。ぜひ!
 アジアンクィア映画祭(AQFF=Asian Queer Film Festival)は、アジアのクィア映画だけを上映する世界で唯一の映画祭です。2年に1回開催されており、今年で4回目を迎えます。前回は2011年で、震災の影響を受けて5月から7月に延期されましたが、今年は5月24日(金)からスタートします。

 東京国際レズビアン&ゲイ映画祭が欧米の作品を中心に上映しているのに対し、AQFFはアジア映画(とりわけインディペンデント映画)を発掘し、日本や世界へ紹介することを目的として2007年に誕生しました。これまでのAQFFでは、後に日本でも劇場公開された『後悔なんてしない』など、数々の話題作を日本初上映してきました。

「アジアのクィア作品は欧米に比べると制作される機会が圧倒的に少ないのが現状です。しかし、近年良質な作品が次々と発表され、注目を集めはじめています。AQFFは、アジアという身近な環境で制作された作品を通し、アジアのセクシュアルマイノリティの姿、ライフスタイル、家族や友達、社会との関係など様々なあり方を紹介すること──偏見がまだ残る日本社会に提示していくこと──に大きな意義があると考えています」(公式サイトより)

 第4回目となる今年のAQFFでは、全12プログラム、計27作品が上映されますが、そのうちジャパン・プレミアが23作品もあります。これらの作品のほとんどは一般上映もされず、DVD化もされないため、本当にAQFFでしか観ることができません。

 いわゆる韓流ドラマなどもそうですが、韓国や台湾、タイ、フィリピンなどで制作されてきたアジア映画には(インディペンデントであればあるほど)感情を激しく揺さぶるような熱い作品がたくさんあり、思わず涙させられます(中でも、今回再上映される『蛍の光』という短編は号泣必至の名作です)。少しでも多くの方に足を運んでいただければ幸いです。

第4回アジアンクィア映画祭 
会場:シネマート六本木
日程:2013年5月24日(金)〜26日(日)、5月31日(金)〜6月2日(日)
料金:日時指定1回券・前売1300円、当日1500円(自由席) ※クロージングプログラム券は前売2500円、当日2700円(自由席) ※前売券はe+にて、当日券は劇場1F窓口にて販売
主催:AQFF運営事務局



 ここからはオススメ作品をご紹介します。通常、こうした作品紹介では、短編よりも長編、ドキュメンタリーよりもエンタメ作品が優先されることが多いと思いますが、今回はゴトウ個人が本当に観てほしい、観てみたいと思う作品から順に紹介してみたいと思います。


「ソジュンムン・プログラム」 5月26日(日)19:00/6月2日(日)10:15
 イ=ソン・ヒイルやキムチョ・グァンスに続き、韓国ではゲイであることをカミングアウトする映画監督が増えていますが、その中でも確かな実力で注目を集めているのがソ・ジュンムン監督です。2作目の監督作品である短編『蛍の光』(第2回AQFFで日本初上映)が観客を号泣させ、チョンノ(韓国の二丁目)で生きる4人のゲイの姿を追ったドキュメンタリー『チョンノの奇跡』(第3回AQFFで日本初上映)で再び大きな感動を呼んだ、おそらくAQFFファンにとって最も思い入れの深い監督の一人だと思います(少なくとも、ゴトウはそうです)。今回は、『チョンノの奇跡』で表現されたやりきれなさの後で、監督自身、救いを求めるかのように作りはじめたという作品『REC』が上映されるほか、世界的にも高い評価を獲得したという『蛍の光』が再上映されます(本当に泣けます。絶対に観てください)
 ヨンジュンとジュンソクは、つきあって5年の記念日に、これまで決してやったことのない思い出を作ることを決めた。モーテルに行き、貴重な思い出をビデオカメラに記録する。しかし、夜が深まると、2人の愛は何か別のものに変わっていく…。(『REC』)
「REC」
(66分/2011/韓国)
「蛍の光」Auld Lang Syne
(26分/2007/韓国)


「ドキュメンタリープログラム」 5月24日(金)16:30/5月25日(土)12:15/5月31日(金)14:35
 フィリピンの刑務所を舞台にした『世界で一番オシャレな刑務所』と、マカオで育った監督が同性愛者としての苦悩を綴る『私の居場所』の2作品を上映。中でも『世界で一番オシャレな刑務所』は映画の最後まで飽きさせない、必見のドキュメンタリーだそうです。
『世界で一番オシャレな刑務所』
 フィリピンで最も警備が厳しい刑務所でファッションショーを開催するデザイナーのプイ。そんなプイのキャラクターはもちろん、アシスタントのおとぼけぶりも素敵なのですが、実は刑務所にたくさんいるトランスジェンダーやゲイの受刑者たちの生活ぶりなど、見所がたくさん。
 フィリピンで警備体制が最も厳重なニュー・ビリビッド刑務所。厳罰を科された犯罪者らがいるその一角に、とんでもないプロジェクトを実行しようとするグループがいた。若くて派手なファッションデザイナーのプイ・キニョネスは、週に一度ビリビッドを訪れ、30人の参加者たちに縫い方や生地の扱い方を教え、スケッチから完成に至るまで彼らのアイデアを見守ってゆく。本作は、刑務所のどまん中で行われたファッションショーの準備から、ショー当日までのすべてを記録する。
『世界で一番オシャレな刑務所』
(67分/2012/シンガポール、フィリピン、イギリス)


『愛なんていらない』 5月24日(金)18:50(オープニング作品。ゲスト登壇予定)/6月1日(土)17:10
 タイのショーパブや僧院を舞台として、3人の登場人物がたどる心の旅と愛を描く物語。この世には、他人から教えられた常識を信じる人もいれば、自分なりの真理を探す人もいる。自分なりの愛を探し当てたとき、その愛を否定できるだろうか?と問いかけます。ニューハーフの本場・タイのショーパブでのショーはきっと楽しめそう!監督のタンワーリン・スカピシットさん自身もトランスジェンダーで、現在、タイ映画監督協会の会長を務めるなど、本国でめざましい活躍をしている方です。
 もう若くはないMTFトランスジェンダーのサーイターンは、旅先の美しいタイ北部でバイク修理工の青年ファイと恋に落ちる。サーイターンは、ファイが彼女の過去ではなく心の中を見てくれることを願っていたが…。父親のショーパブを相続したトンマイは、アメリカから故郷のタイに戻って来た。トンマイはバーを閉めるつもりだったが、従業員からバーの存続を請われ…。高校生のディンは、女性的な振る舞いが治るかもしれないと、父親に僧院へ連れて行かれる。ところがディンは指導係の僧侶に恋をしてしまい…。
『愛なんていらない』It Gets Better
(104分/2012/タイ)


『2度の結婚式と1度の葬式』 5月26日(日)15:00/5月31日(金)18:50
 一昨年のアジアンクィア映画祭でも特集が組まれ、『ただの友達?』が評判になったキムチョ・グァンス監督(現在、両家の祝福を受けて恋人と同性結婚式を挙げるということがニュースになっています)。韓国における同性愛のタブー感を感じさせない、明るくポジティブな作品を作り続けている方ですが、その初長編作品であり、韓国初のハッピークィアロマンチックコメディ『2度の結婚式と1度の葬式』がついに日本初公開されます。韓国では2011年に劇場公開され、スマッシュヒットを記録。世界各国のクィア映画祭で上映されています。
 秘密にしなくてはいけない新婚生活。カミングアウトしていないゲイのミンスとレズビアンのヒョジンは、結婚をせかす両親の干渉から逃れるため、そして周囲の目をごまかすため、偽装結婚する。完璧な新婚夫婦を装いながら、本当の恋人が住む隣の部屋に出入りしている。しかし、ミンスの両親が突然訪ねてくるため、2人の計画は思いどおりにいかない。果たして、うまくごまかしきれるのか?
『2度の結婚式と1度の葬式』Two Weddings and a Funeral
(106分/2011/韓国)


『GF*BF』 5月25日(土)19:05/6月2日(日)14:50
 英台ハーフのイケメン・鳳小岳(リディアン・ヴォーン)、『花蓮の夏』『ニエズ』の張孝全(ジョセフ・チャン)ら、台湾の人気俳優が集結し、20年以上にわたる3人の手さぐりの愛の物語を、激動の台湾社会を背景に描いた感動のドラマです。今年の大阪アジアン映画祭で日本初上映され、大反響を呼びました。
 メイベル、ライアム、アーロンの3人は台湾南部の山深くにある小さな町で生まれ、クスノキとモクレンの木々に囲まれた、のどかな田園風景の中で育った。しかし何百年も変わらないように見えるこの常夏の楽園でも、時は着実に過ぎゆく。時は1980年代、社会革命が広がる直前の台湾では、戒厳令下でまだ戦いが続いていた。3人も運動に身を投じる。校内の壁にスローガンを大書し、扇動的な詩をのせた学校新聞を発行し、朝礼で抗議運動を企てる。やがてのんびりした田舎の暮らしを離れ、きらめく都会に出ると、台北の大学生となった3人は三月学運に参加し、自由と民主主義を訴えるデモを行うなど、以前にも増して理想のために激しく戦うようになる。そんな中、ライアムがずっと隠していた秘密が暴かれ…。
『GF*BF』女朋友。男朋友
(106分/2012/台湾)


『One Night and Two Days』 6月2日(日)17:05(クロージング作品。ゲスト登壇予定)
 2000年、韓国のゲイ解放運動の先駆けとなった短編『シュガー・ヒル』を、また、2006年、初めて今のゲイの生き様を正面から描いた『後悔なんてしない』を発表したイ=ソン・ヒイル監督(韓国で映画監督として初めてカミングアウトした方でもあります)。その最新作である中編2作、長編1作からなる3部作を一挙上映する特別プログラムです。高校教師と生徒の駆け引きを描いた『あの夏、突然に』、兵役中の青年と元指導官との秘密に迫った『南へ』、2011年に起きたヘイトクライム(ゲイに対する暴行事件)を元に作られた『白夜』(今年のベルリン国際映画祭で上映)の3話で構成されています。上映後にゲストのスピーチが予定されています。
『One Night and Two Days』
(157分/2013/韓国)


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