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急速に変わりつつあるキューバで、来年にも同性婚が認められそうです

2018年10月29日

 キューバが憲法を改正し、2019年2月の国民投票を経て発効する見通しですが、この新しい憲法のなかで、結婚の平等(同性婚)が認められるようです。
 10月24日、キューバのペレイラ駐日大使が都内の在日キューバ大使館で会見を開き、同性婚に関しては「あらゆる差別に反対という議論がまずあって、その中で同性愛への差別もなくすという話になった」と経緯を説明しました。今はカミングアウトする外交官もいるそうで、社会の意識改革が進んでいることを物語っています。しかし、カトリック教徒が多い同国ではまだまだ抵抗が根強い、とも。養子縁組を認めるのかどうか、学校教育で教えるのかどうか、といったことも議論になりそうです。
 
 キューバのゲイのイメージとしては、映画『苺とチョコレート』(ゲイであるがゆえに祖国から追われる者と、彼に一方的に愛されて困惑する堅物の共産主義者、二人の青年が次第に心を通わせ、真の友情に結ばれていく過程を描いたヒューマン・ドラマ)、あるいは『夜になるまえに』(投獄され、地獄のような獄中生活を経て、アメリカに亡命するゲイの作家、レイナルド・アレナスの伝記映画)を思い出す方もいらっしゃるかもしれません。いずれも、キューバでは生きていけず、亡命を余儀なくされるというお話です。
 
 キューバでは1965年から68年にかけて、同性愛者は宗教の熱心な信者などとともに「帝国主義と資本主義の手先」とされ、思想矯正を目的とした強制労働施設に送られました。71年から76年の「灰色の5年間」と呼ばれる時期には、党の方針にそぐわないとされた文化人らが公職から排除され、同性愛者も再び迫害対象になりました。80年には文化人や同性愛者が多数、亡命しました。その後、政府内で性的マイノリティの権利について見直しが徐々に始まりましたが、社会ではタブー視され続けました。93年、「灰色の5年間」の同性愛者を扱った映画が大ヒットし、問題が認識されるようになりました。米メディアによると、性的マイノリティの団体が結成されましたが、共産党支配下で自由が制限されており、97年に解散に追い込まれたといいます。
 ゲイであることとHIV陽性であることを公にして活動するジャーナリストのフランシスコ・ロドリゲス氏は、「革命は黒人や農民、女性の解放を目指したが、同性愛者は視野になかった。逆に革命家の力強いイメージから「マチスモ」(男性優位主義)を強めた」と指摘します。

 そんなキューバに転機が訪れたのは、2000年のことです。ラウル・カストロ前国家評議会議長の次女で、性的マイノリティの権利擁護に熱心なマリエラ・カストロ氏が国立性教育センター長に就任したのです。政府が動き始め、2008年以降は性別適合手術を無料で受けられるようになりました。彼女は2008年以降、ホモフォビアをなくすためのデモを自ら主催しているほか、同性カップルの結婚式ならぬ「愛の儀式」も執り行っているそうです。
 2010年には、フィデル・カストロ元議長が同性愛者迫害について「重大な不正義だ。当時の責任は自分にある」と認め、世界的なニュースになりました。
 
 そして今年7月、同性婚を認める憲法草案が公表されました。職場や町内会など改憲案を議論する場では「モラルの崩壊につながる」との批判も起きたそうです。
 国会で同性婚容認を訴えてきたルイス・アンヘル議員は「憲法が理念を掲げ、法制度として社会に根を下ろせば、国民の意識も変わる。今はおかしいと思うことも当たり前になる」と改憲の意義について語りました。
 ディアスカネル国家評議会議長は9月、ベネズエラのテレビ局の取材に対して「(同性婚は)賛成だ。あらゆる差別をなくすことにつながる」と語りました。
  
 キューバでは今年4月、国家元首に相当する国家評議会議長が、ラウル・カストロ氏から革命後世代のディアスカネル氏に交代しました。今回の憲法改正も「カストロ後」の体制づくりの一環です。
 結婚について現行憲法は「男性と女性が自発的に取り決めた関係」と規定していますが、改正案では、性別を明記せずに「二人の個人が自発的に取り決めた関係」と改めるそうです。同時に、人種、民族、性別、性的指向や性自認、障害の有無による差別を禁じるという規定も盛り込まれます。国会審議を経て来年2月、国民投票にかけられる予定です。

 フランシスコ・ロドリゲス氏は、条文に「性的指向と性自認に基づく差別禁止の原則」が盛り込まれたことで、新たな文言が他の法律および政策面でもキューバのLGBTコミュニティ保護に向けた変化を促す可能性がある、と述べました。一方で、こうした「夢」を実現する動きを、あらゆる手段を用いて押しつぶそうとする政治的・思想的勢力も存在すると警告し、「この先の闘いは簡単なものではない」とも述べています。

 無事に来年2月、キューバで結婚の平等が認められれば、世界で25ヵ国目の同性婚承認国となります。カリブ海に浮かぶ島国の中では(アメリカの海外領土であるプエルトリコを除き)初となります。また、結婚の平等(同性婚)を認めるよう憲法を改正する国としてはアイルランドに次いで2ヵ国目ではないでしょうか。
 なお、憲法で「性的指向に基づく差別は認められない」とされる国としては、南アフリカ、スウェーデン、ポルトガル、ネパール、メキシコ、エクアドル、ボリビアに次いで8ヵ国目となります。




同性婚、私有財産容認へ=大統領や首相も復活-改憲案、国民討議進む・キューバ(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018102800414

キューバ、憲法を大幅改正へ 「カストロ後」にらむ (日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34630800X20C18A8910M00/

革命からこぼれ落ちた同性婚 キューバで容認の議論進む(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASL9F2DQBL9FUHBI00K.html

「カストロ家」の闘い 今は「同性婚」(産経新聞)
https://www.sankei.com/premium/news/150523/prm1505230011-n1.html

キューバで同性婚に道筋、改憲草案は婚姻で性別に触れず 党機関紙(AFP)
http://www.afpbb.com/articles/-/3183317

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