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特集:ゲイコミック2017

田亀源五郎さんの『弟の夫』完結巻のほか、名作中の名作『そらいろフラッター』のリメイク版単行本が発売されるなど、この夏、話題を呼んでいるゲイコミックをいろいろご紹介いたします。

特集:ゲイコミック2017

文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した田亀源五郎さんの『弟の夫』がついに完結し、改めてこの作品の素晴らしさを讃えるレビューがたくさん掲載されています。そのほかにもこの夏は、名作中の名作『そらいろフラッター』のリメイク版単行本が発売されたり、小学生のせつない初恋を描いた『ぼくのほんとうの話』が発売されたり、ゲイコミックの話題がいろいろありました。まとめてご紹介いたします。なお、ここでご紹介している作品はすべて電子書籍(Kindole版)での購入も可能ですので、書店で買えない…という方などもお買い求めいただけます。(後藤純一)

 


『弟の夫』4巻(完結巻)

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 まずは、田亀源五郎さんの『弟の夫』の単行本第4巻(完結巻)です。2014年9月、世界の田亀源五郎が『月刊アクション』で一般向けにゲイ漫画の連載を始めた!というニュースが各方面で話題になり、その内容の素晴らしさもさることながら、翌年には第19回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞し、ゲイ史に刻まれる記念碑的な作品となりました。
 弥一の双子の弟・リョージの夫だったマイクが家に来てから、弥一の娘の夏菜は突然できたカナダ人の叔父さんに大喜びして、浮かれ騒ぐ毎日でしたが、とうとうマイクがカナダに帰る日が近づいてきました…。最終巻では、夏奈が学校のお友達をマイクに紹介し、ユキちゃんは「愛し合って結婚したんだから素晴らしい」と言い、『ロミオとジュリエット』の話もしたり。しかし、学校から電話がかかってきて、夏奈が学校でマイクのことをしゃべりまくるのは教育上よくないと言われ、(以前は自身もゲイに対して偏見を持っていた)弥一が、先生に対して毅然と反論します。それから、ユキちゃんともう一人いた夏奈の友達の男の子が、何やらマイクに相談を…。みんなで館林にお墓参りに行ったのも、マイクにとって喜びでした。そして、いろんなことが走馬灯のように思い出されるなかでの、マイクとのお別れ。感動がひたひたとしみわたるような、美しいラストシーンでした。
 きっとノンケの読者の方も、弥一とともに、自身の偏見に気づき、成長していって、『弟の夫』を読み終える頃には、ゲイの味方(友達、アライ)に近づけたんじゃないかと思えます。
 マイクというクマ系ゲイのキャラクターが、愛すべき、実に素晴らしい人物として造形されていたことも、賞賛に値するでしょう(日本の漫画界ではおそらく、マイクのようなタイプのゲイはほとんど登場してこなかったと思います)
 今年のレインボーリール東京のオープニングイベントで、田亀さんは、「連載開始時には渋谷区の同性パートナーシップ条例もなかったしアメリカでも同性婚が州レベルだった、時代がどんどん進んでいって、感慨深いものがある」とおっしゃっていましたが、まさに、LGBTのことが急速に世間で進んでいった時代と同期して連載され、時代を象徴する一つのムーブメントともなった作品としても後世まで語り継がれるであろう作品でした。『弟の夫』というゲイコミックの古典的名作が誕生したことを、心から祝したい気持ちです。

『弟の夫』4巻
著:田亀源五郎/双葉社(アクションコミックス)

 


『そらいろフラッター』1巻

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 きっとご存じの方も、大ファンだという方も多いと思われるゲイコミック『そらいろフラッター』。おくらさんが自身のサイト上で2009年から2012年まで連載していたWeb漫画です。
 山形から来た素朴系・イモ系な高校2年生の能代は、転入したクラスで、周囲になじまず、一人で昼飯を食べている真田のことが気になり、「仲間はずれはいかん!」と声をかけます。しかし、真田が一人でいるのは、いじめではなく、自分から周囲と距離をとっていたのでした。どうしても真田のことが気になる能代ですが、クラスメートが「あいつ、ホモって噂じゃん」と言っているのを聞いて…
 初めは、『弟の夫』とはまた違った感じで、ノンケの人がゲイに対して抱いている偏見や嫌悪感とどう向き合い、変わっていくか(アライになっていくか)という過程みたいなところも描かれています。しかしこれは、高校を舞台にした、僕らが夢に思い描いていながらなかなか現実に起こることはない、超ロマンティックでドラマティックで苦しくもある壮大なラブストーリーへと変わっていくのです。
 能代は、胸がキュンキュンするくらい天然で、スレてなくて(奥手で)、純粋で、根っからのいいやつです。それでいて、柔道やってて、イモっぽいという、ゲイ的にものすごくラブリーなキャラです。一方、真田は、普通で、クールで、能代と違ってすでにいろいろ経験している、イマドキの高校生ゲイです。真田の元カレで26歳のヒデさんというリーマン(ガタイのいいヒゲクマ系)も登場しますし、能代に果敢にアタックする真子斗という柔道部の太めなゲイの子も登場します(そういう意味では、真田だけ普通な感じで、あとはGMPD系です。そこもまた面白いところです)
 ストーリーは詳しく書きませんが、どんどんのめり込んでいって、最終話ではもう、あふれる涙を止めることができませんでした。あの頃(遠い昔)の純粋だった自分や、報われなかったノンケへの恋を思い出したりもして。もし今、「好きってどういうことだろ?」なんて、恋する気持ちを忘れてしまってる人がいたら、ぜひこの『そらいろフラッター』を読んでほしいと思います。ゲイの恋愛を描いたコミック作品の中でも名作中の名作だと思いますし、学園モノ、青春漫画としても傑作だと思います。
 傑作であることを証明するかのように、『そらいろフラッター』はリメイクされて、月刊コミック誌『ガンガンJOKER』で連載されるようになりました。そして、このたび単行本の第1巻が発売されました。真田光がちょっと『俺物語』のスナみたいなイケメン風に描かれていたり、原作ではそれほど登場しない幼なじみの女子が主役の一人に躍り出たり、代わりに真子斗が出なくなったりなど、いろいろ変わったところはありますが、コアの部分は変わっていません。ノンケの方たちにもたくさん読んでほしいし、これが世間でヒットして、ドラマとか映画になったらいいなぁ…と思います。

『そらいろフラッター』1巻
原作:おくら/作画:橋井こま/スクウェア・エニックス(ガンガンコミックスJOKER)


『同性婚で親子になりました。』

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 こちらは、今年の春に出版されたコミックエッセイです。
 養子縁組という形で「結婚」している京太さんと八木さんのカップル。お二人の出会いから、同居、養子縁組の決意、親との話し合い、結婚式などを、ほのぼのとしたタッチで描いた作品です。
 近年のパートナーシップ証明や同性婚というカミングアウトを前提とした王道の方法とは異なる、昔からゲイカップルが「家族になりたい」という気持ちで(結婚の代わりに)利用してきた養子縁組のことが、とても具体的に、リアルにえがかれているのがこの本のメインテーマなのですが、個人的には、お二人の醸し出す空気感とか、日常生活のあれこれが、うちとよく似てる…と思いながら読んでいました(ここは京太くんがいつも座っている場所、とか)。八木さんが、もし自分が先に死んだら京太くん生きていけるのかな…って考えちゃったり、ふと泣いちゃったりするところとか、うんうん、わかる、と思いながら。お二人がイカニモじゃないところとか、オタクであるところとかも、リアルでいいなあと思いました。
 お二人は、大々的にオープンに「結婚」したわけではないけど、将来のことを考えると結婚したほうがいいよね、じゃあ事実上、結婚のように、親族になれる養子縁組という制度があるのだから、これを利用しようよ、ということになりました。養子縁組は、婚姻届のように(証人は必要ですが)書類を提出すれば割と簡単にでき、家族として法的に認められるので、いざというときにすごく安心である一方、必ず年下の人の方が養子になり、名字を変更しなければいけないという面倒さもあるし、将来同性婚が認められたときに結婚することができないかもしれないという話もある、そして、戸籍にも書かれるので、親に黙ってやるわけにはいかない、後からもめる(無効の申し立てがなされる場合もある)こともあるので、結局は親といい関係を築くことが大切、といった具体的なリアリティがよく伝わってきました。日頃からLGBTの相談に乗っている行政書士によるコラムも収録されていますので、将来、彼氏との関係を公的に証明してほしい、家族になりたいと願う方にとって参考になる一冊でもあると思います。

同性婚で親子になりました。
著:八木裕太/ぶんか社

 


『LGBTだけじゃ、ない!「性別」のハナシ』

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 『性別が、ない!』というコミックエッセイを読んだことがある方もいらっしゃることでしょう。新井祥さんは30歳まで女性として生きてきたのですが、突然、体が男性化してきて、インターセックス(性分化疾患)であることがわかり、今は男性の格好で生活しています(戸籍上の性別は女性のまま)。そんな自身の体験や、周囲にいるセクシュアルマイノリティの人たちのことをポップに描いた『性別が、ない!』は、シリーズ15巻まで続く人気を誇り、その後もスピンオフ企画本がたくさん発売されている大ヒット作(たぶん、セクシュアルマイノリティ関連では最長寿)です。
 『性別が、ない!』自体もぜひ、読んでいただきたいのですが、昨年発売された『LGBTだけじゃ、ない!「性別」のハナシ』がとても面白かったので、ここで紹介してみたいと思います。
 この本が画期的だと思ったのは、Xジェンダー、Aセクシュアル、パンセクシュアル、フレキシブルなど、なかなかフィーチャーされてこなかったセクシュアリティの人たちを視覚化し、わかりやすく伝えているところです(メディアにもほとんど登場しないので、どんな人たちなのか、イメージが湧かないですよね)。もちろんゲイやレズビアンも紹介されますが、そうしたマイノリティ内マイノリティの人たちと等価に描かれています。各セクシュアリティについて、簡単な解説と、4コマ漫画、コラムがついています。
 きっと、へええ!と思うことがたくさんある一冊です。

LGBTだけじゃ、ない!「性別」のハナシ
著:新井祥/ぶんか社

 


『ぼくのほんとうの話』

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 新井祥さんのアシスタントを務め、『性別が、ない!』シリーズにもたびたび登場してきたゲイの美少年、うさきこうさんが、自伝的作品として発売したのが『ぼくのほんとうの話』です。今年のレインボーリール東京のブースで、田亀さんの『弟の夫』といっしょに発売されていました(サイン会もあったそうです)
 小学校2年生から3年生に上がるクラス替えの日、内気な男の子・こうくんは、前の席に座っていた正人くんに一目惚れしてしまいます。でも同時に、「これってフツウかな?」「男の子が男の子を好きになるなんて聞いたことないよ」という悩みが生まれます。少々ガサツな他のクラスメートやぶりっ子な女子などとも仲良くやっていくのですが、突然現れた知らない女子に「男の子なのに変だよ」「オカマなんじゃない」と言われ、それをお母さんに言うと「オカマって言われないように男らしくしなさい」と言われたり、いろんな出来事があって、結局、好きな気持ちを伝えられないまま6年生になり…。
 もし周囲の大人がゲイに理解があって、そのままでいいんだよ、何もおかしくないんだよ、と言ってくれさえすれば、きっとこうくんはあれほど悩まずに済んだのに…と思わせます。せつない初恋のエピソードです。
 中性的なうさきこうさんのルックスも含め、世の中で話題を呼びそうな一冊です。周りのストレートの方々にオススメしてみると、喜ばれそうです。

ぼくのほんとうの話
著:うさきこう/幻冬舎コミックス

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