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レポート:レインボーマーチ札幌ファイナル

札幌で9月15日(日)、日本最多の16回目であり、レインボーマーチ札幌としては最後となるパレードが行われました。あいにくの小雨模様ながら、日本全国から1100名を越える参加者の方たちが駆けつけ、そして実行委員のみなさんの尽力によって、とても華やかで晴れやかなパレードとなり、18年の歴史に幕を閉じ、有終の美を飾りました。

レポート:レインボーマーチ札幌ファイナル

札幌で9月15日(日)、日本最多の16回目であり、レインボーマーチ札幌としては最後となるパレードが行われました。あいにくの小雨模様ながら、日本全国から1100名を越える参加者の方たちが駆けつけ、そして実行委員のみなさんの尽力によって、とても華やかで晴れやかなパレードとなり、18年の歴史に幕を閉じ、有終の美を飾りました。レポートをお届けします。(後藤純一)



前夜祭「HOLE」の1シーン。いちばん
光ってるのが実行委員長さんです。

 9月14日(土)、パレード前日の札幌は汗ばむくらいの陽気でした。夜にはたくさんの関連イベントが開催されました。まず、トークショー「セックスと恋愛とパートナー」は、ゲストに予定されていた中村うさぎさんが緊急入院されたため(生死の境を彷徨うほどの重症だったそうですが、ご本人は直前まで行くと言ってきかなかったそうです)、長谷川博史さんと実行委員の方とのトークが行われました。
 前夜祭「HOLE」は、東京・名古屋・大阪の豪華ドラァグクイーン&GOGO BOYのみなさん、そして地元札幌のドラァグクイーン&GOGO BOYのみなさんが出演し、大変な盛り上がりを見せました。終盤、ショータイムが終わって出演者が全員ステージに上がり(壮観でした!)、MCのバブリーナさんがエスムラルダさんに「明日のパレードは晴れるでしょうか?」とマイクを振ると、エスムラルダさんは「晴れます」と重々しく断言し(笑)、会場を盛り上げていました。
 いわゆる「裏」前夜祭である「男だけ。Luv BITES」は、残念ながら行けなかったのですが、たいへんSEXYなパーティだった模様です。
 それから、GMPD好きのためのナイト「フトメン☆ゲッチュ」も大盛況で、「全力シュール祭り」というテーマでお届けされたショータイムやエロいGOGOタイムなどで盛り上がりました(個人的には、2年前に亡くなられたDJのKutsuwadaさんを追悼するショーで感涙…。関係者の方たちの思いが伝わってくるような、あたたかい夜でした)
 








 9月15日(日)、台風の影響か、夜中から雷が鳴り、雨が降りはじめました。朝起きて悲しい気持ちになった方も多いと思います。小雨の降る中、12時過ぎに会場へ到着。友達と「天気が残念だね」「最後だから神様も泣いてるんだよ」「きっと1時になったら雨もやむよね」などと話したり、ハデなドラァグクイーンの方やポケモンのコスプレの方などに写真を撮らせてもらったり、いろんな人と再会してご挨拶したりしているうちに、だんだん人も増えてきました。ステージでは出発前のイベントが始まり、フロートやブースの紹介などが行われました。
 13時。いよいよパレード出発の時がやってきました。この頃には雨もやんできて、奇跡!(オカマパワーは健在)と思いました。DJフロートが音を鳴らしはじめ、カウントダウンとともにパレードがスタート。先頭はいつものように「わたしたちはゲイ、レズビアン…」とアナウンスする車で、石坂わたる中野区議らが横断幕を持って歩きました。続く実行委員フロートは、札幌のドラァグクイーンやGOGO BOYがたくさん乗っていて華やかでした。それから、女の子フロート、ゲイバーフロート(車の側面に掲げられていたメッセージが素晴らしく、うるっときました)、トリが東京・名古屋・大阪合同フロート(2chopo、RushCruise、Pierrot、RagglianCafe、Airなどのお店・イベント関係の方がフロートを出展。その心意気に拍手!)でした。
 テレビ塔付近では、たまたま通りかかった女子高生がキャーキャー言いながら写真を撮ってたり、大通公園で行われていた食の祭典「オータムフェスト」のお客さんも「ドラァグクイーンだね」とか「レインボーマーチだね」と恒例のお祭りといった風情でしゃべってたり。本当に札幌の街・市民の方たちにとけこんでるんだなぁと実感しました。
 レインボーな一行は繁華街を回り、札幌の中心部であるパルコ・三越前へさしかかると、いったん停まり、カウントダウンとともに、それぞれの思いをのせた2000個の風船を一斉に空にリリースしました。そして「恋チュン」が流れはじめ、再びパレードがスタート。帰着地点に向かって最後の盛り上がりを見せました。ゲイバーフロートでは「陽のあたる大通り」「潮騒のメモリー」「ひこうき雲」「すばらしい日々」などがかかり、選曲がツボすぎてうっかり泣いてしまいました…





 大通公園に帰って来て、仙台のやろっこのみなさん(落雷で電車が止まり、パレードに間に合わなかったそう…)や沖縄パレードの関係の方などにもお会いし、お話してるうちに、プライド集会がスタート。恒例のベストドレッサー賞、市長さんのスピーチ(肉声の生録りを放送)などのあと、参加人数が1107人だと発表され、大きな拍手が起こりました。そしてフロート関係者やアフターパーティ、フライングステージの紹介などが行われ、実行委員長のまさしさんがご挨拶。「パレードの目標の1つであったビジビリティの向上は一定の達成を見た。これからは、一歩進んだ違う形でやっていきたい。これは前向きなファイナルです」というようなお話をされて、拍手が起きました。そして最後に、参加者のみなさんで集合写真を撮り、思い出多い札幌のレインボーマーチは18年の歴史に幕を閉じました。
  
 いったんホテルへ戻り、友達と「だるま」のジンギスカンを食べ、テレビ塔のレインボーなライトアップを見てから、パレード恒例の「レインボーファミリーカフェ」へ出かけました。毎年パレードでおにぎりを作ってくれていた親の会のお母さん方が出迎えてくれました。『ハートをつなごう』にも出演されていた西澤さんと初めてゆっくりお話できて、その元気さとユーモアにたくさん笑わせていただき、でも、息子さんが亡くなったとき、彼がドラァグクイーンの時に着ていた派手な衣装をお棺に入れてあげたという話をお聞きして、おにぎりの塩味がよけいにしみました。今までパレードを応援してくれたお母さん方に感謝です。本当にありがとうございました。


レインボーに輝くテレビ塔

レインボーファミリーカフェ*

アフターパーティ*

 パレードと「レインボーファミリーカフェ」の余韻を引きずりながら、アフターパーティへ。メインフロアはクラブ系、サブフロアはアニソンで、全く異なる盛り上がり方をしていたのが面白かったです。それから、踊り疲れた中年の方向けに、たけむらさん(長年パレードを支えてきた方です)がBKC(ババア救済センター)というバーを出していて、ゆったり座ってくつろげたのがよかったです。そのあと、札幌のドラァグクイーンの方たちによるショータイムなどを楽しみつつも、別れを惜しむお客さんたちの熱い要望で、アフターパーティは延長に次ぐ延長を繰り返し、なんと朝8時まで続いたそうです。

 16日(月)、市内観光を楽しんで帰る予定だった方の中には、台風直撃の影響を受け、飛行機が欠航になったり、いったん千歳を飛び立つも羽田に着陸できずに引き返したり(ゴトウがそうでした)、足止めを食らった方たちも多かったと思います。なので、この日の夜も、札幌のゲイバーはにぎわいを見せていました(せっかく札幌にいるんだから楽しまなきゃね)
 翌日(または翌々日)に帰る人たちは口々に「ありがとう札幌」「札幌大好き!」とツイートしていました。たとえ台風だろうと何だろうと、札幌のパレードやパーティやゲイバーの楽しさ・魅力は格別で、また来たいと思わせるものがあったのです。
 
 
 振り返ってみると、レインボーマーチ札幌は本当にスゴかった、そしてたくさんの「よかった」をプレゼントしてくれたと思います。
 東京とほぼタイムラグなくパレードがスタートし、クラブパーティなども東京に負けないくらいのテンションで(1997年の前夜祭でルチアーノさんが「スリラー」ショーで客席に納豆を撒いたことは今でも語りぐさとなっています)、東京から見るとうらやましいくらいハデなフロートでパレードを盛り上げ、市長さんを呼ぶことに成功し、お母さんたちが涙を誘い…いつ行っても「楽しかった」や「感動した」を共有でき、毎年札幌に行くのを楽しみにする人たちも多かったと思います。
 お祭りとしてもちゃんと楽しいし(強めだし)、ちゃんと権利擁護(セクシュアルマイノリティの社会的地位向上)の活動もやってきて、成果を挙げてきました。市長さんが来てスピーチしてくれたことに象徴されるように(今では北海道知事をはじめ、全道にわたる市の市長がコメントを寄せてくれています)、人権問題として認知されるようになった、町行く人がみんなレインボーマーチを知っている、というだけでもスゴイことです。
 今回もたとえば、8月にSAビル(ゲイバーがたくさん入っているビル)をまるごと使ってイベントをやって、その売り上げでゲイバーフロートを出す費用を捻出した(その企画は実行委員長が「ID」のまさしさんだったからこそ実現した、と「MAD」のコータさんが仰ってました)というように、ゲイバーのみなさんがパレードのために一肌脱いで協力してくれる、そういうところも素晴らしいと思います。
 北国らしい(「あまちゃん」的な?)人々のあたたかさとゲイプライドが見事に調和しながら息づいている、それでいて、ドラァグクイーンのショーにしても、ゲイバーのノリにしても、ひねりのきいた笑いや「面白さ」に命をかけてる感など、独特の感性が光り、本当に素敵だと思います(正しく「CAMP」を体現していると思います)
 なぜかはわかりませんが、札幌には、ほかのどの町とも違う魅力(魔力?)があり、リブ的なものとクラブ的なものとコミュニティ的なものが見事に一つになって花を咲かせてきたのです。(その魅力の秘密の一端を知る機会として、長年レインボーマーチを支えてきたケンタさんへのインタビューを、後日、お届けします)
「レインボーマーチ札幌」は残念ながらいったん幕を下ろすことになりましたけれども、またこれからも、札幌のコミュニティは何か素敵なことを生み出し続けてくれるだろうし、日本のセクシュアルマイノリティ史に残る何かもやってくれるだろうと確信しています。今はただ、本当におつかれさまでした、ありがとうございましたと感謝したい気持ちです。 
 

※の画像は、にしやんさんからご提供いただきました。

☆レインボーマーチ札幌のフォトアルバムはこちらこちら

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