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パレードへの熱い思い~「Save the Pride」代表のケータさんにインタビュー

東京プライドパレード中止の発表を受けて若い方たちが立ち上がり、8月11日に「Save the Pride」というパレードが緊急開催されることになりました。代表のケータさんにパレードへの熱い思いを語っていただきました。

パレードへの熱い思い~「Save the Pride」代表のケータさんにインタビュー
(写真は「Save the Pride」実行委員会がパレード会場の代々木公園で撮ったものをお借りしました)



8月11日(土)に予定されていた東京プライドパレードが中止に…という発表を聞き、「そんなのいやだ!」「みんなのお祭りを復活させたい」という思いを強くした若い方たちが立ち上がり、「Save the Pride」というパレードが緊急開催されることになりました。そこで、実行委員の方たちが二丁目のコミュニティセンター「akta」でミーティングをしているところにおじゃまし、代表のケータさんにパレードへの熱い思いを語っていただきました。(聞き手:後藤純一)


代表のケータさん

——ケータさんが最初にコミュニティ活動やパレードに関わりはじめたきっかけを教えてください。

僕は大学1年のときに、早稲田大学のGLOWというセクシュアルマイノリティサークルに入って、それがデビューのきっかけでした。最初の頃は、本当に楽しくて、ゲイのイベントは何でも行きたいっていう気持ちで、夏にパレードにも参加しました。

——初めてのパレードはどうでした?

それまではカミングアウトとかイヤだったんですけど、「早稲田大学GLOW」っていう看板を出して歩いてたら、沿道の人が「私も早稲田だよ」って声をかけてくれたりして。ノンケの人でも応援してくれるんだなって、ゲイってことを出してもいいんだなって、考えが変わった。ものすごく印象深かったです。

——それまではゲイなんて言ったら何を言われるか…と思ってたけど、世間の人が受け入れてくれるってことを実感できたんですね。

自分は三重県の田舎で育ったこともあり、ゲイってことは一生、外では言わないつもりだったんです。

——パレードに参加してから、いろいろ行動するようになったのかな?

当時のGLOWは人数が少なかったので、もっと入ってきてほしいという思いで、いろんなところに顔を出してたんですね。そうしたら、授業でジェンダーのことを勉強してるノンケの人がインタビューさせてほしいと来るようになったんですね。それで、自分の経験をしゃべったりするうちに、だんだん、今まであまり向き合えなかった、自分の過去というか、悩んでることを話せるようになってきて。正直、セクシュアリティのことをあまり掘り起こしたくなかった。

——なるべく表に出さずに生きていこうと思っていた。

本音を言うと、せっかく大学も入ったんだし、いい会社に入って、たまに二丁目で遊んでいければいいかって。でも、自分が悩んでたこととか抱えてた問題に向き合えるようになってきて、「なんで自分が悩まなくちゃいけなかったんだろう?」って思えてきて。

——何も悪いことしてないのに、蔑まれたりバカにされたりするのはなぜなんだろう?と。

10代のゲイの自殺ってアメリカだけじゃないと思うんですけど、若い子たちがなんであんなに悩まなくちゃいけないのか…そういう社会っておかしいと、そういう社会の方に問題があるんじゃないかと思うようになって。

——そういう社会を、ちょっとでも変えていこうと。

そうですね。それを変えていくために、何かしなくちゃいけないんじゃないかと思うようになりました。正直言うと、それまでは、自分が何かするというよりは「誰かがやってくれたらいいのに」と思ってた。けど、自分がやらなきゃ変わらないのかなって、行動しなきゃいけないのかなって思うようになりました。それで、2006年の11月に早稲田の文化祭で(大阪府議として初めてレズビアンであることをカミングアウトした)尾辻かな子さんをゲストにお招きして講演会をやりました。

——なるほど、そうでしたか。

講演会をやってみて、やっぱり自分が何か変えたいと思ったら自分が動かなきゃいけないんだと思った。実感として。

——2007年には尾辻さんの選挙のお手伝いをしてましたね。街頭で一生懸命ビラを配ってる姿を憶えています。ビラ配りって、受け取ってもらえずにスルーされることが多くて、心が折れそうになったりすると思うんですが、ケータくんはめげずに「お願いします!」ってずーっと元気よくがんばってて、胸を打たれました。

何かが変わるんじゃないかという思いで。でも僕はそんなに気にしてなくて。けっこうもらってくれたと思いますよ。

——2000年にパレードをやるってなったときに、ある二丁目の実力者の方が、それまであまりパレードって好きじゃなかったそうなんですが、砂川さんが暑いなか、二丁目の何百軒ってあるお店にポスティングをしているのを見て「この人のことは応援しようって思った」っていう話をお聞きしたことがあって。自分の足でっていうか、汗水流しながらひたむきに一生懸命やってる姿に、人は胸を打たれるんだと思います。ケータくんはそういうひたむきさを持ってる人だと思います。

ありがとうございます。でも本当に、ぜんぜんつらいとかは思わなかったんです。二丁目でビラ配りしてたときに「ちょっとあんた、TV持ってる?」って言われて、「ないです」って言ったら、「あたし今度引っ越すからさ、TVあんたにあげるわ」って言われて、もらいました(笑)

——「あんたえらいわね」ってアメくれるおばちゃんみたいな(笑)

持ってなさそうに見えたんじゃないですかね。

——その後、2007年の夏にはパレードに学生フロートを出したんですよね?

はい。2006年にRainbow College(セクシュアルマイノリティの学生がよりよい学生生活を送れるように考え、行動するためのインカレネットワーク)を立ち上げて、その年のパレードにも学生で集まって歩こうっていう企画を出して、2007年にはフロートとして参加できました。

——そして、ちょっと飛んで、2010年の3月に、学生中心のミニパレードをやってましたよね。花園公園から出発して、二丁目から新宿通りを通って、西新宿の公園まで歩いた。

2008年と2009年はパレードがなかった。僕はパレードにふつうに参加してたのに、後輩たちは、パレードを知らない人ばかりで、怖いとか、なんかリアルじゃないイメージを抱いていて…。それで、学生生活最後の後輩へのプレゼントとして、体験させてあげたいと思って。

——フロートで参加するのと違って、警察との交渉などもやったと思うんですが、大変だったんじゃないですか?

学生だったので、時間はたっぷりあったんで、そんなに大変では。人生で警察と交渉する機会ってなかなかないよなと思いながら、新宿警察に2回行って、警視庁にも行って。楽しかったです。

——その後、就職して、学生の時のようにはいろいろできなくなってるのかな?と思いますが、今回またパレードをやろうと思ったきっかけは?

2年ぶりの東京プライドパレードを楽しみにしていたのに、なくなったのが本当に残念で。「なんで中止になったりしちゃうの?」って思って。中止にしちゃダメだと思うんですよね。パレードって、自分たちが自分たちであることを肯定する、僕たちの年に1回のお祭り。僕が初めてパレードに出たときの感動を、またたくさんの若い人たちにも味わってほしいと思うのに、それが今年は経験できなくなっちゃうのは悲しい。絶対、守らなくちゃいけないイベントだと思って。

——とはいえ、やりたいと思っても、勝手にできるわけじゃないので、東京プライドの方と話し合って、しかるべき手続きを踏んで、やることになった?

まず、東京プライドの評議員の方に連絡をとって、相談しました。それで、じゃあ引き継ぎましょうということになって、代々木公園にいっしょに行って、公園の申請をし直して。

——代々木公園を使うためには、東京都とか国とかの後援(バックアップ)が必要だと思いますが、その辺りは大丈夫そうですか?

6月25日に代々木公園の使用許可が下りたので、東京都福祉保健局(以前からパレードに後援してくれているHIV予防啓発関連の部署)に後援を依頼する書類を提出して、現在申請中です。申請の受理に1ヵ月かかるそうなので、8月頭にはOKをいただけるかと思います。

——あとはスポンサーを募集したり、フロートとかブースで協力してくれる人、ボランティアスタッフを募集したり、ですね。実行委員会のみなさんは、学生さんだったり?

いえ、若いゲイやレズビアンの社会人がほとんどです。実は、LGBT成人式に刺激を受けて、今年の秋、LGBT文化祭っていうイベントをやろうと企画していて、半年くらい前から集まっていろいろ企画を練っていたんです。そのメンバーで話をして、パレードをやろうということになりました。そのメンバーで、こないだレディ・ガガが来日したときに空港で「JPN LGBT♡GAGA/SING FOR US/J-PRIDE」というボードを持ってアピールし、ライブでガガ本人に読み上げてもらえたりしました(詳しくはこちら

——ええ? あの報道写真に写ってたボードですね? 素敵!

ぜひ来てくださいというお願いをしていたりします。今のところ好感触なので、もしかしたら…

——本当に来てくれたら感涙…ですね。 万が一、本当にガガ様ご来場ということになったらそれだけでもスゴイことになりそうですが、とりあえずそれはおいといて、当日、こういうパレードにしたいなというイメージはありますか?

「若く、元気に、楽しく!」です。「性の多様性を祝福し、社会に広める」「HIV/AIDSの予防啓発」という趣旨を掲げていますし、さまざまな主張をもつ方がいらっしゃると思いますが、まずは、パレードを楽しむってことがいちばん大事なのかなって思ってます。まずはセクシュアルマイノリティのためのセクシュアルマイノリティによるイベントであり、自分たちを肯定し、祝福する、そういう感覚を楽しんでほしい。今企画しているのは、レディガガやPerfrume、Glee、二丁ハロ、女装甲子園などの楽しいパフォーマンス。それから、「LGBTと子育て」パネルトークや同性結婚式もぜひやりたいと思っています。パレードの方も、ダンスの振付けがあったり、ボンボンを持ったり、歩くLGBT写真展を開催したり、楽しいパレードを実現しようと思っています。

――楽しそうな企画が盛りだくさんですね。若さを活かし、これまでにない斬新なことを実現してくれそう。

それと、僕らもびっくりしているんですが、すでにいろんな方が積極的に支援してくださっているんです。スポンサーを紹介しますよとか、以前ボランティアやってた方を紹介しますよとか。

——すごーい。夏に向けてああしようこうしようって思ってた人が、いったん残念…と思ってたけど、やるなら、じゃあって感じで。

そうですね。本当にありがたいです。コミュニティのパワーを感じました。さらにこの輪を広げていけたらと思っております。

——わかりました。時間もないなか、いろいろ大変だと思いますが、がんばってください!

 

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