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同性愛表現の自由を求めて動きだしたマレーシア

2012年01月11日

 1月9日、同性との性行為で起訴されていたマレーシアの元副首相、アンワル・イブラヒム氏に無罪判決が下されました。
 アンワル氏は法定で「神に感謝する。正義はなされた」と語り、裁判所に集まった数千人の支持者は、予想外の判決が下されると歓喜の声を挙げ、野党のスローガンである「リフォルマシ(改革)」を叫びながら街頭で勝利を祝いました。
 アンワル氏は1998年、年下の助手に同性間の性行為を強要したとされ、副首相の職を解任され、6年間服役しました。が、有罪判決は2004年に覆されていました。そして2008年、再び事務所スタッフだった20代男性と(同性間で)性交渉を行ったとして訴えられ、今回晴れて無罪が確定したものです。
 アンワル氏は、一貫して「これは野党連合の再起を阻止するための政治的陰謀だ」と無罪を主張してきました。同氏率いる人民正義党(PKR)など野党連合は「不正な起訴だったことが証明された」として、年内にも行われる総選挙に向け、反政府キャンペーンを展開する方針です。

 アンワル氏関連のニュースでは一斉に「同性愛の罪で」という言葉が躍りましたが、日本のメディアではそもそもマレーシアで同性愛が違法(最高で20年の禁固刑)であることに疑問を呈するコメントは見られませんでした。
 海外のメディアを見てみると、国際的人権団体「アムネスティ・インターナショナル」のアジア太平洋ディレクター代理であるドナ・ゲスト氏が「マレーシアにおける同性愛を罰する法律は、同国のゲイの権利を侵害するのみならず、アンワル氏に対する政治的抑圧の道具として使用されてきたのです」との声明を発表し、マレーシア政府にこの時代遅れな法律を撤廃するよう求めています。
 
 一方、マレーシア国内では、同性愛の自由化(非犯罪化)を求める動きが起こりはじめました。
 マレーシアでは2008年来、「セクシュアル・インディペンデンス」というホモフォビアと闘うことを主眼としたアートフェスティバルが開催されていましたが、昨年11月、このイベントが警察によって中止を余儀なくされました。イスラム教団体や政府が、「伝統的な家族観を破壊する」として、禁止を後押ししていました。政府は「主催者は憲法で認められていない権利をほしがっている」と述べました。
 これに対し、ゲイアートフェスティバルの主催者たちは「禁止は憲法違反」としてクアラルンプール高等裁判所に司法審査の申請を行いました。そして、ゲイアートフェスティバルが開催に値するものかどうかという裁判所での公聴会が、2月21日に開かれることになりました。
 主催者たちは「自分自身を表現しようとするこのフェスティバルの開催を妨げようとすることは、ゲイやトランスジェンダーへの差別以外のなにものでもありません」と語っています。
 ちなみに、アンワル氏は昨年の時点で「このイベントに賛成するか反対するかではない、問題はこれを攻撃する側にある」(開催の自由は当然として、同性愛表現を過剰に抑圧しようとする動きは極めて政治的なものである)と述べ、開催を支持しています(詳しくはこちら)。今年の総選挙で野党連合が勝利すれば、きっとこれまで通り、アート展やライブ、ドラァグクイーン・ショー、トークイベントなどに彩られた「セクシュアル・インディペンデンス」が晴れやかに開催されることでしょう。そして、同性間の性行為を禁じる法律の撤廃に向けた運動も盛り上がっていくことでしょう。


マレーシアのアンワル元副首相、同性愛裁判で無罪判決(AFP)
http://www.afpbb.com/article/politics/2849883/8273908?utm_source=afpbb&utm_medium=topics&utm_campaign=txt_topics

Malaysia: Anwar case shows why sodomy law must be scrapped(Amnesty International)
http://www.amnesty.org/en/news/malaysia-anwar-case-shows-why-sodomy-law-must-be-scrapped-2012-01-09

Seksualiti Merdeka challenges ban in Kuala Lumpur High Court(Fridae.com)
http://www.fridae.asia/newsfeatures/2012/01/10/11483.seksualiti-merdeka-challenges-ban-in-kuala-lumpur-high-court

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