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コミュニティとしての可視化を目指して 上海プライドフェスティバル

日本からはなかなか見えにくい中国の性的マイノリティの状況。先日大成功を収めた上海プライドフェスティバルの主催者の一人であるケネスさんにお話を伺うことができました。

コミュニティとしての可視化を目指して 上海プライドフェスティバル

 2010年10月16日から11月6日にかけて、上海プライドフェスティバルが開催されました。約3週間にわたり、様々なパーティーや展示、映画上映、パネルディスカッションが展開されていくイベントでした。日本からはなかなか見えにくい中国の性的マイノリティの活動について主催者の一人であるケネスさんに、お話を伺いました。

あなたのプロフィールを教えていただけますか。

 ケネス、男性、33歳、企業の通信部門の管理職として働いています。

あなたのバックグラウンドを教えてください。なぜプライドフェスティバルに取り組むことになったのですか?

 私はシンガポール出身で、上海に8年住んでいます。2003年1月、私はバックパックを背負って、片道切符で上海にやってきました。ユースホステルに2ヶ月住んだ後、そのまま上海に住むことになりました。
 上海プライドは2009年に創設されました。私たちの中の一人の友人が上海を離れる際に、プライドフェスティバルのアイデアを残していきました。私たちのグループの中に同じ考えを持つ人たちが現れ実現したのですが、当時は私たちは何を得ようとしているのか自分自身でもよくわかっていませんでした。振り返ってみれば、実行に移してとてもよかったと思っています。

上海のLGBTのコミュニティの中で、上海プライドはどのような役割を果たしていると考えていますか?

 人の一生にたとえると、上海プライドはまだ揺籃期にあるフェスティバルだと思います。私たちはまだ、一晩で中国のLGBTコミュニティを変えてしまうような壮大な夢を描く力を持ちえていません。さしあたり、以下のような役割を担っている時期だといえるのではないでしょうか。
 さかのぼること20年以上前から、中国のゲイとレズビアンはそれぞれ個人的にカミングアウトしてきました。現在は、上海プライドはコミュニティとしてカミングアウトするために存在しています。集団としての可視化を目指している段階にあるといえるでしょう。

広報活動を進めるにあたって、困難を感じることはありませんか。

 中国のマスコミは、上海プライドを報道しない方針を通しています。唯一、中国の英字新聞においてのみ報道されています。このことは中国の主流となる社会へメッセージを届けたいと考えている私たちにとって大きな障害となっています。これを回避するために我々ができることは、インターネット及びソーシャルサイトを活用することでした。私たちは、イベントについての文章を中国人ゲイのポータルサイトだけではなく、Douban.com、Kaixin001.com、Sina Weiboといったソーシャルサイトにて発表することができました。

行政の人たちのLGBTコミュニティに対する対応について教えていただけますか。

 中国には同性愛に対する法律がまったくありません。かつてゲイは暴徒を取り締まるための法律の元におかれていましたが、この法律はなくなりました。同性愛行為は精神異常として扱われていたこともありましたが、少し前に取り除かれています。今日、中国政府は公式には“不支持,不反対,不提倡” (支持をしない、反対をしない、擁護しない)という方針をとっていますが、実際にはゲイコミュニティは非常に限定された領域での活動を余儀なくされています。

今年のイベントのハイライトを教えてください。

 中国プライドアワードをスタートさせました。中国のLGBTコミュニティに対してポジティブな働きかけを行った4名を認定し、賞を授与しました。

 またいくつかのフォーラム、パネルディスカッションでは、LGBTに関連のあるさまざまな問題について、中国全体から第一線の識者を集めることができました。

 ウー・ユージャン(吴幼坚)(中国PFLAG=レズビアンとゲイの親と友人の会、創設者)、トン・ゲ(童戈)(北京ジェンダーヘルス教育研究所の創設者、中国ゲイヘルスフォーラムの代表)、チャン・トウ(杜聪)(チ・ヘン財団の代表、ピープルズ誌の2004年度の10人のアンチAIDSのヒーロー、中国の未来の10人のリーダーとして選出)、ハンス・ガセミー(中国反AIDSプログラムアシスタント)、ツェン・ファン(郑煌)(男性とトランスジェンダーのセックス・ワーカーの支援団体上海レイイの代表)、スイ・ツィエン(崔子恩)(映画監督・批評)、シトウ(石头)(レズビアンの映画監督、アーティスト)といった人たちが含まれています。カミングアウト、家族の生活、HIV/AIDS、中国のクィアフィルムについて話し合われる貴重な機会を、中止に追い込まれることなく、成功させることができました。

中国のLGBTコミュニティの展望をお聞かせ下さい。

 私のLGBTコミュニティについての展望は、ゲイやレズビアンのグループ、組織、NGOなどが、強力で、連帯のできる、可視化されたコミュニティになるための道程を作るために、互いの違いを保持しつつ、組織の境界を越えて働きかけあっていくことにあります。

 

最後にインタビューの中でも触れられた第1回中国プライドアワードの受賞者をご紹介します。

モデルボランティア賞 レイ・マホニー(Ray Mahoney)さん 
中高年の中国人男性ゲイに対するリーチ活動に対して。自費を投じてセーフセックスの広報、ゲイ映画の頒布をされたそうです。

メディアプロジェクト賞 ウェイ・ジャンガンさんとクィアの同志たち(Wei Jiangang and the Queer Comrades team)
よく調査されていてかつ、情報量が多く、娯楽として楽しめ、ポジティブにLGBTカルチャーを紹介したインターネットテレビ番組を制作したことに対して。この番組はすでに2000万ビューを獲得しているそうです。「クィアの同志たち」シリーズはゲイ・コミュニティをメインストリームの社会の人々が理解するための架け橋となっているそうです。

ゲイのナイトライフ賞 エディ
中国における最初の商業的なゲイ・スポットであり、もっとも長く生き残ってきているゲイバーなのだそうです。

ゲイカルチャーへの貢献賞 スイ・ツィエン(Cui Zi'en)さん
中国のクィア・フィルムを推進したことに対して。スイさんは北京クイアフィルムフェスティバルを2001年より開催していて、中国唯一の総合的なLGBTフィルムフェスティバルとなっている。

上海プライド
http://shanghaipride.com/

上海プライドの写真はこちらで見ることができます。
 http://www.flickr.com/photos/shanghaipride

写真はすべてShanghaiPRIDE / Vlatko Mitashevさんによるものです。

(門戸大輔)