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名古屋市が性的マイノリティに関する市民意識調査を実施、当事者は1.6%という結果に

2018年12月19日

 名古屋市は12月17日、無作為抽出の1万人(回答があったのは4655人)を対象に7月に行った「性的少数者など性別にかかわる市民意識調査」の結果を公表しました。
 自身を性的マイノリティだと答えた方は1.6%となりました。専門家からは「知られるのが怖くて答えられなかった当事者もいるのではないか」との指摘がなされています(女子大小路を中心に活動している「レインボーなごや」は、「これは名古屋市民1万人を対象に無作為に送っているものです」といった文言がないため、調査票がいきなり送られてきたものの疑心暗鬼に陥った当事者も少なくなかったと推測される、と指摘しています。また、性別が「男性」と「女性」しか選べなかったことを批判しています)。家族と同居している方の場合、調査票を見られる可能性があり、本当のことを書けなかった方もいらっしゃるでしょうね…。ちなみに「性的マイノリティの当事者ですか?」という質問に対し、「いいえ」ではなく「無回答」だった方が3.2%もいらっしゃいました。この「無回答」が、嘘はつきたくないけど当事者であると回答することもためらわれるような方が含まれていたと見ると、性的マイノリティは1.6%~4.8%ということになります(リアリティが感じられる数字じゃないでしょうか)
 
 名古屋市によると、自治体が1万人以上の規模で調査を実施するのは政令指定都市では初めてだそうです。調査は無作為抽出した18歳以上の1万人に郵送配布し、有効回答数は4655件でした。調査は18項目(1項目にたくさんの質問があるものもあります)で、「LGBTを知っているか」などの知識を問うものから、人権上問題だと思うのはどういうことか、などの意見を聞くものまで多岐にわたっています。有識者らによる会議を経て決めたといいます。
 
「性別役割分担意識や性的少数者に関する意識と認知度」というテーマでは、「男の子は男の子らしく、女の子は女らしく育てるべきだ」「女性のような男性を見ると、不快になる」「男性のような女性を見ると、不快になる」「男性が男性に恋愛感情を抱くのはおかしい」「女性が女性に恋愛感情を抱くのはおかしい」「男性のは女性のような服装をする自由がある」「女性には男性のような服装をする自由がある」「同性を好きになることも性の多様性として認めるべきである」という質問項目が設けられ、いずれも、女性よりも男性のほうが理解がなく(差別的で)、年齢が上がれば上がるほど理解がない(70歳以上では顕著)という結果になっています。
「同性愛者やトランスジェンダーに対する寛容性」というテーマでは、父親、母親、兄弟姉妹、配偶者、子ども、友人、職場の同僚など、身近な人たちから性的マイノリティであると打ち明けられたときに、受け入れられるかどうか、という質問をしています。最も受け入れられると回答した人が少なかったのは、配偶者から同性が好きだと打ち明けられたケースで(全体で10.9%のみ)、最も受け入れらると回答した人が多かったのは、職場の同僚・同じ学校の人からトランスジェンダーであると打ち明けられたケースでした(全体の64.8%)
 周囲に性的マイノリティの人がいるか?という質問では、「いる」と答えた方が全体の12.6%しかいませんでした(友人や、職場の同僚・同じ学校の人が多かったです)。また、カミングアウトを受けたことがあると答えた方は全体の9.7%にとどまりました。
 性的マイノリティの当事者であると回答した76人の方々のうち、バイセクシュアルと答えた方が42.1%、トランスジェンダーの方が15.8%、Xジェンダーの方が13.2%、ゲイの方が13.2%、レズビアンの方が5.3%、クエスチョニングの方が3.9%だったそうです。
 当事者が抱える悩みとしては、家族の理解がない(28.9%)、テレビやインターネットなどで偏見や差別がある(27.6%)、友人や学校、職場の理解がいない(26.3%)、周りに相談できる人がいない(22.4%)が多くなりました。自分が性的マイノリティであることを誰にも打ち明けていない当事者は、26.3%に上りました。打ち明けた相手では性的マイノリティの友人が最も多くなりました。
(全調査結果は、名古屋市公式サイトからご覧ください)

 市の担当者は、「当事者は偏見や差別に悩んでいるとの結果もある。関係局とも連携し、正しい理解を伝えられるようにしたい」と語っています。
 名古屋市立大人間文化研究科の菊地夏野准教授(社会学ジェンダー論)は、「当事者も納得できるように分析し、結果を生かしてもらいたい」と語りました。また、「レズビアンの割合がゲイの割合に対して少ない。レズビアンのほうが結婚していたり子どもがいたりすることが多く、回答をためらった人もいるのではないか」と指摘しています。

 今回の調査は、初の政令指定都市による1万人規模の無作為抽出データということで、今後、いろんなところで参照されていくと予想されます。
 1.6%という数字については、いろんな見方が出てくると思われます。8%という数字(2016年のLGBT総研や連合の調査結果)への対抗のような意味合いで「そら見たことか、実態はこんなものだ」的に吹聴する人も現れるかもしれません。確かに「8%はちょっと多すぎ…実態を反映してないのでは?」と感じられた方も少なくなかったようですが、この8%の中にはその他(アセクシュアルやクエスチョニングなど)の方が多く含まれていて、L、G、B、Tに限って見ると、LGBT総研で5.9%、連合で4.9%でしたので、いわゆるLGBTはだいたい5%前後くらいであると言え、今回の調査結果も「無回答」を含めて最大4.8%だと見ると、この数字に合致します。また、名古屋市は、人口で見ると大都市ですが、東京ほど地方から集まってくるLGBTが多いわけでもなく、名古屋が地元であるという方も多いので、それほどオープンではない(パレードは開催されているものの参加者はあまり多くないという現状。名古屋在住のゲイの方からも「カミングアウトしたがらない人が多い」とよく聞きます)という話もあります。一方で、NLGR+をずっと開催してきていたり、素晴らしいコミュニティを誇る街です。他の街とは少し異なる独自の地域性や文化があるようにも感じられます。今回の結果がそのまま日本のどまんなか(平均)と見ることはできないのではないでしょうか。
 今後、全国のいろんな街で、同様の調査が(適切に)実施されていくといいかもしれませんね。

  

 
「自分は性的少数者」1・6% 名古屋市が市民意識調査(中日新聞)
http://www.chunichi.co.jp/article/aichi/20181218/CK2018121802000049.html

LGBTに対する配慮足りない 支援団体が名古屋市の調査に改善申し入れ(中京テレビNEWS)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181212-00010012-sp_ctv-l23

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