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第7回「東京プライドパレード」レポート(2)この10年で大きく変わったこと

第7回「東京プライドパレード」レポート第2弾は、「この10年で大きく変わったこと」と題し、会場に出店された様々な一般企業のブースのことを中心にお伝えしたいと思います。

第7回「東京プライドパレード」レポート(2)この10年で大きく変わったこと

アライ・パワーの高まり 

 パレードの本当の最後、200人ものボランティアスタッフの方たちが壇上に上がり(早朝からテントを立てたり、イスを出したり、募金を呼びかけたりそしてパレードが終わると、ゴミをまとめたり、テントをたたんだり頭が下がります。本当におつかれさまでした)、代表の砂川さんが挨拶し、途中で胸をつまらせ、嗚咽を漏らし、会場から大きな拍手と声援が贈られこちらも思わず「もらい泣き」してしまうような感動の場面。それは、ゴトウにとってはデジャブでもありました。
 10年前の2000827日、周りに誰もパレードのやり方を教えてくれる人なんていない状況で、幾多の困難を乗り越え、やっとの思いでパレードをやり遂げた砂川さんは、やはり同じステージの上で、嗚咽を漏らしながら、会場の人たちに感謝の言葉を述べていました(そのときはオレンジのTシャツだったかな…とにかく、客席で僕もいっしょに号泣していました)

 2000年にこのパレードが始まってから10年が経ちました。たくさんのボランティアスタッフの方たちが汗と涙を流し、みんなで真夏の8月に代々木公園~渋谷~原宿をパレードするという形は少しも変わっていません。しかし、この10年で大きく変わったことがあります。

 GoogleBank of AmericaUBS、メリルリンチなどの金融機関をはじめ、ものすごくたくさんの一般企業がブース出店という形で協賛し、厚労省、東京都をはじめ5つの行政機関が後援につき、有名なミュージシャンが会場に来てライブを披露するようになりました。
 中西圭三さんは「アライ(支援者)の立場で参加しました」と語りましたが、セクシュアルマイノリティ当事者だけでなくアライによる支援が目に見えて大きくなってきたのです。

 これは、10年前では考えられないことでした。

 

今回パレードに協賛した一般企業のいろいろ

 Googleの広報の方は、当サイトでもたびたびお伝えしているように(「Googleがゲイプライド月間を祝福」Googleがゲイの従業員に給与を上乗せ」)、Googleがどれだけ多様性(ダイバーシティ)を尊重している企業かということを語ってくれました。
「今まで、アメリカでどれだけゲイに優しい企業であっても、日本ではぜんぜんパレードに協賛することもありませんでした。そういう意味でも、御社は素晴らしい」と言うと、少し驚かれていたようでした。 
 ブース内にはたくさんの社員の方がボランティアで来てくれていましたが、その中にはゲイの方(以前、ゲイ映画関連で活躍していた方)もいらっしゃいました。 


UBSのブース
 世界でも有数の大手資産運用会社であるUBSの堀久美子さんは、「ぶっちゃけ、ウチの会社はリテール向けには展開しておりませんので、売り上げにつなげようという期待は全くないんです」と語りました。それでもいくつかの金融機関と協同した「インターバンク」ネットワークとして映画祭やパレードに協賛し、UBS独自の活動として「ゲイやレズビアンの学生ための就職セミナー」も開催しているんだそうです。


「Bank of America」のジェイソンさん
 アメリカの大手銀行である「Bank of America」のブースを出店していたジェイソン・ケンディさんは、「これは社内で働く人たちへのメッセージです」と語りました。「Bank of Americaはゲイが安心して働けるような職場だということを伝えるために、パレードに協賛しているのです」と。


「Less Than Human」のブース
 あのビヨンセも購入したという高級アイウェア・ブランド「Less Than Human」のマーケティングを担当している星野泰一郎さんは、もともと二丁目のディスコ「NEW SAZAE」のお客さんだったそうですが、今年5月の「セクシュアルマイノリティを正しく理解する週間」シンポジウムやパレード公式イベントである「シンポジウム~『公共性』を再考する」にも参加し、会社を説得してパレードへの協賛を決め、「東京プライドパレードのロゴ入りめがね拭き」なども作成し、たくさんのボランティアの方とともにブース出店に臨みました。星野さんは「Less Than Humanは根がパンクなもので、人間社会の不平等やインチキ、オタメゴカシへのカウンター勢力として存在します。今回のパレード協賛は、日本のファッション界でたぶん初のアライ宣言。これからも協力していきたいです」と熱く語ってくれました。


『RENT』ブースにいたのは
東宝や帝国劇場の方たちでした
 キャスト14人が来場して『Seasons of Love』を熱唱するという奇蹟を実現してくれたミュージカル『RENT』のプロデューサーである東宝株式会社の小嶋さんは、当サイトの告知記事を見て、キャストの方たちにも伝え(とても喜んでくれたそうです。感激です!)、わざわざ「g-lad xx(グラァド)」のブースにお礼を言いに来てくれました。本当に明るくて感じのいい女性でした。ゲイのことやHIVのことを世間に発信していこうとする思いを共有し、パレードの会場でつながることができたこと、本当に素敵な経験になりました。

 また、昨年来、コチ株式会社の働きかけによって急速にゲイフレンドリーになってきているSoftbankは、パレードのコースの途中にある表参道ショップにレインボーフラッグを掲げたり、レインボー&SoftBankロゴ入り缶バッジなども配り、アピールしていました。あるSoftbank社員の方は「うちの会社でそういう取組みをしてるなんてぜんぜん知らなかった。パレードに来てビックリしました」と語っていました。

 取材はできなかったのですが、CITIGROUP JAPANも参加していました。実は、シティバンクはすでに2001年、パレードのガイドブックへの広告出稿という形で協賛し、金融機関の中でもいち早くゲイフレンドリーさを打ち出していました。会社サイトを見ると、ダイバーシティプログラムの中に「プライド/LGBTへの理解」と明言されています。(おそらく、シティバンクの社員で、とても熱心に活動してきた方がいたのでは?と思います。頭が下がります)


『BIG ISSUE』のブース
 ホームレスの方たちの自立を支援する雑誌として有名な『BIG ISSUE』は、昨年の東京プライドフェスティバルに続き、ブース出店してくれました。ゲイ&レズビアンのカミングアウトを特集した146号のほか、ゲイに人気のレディ・ガガや『ミルク』のショーン・ペンが表紙になっている号をたくさん並べていました。

 面白いところでは「浜野佐知監督を応援する会」というブースもありました。浜野さんは、2005年の東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で『百合祭』という高齢の女性たちの愛を描いた作品を発表して話題になりましたが、今度は『百合子、ダスヴィダーニヤ』というレズビアン的作品を製作するということで、支援を募っていたのでした。

 その他にも、株式会社太田出版(NHK『ハートをつなごう』をまとめた本を販売)、ゴールドマンサックス証券株式会社、PROFESSIONAL BRAIDS EXTENSION(新宿の美容院)などの企業、そして、アムネスティインターナショナル日本、(財)エイズ予防財団、エイズ予防のための戦略研究、NPO法人 HIVと人権・情報センター、NPO法人 LGBTの家族と友人をつなぐ会、ソーシャルワーカーによる医療相談会、といった団体・サークルも出店していました。

 もちろん、バディやMen's mixjpなど、メインスポンサーとなっているゲイカンパニーのブースも、カラフル&セクシーに会場を彩っていました。一般企業の出資がなかった時代、ずっとパレードを支えてきたのが、こうしたゲイ(をはじめとするセクシュアルマイノリティ)の企業・団体・サークルです。L&G Timpani、オフィス SHIO、学生フロート作成会、クリスタルコミュニティ、G mixG2、コチ株式会社、NPO法人 ピアフレンズ、BIG GYMLIKE編集部、LOUDlaphLOVE PIECE CLUB…本当にたくさんの人たちが参加し、コミュニティのパワーを感じさせました。

こちらのフォトアルバムで、ブースや会場の人たちの画像をご覧いただけます

 

世間の方がゲイより熱心に?


Softbank表参道店に掲げられた
レインボーフラッグ
 今回、さまざまな企業のブースを取材して、企業協賛に関するイメージを改めさせられました。

 正直、企業とは利益を追求する事業体なわけですから、なんだかんだ言っても、肥沃なゲイマーケットをねらい、売り上げを見込んで(会社の利益のために)ゲイにアピールしてみせる、というスタンスなんだと思っていました。が、決してそれだけではないということを、いろんな人たちのお話を聞いて、実感しました。

 ゲイ(をはじめとするセクシュアルマイノリティ)が安心して働ける職場作りをめざすこと自体に意義を感じていたり、ゲイやレズビアンにパートナーシップの保障がまるでなされていないことをおかしいと感じたり、HIV陽性者へのサポートの気持ちであったりそれはまさに東京プライドパレードの趣旨であり、意義の部分に共鳴してくれているのです。彼らはたとえば「地球にやさしくすること」と同様、誰もがセクシュアルマイノリティの問題に当然取り組むべきだというスタンスのもとで参加してくれているのです。
 たいへん感慨深いものがありました。

 ある方は「何か大きな波が来ているのを感じる」としみじみ語っていました。「社会が大きく変わってきている」と言い換えてもよいでしょう。それはまさに、このパレードの10年間の成果ではないでしょうか。(そして、10年以上前からこのパレードへとつながるような活動をしてきた先人たちの、2007年の選挙の、NHK『ハートをつなごう』の、そして、それぞれの持ち場でがんばってきたたくさんの人たちのおかげでしょう)

 これは多くの人たちが語っていることですが、世間はもはや、セクシュアルマイノリティの敵などではありません。(政財界の「おじさん」たちの中にはホモフォビアが強い人もいるかもしれませんし、相変わらず一部のマスコミやネットの投稿などはゲイをバカにした書き方をしていますが)あからさまに差別する勢力は存在しないのでは?と思えるほど、大多数の人たちはフレンドリーです。そういう実感を持っている方は多いと思います。

 僕らはあまりにも長い間、世間の侮蔑や嘲笑にさらされてきたがゆえに、表に出ていくことを恐れたり、ホモフォビアを内面化したりして、なるべくバレないように生きてきました。しかし今、世間の方がよほどゲイの問題に関して熱心になり、ゲイコミュニティを追い越してしまったそんな逆転現象が起こっている気もします。

 また、今、世間でいかにゲイフレンドリーな企業や人が多くなってきたかということを集約的に、素敵な形で見せてくれたパレードに、改めて感謝したい気持ちです。

 これからもどんどん、行政や企業、有名人などを味方(アライ)に引き入れていきながら、今までできないと思われていたことが実現していくことでしょう。「g-lad xx(グラァド)」もその一助になれたらと願っています。

(後藤純一)