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ゲイの振付家シディ・ラルビ・シェルカウイの来日公演『アポクリフ』

オープンリー・ゲイのダンサー/振付家、シディ・ラルビ・シェルカウイのダンス公演『アポクリフ』が今週末、渋谷のBunkamuraオーチャードホールで上演されます。

ゲイの振付家シディ・ラルビ・シェルカウイの来日公演『アポクリフ』

 ダンサー/振付家のシディ・ラルビ・シェルカウイと首藤康之、ディミトリ・ジュルドによるダンス公演『アポクリフ』が今週末、渋谷のBunkamuraオーチャードホールで上演されます。

 シディ・ラルビ・シェルカウイは、ベルギーのアントワープ生まれですが、父親はモロッコからの移民でイスラム文化の下に育ちました。振付家アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルに師事し、先鋭的な作風で知られるアラン・プラテルの「ル・バレエ・C・ド・ラ・B」で振付家として作品を発表してきました。ベルギーのダンスの最前線で活動してきた、ヨーロッパのコンテンポラリー・ダンスの新世代の騎手として注目を集める人なのです。そして彼は、ゲイであることをオープンにしています。
 いくら同性婚が認められているベルギーとは言え、イスラム社会にゲイとして生まれた人間が何の葛藤もなくのびのび育つということはないでしょう。彼の創作の原動力には、きっとそのことが関係しているのでは?と想像していたところ、一昨年のLos Angels Timesの記事にそうした記述がありました。「シディ・ラルビ・シェルカウイの振付家としての野心の焦点は、自伝的なものから、よりグローバルなものになってきているが、自身がゲイであり、ベジタリアンであり、モロッコ系ベルギー人であるというアイデンティティと折り合いをつけようとする生涯にわたる探求は、彼の創作のプロセスの原動力となり続けている」

 今回の公演『アポクリフ』は、首藤康之(東京バレエ団のみならず、ベジャールの『ボレロ』『M』、マシュー・ボーンの『白鳥の湖』など、世界に名だたる振付家の数々の作品に出演。国際的に活躍してきたダンサー)をオリジナル・キャストに迎えてシディ・ラルビ・シェルカウイが振付け、2007年にブリュッセルの王立モネ劇場で世界初演されたもので、その後もヨーロッパ・ツア-を行って評判を呼んでいます。ほかにも、フランスの国立サーカス学校出身のアクロバット・ダンサー、ディミトリ・ジュルドがダンサーとして出演しています。また、コーラスとして、ア・フィレッタ(演劇、オペラ、ダンス、映画などとコラボレーションを活発に行っているコルシカ出身の人気アカペラグループ)も参加。衣裳を手がけるのはベルギーの人気デザイナー、ドリス・ヴァン・ノッテン(オープンリー・ゲイ)です。

 本日の朝日新聞にも関連の記事が掲載されていましたが、そもそも「アポクリフ=アポカリプス(黙示録)」とは聖書から排除された言葉を集めた外伝のことであり、3人のダンサーが「排除」「死」のイメージを舞うものになる、とのことです。日本刀、三島由紀夫、文楽といった日本にまつわるモチーフも盛り込まれています。
「バレエとサーカスにはじかれたアウトサイダー2人が、ラルビ(シェルカウイ)のもとに迷い込んだ。排除された人間の悲しみ、排除されたことで新たに生まれる文化の強さを3人で表現できると考えた」と首藤康之は語っています。
 欧州にモロッコ系として生まれ、イスラム文化の下でゲイであることを自覚したシェルカウイもまた、「排除」を経験してきた人物と言えるでしょう。

 シェルカウイは2007年に『ゼロ度 zero degrees』という作品で来日し、2009年には中国少林寺の僧侶が踊る前衛バレエ作品『スートラ』に関する記事が日本でもニュース配信されていました(残念ながら日本公演はありませんでした)
 次回はいつになるかわかりませんので、舞踊ファンの方はぜひ、足を運んでみてください。(後藤純一)

 

シディ・ラルビ・シェルカウイ×首藤康之『アポクリフ』
日時:94日(土)18:305日(日)14:00 
会場:Bunkamuraオーチャードホール
料金:S席11,500円、A席9,500円、B席7,500円(税込)
演出・振付:シディ・ラルビ・シェルカウイ
出演:シディ・ラルビ・シェルカウイ、首藤康之、ディミトリ・ジュルド
コーラス:ア・フィレッタ
衣装:ドリス・ヴァン・ノッテン 
問合わせ:ローソンチケット 0570-000-40710:0020:00
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