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TOKYO FM × LIVING TOGETHER ポエトリーリーディング「Think About AIDS」FINAL

12月17日(金)に行われた「ポエトリー・リーディング Think About AIDS」のレポートをお届けします。今回で最後ということもあり、過去最高の人出を記録し、有終の美を飾るにふさわしい、充実した内容で、来場した方たちに大きな感動を与えていました。(写真:竹之内祐幸)

TOKYO FM × LIVING TOGETHER ポエトリーリーディング「Think About AIDS」FINAL

12月17日(金)に行われた「ポエトリー・リーディング Think About AIDS」(主催:TOKYO FM、後援:エイズ予防のための戦略研究・MSM首都圏グループ(研究リーダー:市川誠一)、共催 :LivingTogether計画(ぷれいす東京・Rainbow Ring))。3年にわたって数々の思い出深い名シーンを演出してきた「Think About AIDS」もいよいよ今回でフィナーレということで、大勢の方が来場し、たいへん充実した、意義深いものになりました。レポートをお送りします。(後藤純一)


 12月17日(金)、クリスマス・ムードが漂う週末の夜、開場時間の7時頃に半蔵門の「TOKYO FMホール」に着くと、そこにはすでに入場を待つ人たちの長蛇の列ができていました。ゲイの方だけでなく、女性の姿も目立ち、熱気が感じられました。

 満員となり、立ち見が続出した会場は、「ある日、そのことに向き合わされた人がいます。ある日、そのことを知らされた人がいます。ある日、そのこととともに生きると決めた人がいます…」というアナウンスが始まると、静けさを取り戻しました。
 美しいクリスマスツリーが飾られたステージに最初に登場したのは、タレントのMEGUMIさんでした。
 クリスマス・ソングをBGMに、MEGUMIさんは、予防接種を受けに行った病院で、医師がビニール袋をつけて体に触らないようにして「ごめんね」と言ったというユウジさんの手記を、心をこめて朗読しました。
 そして、朗読が終わると「受け入れられる人が一人でもいれば、大丈夫。最愛の彼がいて、幸せな人だな、と思います」「この医者のように傷つけたりする人がいると、カミングアウトできなくなりますよね」「カミングアウトしたり、人にすがれるような環境を作っていかないと」と語ってくれました。

 それから、MCの堀内貴之さん、柴田幸子さんが登場し、MEGUMIさんのコメントに加えて「今は薬も進化している」「ふつうにいっしょに生きている」「日本には18,000人以上の陽性者がいる」「早くわかれば、元気にやっていける」「27年前にセンセーショナルに取り上げられた時のイメージを引きずっていて、なかなか陽性者が出ていけない。手記を朗読することで、周りに伝えるきっかけに」といったお話をしてくれました。

 続いて、CM曲などで有名になり、独特の世界観でオーディエンスを魅了する歌手の安藤裕子さんが登場。『Little Babe』『歩く』など3曲を歌ってくれました。
 安藤さんの独特の、心にすっとしみこんでくるような鋭さと美しさを持った歌、そして、全身全霊で表現しようとする気迫のようなものが、会場全体を圧倒しました。
 MCでは、安藤さん自身が病院で「ガンの検査をします」と言われた時の体験を語ってくれました。「耳がカーッと熱くなり、『何のために生きるんだろう』ということを考え始めました。お母さんになりたかったんだ、と気づきました。病院の待合室で陽性者の手記が載った冊子を読みながら、いろいろ考えました。人はいずれ死んでゆく。誰もが病気や事故にあうし、体は壊れていく。笑顔で迎えられたら、と思う。自分の明日を愛せる自分になろう。横に居る人と今日あったことを話せるような毎日になるといいな」
 そしてライブの最後に、安藤さんはこう語りました。「手を伸ばせば、独りじゃない」

 太田光さんの奥さんとして知られる「タイタン」社長の太田光代さんが登場しました。
 「病み、生きる」という宿題を与えられた気がする、母親に「一病息災よ」と言われた、という内容のタカシさんの手記を朗読してくれました。
 太田さんは、子ども支援NPOに関わっていて、自分が支援する子どもの希望の国とか年齢などを選べるんだそうですが、あるウガンダの女の子を支援することが決まって、というお話をしてくれました。ウガンダでは発症率が高く、国民の4人に1人が陽性者。女の子は手紙で「将来、看護師になりたい」と書いていたそうですが、両親もエイズで亡くなり、自分にも感染している可能性があり、検査が怖いと言っていたそうです。太田さんは胸を痛めながらも「エイズだとしても、協力できるし、勇気をもって」と返事を書きました。結果、彼女は陰性で、願いが叶って看護師になれたそうです。
 また、ウィルスは肝炎もHIVも同様なのに、なぜ肝炎の活動は堂々とできていて、エイズの活動は隅に追いやられるのか、病気の中にも差別があるのではないか、と訴えていました。

 続く菊地成孔さん(音楽家/文筆家)は、新型インフルエンザが流行した学校の生徒たちが病気の元凶のように罵られたり、ネット上で罵られたり、世間のヒステリックな反応に暗澹たる気分になったという手記を朗読しました。
 菊地さんは陽性者の友人もいて、亡くなった人もいるそうです。「あらゆる差別に反対」と宣言します。メディアでエイズが「ゲイキャンサー」として報じられた頃、菊地さんはたぶん日本初のHIV検査を新宿区役所で受けたそうですが、「この手記は、社会の慢性病(差別)と急性病(ヒステリー)を描いている。とても社会性が高いテキスト」と述べました。菊地さんは黒人音楽について大学で教鞭を取ったりもしているそうですが、「公民権運動と黒人音楽はいわば父と母。差別がなければジャズやファンクなどの音楽も生まれなかっただろう」と語り、また「70年代、世界で最も不浄で猥雑な都市だったニューヨークが、94年に当選したジュリアーニ市長によって浄化され、『都市の免疫力』が低下した。その結果、9.11のテロが起きた。歌舞伎町も2004年以降、徹底的に浄化された。ニューヨークに似ている。都市の免疫力は個人のそれとリンクするのではないだろうか」といったお話を語ってくれました。
 本当に慧眼と言いますか、菊地さんは圧倒的な知性と情熱でもって、たいへん示唆に富む、刺激的なお話を聞かせてくれました。目を瞠るものがありました。

 続いてFUNKISTのライブ。1曲目からスタンディングで、ノリノリのライブとなりました。
 FUNKISTのボーカル・染谷西郷さんは、19歳の時に肝臓の不治の病を宣告され、死を覚悟するというヘビーな体験をしました。が、東洋医学で奇蹟的に回復し、ずっとやりたかったライブをやり、自身のルーツでもある南アフリカに旅をし、そこでたくさんのHIV陽性者やエイズ患者にも会いました。「将来はドラマーになりたい」と語る5歳の少年のことを考えるとせつなくなり…「自分に何ができるだろう?」と彼は自問自答しました。彼は「病気だって、君を輝かせる個性」「そこで生きてる」「心臓の鼓動を感じて」「笑いあって何が悪いんだ」「あなたの近くにいたら受け止めて」と語り、Living Togetherのフラッグを見上げながら、HIVを持ってる人もそうでない人も、というフレーズを歌の中に折込みながら、真っ直ぐに、心からの思いを込めて、熱い歌を届けてくれました。感動し、泣いているお客さんもいました。あの音楽の力強さをお伝えできないのがもどかしいのですが、本当に素晴らしかったです。

 休憩をはさんで、放送作家の鈴木おさむさんが登場し、アイカタさんが検査を受けたときの「もらい泣き」のエピソードを綴った手記を朗読してくれました。
「幸せの形は人それぞれ」と鈴木さんは語り始めました。ご存じのように、奥さんは森三中の大島さんですが、「人前で話すのは初めて」と言いながら、こんなエピソードを教えてくれました。2007年、二人の間に赤ちゃんができ、記念にビデオを回すほど大喜びだったのですが、1ヶ月後にエコーを取りに行った後で大島さんが電話口で泣き始め、鈴木さんが病院に駆けつけて彼女を抱きしめ、それから、二人は(有名人なのに)歩いて家に帰ったのですが、道すがらずっと彼女は泣きっぱなしで、鈴木さんはかける言葉もなく、でも「あんまん食べたい」と言われてコンビニで買って帰ったそうです。どうしてあんまんだったの?と聞くと、「少しでも安心させたかった」と。思わず目頭が熱くなるような、とてもせつないお話でした。最後に「ずっといっしょに生きていく。その時々の幸せの形があると思う。誰がどう言おうと」と語ってくれました。

 数々のドラマや映画、CMなどに出演し、今年NHKの『ゲゲゲの女房』で水木しげる役を演じたことでも有名な今をときめくイケメン俳優・向井理さんが登場すると、会場の女性の方たちの視線が急に熱を帯びたように感じられました。
 向井さんは、陰性だったらこれ、陽性だったらこれ、と言って友達から2通メールをもらい…という、「友情は変わらない」という感動の手記を、とてもシブい声で読んでくれました。
 そして、「映画の撮影でカンボジアに行ったとき、はじめてHIV陽性の方にお会いしました。病床に伏している人を想像していたんですが、いたって普通でした。(朗読したHIV陽性者の手記について)この手紙に描かれていることも、すごく普通。恋人同士の日常的なやり取り。HIV陽性か陰性かは関係なかった。差別の壁は人間が作り出すもの。知っているか知らないかだけで、いろいろな偏見が生まれているのだと思います。僕の朗読を聞いてくださったみなさんそれぞれにとって今日が良い夜になればいいなと思います」と語ってくれました。
 その後、MCの堀内さんも登場し、二人でしばらくトークが行われました。「僕も初めは同じだったけど、怖いものじゃないとわかった。同じだな、幸せだな、って」と言う堀内さんに対し、向井さんは「みんな変わってるんですよね」とコメント。そして「今回は何かできること、新しいことをしようと思って参加しました。どうしようって考えたりもしたけど、ありのままでいいんだって開き直って臨みました」と語ってくれました。
 

 続いて、『ゲゲゲの女房』でも共演し、向井さんと仲がいいという星野源さん(SAKEROCK)が登場し、ギター弾き語りを披露。向井さんが冗談で「枯れた感じがいい」と言っていましたが、おじいちゃんおばあちゃんから若い人まで楽しめるような、ちょっとユーモラスな、味わい深い歌でした。
 星野さんは、去年、区役所の貼り紙を見て、HIV検査を受けたそうです。病院でもらった結果は、紙を自分ではがすしくみになっていて、ドキーンとして、まるで「あなたの責任です」と言われた気がして、手がふるえたそうです。「いっしょに生きるのは大変なこと。なんでこんなにうまくいかないんだろうって。死にたいこともある。でも、生きててよかったと思う。おじいちゃんになって寿命で死ぬのが夢です。それがいちばんスゴイことじゃないかと思います」と語ってくれました。

 最後に、もう一度、MCのお二人が登場し、「まだ社会がカミングアウトできる雰囲気じゃない。だんだん当たり前になってきているけど、まだ途中段階」「3年間やってきて、ユウジさん(前回ステージに登場してくれた陽性者の方)が来てくれたり。すごく大きな一歩でしたね」と語りました。それからLiving Togehter計画のディレクター、張由紀夫さんが登場し、「僕らひとりひとりがメディアです。いい電波を飛ばしていきましょう」と語り、会場は大きな拍手に包まれました。

 こうして、3年にわたって開催されてきた「ポエトリー・リーディング Think About AIDS」は、幕を閉じました。これまでたくさんの著名人の方たちを呼んでステージに登場させ、数々の感動を届けてくれたディレクターの東島さんはじめ、TOKYO FMの方々、その他たくさんの協力者の方たちに、心からの拍手をお贈りしたいと思います。本当にありがとうございました!