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渋谷区がコミュニティスペース「#渋谷にかける虹」を設置、東京レインボープライドがイベント運営

2016年11月30日

 昨年、渋谷区で同性カップルも結婚と同等だと認める新条例が制定され、11月5日から同性カップルへのパートナーシップ証明書が発行されはじめました。その後もダイバーシティ推進のための施策を積極的に進めてきた渋谷区は、今度はLGBTのためのコミュニティスペースを設置することを発表しました。「LGBTコミュニティスペース #渋谷にかける虹」として、月に1度、渋谷男女平等・ダイバーシティセンター〈アイリス〉にLGBTが集まり様々なテーマで語りあうそうです。11月末からのスタートを前に、キックオフイベントが11月3日に行われました。 

 キックオフイベントの冒頭、長谷部健区長は「条例はパートナーがいる人のための施策。今後は思春期の子どもたちや、その親などのサポートも考えていきたい。このコミュニティスペースの開設もそのような取り組みの一つです」と意義を語りました。渋谷区のマークにレインボーカラーをあしらった「レインボーアイリス」もお披露目されました。
 続いて、第1部では「同性パートナーシップ条例」成立までを関係者が振り返るパネルディスカッションが行われ、杉山文野さん、渋谷区男女平等・多様性推進会議会長で弁護士の大川育子さん、府中青年の家事件を担当するなどこれまでLGBTの人権問題に関わってきた弁護士の中川重徳さんが登壇しました。まず杉山さんが区議時代の長谷部区長とともに同性パートナーシップ条例に取り組むことになったきっかけを語り、大川さんは条例制定に一から取り組んだ苦労を振り返りました。検討委員の8名も初めはLGBTについてほとんど知らない人が多く、まずは正確な知識を共有することからのスタートだったそうです。「私は人権擁護委員も長年つとめていますが、その委員に話してもなかなか理解が得られませんでした。子どもたちへの教育を含めた啓発が今後も重要だと思います」。推進会議メンバーの1人だった中川弁護士は、当初、証明書発行に際して公正証書2通を必須とする方向で進んでいたのを「パートナーシップ証明を行う場合の確認に関する特例」として適用される場合、1通のみ(15,000円程度の負担)で申請できるように変更した意義について語りました。「私は長年、LGBTの人たちの公正証書作成にも関わってきたので、それにかかる費用を知っていました。条例の前文には人権の問題だと書いてある。それなのにお金がある人しか利用できないのはおかしい」。しかし、事務方からは「緩くしすぎると制度として成り立たない」という危惧の声も上がり、議会で反対派の声が大きくなる恐れもあったため、現行案という落とし所になったそうです。中川さんは「行政とLGBT当事者が初めからつながっていれば、費用が高いという問題ももっと早く検討されていたはず。条例ができてゴールではない。こうして関わったからには、渋谷区には“本物”になってもらいたい。カギは当事者の意見を聞くこと。そして当事者も積極的に声を上げていってほしいですね」と語りました。
(なお、渋谷区の同性パートナーシップ証明に必須とされている公正証書作成について、行政書士であり実際に渋谷区の方の公正証書の作成にも携わってきた永易さんが、こちらの記事で「条例が特定の契約のみを指定したことは、私は法律家として問題があると思っています」と意見を述べておられます。併せてご覧ください)
 
 第2部は「LGBTの若者が期待するコミュニティスペース『これから』」と題して、NPO法人ReBit 代表理事の薬師美芳さんとメンバーによるディスカッションが行われました。ReBitでLGBT教育に取り組む薬師さんは、性的少数者がいじめにあいやすかったり、自死念慮を持つ傾向が高かったりするなど、子ども時代から成人するまでに多くの困難があることを解説。渋谷区で新設されるコミュニティスペースの意義を語りました。
 ReBitメンバーでゲイのソウシさんは、地方で過ごした高校時代まで、ネットでは当事者とつながることができてもリアルではなかなかつながることができず、孤立していたそうです。「コミュニティセンターは、様々な年代の人たちが集まり、性的少数者の若者が将来のロールモデルと出会えるような場所になってほしい」と語りました。
 
 渋谷区の「同性パートナーシップ証明書」の申請第1号となった東小雪さんと増原裕子さんも現在の心境を語りました。
「制度を利用して感じたのは安心感です。社会に認められたということが自己肯定感につながりました。肯定的に報じられアライが増えたことも嬉しいですね」(東さん)
「里親を希望する同性カップルは多いと思います。里親制度の管轄は東京都ですが、渋谷区から都に対して働きかけてもらいたい」(増原さん)

 長谷部区長は、次のステップについて「条例の制定前には批判の声も少なからずありました。しかしそのほとんどは正確な知識に基づかない差別的なものだった。これは正しくないと思いました。結果として条例制定後にはそのような声はなくなった。これからは次の段階。マジョリティの人たちに意識の変化を起こせるかどうかです。みんなで第2のウェーブを、ビッグウェーブを起こしていきましょう」と語りました。

 今後、月に1度のペースで渋谷男女平等・ダイバーシティセンター〈アイリス〉で、コミュニティスペース「#渋谷にかける虹」が開催されます。東京レインボープライドがイベント運営に携わります(東京レインボープライドといえば、機関誌『BEYOND』第2号の配布が始まっています。ぜひご覧ください)
 初回の11月29日は「みんなの理想のコミュニティスペースを教えて!」というワークショップで、たくさんのアイデアが出されたそうです。12月と1月は、世界エイズデーにちなみ、ぷれいす東京によるミニプレゼンが行われたあと、フリートークになるそうです。区内に住むLGBTの方であればどなたでも参加できます。


 
LGBTに交流の場、渋谷区が開設へ 証明書交付1年(日経新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG05H8B_V01C16A1CC1000/

LGBTの人向け、渋谷区が交流の場(産経新聞)
http://www.sankei.com/region/news/161130/rgn1611300002-n1.html

パートナーシップ証明書から1年、渋谷区の次なる取り組みは? 長谷部健区長「マジョリティに変化を起こせるか」(The Huffington Post)
http://www.huffingtonpost.jp/2016/11/04/shibuuya-lgbt_n_12808090.html

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