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レポート:Tokyo AIDS Weeks 2016

今年もTokyo AIDS Weeks 2016として、二丁目でイベントが開催されたり、病院で合唱のミニコンサートが行われたりしました。その中で、最新の予防法に関する情報や、世界の趨勢にも触れることができ、楽しくもあり、感動的でもありました。レポートをお届けします。

レポート:Tokyo AIDS Weeks 2016

今年も世界エイズデーの12月1日に二丁目のAiSOTOPE LOUNGEで「RED awareness」が開催され、18分間のセックスシーンで話題になった『パリ 05:59』という映画の上映やトークショーで盛り上がりました。また、国立国際医療研究センターでゲイの合唱のミニコンサートが行われ、感動を呼びました。「RED awareness」のトークショーではこういうお話がありました。感染したかも…と思ったらすぐに薬を飲んだり、ふだんから薬を飲んでおくことで感染を防ぐという予防法が欧米では普及しつつあり、日本でも導入すべきではないかという声が上がっています(ある意味、コンドーム一辺倒だったHIV予防が新たな局面を迎えているのです)。この予防法は果たして大丈夫なのか、問題があるとすれば何なのか、お金はどれくらいかかるのか…たいへん興味深い情報を知ることができました。そんな「Tokyo AIDS Weeks 2016」のレポートをお届けします。(後藤純一)

 


WORLD AIDS DAY PARTY「RED awareness vol.2」


MCのエスムラルダさんと
ジャンジさん
 12月1日(木)、今年も二丁目のAiSOTOPE LOUNGEでWORLD AIDS DAY PARTY「RED awareness」が開催されました。
 今回は、レインボーリール東京(第25回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭)とのコラボで、7月の映画祭で上映され、「18分間の衝撃のセックスシーン」として話題になった作品『パリ 05:59』が再上映されました。
 会場にはたくさんのお客様が詰めかけ、映画をご覧になりました。こちらの記事でもお伝えしているように、『パリ 05:59』は、フランスで実施されている、セックスで感染したかもしれないと思った方が深夜でも病院で(たぶん無償で)受けられる曝露後予防内服(PEP)のことが描かれていました。
 終映後、エスムラルダさんやジャンジさん、NPO法人akta代表理事の岩橋恒太さん、NPO法人 日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラス代表理事の高久陽介さん、東京医科大学でたくさんのHIV陽性者の診察にあたってきた医師の山元泰之さんが登壇しました。エスムラルダさんはいつも以上にゴージャスな衣装で登場し、映画の中の不思議な描写(ラストシーンで携帯を取りに帰ろうとしたらそれをかたくなに止める、とか)にツッコミを入れつつ、場を和ませてくれました。トークショーでは、曝露後予防内服(PEP。ペップと読みます)と、抗HIV薬を毎日飲むことでHIV感染を防ぐ曝露前予防投薬(PrEP。プレップと読みます)に焦点を当て、世界の趨勢と、日本での導入の可能性や問題点について語られました。とても気になる、そして重要なお話がたくさんありましたので、以下にダイジェストでお伝えします。
 
山本先生
「(欧米ではPEPやPrEPがすでに浸透しているのに)日本はガラパゴス。当事者の声がないと厚労省も変わらない」
高久さん
「夜中でもスムーズに診てもらえる体制を作らないといけない。日本では難しい。最近、HIV陽性であっても、ウィルスが検出値以下だと感染させることはほぼないということが明らかになった。映画でもしきりに言っていた。日本では知られてない」
山本先生
「日本ではPrEPの処方をしている病院もあるけど、保険が効かないので、ツルバダ(抗HIV薬)1ヶ月で20万円くらい。検査も必要。映画の主人公2人はほぼ感染してないと言える。やっぱりウケの方が感染リスクが高く、タチはほぼ感染しない。相手のステイタス(陰性か陽性か)がわからなくて心配だという時には、状況によって確率も変わってくるので、勧めづらい。高いので。本人の血中ウィルス量が1500コピ以下であれば、ほぼない。とりあえず3日分処方して様子を見る」
岩橋さん
「PrEPは、予防の効果は高い。もしウィルスが体内に入ってきても予防できる。世界を席捲してる。24時間とかの体制も必要だ」
高久さん
「PrEPのために、ツルバダを個人輸入してる人もいる。感染の知識はありつつ、生をやめられない人は、当然欲しいと思う」
山本先生
「ツルバダの個人輸入だと、30錠9800円。本当は針刺し事故の医師向け。副作用として、腎機能障害や肝機能障害、骨に影響もある。中には重症になる人もいる。薬剤耐性が出てくる可能性もある。HIV検査で陰性だということや、いろいろチェックしてからじゃないと、勧められない。もしかしたら税関で止められる可能性もある」
岩橋さん
「陽性者の治療の現在についてお話を」
高久さん
「薬もよくなっている。今は1日1回でOK。副作用もほとんどない。発症する前なら大変じゃない。長期に治療することでの課題やメンタルのことは依然、ある」
山本先生
「どんどんよくなってる。けど、患者が増えて病院は激混みなので、診察時間も短くなってきている。中には『さっさと薬出しな』とおっしゃる方も(笑)。元気そうに見えても、ジャブみたいにメンタルが来ることもある」
岩橋さん
「テクノロジーの進歩で、治療の方法が増えている。感染した時のサポートや、知らない人との関係性とかは変わらず、大変。向こうは感染させちゃったかもしれないと思ったり。恋愛関係が続かなくなることもある。そこはテクノロジーには関係なく、存在する問題」
高久さん
偏見は依然、ある。お前が悪いとか、殴りたいと言われた人もいる。そこは変わらない。善悪が入ると、ステイタスを言いづらくなる」
山本先生
「映画では、抗HIV薬を2時間以内に飲んでる。現実は、72時間以内で大丈夫。ツルバダは臨床で使われなくなるので、価格が下がる。1錠タバコ1箱分になる。ただ、電話相談などリソースが足りない。予防の機会もない。アメリカの西海岸では10万人がPrEPを受けていて、今まで感染したのはたったの2人。PEPは医療界ではすでに常識。米国では2009年以来、1人も感染していない。歴史の裏打ちがある」

 山本先生が、真面目そうな方なのにちょいちょい笑わせてくれて、意外にも楽しいトークショーとなりました。PEPやPrEPが導入されるためには、夜間診療の体制作りなども求められるし、正しく服薬しないと薬剤耐性ウィルスができてしまうこともある、などの問題点が指摘されました。映画のように、間違って感染させたかもしれない、と相手に言えるようになるためには、善/悪とか加害/被害といった価値判断を脇に置いて(怒りを介在させず、冷静になって)話し合えるような状況が一般化することも必要です。将来の予防方法は変わるかもしれませんが、HIVへの偏見を取り除いていくことの重要性は変わらないと言えます。
 トークショー後、M★Naruseさんによるラウンジタイムとなり、フロアで音楽を楽しんだり、この日のオリジナルカクテルを楽しんだり(ワインベースでした。体があったまったような気がします)、エスムラルダさんやジャンジさんを囲んでお話したり、みなさん思い思いに過ごし、和やかな雰囲気となりました。

 


エイズ対策とLGBTの現在 ~ブルジンスキ氏と日本のLGBT・HIVコミュニティとの対話~

 1980年代以降グローバルなHIV/AIDSやLGBTの運動を構築してきたカナダ出身の活動家で、現在は国連合同エイズ計画(UNAIDS)で「人権・ジェンダー・予防・コミュニティの活動に関する上級アドバイザー」を務めるリチャード・ブルジンスキ氏が来日しました。
 昨年、国連で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)が本年から実施に移され、エイズについても「2030年までの終息」が目標となり、対策の在り方も大きく変化しつつあります。一方、日本では近年、一部の地方自治体や企業が同性間パートナーシップの認証や法的保護に舵を切るなど、LGBTの権利にも大きな変化が出てきています。こうした変化をどう捉え、NGOやコミュニティとしてどう取り組むのかについて、ブルジンスキ氏と対話することを趣旨として、12月1日と2日に2つのセミナーが行われました。
 1日には「国際保健とエイズ問題 ~ブルジンスキ氏と国際協力NGOとの対話~」というセミナーが、2日にはコミュニティセンターaktaで、日本のコミュニティとの交流会が行われました。今回はaktaのほうに参加し、お話を聞きました。こちらもダイジェストで内容をお伝えいたします。
 
 UNAIDSではたくさんのトピック・分野がありながら(意外にも)LGBTのことをやっている人が誰もいなかったため、ブルジンスキ氏がLGBTのことに携わるようになり、コミュニティへの関心を継続させ、LGBTのニーズを発信してきたそうです。UNAIDSとしては、世界中のLGBTコミュニティのことを考えたい、差別と偏見、スティグマ(社会的汚名、不名誉)、暴力ゆえにゲイが検査や治療にアクセスできない国もある、そういう中でどう包摂性を高めていくか、ということに取り組んできたそうです。ちなみに、ブルジンスキ氏が今回来日したのは、1997年に来日して以来の友人や同僚らと関係を再構築するためだそうです。そして、「日本ではHIV/AIDSにどう対応してきたのか」「国際的なコミュニティの中で日本はどういう役割を果たすのか」について知りたい、とのことでした。
 日本の現状、課題について、参加者のみなさんがコメントしました。山本先生(東京医科大学)は「行政が無関心である」と問題提起。高久さん(JaNP+代表)は「HIV陽性者はスティグマを負い、不可視化されている。『3つの90』※のような指標が、日本にはない」と語りました。ジャンジさん(akta)は「もっと検査を受けてもらえるよう質を高めること、若い人へのアプローチ、セクシュアリティの受容、感染後どうなるかのイメージ、外国人への対応ができていない」といった課題を挙げ、長谷川さん(元JaNP+代表)は「日本はうまくいっていると厚労省は宣伝しているが、東京や大阪だけ。地方はびっくりの高さ」とコメントしました。ブルジンスキ氏は「検査には多様なオプションがある。検査キットもそうで、クラブで配る国もあれば、ドローンで家まで届ける国もある。PrEPはいずれ、ピルのようになっていくだろう。若い人たちにとって特に必要。二丁目はLGBTの世界的メッカなので、世界中から来る人にサービスを提供できるようになるといいですね」とコメントしていました。
 その後、みなさんからブルジンスキ氏に質問が寄せられました。私のメモの取り方が下手で、あまり内容が伝わらないかもしれないのですが…。まず、高久さんは「PrEPが日本で難しいと思うのは、病院で「ウケなんですが」などと申告しづらいということもある。先進国ではどのようにして、そういう人が使えるようになったのかをお聞きしたい」と質問し、ブルジンスキ氏は「フランスは保険が適用され、それ以外の欧州ではトライアルが行われている。ケニアやイギリスは検討段階。治療のコストよりも安いからです。全体の8割がサンフランシスコで、保険が適用されている。モラル云々ではなく、必要なサービスだと認知されている」と回答。長谷川さんが「ゲイの中には性について語るのを恥ずかしがる人もいる」と言うと、ブルジンスキ氏は「都市の特性に合わせたアプローチが必要。若い人向けのアプローチ、ドラッグユーザーへのアプローチ。国連はうまく対応できていない。国だと遅い。皆さんに期待します」と回答。生島さん(ぷれいす東京)が「ブルジンスキさんはマイノリティ・イシューをどうやって訴えてきたのか?」と聞くと、「コミュニティに還元したいという気持ち。平等を願っている。尊厳を持ってもらいたい」とのお答えが、同じく生島さんが「アメリカではゲイ向け出会い系アプリとの連携も行われていると聞くが、どうやって?」と聞くと、「そういうアプリは200もある。HornetやGrindrはHIV団体とつながりを持っている」という答えが返ってきました。

※「3つの90」:一般的に、90%が検査を受けている、その90%が治療にアクセスできている、その90%がウイルス検出値以下に抑えられている、という状況になれば、新規感染が起こらないとされている
 
 といったあたりで、時間切れになってしまいました。通訳の方がボランティアで日本語に通訳してくださっていたのですが(感謝です。頭が下がります)、どうしても会話に2倍の時間がかかってしまうため、あまり十分に話し合うことができなかったかもしれません(時間の余裕があれば、聞いてみたいこともあったのですが…)。しっかりとした意思疎通ができていなかったためなのかもしれませんが、質疑応答で感じたのは、日本の方が投げた問いに対して、解決策が示されるというよりも、頑張ってね、という感じでした。おそらく、ブルジンスキ氏は、日本が先進国としてHIVについてももっと国際社会で役割を果たせるだろうというふうに見ていたのではないかと思います。 
 ともあれ、UNAIDSがどのような考えを持ち、どのような取組みをしているのか、といったお話や、今まで知らなかった様々な情報を聞くことができました。

 


Gay Menʼs Chorus for Tokyo AIDS Weeks 2016 ミニコンサート


 12月10日(土)、今年も国立国際医療研究センター(HIVの診療に訪れる方が日本一多い病院だそうです)で、ゲイ(トランス男性含む)の有志メンバーによる合唱ミニコンサートが行われました。昨年、エイズ学会のプレイベントとして開催され、好評につき、今年も開催されることになったものです。
 開演直前に着くと、会場はほぼほぼ満員。ゲイの人たちはもちろん、病院の入院患者さんなどもたくさんお見えになっていました(私が立っていたら、患者さんが、そこが空いてるから座りなさいよ、と気遣ってくれました。なんと優しい…)

 コンサートの最初の曲は、「Climb Ev’ry Mountain(「Sound Of Music」より)」。名曲中の名曲。どんな困難にも負けずに行こうと歌う、崇高にして高らかな決意の歌。この時点で、泣きそうになりました。
 中島みゆきさんの「誕生」も素晴らしかったです。号泣作ですよね。歌ってる方の中にも、泣いてる方がいました。
 札幌のときどき通信というユニットが作った「大空」という歌。今回、ときどき通信のとっちさんがわざわざ(モー娘。のコンサートが中止になったくらいの悪天候の中)札幌から駆けつけてくださり、歌ができた経緯を教えてくれました。札幌でHIV感染した友達がいて、でも彼は、パートナーに理解してもらえず、別れることになった、という話を聞いて、歌にしようと思ったんだそう。切なくも、美しい、胸に沁みる歌でした。とっちさん自らソロパートを歌ってくれました。
 朗読は今回、『BEYOND』の表紙も飾った、中村キース・ヘリング美術館に勤めるHirakuさんでした。朗読したのは、グレイス・ジョーンズの自伝。ウォーホルやヘリングらと一緒に写った写真があり、ここに写っていたゲイの友達はみんな亡くなってしまった、一人ずつ、順番に…という文章でした。HirakuさんはNYのスラム街、ブロンクスで育ち、エイズへの恐怖を抱えたまま20代も後半になって、周囲の親友の人たちが感染して、初めて身近なことに思えたんだそうです。いいお話でした。
 最後に「上を向いて歩こう」を、会場の人たちも一緒に歌いました。
 ぶっちさん(打勇太鼓で活躍する方。ソロリサイタルも開くくらいピアノの達人)のピアノ伴奏が、とても繊細で美しく、やわらかい音で、素晴らしかったです。
 
 参加されていたのは、おそらく、友人やパートナーが(あるいはご自身が)HIV陽性者だったりするだろう方たちだと思います。それぞれの思いを胸に一生懸命歌う姿には、胸を打たれました。会場で聴いていた方たちも同じだと思います。ゲイコミュニティの素晴らしさを感じずにはいられませんでした。
 関係者の方のお話によると、あまり全員で集まって練習することができず、当日朝9時からリハーサルをしていたそうです(本当におつかれさまです)。リハの段階で感極まって泣いてる方もいらしたそうです。
 ゲイの方ならどなたでも参加できると思いますので、興味がある方は来年参加してみてはいかがでしょう?
 

 

最後に


 ミニコンサートの後、友人と「昔はHIVのイベントってたくさんあったけど、今はこれ(Tokyo AIDS Weeks)くらいだよね。なんでだろうね?」という話になりました。
 確かに、以前は、四谷区民ホールで「VOICE」という500人規模のイベントが恒例になっていましたし、クラブパーティもたくさんありました(AIDSケア・プロジェクトが主催するパーティ、毎月ドラァグクイーンが大勢出演する「OXOXOX」「SEX」、「ピンクベア・カフェ」、「GUTS」など)。2004年〜2012年にはライブとリーディングを中心にした「LIVING TOGETHER LOUNGE」も定期開催されていました。しかし、今はこうしたイベントはめっきり少なくなってしまいました。
 とある関係者の方は「マンパワーが足りないんです」ということをおっしゃっていました。
 二丁目のHIV関連イベントが最も盛んだったのは1990年代末〜2000年代半ばだと記憶しています(東京のパレードやレインボー祭りが最も盛り上がっていた時期と重なります)。その頃は、aktaのコンドーム配布のボランティアにも若い方が大勢集まっていましたし(『バディ』の表紙になったりもしました)、自発的にイベントをやり始める方などもいました。「これは大切な友達やパートナーの命にも関わることなのだから、僕らで考えていこう」という気運のようなものがあったと思います。
 ゲイコミュニティ自体がパワーを失いつつあるのだ、という見方もあるかもしれませんが、本当にそうなのかな?と思います。二丁目にはどんどん若い方が入ってきていて、いろんなイベントが盛り上がりを見せています。また、世間でLGBTに対する認知が急速に進み、SNSでもLGBTのことは盛んに議論されています。対照的に、HIVのことはほとんど語られなくなっている、HIVについての関心が急速に薄れているように見えるのです。(一方で、例えばNLGR+のようなイベントの時に、検査受けようぜ、とか、やっぱSAFEじゃなきゃね、と仲間に呼びかけてくれる方もいて、ジーンときます)
 自戒をも込めて申し上げると、以前よりも治療法が進んできていて、周囲の陽性者の方も元気にやっているように見えるので、ついついHIVのことを忘れてしまう、ということもあると思います。身近に感じていないわけじゃないけど、今はもうそんなに深刻じゃないよね、という安心感(または油断)が生まれてきているのではないでしょうか。
 日本は、以前は先進国で唯一HIV感染が増えていると言われていましたが、今は右肩上がりではなく、他の国に比べると抑えられているほうです(高久さんも低流行国だとおっしゃっていました)。でも、毎年約1000名のゲイ・バイセクシュアル男性の方が新たに感染しています(うち、発症してわかる方が約250名です)。aktaでのブルジンスキ氏との話し合いで、みなさんが実にたくさんの日本の課題を挙げていました。HIV/AIDSへの偏見や恐怖心もまだ払拭されたとは言い難いものがあり、検査を受ける上での心理的障壁になっていたりします。『パリ 05:59』のようにセックスした相手に「僕は陽性者で、あなたにうつしてしまったかもしれません」と言えるくらいの状況にならないと、PEPの導入は難しいという話もありました。地方で感染する方が増えているという話もありました。
「愛の反対は無関心である」という言葉もありますが、人々がどんどん無関心になっていくと、ただでさえ少ないマンパワーがさらに減っていき…やがて誰もいなくなってしまうかもしれません(コミュニティセンターがなくなる!?もお読みください)。行政や医療機関だけでは、残念ながらゲイのことを理解した上での(ゲイの気持ちに寄り添った)取組みは期待できないので、コミュニティに根ざした予防啓発活動は必要不可欠だと思います。せめて世界エイズデーの時期だけでも、HIVのことに関心を持ち続けて、できる範囲のこと、例えば、お住まいの地域のHIV予防啓発団体の情報に目を留めたり、コミュニティセンターや検査機関に定期的に足を運んだり、ということをしていただければと思います(Webサイトは何を見ればいいんだろ?という方は、まずこちらをご覧ください)

 最後に1つ、小さいけれども新しいムーブメントについてご紹介します。
 NYに7年ほど住んで映像表現について学んでいたゲイの方がNormal Screenというプロジェクトを立ち上げ、NYで25年以上活動を続ける非営利のアート団体「Visual AIDS」の2014年の『ALTERNATE ENDINGS』という作品群(アメリカの作家7組による短編映像)の上映許可をとりつけ、日本語字幕をつけて、aktaで上映会を開催したりWeb上で公開したりという活動を行っています。
 古くはダムタイプの「s/n」がそうであり、エイズ・ポスター・プロジェクトの活動もそうでしたが(そして今回の「RED awareness」での映画上映もそうですが)、HIV/AIDSについてメッセージを伝える際に、映像やアート、パフォーマンスが人々の心を揺さぶり、大きな影響を与えることがあります(私自身「s/n」を観たことが人生の大きな転機となりました)。そういう意味で、Normal Screenの活動を応援したいと思います。

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