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性分化疾患の方が性別適合手術を受けずに戸籍上の性別を変更することを認められました

2017年08月21日

 男性ホルモンの分泌が過剰になる先天性の疾患(性分化疾患)により、身体および戸籍上の性別は女性で性自認は男性という(性別違和に苦しんできた)20代の2人に対し、家庭裁判所が2015年と2016年に女性の体のまま(性別適合手術を受けずに)戸籍を男性に変えることを認めていたことがわかりました。

 性分化疾患(Disorders of Sex Development=DSD、以前はインターセックスとも呼ばれていました)の原因の解明は、1990年代以降急速に進みましたが、現在でも診断は難しく、出生時の誤った性別判断や不適切な医療の例が報告されています。そのため日本小児内分泌学会が2009年以降、診断のガイドライン策定に着手し、現在、Web上で公開されています(「性分化疾患初期対応の手引き」「性分化疾患対応の手引き(小児期)」)
性分化疾患ホームページ」(厚生労働省難治性疾患克服研究事業:性分化疾患の実態把握と病態解明ならびに標準的診断・治療指針の作成に関する研究班、日本小児内分泌学会:性分化委員会、日本小児泌尿器科学会)によると、諸外国の文献上のデータから、性分化疾患は約4500人に1人と推定されていますが、正確な患者数は不明です。遺伝的男性において遺伝的女性よりも、その原因が多様であり、発症頻度も高いという経験則が知られています。(なお、日本インターセックス・イニシアティヴは、2000人に1人の割合であるとしています)
 性分化疾患は身体・生物学的な性別が生まれつき非典型な状態のことを指し、今回のように性別変更の法的手続きが生じる場合もありますが、性同一性障害(を含むトランスジェンダリズム)とは異なるものです。

 海外では、例えば、国際レズビアン・ゲイ協会(ILGA)の正式名称が「International Lesbian, Gay, Bisexual, Trans and Intersex Association」というインターセックスを含めたものになっていたり、LGBTIとかLGBTIAQなどの表記も見かけたり、LGBTと同じセクシュアルマイノリティ(クィア)の仲間であるとする立場の表明があります。
 日本でも、1996年の伏見憲明さんの『クィア・パラダイス 「性」の迷宮へようこそ』で、初めてインターセックスの当事者団体を設立した橋本秀雄(ハッシー)さんがフィーチャーされ、世間の方たちの認知につながるきっかけとなりました(橋本秀雄さん自身も『男でも女でもない性―インターセックス(半陰陽)を生きる』『性を再考する―性の多様性概論』などを著しています)。また、2003年から『One more Kiss』『Kiss』誌上で掲載された六花チヨさんの漫画『IS 〜男でも女でもない性〜』が話題となり、2011年にはテレビ東京でドラマ化されました。新井翔さんの漫画『性別が、ない!』シリーズ(2005年〜)では、新井さん自身の経験が明るくオープンに表現され、現在も関連の書籍が発売されるほどの人気を博しています。 
 一方、性分化疾患の当事者の中には、特に日常生活で困難を感じることもなく、性分化疾患であることを周囲に伝えることもなく、LGBTとともに性的マイノリティとして活動する(そこに含められる)ことをよしとしない方たちもいらっしゃいます。
 日本インターセックス・イニシアティヴのサイトには「インターセックスはLGBT運動の一員なのか?」というページがあり、LGBTにIを付け加えることについての様々な考え方や立場が紹介されていて、この問題が決して単純ではないことがよくわかります。
 
 性分化疾患は性同一性障害とは異なるものであるということを踏まえつつ、今回、身体および戸籍上の性別と性自認が異なる性分化疾患の方たちに性別適合手術なしで戸籍上の性別変更が認められたことは、当事者の方の性別違和を解消するうえで本当に喜ばしく、家裁の判断は素晴らしいものでした。
 そして、今回の判断によって、結果的に、日本でも初めて、性別適合手術を受けることなく(生殖能力を保ちながら)戸籍上の性別を変更することが認められました(海外ではすでに性別適合手術なしの性別変更を認める流れになっています)。手術で生殖機能をなくすことを必須とする現状の性同一性障害特例法は、国際的には人権侵害とも批判されていますが、今後の要件緩和に道を開くきっかけになるかもしれません。



性分化疾患 手術せず性別変更 「心の性」重視し家裁許可(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20170820/k00/00m/040/114000c

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