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今こそ『BENT(ベント)』を観るとき——極限状況下での愛のかたち

5月18日から「座・高円寺」でゲイ演劇『BENT(ベント)』が上演されます(主宰:蓮池龍三)。映画は観たけど舞台はまだという方や『BENT』自体をよく知らないという方のために、『BENT』がどういう作品なのか、ご紹介したいと思います。

今こそ『BENT(ベント)』を観るとき——極限状況下での愛のかたち
(写真は2009年にモントリオールで上演された『BENT』の舞台)

 

BENT(ベント)』とは


2006年のロンドン公演より。
主演はアラン・カミング(右)
BENT(ベント)』は、マーティン・シャーマンの作による戯曲(舞台劇)で、第二次大戦下(1930年代)、ナチス・ドイツによって迫害された同性愛者たちの悲劇を描いた作品です。互いに見つめ合うことも触れることも許されない収容所の塀の中で、マックスとホルストという2人のゲイが、同じ方向を向いてただ言葉を交わすだけで愛しあう、そのシーンの崇高さ、せつなさ、究極の愛のかたちが世界に衝撃を与えました。
 舞台としての『BENT』は1970年代に初演され、日本でも幾度となく再演されてきました。  1997年には映画化もされました。映画で観て初めてこの作品を知ったという方も多いと思います。
(ちなみに、タイトルの『BENT』は、英語の「bent」が「bend(心が傾く)」の過去分詞であるとともに、イギリスでは「ホモの」という意味の侮蔑的なスラングとなっていることからきているようです)

 ナチスの時代に比べたら、僕らはなんと恵まれていることでしょう。平和そのものです。しかし、大震災で多くの人が愛する人を失ったり住む町を失ったりしたように、「幸せ」とは決して永遠に保証されるものではないのだということを、僕らはひしひしと感じてもいます。だからこそ、今この瞬間の「幸せ」がかけがえのないものに思えるし、『BENT』という作品で表現されるものがリアリティをもって迫ってくるような気がします。
 どんなに思っていても、彼と見つめ合うことも触れることも許されない…言ってみれば、彼は「死者」のようなものです。それでも言葉を交わし、愛そうとする…『BENT』が世界中で大きな感動を呼んだ秘密は、そういうところにもありそうです。

<ストーリー>


映画でグレタを演じた
ミック・ジャガー
 ドラァグクイーン・グレタの妖艶なキャバレー・ショーが繰り広げられ、夜毎めくるめく官能の世界が繰り広げられるベルリンのゲイクラブ。そこで働くマックスは、ある夜、突撃隊の制服を着た金髪の青年ウルフと一晩過ごした翌朝、マックスはパートナーのルディの嫉妬にさらされる。それを打ち破ったのは、親衛隊の激しい靴音とドアのノック。ウルフはナイフで刺殺されるが、マックスとルディは間一髪、アパートを脱出する。2人はグレタに助けを求めるが、彼はジョージと名前を変え、ゲイの世界から足を洗っていた。そしてヒトラーの命令によって同性愛者が殺されることを知らされる。2人は各地を転々と逃げ回る。マックスの叔父がアムステルダム行きの切符とパスポートを1人分だけ用意してくれるが、マックスは2人でなければダメだとこれを断る
映画版のあらすじです。舞台版の脚本・演出は少し異なるものと思われます)

<上演歴>


映画でマックスの叔父を演じた
イアン・マッケラン(右)
 1978年、ワークショップのために書かれ、コネチカット州のユージン・オニール劇作家協会で朗読形式で初演。
 1979年、ロンドンで舞台として初演されたとき、主役のマックスを演じたのは、なんとあのイアン・マッケラン(オープンリーゲイの俳優。『X-MEN』『ロード・オブ・ザ・リング』等で有名)でした。2006年の再演の際は、バイセクシュアルであることをカミングアウトしているアラン・カミング(『Lの世界』)が主演だったそうです。
 1979年、ブロードウェイのニューアポロ劇場でアメリカ初演された際は、あのリチャード・ギアが主演し、センセーションを巻き起こしたそうです。(演出は日本の劇団tpt等も手がけてきたオープンリー・ゲイのロバート・アラン・アッカーマンでした)
 日本では1981年、野沢那智の演出で劇団薔薇座によって初演され、以後、1986年に青井陽治演出・役所広司主演で再演、2004年に鈴木勝秀演出・椎名桔平主演(PARCO劇場プロデュース)で再演されています。それ以外にもtptなど、多くの劇団によって上演されており、なかなかの人気作となっています。

<映画>


『ベント/堕ちた饗宴』BENT
1997年/イギリス/
監督:ショーン・マサイアス
 1997年には映画も制作され、『ベント/堕ちた饗宴』という邦題で一般公開されました。クライヴ・オーウェンが主演しているほか、イアン・マッケランもマックスの叔父役で出演していますし、ジュード・ロウやミック・ジャガーといった大物が出演したことでも話題になりました。当時、映画館でご覧になった方も多いのではないでしょうか。
 舞台を観る前にぜひ予習を…と思ったのですが、残念ながらDVD化されておらず、VHSも現在はレンタルされていないようです。どうしてもご覧になりたいという方は中古VHSをお求めいただくというかたちになりそうです。

 

蓮池版『BENT』:5月18日から「座・高円寺」で上演

 インタビュー記事でお伝えした通り、この518日から蓮池龍三さん主宰で『BENT』が上演されます(はすいけタイムス+オーガニックシアター提携公演)
 ゲイがたくさん住んでいる高円寺で上演されるということ、偶然にもIDAHO(国際反ホモフォビアデー)の翌日からの上演ということ、また、スタッフの中にたまたまトランスジェンダーの方がいらしたということもあって、これまでの『BENT』公演の中でも最も僕らに近い、フレンドリーなものになりそうです。

はすいけタイムス+オーガニックシアター提携公演BENT
日時:518日(水)19時、19日(木)13時/17時、64日(土)13時/18時、5日(日)13     
会場:座・高円寺2 (杉並区立杉並芸術会館)
出演:蓮池龍三(ぷろだくしょんバオバブ)、小田 マナブ(メッセージ)、椎原克知(文学座)、側見 民雄(P..C)、内田聡明(ぷろだくしょんバオバブ)、番哲也(しーばらさんとこ)、堀光太郎(フリー)、今野太郎(フリー)
友情出演:渡部紘士(RUF
料金:指定席4000円、一般自由3500円、学生自由2500
作:マーティン・シャーマン
翻訳:青井陽治(劇書房刊)
演出:ナガノユキノ(オーガニックシアター)

 蓮池龍三さんは二丁目で行われた「Living Together のど自慢」に出演するなど、積極的にゲイコミュニティに関わってきており、ゲイを支援したいという気持ちを強く持ってきました。そうした気持ちから、いくつかの素敵な提携が実現しました(ありがとうございます!)

1. アフターイベントに歌川たいじさんが出演
 2日間に渡り、様々な経験をお持ちのゲストをお迎えして『BENT』への思いや「生きづらさ」などについて素直に語り合います。歌川さんは64日のお昼の公演後に登場します。また、依存症当事者として語ってくださる作家/パフォーマーの月乃光司さん、トランスジェンダーのシンガーソングライターである荒木恵さん、そして蓮池さんも出演します。ぜひ、ご来場ください。
日程:64日(土)と65日(日)の1300公演終演後(1530頃から約40分程度を予定)
司会:堀光太郎(衛兵・伍長役)
出演者:月乃光司(両日)、歌川たいじ4日)、荒木恵5日)

2. 会場でLGBT支援のパンフレットを配布
 当日、来場されたお客さんに、今年のやっぱ愛ダホ!のパンフレットや「君のままでいい.jp」のリーフレットが配られるそうです。思春期のゲイたちが深刻に悩んだり命を落としたりという現実を知らない世間の人たちにリアリティを感じてもらえるような、とても素晴らしいことだと思います。

3. 読者プレゼント
g-lad xx」読者の方5組(10名様)に『BENT』公演チケットをプレゼント!
 応募方法などの詳細は、会員の方にメールでお知らせいたします。(一両日中にお送りする予定です)