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レポート:東京レインボープライド2019(2)パレード

4月28日(日)・29日(月祝)の2日間、代々木公園イベント広場で東京レインボープライド2019「プライドフェスティバル」が過去最高の規模で開催されました。ストーンウォール50周年、日本でのパレード25周年という節目にあたり、特別に盛大なイベントとなりました。第2弾はパレードのレポートです。

レポート:東京レインボープライド2019(2)パレード

 TRPのレポート第2弾は、パレードです。
 25年前に初めて東京でパレードが開催されたとき、パレードを歩いたのはたった50名くらいだったそうですが(その勇気に拍手を贈ります)、それが1000人になり、3000人になり…そして今年、初めて、渋谷~原宿の街を行進したLGBTQ+ALLYの人たちの数が、1万人の大台を超えました。感慨深いです。
 今回は、そんなパレードのレポートをお届けします。
(文・後藤純一、写真:キム・ミンス)
 


本当にハッピーで楽しかった! 1万人超えのパレード


 今年は残念ながらパレードの全体像を見ることができず、パレードが初めて1万人を超えたというお知らせと、全フロートを収めた映像でしか知らないのですが、個人的には(フロートに乗ったこともあり)今年のTRPは「最高!」でしたし、「ハッピープライド!」を心から言うことができました。本当に楽しかったです。


 
 今回は50ものフロートが出ると聞いていて(最終的には40くらいだったそうです)、僕が乗ることになったのは24番目の「LGBT+ALLY」フロート※でしたので、先頭が14時スタートで、24番目だと15時頃かな?と思っていました。いちおう14時半にはフロート参加者のみなさんと一緒に移動し、NHK横のケヤキ並木の隊列のところまで行きました(人が多すぎて、どこからどう並んでいるのかよくわからず…そこに先頭の方たちが帰ってきたりして、なかなかのカオスでした)。その後、出発地点で待機しているフロートのところまで行って、前後のフロートにご挨拶したり、Living Togetherフロートのレイチェルさん&ジャンジさんと写真を撮ったり、今のうちにと思ってトイレに行ったりして、16時前にトラックに乗り、それでもなかなか動き出さず、日が陰ってきてちょっと寒くなってきて、なんだか寂しい気持ちに…
 
※LGBT+ALLYプロジェクト:OUT JAPANという(観光関連産業を中心に)企業向けにLGBTコンサルティングをやっている会社で行ってきたプロジェクトで、年に数回、社内LGBT施策についての情報交換会を行ったり、こうしてパレードを一緒に歩いたりします。たぶんアライ企業のネットワークとしては日本最大級です。ちなみにOUT JAPANは、企業や、海外のLGBTとつながり、二丁目の活性化に貢献するということを意識的にやっているほぼ唯一の会社です。昨年は企業向けイベントでレインボー祭りの意義についてお話し、企業協賛を実現しました。今年は、香港からのゲイクルーズのお客さん数百名にぜひ二丁目のゲイバーを楽しんでいただきたいということで、二丁目振興会とコラボし、お店の皆さんに英会話教室を無償で提供しつつ、海外のゲイ客に「二丁目ゲイバーパス」を販売するという企画も実施しました。


 
 16時半頃、ようやくトラックが発進し、参加者のみなさんが笑顔で歩きはじめたのと同時にスイッチが入り、拳を振り上げたり(フレディ・マーキュリーの格好だったので、それっぽく)、沿道の方たちにも手を振ったり、DJさんの音楽に合わせて踊ったりしました。歩いてる方たちの隊列がはるか遠くまで連なって見えました。
 沿道には本当にたくさんの方たちがいて、レインボーフラッグを身に着けてたり、カメラを持って待ち構えていたりするので、おそらくLGBT&フレンズだと思うのですが、本当にたくさんの方たちが一緒にイェイイェイ盛り上がったり、手を振ったり、写真を撮ったり、ハイタッチしたり。会社としてレインボーのパネルを作って沿道で応援してくれたり(福助とか)、カフェの店員さんがみんなで手を振ってくれたり、という場面もありました。丸井の前と、神宮前交差点(ラフォーレ前)は、たまたまそこにいて信号待ちしてる方たちが多く、怪訝そうな方もいらっしゃいましたが、あとはずっと、みなさん笑顔でした(外国人の方や、ファミリーもいました)。代々木公園の方まで戻ってくると、DJさんが「U.S.A.」をかけたので、つい「いいねダンス」をやってしまったり(フレディの格好で)、公園に帰って行く参加者のみなさんに手を振って見送ったり、最後まで楽しくパフォーマンスできました。


 
 以前は一参加者として歩いていたものの、TRPになってからは「ちゃんと取材しなきゃ」という、とにかく定点観測でフロートを先頭から最後尾まで見届けるという「お仕事」の気持ちが強くなっていました。しかし今年、フロートに乗ってパレードに参加するという貴重な体験を十二分に満喫しましたし、ひさしぶりにパレードのコースを行進して、沿道の方たちが笑顔でハイタッチしてきたり、ハッピーなリアクションなども見聞きできて、本当によかったです。「パレードってこんなに楽しいのか!」という原点に立ち返った感じです。



 パレードの全フロートの様子を収めた映像を見た限りだと、今年も半分くらいは企業系フロートですが(企業系フロートの中にも、その会社で働くLGBTの方が歩いてたりするので、全員ノンケさんというわけではありません)、がちむち野郎系な方がたくさん歩く「EAGLE TOKYO」のフロートも加わりましたし(昔はこういうフロートがメインの一つでしたよね)、GOGO BOYのようないでたちの方がたくさん歩くフロート(台北の「水男孩(ウォーターボーイズ)」や、シドニー・マルディグラのライフセーバーフロートを彷彿させます。海外ではスタンダードですよね)も登場し、蒼武蔵さん&Ryuji Suzukiさんのようなマッチョなセックスワーカーの方が乗ったフロート(松沢呉一さんがレポートしてますが、熱狂的な人気だったそうです。そして、乗ってたお二人は、感激で泣いていたそうです)、9monstersとAiSOTOPE LOUNGEの合同フロートなど、ゲイゲイしい感じのフロートも増えて、二丁目とのつながりや、パレードらしさがようやく戻ってきた感じがして、よかった、本当に素晴らしかったと思います。


 TwitterやインスタなどのSNS上には、パレード楽しかった、ハッピーだったという声がたくさんの素敵な写真とともにアップされていて、これが、今回のパレードの素晴らしさを何よりも雄弁に物語っていると思います。
 めでたしめでたし、ということで終わってもよかったのですが、(悩んだのですが)そうはいかないだろうと、これは見過ごしてはいけないだろうという話が今回、ありましたので、次に続きます…
 

 

GOGOフロートと、応援してくれたみなさんへの握手

 今回、パレードが終わったあと、レインボーカラーのハーネス+パンツというお揃いの格好のGOGO BOYの方たち(別に局部や陰毛、お尻も見えていませんし、警察にも止められていないですし、カッコいい印象のほうが強いスタイルだったと思います)がたくさん歩いたフロートに対して、そこだけを切り取って(実際にパレードを見たというより、Twitterに上がった画像を見て、という方が多いのではないかと思いますが)「セクシュアルマイノリティの権利を訴えるのに裸である必要がない」「そんな格好で出歩いたりしたら逆効果」「ゲイがこんな人たちだと思われたら嫌だ」などといった批判の声が上がり、反対署名までありました。
 「ゲイがこんな人たちだと思われたら困る」論は、昔からドラァグクイーンに対しても言われてきて(97年の札幌パレードで初めてそんな声を聞いたときは、ショックを覚えました…)、ドラァグクイーンがテレビで活躍して市民権が得られる時代になったら今度はGOGOか…と、悲しい気持ちになりましたが、実際にパレードを見た方なら、10,915人の参加者のうちドラァグクイーンやGOGO BOYが全部合わせても100人にも満たないマイノリティで、「ゲイがこんな人たちだと思われる」可能性は無いな、と実感していただけるのにな…と思います。
 一方で、反射的に「マズくない?」と感じてしまう、世間の人たち(特に中高年男性)がパンツ一丁の男たちが集団で歩く様を見て嫌悪感を催すことを心配してしまうその感覚も、わかります。今まで、学校で、職場で、親戚の集まりで、地域社会で、メディアで、ありとあらゆるところでそのような男性のセクシャルな姿に対する嫌悪感(ホモフォビア)をシャワーのように浴びながら育ってきたら、ある種の自己防衛反応として、そう感じてしまうだろうな、と…。
 でも、だからといって、パレードというセクシュアルマイノリティの祭典、性の多様性を祝う場で、大事なゲイカルチャーの一部である(海外のパレードでは主役を張っている)GOGO的なものを抑圧してまで、差別する側(ホモフォーブ)にこびへつらう必要があるのでしょうか。世の中にはいたるところ女性の裸が氾濫し、女性の裸=欲望の対象、男性の裸=笑いの対象という空気(異性愛規範)が支配しているわけですが、そんな男尊女卑的な現状(ノンケ男たちの欲望の具現化)に迎合するのは、いったい何のためなのでしょうか…。
 マイノリティ(弱者)の側がお行儀よく、できるだけマジョリティ(強者)側に気に入ってもらえるような格好や態度や言葉遣いを心がけ、なんとか受け入れられるように顔色を窺い、媚びへつらうということをしなければ差別が解消されないとしたら、それ自体、とても苦しい、深刻な状況ですが、もうそこまで卑屈にならなくても大丈夫な時代になってるよ?と申し上げたいと思います。
 ドラマ『Empire 成功の代償』で成功を収めたアフリカ系アメリカ人でオープンリー・ゲイのリー・ダニエルズ監督が『大統領の執事の涙』という映画を撮っています。奴隷の子どもとして、白人の主人に目の前で父親を殺された経験をもつセシルが、運よく執事という職を得て、決して白人に逆らわないことを信条として生き延び、ささやかな幸せをつかみますが、息子のルイスが公民権運動に参加するようになり、白人様に逆らうなんてどういう了見だ!と父は怒り、親子の確執が深まっていく…という切ない物語です。時代の流れとともに、頑固だった父も「黒人も権利を主張していいんだ」と考えを変えるようになり、親子が和解し、感動のラストシーン(ご想像いただけると思います)へとつながります。
 セクシュアルマイノリティの話も同じだと思います。
 最近、同性愛者が死刑にされないから日本は寛容だ(「生かしてるだけありがたく思え」とでも言いたいのでしょうか)とか、杉田議員もビックリな「これ以上権利を主張するな」論を見聞きするようになってきていますが、それは「奴隷が白人様に逆らうな」論と同じです。「そんなことをしたら世間になんと思われるか…」「お上に逆らったらどんな目に遭うか…」と忖度し、萎縮して、得られる権利など、これまであったでしょうか。歴史的に見ても、ストーンウォールから始まって、ハーヴェイ・ミルクも、ACT UPも、波風立てて、派手に抗議やボイコットやデモを展開して、初めて、逮捕・投獄されなくなり、会社をクビにならずにすむようになり、HIV陽性者の命が助かるようになったのです(それこそがパレードの意義です)
 差別者へのこびへつらい(同化、とも言います)は、必然的に、マジョリティに気に入られる優等生的なマイノリティと、そういう枠に入れない落ちこぼれという選別にもつながります。とてもとても悲しいことです。
 自分さえ「あっち側」に入れればいいや、ではなく、差別的な状況のほうを変えなければ、という勇気ある決断をして、いろんな犠牲を払って先人たちがパレードを開催し、参加者も最初はこわごわだったけど、だんだん歩く人も増えて、世間にアピールし、世の中をちょっとずつ変えてきたのであって、そういう人たちのおかげで、愛する人とずっと一緒に暮らすことが夢物語ではなくなり、周りにカミングアウトしても大丈夫になったり、Twitterで顔出しでゲイですと言っていろいろ書いたりできる時代(なんといい時代でしょう)になってるんだと思います。
 そのときに、物々しいデモ行進をやるのはゲイらしくない、もっと平和的に、キャンプに、これがゲイテイストだよ、とアピールしながら、見てるほうも楽しくなるようなパレードにしよう!といって、世界中で、クラブミュージックとともにドラァグクィーンやGOGO BOYがダンスする派手なDJフロートがメインを張るようなパレードが行われるようになって、日本でも99年に札幌で初めてそういうDJフロートが登場して以来ずっと、ドラァグクィーンやGOGO BOYがパレードの主役になってきたはずです。
 もう大丈夫な時代だと思いますよ? 堂々と「This is GAY!」と言ってGOGOさんがたくさん歩いても。クィアフロートのマッチョさんも沿道の方たちからキャーキャー言われてたし、女性に限らず、おっさんたちだって、若一さんみたく毅然と擁護してくれる方もいるわけだし。
 少し話がずれるかもしれませんが、僕はずっと、日本ではいわゆるLGBTの権利擁護や支援…同性パートナーのこととか、職場でのトランスジェンダーへの配慮とかそういうことは進むだろうけど、世間にゲイのセクシャルな部分(ハッテンの文化とか)を受け入れてもらうためにはどうしたらよいのだろうか…ということをわりと真剣に考えてきました。「性解放なくしてゲイ解放なし」で、本当はそういうこともセットで運動していかないといけない(エイズ禍の時代のクィア・ムーブメントのように)、めっちゃ重要な課題なのに、と思いながら(HIVの問題を考えた時、それがいかに重要かということに思い当たるはずです)。でも近年のLGBTの運動はそういう部分を後回しにしてきた(性的なものにフタをしたり、ゲイのセクシャルな部分がむしろ足を引っ張ると考えているのでは?と心配にさせる)部分があったように感じ、なんとか自分のできる範囲で、HIVの話にからめて啓発したり(僕なりのクィア・ムーブメント)してきました。一方で、周りの身近な友人から「同性婚が認められたらハッテン場やエロイベントがなくなるんでしょ?」という話を真顔でされるような現実もあり、複雑な思いでした…(この件については、改めて掘り下げたいと思いますが、今言えるのは、海外では同性婚が認められてエロが規制されたケースはありませんし、むしろそういう国のほうが全裸プールパーティだのポルノスターの生FUCKショーだの超エロいイベントが盛り上がっています。自由を求めてきたからこそです)。なので、今回、Twitter上で本当にたくさんの方たちが、GOGOフロート(に象徴されるようなゲイ的なセクシャルな表現)を毅然と擁護し、味方してくれたのは、うれしかったですし、心強く感じました。これこそが今年のパレードのいちばんの収穫かもしれない、と感じました。ありがとうございます。


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