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レポート:DIAMONDS ARE FOREVER TOKYO

2018年12月11日(火)にAiSOTOPE LOUNGEで開催された「DIAMONDS ARE FOREVER TOKYO」。悪天候にもかかわらず300名近い方で盛り上がり、奇跡的にして伝説的な一夜となりました。レポートをお届けします。

レポート:DIAMONDS ARE FOREVER TOKYO

2018年12月11日(火)、関西からたくさんのクイーンの方々が来られて、AiSOTOPE LOUNGEで「DIAMONDS ARE FOREVER TOKYO」が開催されました。雪かと言われるほどの悪天候のなか、300名近いお客さんが集まり、奇跡的にして伝説的な一夜となりました。今回のレポートは、ちょっと思い入れが強すぎて、とても冷静に客観的には書けないのですが…何卒ご了承ください。
(文:後藤純一、写真:キム・ミンス)
 

 1990年代にドラァグクイーンを始めたり、ドラァグクイーンのファンだった方ならおそらくみなさん、持っていたり、観たことがあったり、少なくともその存在は知っているであろう、日本初のドラァグクイーン・ムービー『ダイヤモンド・アワー』(1994)。今は亡きミス・グローリアス(古橋悌二)さんを主人公に、シモーヌ深雪さんら関西のドラァグクイーンの方々や京都のコミュニティの方々がたくさん出演し、次々にいろんなショーが繰り広げられ、めくるめく華やかさで観る者を眩惑する(ストーリーは破壊的で、随所に毒が散りばめられている)、ほぼ同時期にアメリカで制作された『ヴェガス・イン・スペース』にも似たチープ・ゴージャス感が中毒性を帯びている、それはそれは素晴らしい、伝説的な作品でした。
 そんな『ダイヤモンド・アワー』誕生から24年の時を経て、そこに出演していたシモーヌ深雪さん、ブブ・ド・ラ・マドレーヌさん、マミー・ムー・シャングリラさん、ウラジミール・パウダリーナさんという伝説のクイーンさんたちが二丁目に集結するという、夢のようなパーティ「DIAMONDS ARE FOREVER TOKYO」が、AiSOTOPE LOUNGEで開催されました。
 
 ここで『ダイヤモンド・アワー』への個人的な思いを長々と吐露することをご容赦ください。
 芝居や映画を観ることだけを生き甲斐にしていた入社3年目のクローゼットなリーマンだった私は、ゲイの世界との関わりはハッテン場(上野の傑作劇場とか、二丁目の○YGSビルとか)と、雑誌の通信欄で知り合った友達とたまに二丁目のゲイバー(「ずんどこべろんちょ」とか)に行ってカラオケで歌ったりするくらいだったのですが、何かの形で自己表現したいという思いを抱えていて、ゲイのバンドに打診してみたり、ミニコミを作ろうと呼びかけてみたり、試行錯誤していたのですが、1996年2月に東京芸術劇場小ホールで上演されたダムタイプの「S/N」という作品を観て、雷に打たれたような衝撃を受け、関連のトークショーにも行き、そして打ち上げである恵比寿「みるく」でのクラブパーティにも行き、そこで初めてシモーヌさんやブブさん、OKガールズのみなさんのショーに触れて、「自分がずっとやりたかったのはこういうことだったんだ!」と私の魂が叫ぶのを感じ、ドラァグクイーンになることを決意しました。3月にはドラァグをやり始め、それまで溜め込んでいたものを一気に爆発させるようにゲイとして花開き、親にカミングアウトもして、ゲイライターになり、人生が180度変わってしまったのでした。
 『さらば、わが愛/覇王別姫』という映画の冒頭で、京劇の学校のあまりの厳しさに思わず外に飛び出した主人公の小豆子が、街の雑踏の中で京劇を演じている人の姿を観て、ハラハラと涙を流すシーンがあるのですが、初めてシモーヌさんたちのショーを観た時の私は、そんな感じでした。芸というもの、自由な表現というものの圧倒的な素晴らしさに胸を打たれたのです。私にとってドラァグとは、宝塚のようなキレイでゴージャスなレビューというよりも、たとえチープでも、どこか猥雑でアングラで、パロディだったり笑えたりもするような、自由で「変」なパフォーマンスのことでした。いかに「普通」から遠ざかるかということ、「変」を追求することこそがドラァグの真髄であり「クィア」ということだと、ずっと思っていました。
 ドラァグをやり始めてすぐ、新宿か渋谷のタワーレコードで『ダイヤモンド・アワー』のビデオ(VHS)をゲットし、それこそ擦り切れるまで、穴が開くほど繰り返し観て、そこで演じられるショーの数々に魅了されました。仕事でつらいことがあった夜などは、『ダイヤモンド・アワー』のショーを観て癒されたり(泣いたり)していました。たくさん登場する素晴らしいクイーンの方々のなかでも、私が特に目を奪われたのは、マミー・ムー・シャングリラさん(OKガールズのメンバーの1人、「S/N」にも出演していた方)でした。大きく見開いた目(瞬きを一切しない)、神と交信しているようにも呪いをかけているようにも見える不思議な踊り、どこまで本気でどこまで冗談か全くわからない態度、狂気じみた神々しさ、他を寄せ付けない強烈なオーラで異彩を放っていました。(こう言うと迷惑かもしれませんが)マミー様を勝手に師匠と崇め、近づこうと努力していました…その創造力(破壊力)のスゴさには全く敵いませんでしたが…
 
 そんな私にとって「DIAMONDS ARE FOREVER TOKYO」開催の知らせは、ちょっと正気ではいられない、あの頃の思い出が否応なしに甦るような、特別な思い入れのあるイベントでした。
 ここから(やっと)イベント当日のレポートをお届けします。
 その日は、東京にも雪が降るかもしれないと言われるほどの凍えるような寒さで、しかも夕方から雨が降ってくるという、誰もが「早くおうちに帰りたい…」と思ってしまうような悪天候で、集客が危ぶまれていたのですが、蓋を開けてみれば280名超の方が駆けつけるという、平日とは思えないくらいの大盛況ぶりとなりました(奇跡!)
 
 20時頃、オナンさんとおりぃぶぅさんのMCでショータイムが幕を開けました。「楽屋での衣装の量がハンパなくて、夜逃げかと思いました」とオナンさん。いつものように明るく盛り上げてくれました。
 第一部は『ダイヤモンド・アワー』を上映しつつ、その中で繰り広げられるショーの数々を、当時の出演者と、現在「ダイアモンズ・アー・フォーエバー」に出演中のクイーンの方たちが映像に合わせてパフォーマンスする「飛び出すダイヤモンド・アワー(3D)」という企画です。『ダイヤモンド・アワー』自体、観るのはひさしぶりでしたが、(特異な染色体が発見された!と言って顕微鏡で拡大すると「SHIT」という文字が見えたり)随所にいろんな毒が散りばめられていて、アンダーグラウンドでキャンプでヒールで素敵でした。
 そんな『ダイヤモンド・アワー』を大勢で一緒に観るだけでも楽しいことですが(笑いが起きたりします)、シモーヌさんやブブさん、マミーさんが映像と同じショーをやってくれるという奇跡に、ちょっと言葉にならないくらいの感動を覚えました。
 そして『ダイヤモンド・アワー』のフィナーレ、全員が真っ白な衣装で登場し、次々にショーを繰り広げるシーンも再現され、えも言われぬ美しさであると同時に、ミス・グローリアスさんのパートだけは誰もそのショーをやらず、ただ映像だけを見せていて、天国的な美しさと「喪」が一体になっているという、追悼という言葉だけでは言い表せないような、複雑で深いものがあるように感じました。
 ショータイム中もあとからあとからお客さんが入ってきて、メインフロアは超満員になっていました。

 ダンスタイムの一発目は『ダンシング・クイーン』で、ステージ上に大勢のクイーンさんが並ぶ様にうっとりしながら、フロアのお客さんも大盛り上がり。キラキラでてんやわんやで笑顔はじけるパーティタイムでした。
 DJは、「DIAMONDS ARE FOREVER」のレギュラーDJであり山中透名義でダムタイプなどの音楽を担当したDJ LaLaさん(実は『ダイヤモンド・アワー』にもノンナ・ペトロワとして出演しています)と、ピチカート・ファイヴの小西康陽さんをレギュラーゲストに迎える渋谷系ラウンジパーティを主催しているDJ korさんが務めました。
 
 エンジェル・ジャスコさんとおりぃぶぅさんのMCで幕を開けた第二部は、ドラァグ・スタイルのレビューショーを、パフォーマー総出演でめくるめく華やかさでお届けする「Show The Revue on Revue」です。シモーヌさんがものすごく軽快にダンスを踊っているのも、フランソワさんが丸いハンガーを頭に乗せててそこにパンティやブラが干してあったのも素晴らしかったですし、「DIAMONDS ARE FOREVER」レギュラー陣のショコラ・ド・ショコラさんやそよ風さん、アフリーダオーブラートさんたちのショーも、曲が大好きな『ヘアスプレー』だったり『ピープル』だったりして、よかったです(東京のクイーンさんの感想は、長くなるので、割愛させていただきます)
 最後にブブさんが、ゴミ袋(ちゃんと「京都」の文字が見えました)で作った衣装を着てヴァネッサ・ウィリアムズの「Save the Best for Last」をやっていたのは、ちょっと泣けました(ちなみにブブ・ド・ラ・マドレーヌさんは、「S/N」のラストで『アマポーラ』に乗せて女性器から万国旗を次々に出していくという素晴らしいパフォーマンスを見せた方で、私が初めてショーを観た時は、ベビードールを着てエロティックにミルクを飲むというショーをやっていました。京都のメトロ紅白では、よくサブちゃんをやっていました。素敵な方です)
 
 第二部が終わった時点で23時半近くなってましたが、最後までフロアにお客さんがたくさん残っていて(なかには終電を逃した人も…)、ずっとみなさん笑顔で踊ってました。それくらい楽しくて仕方のない、スペシャルなパーティだったのです。定番のオネハである『EVER LASTING LOVE』がかかったとき、普通だったらサビを合唱して手を挙げたりしてワーって盛り上がるのですが、ステージ上にマミー様が降臨してものすごく独特な動きで激しく踊りはじめたため、目が離せなくなり、これも「DIAMONDS ARE FOREVER」の醍醐味だなぁ〜と拝むようにして見ておりました。かと思うと、ウラジミール・パウダリーナさんが8本くらい眉毛を描いた過剰なメイクで、異様にかさばる衣装を着てステージ横に座ってタバコをふかしてたり。東京のパーティでは観ることのできないような光景が、自由でカオスで反逆的で神々しい空気感が素晴らしかったです。
 
 こうして、奇跡的にして伝説の、夢のような一夜は、大盛り上がりのうちに幕を閉じました。
 心躍り、笑顔こぼれ、うっかりすると涙があふれてきたりするようなパーティでした。
 生きててよかった…と思いました。



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