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台湾で世界初のトランスジェンダーの閣僚が誕生

2016年09月03日

台湾でLGBTを支援する蔡英文氏が総統に就任し、年内にも同性婚法案が国会に提出されるとお伝えしましたが(詳しくはこちら)、さらに画期的で歴史的なニュースが届きました。トランスジェンダーの閣僚が誕生することになったのです。

 8月25日、台湾の行政院(内閣)の政務委員にトランスジェンダーの唐鳳氏(35)が就任することが明らかになりました。
 政務委員は日本で言う閣僚に当たります(英語だとMinister without portfolio=無任所大臣)。既存省庁のトップではなく、特定分野の業務を推進する必要性がある際に、省庁横断的な部署を置き、政務委員として任命するもの。今回、唐氏に与えられた役職は「デジタル総括政務委員」です。
 唐氏の就任は10月ですが、台湾社会はこの人事の話題に沸いているそうです。唐氏は歴代閣僚の歴史を、二重、三重にも塗り替えたためです。閣僚としては史上最年少、中卒の人として初、そしてトランスジェンダー(MTF)として初です。
 唐鳳氏は、新聞記者出身の両親のもとに生まれ、IQ180と天才級の頭脳を持ち、8歳からコンピュータプログラミングに関心を持ち、あまりにも早熟だったため、かえって学校に適応できなかったそうです。唐氏の両親と同僚だったある記者は「子どもの時から唐鳳はほかの子どもとの差が大きく、いじめにも遭っていた。学校に適応できず、当時の教育体制ではこれほどの天才を受容できなかった。そのため、両親も学校に頼らない独学による教育を研究し、『自分で勉強する』という子どもの言い分を支持した」と語っています。結局、唐氏は14歳の時に中学校を離れ、独学を選択。中学校を卒業できず、高等学校と大学にも入学できなかったといいます。
 しかし、1990年代半ばからコンピュータを独学してきた唐氏は、わずか16歳で起業し、プログラミング言語「Perl(パール)」など世界的に使われているオープンソースのプラグラミング言語の発展に寄与したことで、IT産業では誰もが注目する天才として認められました。その後、台湾内外のIT企業の顧問として活動し、米アップル社のコンサルタントとしても働いています。
 唐氏の最大の関心事の一つは、政府と情報のあり方だそうです。政府が持つ情報に誰もがアクセスできるようにした「開かれた政府」は、彼の実績のひとつです。台湾では長期間、政府の情報に対する透明性が高くありませんでした。政府の情報に普通の国民がアクセスすることが難しく、政府がどのような政策をどう推進・執行するのかを、国民がきちんと監督するには厳しい状況でした。これを是正するため、唐氏は台湾のIT関係者とともに、デジタル技術で法律や予算、経済統計、政策報告書、聴聞会の中継・録画・記録、公務員の海外出張内訳、国会議員の質疑内容など各種資料を整理したうえで「見える化」して、インターネットで公開し続けてきました。彼らが作った「開かれた政府」のWebサイトを通じて、国民は各種情報を閲覧できるようになりました。政府の情報を透明化し、見やすく整理された資料を提供することで、国民が政策について討論する土台をつくり、台湾における民主主義の発展に大きく貢献したと評価されています。
 唐氏は2005年に性別適合手術を受けました。両親は息子が娘になるという選択に反対せず、むしろ応援しました。母親は「この子がそうしたいと言うのなら、同意しない理由がない」と、父親も「性別を変えて今より幸せになれるのなら、妻と一緒に支持する」と語りました。 
 唐鳳氏の閣僚就任に対し、台湾国民の多数が肯定的に受け止めており、期待する声も多いそうです。トランスジェンダーだからと差別せず、能力を重視して任命したことは、蔡英文政権が人材活用の幅を広げたと評価され、また、セクシュアルマイノリティに対する差別が少しでも緩和されれば、との期待も高まっているそうです。


 こちらの情報によると、これまでにトランスジェンダーとして議員や自治体の首長を務めた方は29名(うち、アジアが7名)で、唐鳳氏は世界で初めてのトランスジェンダーの閣僚となるそうです。そういう方が欧米に先がけて台湾で誕生したことは、台湾の先進性を物語る象徴的なエピソードと言えるのではないでしょうか。





中卒で性転換者、台湾「異例の新閣僚」の正体 35歳の天才・唐鳳氏の素顔とは?(東洋経済)
http://toyokeizai.net/articles/-/133963

ネットの神童、中学中退、性転換… 異色の経歴誇る唐鳳氏、入閣へ/台湾(フォーカス台湾)
http://japan.cna.com.tw/search/201608270001.aspx?q=%E5%94%90%E9%B3%B3


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