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レディ・ガガ『Judas(ジューダス)』のPVのスゴさ

レディ・ガガが『Judas(ジューダス)』のPVを発表しました。一見して「ガガが暴走族のヘッドの女に!」という印象ですが、よくよく見てみると、これはものすごいタブーに挑戦する、革命的な物語でした。ゲイだけでなく、圧政に苦しむ世界中の人々にとって、この映像は大きな意味を持つものです。

レディ・ガガ『Judas(ジューダス)』のPVのスゴさ

レディ・ガガが『Judas(ジューダス)』のPVを発表しました。一見して「ガガが暴走族のヘッドの女になった!」という印象ですが、よくよく見てみると、これはものすごいタブーに挑戦する、革命的な物語でした。ゲイはもちろん、圧政に苦しむ世界中の人たちにとって、この映像は本当に大きな意味を持つものです。歴史的な作品と言えます。歌詞の内容とともに、このPVの意味するところをお伝えしてみたいと思います。(後藤純一)

『Judas』の歌詞

 4月15日、アルバム『Born This Way』からの2ndシングル『Judas』がリリースされました。今回もガガらしい一度聴いたら耳を離れない独特のイントロ(ジューダージューダアアー)とキャッチーなメロディが冴えるロックテイストなエレクトロ・ダンス・チューンに仕上がっています。クラブでヘビロテされそうな気がします。
 その歌詞を見ると、「私が愛したのは裏切り者と言われる男。でも、この気持ちは止められない」というような内容だと受け取れます。が、イエス、ユダ、マグダラのマリア(イエスの復活後、初めて会った人物。娼婦だったと言われています)という聖書のキーワードに注目するとさまざまな解釈ができる、とても奥が深い歌詞なのではないかと言われています。ここに全文とオリジナル和訳をご紹介します。

<歌詞> 
Ohohohoh
I'm in love with Judas
Ohohohoh
I'm in love with Judas

Judas! Judaas Judas! Judaas
Judas! Judaas Judas! GAGA

[Verse 1]
When he comes to me, I am ready
I’ll wash his feet with my hair if he needs
Forgive him when his tongue lies through his brain
Even after three times, he betrays me

I’ll bring him down, bring him down, down
A king with no crown, king with no crown

[Chorus]
I’m just a Holy Fool, oh baby he’s so cruel
But I’m still in love with Judas, baby
I’m just a Holy Fool, oh baby he’s so cruel
But I’m still in love with Judas, baby

Ohohohoh
I'm in love with Judas
Ohohohoh
I'm in love with Judas

Judas! Judaas Judas! Judaas
Judas! Judaas Judas! GAGA

[Verse 2]
I couldn’t love a man so purely
Even darkness forgave his crooked way
I’ve learned our love is like a brick
Build a house or sink a dead body

I’ll bring him down, bring him down, down
A king with no crown, king with no crown

[Chorus]
I’m just a Holy Fool, oh baby he’s so cruel
But I’m still in love with Judas, baby
I’m just a Holy Fool, oh baby he’s so cruel
But I’m still in love with Judas, baby

Ohohohoh
I'm in love with Judas
Ohohohoh
I'm in love with Judas

[Bridge]
In the most Biblical sense,
I am beyond repentance
Fame hooker, prostitute wench, vomits her mind
But in the cultural sense
I just speak in future tense
Judas kiss me if offenced,
Or wear an ear condom next time

I wanna love you,
But something’s pulling me away from you
Jesus is my virtue,
Judas is the demon I cling to
I cling to

[Chorus]
I’m just a Holy Fool, oh baby he’s so cruel
But I’m still in love with Judas, baby
I’m just a Holy Fool, oh baby he’s so cruel
But I’m still in love with Judas, baby

Ohohohoh
I'm in love with Judas
Ohohohoh
I'm in love with Judas

Judas! Judaas Judas! Judaas
Judas! Judaas Judas! GAGA

<オリジナル和訳>
ああ、私はユダに恋してる
ユダ、ユダ
ユダ、ガガ

彼が私の前に現れたなら
私はきっとこうする
その足を私の髪で洗ってあげる
彼がうそをついたとしても許してあげる
たとえ3度うそをついても、裏切られても

私は彼を落としてみせる
無冠の帝王

私は聖なる道化師
彼は本当に残酷!
それでも私はユダに恋してる

こんなに純粋に誰かを愛したことはなかった
暗闇でさえ彼の不正を許した
私たちの愛はレンガのよう
そのレンガで家を建てるか、死体を沈めるか
私は彼を落としてみせる
無冠の帝王

私は聖なる道化師
彼は本当に残酷!
それでも私はユダに恋してる

聖書的に言うなら私は
悔い改めを超えた娼婦(マグダラのマリア)
懺悔する街の売春婦
でも文化的に言うなら
ただ未来形で話してるだけ
たとえ罪だとしても、私にキスして
さもなくば、耳にコンドームでもつけてよ

私はあなたを愛したいの
でも何かが私たちを遠ざける
イエスは私の純潔
ユダは悪魔
私はユダから離れられない

私は聖なる道化師
彼は本当に残酷!
それでも私はユダに恋してる

ああ、私はユダに恋してる
ユダ、ユダ
ユダ、ガガ


ガガの最高傑作と言えるPV

 5月6日午前8時、PVの映像が公開されました。(こちらをご覧ください)
  『Judas』の歌詞だけでは、まだ霧がかかっていたようだったガガのビジョンが、このPVによってはっきりクリアに表現されたように思います。
 このPVは、クリエイティブ・ディレクターのローリーアン・ギブソンとともにガガ自身が共同監督をつとめています。公開前、ギブソンが「ほとんどの人はガガといえば神への冒涜と考え、物議を醸すにちがいないと思っています。そんな彼らもきっと『Judas』のPVを見れば、そのメッセージが壮大で、真に革新的で、正しく解放的であることを知って、ものすごく衝撃を受けると思います」と語り、ガガ自身も「私たちの作品の中での最高傑作」と断言していました。PVが公開された今、その発言が少しも大げさでなく、本当にその通りだとうなずけます。

 パッと見の第一印象は「ガガがついに暴走族のヘッドの女に!」という感じ。ちょっと『Telephone』っぽい部分もあり、アガります。イントロの部分など、ちょっとせつなくさせるものがあります。
 しかし、イエス、ユダ、マグダラのマリアというキリスト教的なサインに注目してよくよく見てみると、このPVは、ものすごいタブーに挑戦し、ものすごい意味を持っているようなのです。

 男たちがバイクを走らせています。先頭を行く若いボス(頭にイエス・キリストの茨の冠をかぶっています)のバイクにはガガが乗っています。街にたどり着くと、そこに、少し陰のある、他の男たちとは違う雰囲気を漂わせたイイ男が現れます(彼がユダです)。彼は街の人間ともめ事を起こし、ボスの女であるガガは彼に銃口を突きつけます(しかし、銃口から出てきたのは「死」ではなく「愛」でした)。やがてガガは、二人の男の間で引き裂かれるように身悶えします。若いボスは、人々の賞賛を浴びながら栄光のステージへ上り、ユダとも和解します。そして、ガガは十字架を持ち、若いボスにひざますきます(しかし同時に、こんな映像も重ねられます…ガガがユダと目配せしながら、今度はボスに銃口を向けるのです)。そしてラスト、ウェディングドレスに身を包んだ(マグダラのマリアとしての)ガガが、人々から石を投げられ、道に倒れるというシーンで幕を閉じます。

 このPVでは、なんとイエス・キリストが暴走族(荒くれ者の集団、マフィア)のボスとして描かれています。イエスはそのカリスマ性から周囲をひれ伏させていきますが、実はキリスト教団自体がそんな暴力団みたいなものだったのではないか?と暴くのです。イエスを裏切って死に追いやったユダは悪者と罵られてますが、実はユダこそが悪の帝王を倒した人物だったのではないか(ユダのほうに理があったのではないか)、あるいは、イエスもユダも同じ穴のむじなであり、単に覇権争いに勝ったのがイエスだったというだけではないか、そんな問いかけが聞こえてくるようです。
 キリスト教徒たちがいかに暴力的に辺境の人々(「未開」の人々)を虐げ、侵略してきたかというのは、歴史が示す通りです。
 そんなキリスト教徒(特にカトリックや原理主義者)が今もなお、同性愛者を弾圧している。それはなんと愚かなことだろうか、とガガは訴えているようです。ローマ法王などから見れば、同性愛者は「ユダ」のようなものでしょう。そういう意味で、このPVは『Alejandro』の続編とも言うべき「ゲイへの讃歌」なのです。

 そして、この物語は、何もキリスト教に限った話ではない、さらに普遍的な広がりを持っているように思えます。
 古来、そのカリスマ性で巧みに人心を掌握し、歴史に名を残してきた為政者たちは、必ずしも正義をなす者であるとは限らなかった、むしろ崇高な志をもった賢者こそが王に「裏切り者」扱いされ、虐殺されてきたのではないか、結局「誰が人の上に立つか」とは覇権争いでしかないのではないか…そんなふうに、いろいろなメッセージを読み取ることができるのです。
 ビンラディン殺害に湧くアメリカ社会に、そして震災後さまざまな「人災」に見舞われてきた日本社会に、ガガのメッセージはどんなインパクトを与えるでしょうか。

 ポップスターとしては異例中の異例とも言える熱心さで、ゲイのサポートに並々ならぬ情熱を示してきたレディ・ガガは、震災で被災した人たちもいち早く支援し、今回、さらにその上をいく壮大なスケールで、権力を恐れず、世界の真実と向き合い、正義とは何か?を問いました。われらがガガ様は、ついにこのような境地に到達したのです。
 5月発売のアルバムは果たしてどんなスゴいものになっているのでしょうか、そしてもはや世界の救世主(メサイア)とも呼べる存在になりつつあるレディ・ガガは、いったいどこまで進化していくのでしょうか…これからもますます、目が離せません。