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特集:2016年秋冬のLGBT映画 

妻夫木聡さんと綾部剛さんがゲイカップルを演じている『怒り』が話題を呼んでいますが、そのほかにも、この10月から12月にかけてさまざまなLGBT関連映画が上映されます。特集をお届けします。

特集:2016年秋冬のLGBT映画 

(東京国際映画祭上映作品「鳥類学者」より)



現在、妻夫木聡さんと綾部剛さんがゲイカップルを演じている『怒り』が多方面で話題を呼んでいますが、それだけでなく、この10月から12月にかけてLGBTに関連したさまざまな映画(クィアムービー)が上映されます。今年の上半期は『キャロル』『リリーのすべて』などの名作が相次いで公開されましたが、今年は(ミュージカルもそうですが)映画の当たり年とも言えそうです。芸術の秋、映画館に足を運んでみてはいかがでしょうか。2016年秋冬のLGBT映画特集をお届けいたします。(後藤純一)

 

10/21〜 『スター・トレック BEYOND』

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ヒカル・スールー(ジョン・チョウ)
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Mr.スポック(ザッカリー・クイント)
 2009年からクリス・パインが主演を務めている『スター・トレック』シリーズ。その第3弾『スター・トレック BEYOND』が公開されますが、ヒカル・スールーを演じているジョン・チョウが「『スター・トレック BEYOND』でヒカル・スールーは同性婚していて娘もいるんだ」と明かしたことで話題を呼んでいます。ヒカルがゲイという設定は、同映画シリーズでモンゴメリー・スコットを演じ、今作では脚本家も務めるサイモン・ペグと監督のジャスティン・リンによって、オリジナルTV版でヒカルを演じたジョージ・タケイ(2005年にゲイであることをカムアウトし、2008年に同性婚)を称えるために考えられたそうです。ストーリーの重要な部分というわけではなく、さらりと描かれているそうで、ジョンは「(ヒカルがゲイであることが)大げさに描かれていないのがイイし、人類にとって個人の性的指向が政治的に語られることがなくなればいいな、と僕も思っているから」とコメントしています。
 なお、ヒカル・スールーをゲイとして描くことにジョージ・タケイが反対していると報じられましたが、これは報道の仕方に問題があって、サイモン・ペグが自分にオマージュを捧げてくれたのを光栄には思うものの、敬意を払うべき相手は自分よりも『スター・トレック』の生みの親ジーン・ロッデンベリーではないか、ということを言いたかったんだそうです(ジョージ・タケイがこの件の真意について語ったコメントの全文訳がこちらに掲載されています)
 ちなみにこの『スター・トレック』シリーズで、カーク船長に次位で重要なキャラクターであるMr.スポックを演じているザッカリー・クイントは、1作目が公開された2年後の2011年にゲイであることをカムアウトしています。今回もスポックとして活躍します。
 
スター・トレック BEYONDStar Trek Beyond
2016年/アメリカ/監督:ジャスティン・リン/出演:クリス・パイン、ザッカリー・クイント、ゾーイ・サルダナ、サイモン・ペッグ、カール・アーバン、ジョン・チョウほか/10月21日より全国でロードショー公開

 

10/25〜 第29回東京国際映画祭

 日本で唯一の国際映画製作者連盟公認の国際映画祭である東京国際映画祭(TIFF)。新しい才能、世界の秀作が集結するアジアで最も注目される映画祭です。10月25日より第29回東京国際映画祭が開幕し、今年もたくさんの映画が上映されますが(『怒り』『シン・ゴジラ』『君の名は』の今季話題作もそろって上映。懐かしい作品を野外上映する特集では『フラッシュダンス』も)、その中にはLGBT関連の作品もいくつか含まれています。来年以降、レインボーリール東京(東京国際レズビアン&ゲイ映画祭)で上映されたり、一般公開されたりということになればよいのですが、もしかしたらこのタイミングでしか観ることができないかもしれません。映画祭の雰囲気も味わいつつ、ご覧になってみてはいかがでしょうか。

ダイ・ビューティフル
10/27 17:50- EXシアター六本木

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 トランスジェンダーのヒロインの笑いと涙に満ちた生涯と、レディー・ガガの姿で逝きたいという彼女の遺言を叶えようとする友人たちの姿を、巧みなフラッシュバックを駆使して感動的に描いた作品。苦境をはねのける明るさと、生への肯定に満ちた人物像の創造は、ジュン・ロブレス・ラナ監督の真骨頂。驚異的な存在感を発揮する主演のパオロ・バレステロスは、フィリピンのバラエティ番組のホスト役や有名人になりきるインパーソネーター、メークアップ・アーティストとして活躍する方だそう。
<ストーリー>
美女コンテストで優勝したトランスジェンダーのトリシャが突然死してしまう。彼女の望みは、埋葬前に幾夜も行われる儀式で、毎回違うセレブの装いをまとうこと。友人たちは団結してトリシャの願いを叶えようとする。トリシャが生きた、カラフルでちょっと変わった一生を思い起こしながら。息子として、姉として、母として、友として、恋人として、妻として、そして女王としての人生を。

『ダイ・ビューティフル』Die Beautiful

2016年/フィリピン/監督:ジュン・ロブレス・ラナ/出演:パオロ・バレステロスほか


ザ・ネオン・デーモン(原題)
10/27 20:55- TOHOシネマズ 六本木ヒルズ SCREEN9 


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 『ドライヴ』のニコラス・W・レフン監督が、究極のヒロイン、エル・ファニング(『SUPER8/スーパーエイト』『マレフィセント』)を迎え、悪夢のようなモデル業界を艶やかに描いた、カンヌでも話題騒然となった待望の最新作です。海外では「クィア・ホラー」として紹介されており、『ブラック・スワン』のような展開ではないかと推測されます。
<ストーリー>
ロスに出てきたばかりの若いモデル、ジェシーは一見素朴だが、誰もがその存在に目を奪われる特別な魅力をもった女の子。エージェントの目にも留まり、トップデザイナーのショーにも出るなど順調な道を歩みだすジェシー。しかし、仲良くなったヘアメイクのルビーと彼女の友達は、ジェシーに対して嫉妬を募らせていき、やがてジェシー自身もトップを目指すうち、全てを見失っていく…。

『ザ・ネオン・デーモン(原題)』The Neon Demon
2016年/アメリカ=フランス=デンマーク/監督:ニコラス・ウィンディング・レフン/出演:エル・ファニング、キアヌ・リーヴスほか


鳥類学者
11/01 14:45- TOHOシネマズ 六本木ヒルズ SCREEN7 


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 ポルトガルのゲイの監督、ジョアン・ペドロ・ロドリゲスの最新作。フランシスコ修道会の「聖パドヴァのアントニオ」の逸話になぞらえた、鳥類学者フェルナンドの受難の旅の物語。ロカルノ国際映画祭監督賞受賞。(写真からも窺えるように)男性どうしのセックスや縛られるシーンなど、セクシャルな表現が多分に含まれているようです。海外では「パゾリーニ作品のような宗教的なイメージ」「アピチャッポンがリメイクした『湖の見知らぬ男』」など、さまざまに評されています。
<ストーリー>
鳥類学者のフェルナンドは、希少な鳥を観察すべくひとり山に入り、カヌーで川を下る。しかし急流に飲まれ、転覆してしまう。神秘の森に迷い込んだフェルナンドは、奇想天外な出来事に見舞われる…。

『鳥類学者』The Ornithologist
2016年/ポルトガル=フランス=ブラジル/監督:ジョアン・ペドロ・ロドリゲス/出演:ポール・アミーほか


ラブリー・マン
10/27 17:35- TOHOシネマズ 六本木ヒルズ SCREEN3 


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 トランスジェンダーの父とムスリムの娘を対比させ、新しい愛のかたちを模索するインドネシア映画。監督のテディ・スリアアトマジャは、ディテールにこだわった表現とハッとするような映像、ハイレベルのストーリーテリング力で知られるインドネシアでも最も評価の高い映画監督のひとりだそうです。 
<ストーリー>
敬虔なムスリムの少女チャハヤは生き別れた父親サイフルを捜しにジャカルタへ。父親は女装の男娼としてヤクザの下で働いていた。ようやく探し当てた父の姿を見てショックを受けるチャハヤと、彼女を突き放すサイフル。理解し合えないように思えたふたりの心が、一夜限りのふれ合いをとおして微妙に変化していく…。

『ラブリー・マン』Lovely Man
2011年/インドネシア/監督:テディ・スリアアトマジャ/出演:ドニー・ダマラ、ライハアヌン・スリアアトマジャほか

 その他、東京国際レズビアン&映画祭で『タンジョン・ルー』などの短編をご覧になった方も多いだろうシンガポールのゲイの監督Boo Junfengの最新作で、今年のカンヌ映画祭でも上映された『見習い』なども上映されます。

 

11/26〜 『ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気』

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 ニュージャージー州で20年以上、刑事として働いているローレルは、ステイシーという若い女性と出会い、恋に落ちる。年齢も、取り巻く環境も異なる二人だったが、徐々に関係を築いていき、郊外に中古の一軒家を買って一緒に暮らしはじめることに。しかし、ローレルががんに冒されていることが発覚し、余命半年という宣告を受けてしまう。自分がいなくなった後も、ステイシーが二人の大切な家で暮らしていけるよう、遺族年金を遺そうとするローレル。だが、法律はそれを認めなかった。病と闘いながら、平等な権利と制度の改正を求め闘う決心をしたローレルの訴えは、やがて社会的なムーブメントへと拡大していく――。
 『ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気』は、2007年のアカデミー賞短編ドキュメンタリー賞を受賞した『フリーヘルド』に描かれた実話に基づく伝記映画です。
 愛するパートナーに遺族年金を遺すため、病と闘いながら、法に立ち向かっていく女性刑事ローレルを演じるのは、世界三大国際映画祭全ての女優賞を制覇し、2015年にはアカデミー賞主演女優賞に輝いた大女優ジュリアン・ムーア(『キッズ・オールライト』『シングルマン』)。パートナーのステイシーを、2014年にレズビアンであることをカムアウトしたエレン・ペイジ(『X-MEN』シリーズ、『JUNO/ジュノ』)が演じています。主題歌「ハンズ・オブ・ラヴ」を歌うのは、パンセクシュアル宣言したマイリー・サイラス

ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気 Freeheld 
2015年/アメリカ/監督:ピーター・ソレット/出演:ジュリアン・ムーア、エレン・ペイジ、マイケル・シャノン、スティーブ・カレルほか/11月26日(土)より新宿ピカデリーほか全国にて公開

 

12月〜『ストーンウォール』

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 ゲイ解放運動の端緒であり、その舞台となったゲイバー「ストーンウォール・イン」が国定史跡にもなっている1969年6月の「ストーンウォール暴動(Stonwall Riots)」を、『インデペンデンス・デイ』『デイ・アフター・トゥモロー』などディザスタームービーのヒットメーカーとして知られるローランド・エメリッヒ監督が映画化。自身もゲイであるエメリッヒ監督が、ロサンゼルスのLGBTセンターを訪れた際に「ストリートチルドレンの約4割がセクシュアルマイノリティである」という統計に衝撃を受けたことをきっかけに、自費を投じて製作した作品です。
 主人公の青年ダニーを演じるのはジェレミー・アーヴァイン(『戦火の馬』)。ストリートで美貌を武器に体を売り、自分と同様の身寄りのないキッズたちの面倒も見ているレイを演じるのは、共演者が口をそろえてその才能を賞賛する新人のジョニー・ボーシャン。さらに、ダニーが憧れ惹かれていくハンサムで聡明な活動家・トレヴァーをジョナサン・リース・マイヤーズ(『ベルベット・ゴールドマイン』)が、「ストーンウォール・イン」の経営者・エドをロン・パールマン(『ヘルボーイ』『パシフィック・リム』)が演じています。
 こちらのニュースでもお伝えしたように、公開されるやいなや、当時を知る人々から「本当はトランスジェンダーや有色人種が最初の行動を起こし始めたのに、なぜ白人の青年がやったことになっているのか。歴史の改ざんではないか」と一斉に非難され、政治的に問題があると見なされてきました(エメリッヒ監督は「ストレートの人たちも感情移入しやすいように、こういう作品にした」と語っています)
 ただ、おそらく日本の観客のほとんどは、『インデペンデンス・デイ』の巨匠が描く迫力ある戦いのシーンや、男らしいイケメン青年の成長譚を、素直に観て楽しめることでしょうし、僕らにとっても、当時のリアリティの一端に触れながら(史実が捻じ曲げられていることは踏まえたうえで)映画というフィクションとして楽しむこともできるのではないでしょうか。百聞は一見に如かずで、まずは映画館で観て、それからいろいろ語ったらいいのではないかと思います。
 
『ストーンウォール』Stonewall
2015年/アメリカ/監督・製作:ローランド・エメリッヒ/出演:ジェレミー・アーヴァイン、ジョナサン・リース・マイヤーズ、ジョニー・ボーシャン、カール・グルスマン、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、ジョーイ・キング、ロン・パールマンほか/12月、新宿シネマカリテほか全国でロードショー公開

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