FEATURES

その他の記事

初日レポート:劇団フライングステージ「HAPPY JOURNEY」

これまで20年近く、ゲイを主人公に、ゲイの視点で芝居をつくり続けてきた劇団フライングステージ。今回の芝居は、過去の名作『ひまわり』と同様、笑いあり涙ありの人情モノのお芝居でしたが、なんと、ゲイの息子をもつ「お母さん」が主人公でした。初日レポートをお送りします。

初日レポート:劇団フライングステージ「HAPPY JOURNEY」

10年前(あれから10年も…)、フライングステージは「寅さん」のゲイ版である『ひまわり』という傑作を見せてくれました。下町に暮らすゲイとその家族の人間模様を描きながら、ゲラゲラ笑えて最後にはホロリとさせられるような人情モノのお芝居。新作の『HAPPY JOURNEY』は、まちがいなくその『ひまわり』と同じライン上にある作品です。ひさしぶりにフライングステージ節とも言うべき、笑いアリ涙アリの直球のゲイ芝居を観ることができてとてもうれしかったです。でも、今回の『HAPPY JOURNEY』が『ひまわり』と大きく異なるところが1つあります。それは、ゲイの息子をもつ「お母さん」が主人公だったということです。初日のレポートをお送りします。(後藤純一)


 8月17日(水)、平日にもかかわらず、下北沢の「OFF OFFシアター」は大勢のお客さんでにぎわっていました。ゲイの方が7割、ストレートの方が3割といった感じでしょうか。カップルで来ている方たちも、友達どうし連れ立って来ている方たちも、ひとりで来られている方も、「これからどんな芝居が始まるんだろう」という期待に胸をふくらませているような、ワクワク感を醸し出していました。そして19時半すぎ、初日の幕が開きました。

 ケンとユウイチはイマドキの若いゲイカップル。杉並の阿佐ヶ谷(リアル!)でいっしょに暮らしています。国立に住むケンのお母さん・マサコは、息子がゲイであることは知っているものの、諸手を挙げて受け容れる気にはとてもなれません。9月の3連休、マサコは父(ケンのおじいちゃん)の法事で札幌の実家に帰省する予定なのですが、ケンは、これを機にユウイチとお母さんが仲良くなってくれたら…と考え、3人で札幌に行く(いっしょに旅をする)ことを提案します。最初はぎくしゃくしていたお母さんと彼氏ですが、少しずつうちとけあい、有意義な旅を予感させたその矢先、運がいいのか悪いのか、一行は、ケンの元彼でおしゃべりでおせっかいな(ついでにオネエな)マモルに遭遇します。そこから少しずつ計画が狂っていきます…

 お母さん・マサコは、息子とその彼氏(そして息子の元彼)と過ごした旅のドタバタのなかで、また、同じようにゲイの息子をもつお母さんに出会ったり、自身の母(ケンのおばあちゃん)と話したりするなかで、少しずつ、ゲイということに対するかたくなさ(あまり考えたくないとか、人前で絶対に言ってはいけないとか、そういう拒否感)がやわらいでいくのです。
 気づけば、この旅は(この物語は)、ケンをはじめとするゲイたちではなく、お母さん自身が主役の「心の旅」となっていたのでした。

 時代はずいぶん変わりましたが、なかなか家族にカミングアウトもできないし、勇気をふりしぼってカミングアウトしたとしても決して応援はしてもらえない…という方も多いのではないか、家族関係の現状は依然として厳しいのではないかと思いますが、この芝居には「こんなお母さんだったらどんなにいいだろう」と思えるような、「僕らの夢」を描くシーンがありました。そのあたたかさに(現実が甘くないだけに)思わず涙がこぼれるような、感動的なものでした。

 もしかしたらこれはゲイサイトでのレビューという範疇からははみだすかもしれませんが、(「ハッピー・ジャーニー」というタイトルには似つかわしくないかもしれませんが、あえて)ある人の死が描かれていたことにも感銘を受けました。その人の死をみんなで弔う、供養する場面があって、最近、身近な友人を亡くしたせいかもしれませんが、とても胸に沁みました。『冬ソナ』や村上春樹の小説ではありませんが、「死者との対話」もまた、この芝居のテーマの1つになっているような気がしました(そういう意味でも心の旅なのです)
 
 今回はレインボーマーチ札幌に合わせた札幌公演も行われるということで、パレードのシーンや「親の会」のお母さんも登場します。それだけでなく、東北のお母さんや家族も登場するのですが、それはきっと、被災した東北を応援したいという気持ちの表れなのでは?と思いました。

 それから、ここ数年のフライングステージの舞台は一般の劇団から客演してもらうことが多かったのですが、今回は、年末の「gaku-GAY-kai」にも出演しているようなフライングステージの方がほとんどでした。そのことで、「ゲイによるゲイの芝居」な感じ、身近な感じ、安心して笑える雰囲気が生まれていましたし、関根さんの脚本の意義と、それをいい芝居につくりあげようとするキャストの方たちの思いが、十二分に伝わってきました(たとえ、セリフをかんだり、アンサンブルがうまくいってなかったり、東北弁や北海道弁が聞き取りづらかったりする場面があったとしても、あまり気になりません)。そうそう、ほぼスッピンだったのに、石関さんや関根さんがちゃんとお母さんに見えるのがスゴイと思いました(初めての方は女性だと思ったかもしれませんね)
 
 パレードやレインボー祭りの季節(そしてお盆)にふさわしい、「ゲイでよかった」と思えるような、これまで経験してきた苦労や悲しみが癒されるような、海外のゲイ映画(映画祭でやっているような作品とか『トーチソング・トリロジー』とか)にも通じるような、本当に観てよかった!と思えるような、いい芝居でした。
 28日(日)まで上演されているので、ぜひみなさんもご覧ください。
 9月18日、19日には札幌でも上演されますので、北海道の方やレインボーマーチに行かれる方などもぜひ。


劇団フライングステージ第36回公演
「ハッピー・ジャーニー」

作・演出:関根信一
出演:石関準、羽矢瀬智之、岸本啓孝、小林高朗、しいたけを、ますだいっこう、遠藤祐生(サムライプロモーション)、木村佐都美(おちないリンゴ)、関根信一   
■東京公演
日程:〜8月28日(日)
時間:平日は19時半、土曜は14時/18時、日曜は14時
会場:下北沢 OFFOFFシアター(世田谷区北沢2-11-1TAROビル3F 駅前劇場隣り)
チケット:全指定席 前売・予約3500円 当日券3800円 ペアチケット6500円 トリプルチケット9000円
※ペア、トリプルチケットは前売・予約のみ取り扱い ※3名様以上は人数×3000円となります ※当日券は開場時から発売します 
こちらから予約できます)
■札幌公演
会場:扇谷記念スタジオ シアターZOO(札幌市中央区南11条西1丁目ファミール中島公園B1F 011-551-0909)
日時:9月18日(日)18時、19日(祝)14時/18時
チケット:日時指定・全自由席 前売・予約 2,500円 当日 3,000円
こちらから予約できます)