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レポート:九州レインボープライド2018

11月4日(日)、福岡市の冷泉公園で九州レインボープライドが開催されました。今年は過去最高の約9000名の方が参加し、にぎやかに盛り上がりました。

レポート:九州レインボープライド2018

2018年11月4日(日)、福岡市の冷泉公園で第4回を数える九州レインボープライドが開催されました。回を重ねるごとに参加者が増えているそうで、今年は約9000名の方が参加しました(うちパレードを歩かれた方は800名だそう)。天気にも恵まれ、明るく、楽しく、アットホームなフェスになっていました。レポートをお届けします。(後藤純一)

 11月4日(日)、朝9時に会場の冷泉公園に到着すると、すでに大勢の方がいて、ブースの準備をしたり、主催ののぶゑさんがご挨拶したりしていました。朝ホテルを出た時はちょっと肌寒いかな…と思ったのですが、公園に着く頃には日が照って暖かくなってきて、日中は少し暑いくらい(思わず日焼け止めを塗ったくらい)でした。 

 午前中は人出もそんなに多くありませんでしたが、午後くらいからだんだん、昨夜住吉で飲んでいたようなゲイの方々なども来られて、14時過ぎの地元のパフォーマーのみなさんが出演する頃にはかなりたくさんの方がステージ前に集まっていました。結果的には、ゲイ濃度高めだったなぁ(イケてる九州男児、多数)という印象でした。福岡だけでなく熊本の方、東京の方、韓国から来られた方などもいらっしゃいました。
  
 それでは、広場の様子、ステージの様子、パレード、といった感じでレポートしていきます。


広場の様子


 ステージ前には企業や団体のブースが4列ほど建ち並んでいて、見応えがありました(4年前の福岡レインボーパレードの時の何倍にもなっていました)。奥の方には飲食店ブースが出ていて、テーブルと椅子が並んでいました(混んでる時間帯でも必ず座れるくらい、十分たくさんありました)。喫煙ブースも2ヵ所あって、うち1ヵ所では、横にプルーム・テック(おしゃれな電子タバコ)のブースがありました。なんというか、ちょうどよくまとまっていて、かゆいところに手が届く感じがしました。
 それから、広場の横に芝生のエリアがあるのですが、そちらがキッズスペースになっていて(このイベントのキャッチコピーは「全ての子どもたちの未来のために」です)、日がなファミリーがピクニックをしていました。
 今回、印象に残った企業や団体のブースをご紹介します。










 


ステージの様子(前半)


 10時ちょっと前に司会の方たちがステージに登場し、いろいろと説明を始め、九州レインボープライドがスタートしました。

 オープニングは吹奏楽のWanQのみなさんによる演奏。福岡だけでなく、遠くは長野など、全国各地から集まったそうです。
 
 地元のダンスの人たちのパフォーマンスが続いたあと、来賓のご挨拶ということで、なんと、福岡市の高島宗一郎市長が登場し、スピーチしました(昨年はレセプションパーティに登場、福岡市公式サイトの市章をレインボーにしましたと発表し、感動を呼びました)。今年発売の『オリイジン』に掲載されたインタビューにも書かれているように、最初はあまりLGBTのことがわかっていなかったけれども、杉山文野さんとお話したり、地元のLGBTの方とお話するなかで、認識を改めるようになった、といったことを正直にお話されていました。

 11時半頃からは、ブルボンヌさんが登場し、トークショーが始まりました。Rainbow SoupやFRENSなどの福岡の団体の方たちと、LGBTの課題などについて話し合われました。
 続いて12時20分から、こどもジャンケン大会がスタート。今回のレインボースポンサー(ゴールドの上。超特別なスポンサーということでしょう)である博多マルイの方が登場し、ミライトワ&ソメイティのぬいぐるみなどのプレゼントを用意、集まった子どもたち(20~30名はいたと思います)とジャンケンをして、勝った子にプレゼントするという企画です。普通の人が司会をすると、教育テレビ的な雰囲気になりがちだと思うのですが、ブルボンヌさんのMCが(客いじりをやらせたら日本一じゃないでしょうか。天才的ですよね)本当に、絶妙に面白くて、ゲラゲラ笑ってしまいました。ご自身もおっしゃってましたが、(近くで見ると結構スゴいメイクだったりする)ドラァグクイーンが子どもたちの相手をしてるというのも、なんかいいですよね。英才教育!と思いました。

 
 12時50分からは、お待ちかね、あばずれクローバーZ(略してあばクロ)のみなさんのパフォーマンスが繰り広げられました。「ももクロを中心としたアイドルの振りコピを行う平均体重90キロ超えの5人による(週末ヒロインならぬ)終末ヒマンジ」とパンフレットに書いてありましたが、あばクロさんの魅力は、巨体を揺らし、汗をかき、時には(褌とか)セクシーな衣装で踊ったりもする、そのパフォーマンスが、一点の曇りもない笑顔で、心から楽しそうに行われているところにあります。個人的には「福岡の宝」だと思っています。もっと全国区で活躍されることを期待します。

 13時25分には、福岡初!キラキラ系メンズアイドルユニット「Star☆Prince」が登場しました。たぶん地元では有名な方たちなのでしょう、ファンの女性の方たちが駆けつけ、熱心に応援していました。

 


パレード


 13時半頃から、芝生エリアで整列が始まっていました。公園の横に、フロート(車)が数台、待機していました。
 14時頃には、フロートから音楽が流れはじめ、パレードがスタートしました。先頭のフロート(隊列)が、Welcome九州 「120%の自己表現!」、2番目がFree style 「LGBTを応援しよう!」、3番目がHappy teens「若者はここで楽しもう!」、4番目がEveryone together「みんな一緒!」(出発地点にはいなかったのですが、足の不自由な方など長距離歩けない方のために、オープントップバスが用意されていました。素晴らしい配慮ですね)、そして最後がEveryone’s step(撮影禁止フロート)「気軽にパレードへ参加しよう!」でした。













 
 参加者のみなさんは、冷泉公園を出発して妙見通り(大きな通り)に出て、天神南で右折し、福岡市役所前を通り、アクロス福岡のところをまた右折し、地下鉄空港線が走っている通りを歩き、中洲川端駅のところでまた右折し、アーケードの商店街を歩いて冷泉公園に戻るという約3キロのコースを歩いた模様です。沿道の方も手を振ってくれたり、フレンドリーな雰囲気だったそうです。
 公園に戻ると「おかえりなさい」のハイタッチでお出迎えされていました。みなさんの笑顔が印象的でした。楽しく歩けた方、多かったようです。


 


ステージの様子(後半)


 さて、多くのプライドイベントでは、パレードを歩いてる最中は、ステージイベントは控えめ(例えば関西レインボーパレードでは、松原高校吹奏楽部の演奏が恒例になっています)なのですが、福岡の場合、H-Pag!、バイステップ、虹組ファイツという、どう考えてもメインキャストでしょ?な方々がこの時間帯に出演されていたので、悩んだ末に、パレードは出発地点で見送って、ステージに戻ってパフォーマンスを鑑賞させていただきました。
 まず、H-Pag!のみなさんは、福岡にちなんでアンジュルムの「糸島Distance」をお届けしたあと、数曲を披露。今回もハイクオリティなパフォーマンスで楽しませてくれました。持ち時間が10分しかなく、あっという間に終わってしまったのがとても残念でした。
 バイステップのみなさんは、フェアリーズ「恋のロードショー」、℃-ute「アダムとイブのジレンマ」、欅坂46「サイレントマジョリティー」という鉄板といいますかツボを押さえた選曲で、余裕すら感じさせるのびやかなダンスで、オーディエンスを魅了していました(会場から盛んに声援が贈られていました)
 そして、九州だけでなく各地区から集まってくださった虹組ファイツのみなさんは、九州虹組の持ち歌「夏のオペラグラス」をはじめ、定番の歌を何曲もパフォーマンスしてくれました。
(虹組ファイツさんの途中で、パレードの一行が帰着したとアナウンスが入り、お出迎え地点に移動しました)


 
 14時50分、ドラァグクイーンのフェアリーさんが登場しました。飄々とした雰囲気で、そのショーはジワジワくる面白さが魅力ですが、今回はなんと、地声全開でロックンロールな歌を激しく熱唱するという、しかも3曲くらい歌い、アンコールまでもらうという、予想だにしない展開で、盛り上げてくれました。
 15時15分、KAB.さんが登場しました。2000年代前半、メジャーで活躍しつつ、FtMトランスジェンダーであることも公にした方です(当時そういう方ってほとんどいらっしゃらなかったので、KAB.さんをリスペクトする方は多かったと思います)。ご本人は、なんと美しい!と感嘆するような、歌声も美しいし、佇まいも美しい方でした。聴き惚れました。
 続いて下地正晃さんが登場。今回も丈が短めなハーフパンツで自慢のおみ足をしっかり見せつつ、熱い歌で会場のみなさんのハートをわしづかみにしていらっしゃいました。
 そして清貴さんです。「WE ARE ONE」ではコーラス隊の方なども登場して、ポジティブな気持ちがグイグイ伝わってきて、とてもいいライブでした。
 福岡出身のバンド、theSoulのみなさんがトリを飾ってくれました。さすがは元プロという貫禄の演奏で、楽曲も素敵ですし、本当によかったです。最後に、実行委員の方などもステージに上がり、九州レインボープライドのテーマ曲「Song For You」をフリ付きで一緒に歌い、エンディングとなりました。




 
 札幌や名古屋、大阪のようにバルーンリリースでフィナーレを迎えるということは特になく、代表ののぶゑさんの「年々、参加者の方が増えてくださって、本当にうれしいです!」という元気な挨拶で終わりました。九州らしく、カラッとしたイベントでした。

 


関連のいろいろ


 プライド前日の土曜日には福岡レインボー映画祭が開催され、その前夜にはプライドのレセプションパーティが開催されましたが、そのほかにも、長崎でも映画祭があったり、熊本でもいろんなイベントがあったり、「九州プライドウィーク」ということになっていました。
 
 これはスゴい!と思ったのは、博多駅前のマルイです。(もうすぐイルミネーションや大きなクリスマスツリーが点灯しますが)福岡の中でも華やかなスポットの一つである博多駅前の広場を行き交う大勢の人たちの目に入る大型ビジョン(電光掲示板)で、かなり長い時間、九州レインボープライドのCMを流してくださっていました(知らずに通ったら流れていたのでビックリした次第です)。館内もあちこちにレインボーフラッグが見られました。博多マルイ公式サイトのレインボー画像を提示するとお店で優待が受けられたりもする「レインボーウィークス」というキャンペーンを展開していたそうです。
 
 そして福岡市です。当日はブースも出していましたし、市長さんも来てくれましたし、それだけでなく、今年もプライドウィークに合わせて公式サイトの市章をレインボーカラーに変えるという粋な計らいで、プライド参加者へのエールを送ってくれたのでした。 
 

 


九州レインボープライドと福岡の街

 
 福岡では2014年に「福岡レインボーパレード」が開催され、それは福岡大学の学生の方たちが主催していたのですが、卒業してしまった学生さんに代わってパレードを引き継いだのが、あなたののぶゑさんという方で、翌年からは「九州レインボープライド」として生まれ変わりました。のぶゑさんはもともとTVタレントもしてたような、地元ではちょっと有名な方です。九州レインボープライドは、そんなのぶゑさんの人柄がよく表れている、カラッと明るく元気で、メジャー感を感じさせるイベントになっていました。 
 フェアリーさんのようなクイーンの方、あばクロさんやバイステップさんのような福岡で活躍するダンスユニット、あるいは吹奏楽団なども出ていたので、住吉で飲んでるような方たちが結構たくさん来てましたし(前日にゲイバーに行っていたのですが、お店で見かけた方もちらほら)、単純にイケてる九州男児がいっぱいいて景色がいいなぁと感じました。
 のぶゑさんだけでなく、実行委員として動いている方も、ボランティアスタッフの方も大勢いらして、生き生きと動いていらした印象です(こちらの動画、実行委員のみなさんがダンスしてますが、とても楽しそうです)。本当におつかれさまでした。
 
 福岡は、街自体もいい具合に都会的で、でもギュッとコンパクトにできていて(空港の近さが驚異的)、住みやすそうだなぁと思いますし、ゲイシーンも発展していて、合計50軒くらいのゲイバーがあります(数で言うと、東京、大阪に次ぐ規模)。パレードの前日に2軒ほど飲みに連れて行ってもらったのですが、楽しかったです。地元の方は「沖縄と同様、家でゆっくりしてから飲みに出るので24時頃から混みはじめるんですよ」とおっしゃっていましたが、21時過ぎに行っても混んでました(パレード効果?)
 クラブパーティはそんなに多くないかもしれませんが、シーンを盛り上げるようなこと(DQ、GOGOのほか、ダンスユニットとか、音楽やってる方など)が盛んで、ライブハウス的なお店もあったりします。「haco」というコミュニティセンターもあります。

 個人的に、東北出身ということもあって、九州にはあまり縁がなく、県民性みたいなところからして随分違うなぁと感じていたのですが、今回、福岡の良さがやっとわかった気がしました。 
 
 
★九州レインボープライドのフォトアルバムはこちら

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