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REVIEW

映画『SAUVAGE(ソヴァージュ)』

オンライン映画祭「マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル(myFFF)」で上映されたフランス映画。22歳の男娼・レオの、激しくも脆い、野生的な「生」を乾いたテイストで描いた作品です。 assets/images/review/CINEMA2/Sauvage/svg_top.jpg

街娼として男性を相手にセックスしながら、愛やぬくもりを渇望する青年・レオの、ヒリヒリするような、激しくも脆い、野生的(SAUVAGE)な「生」を、乾いたテイストで描ききった、実にフランス映画らしいゲイ映画でした。レビューをお届けします。(後藤純一)


 フランス映画産業の発展のため、フランス映画の普及を目的として1949年に設立されたフランス文化・通信省の非営利外郭団体「ユニフランス」が主催するオンライン映画祭「マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル(myFFF)」の中の1作品として上映(配信)されていた作品です(iTunes Storeでも購入できますが、myFFFでは半額くらいで提供されていました)。ロコツな性描写、クスリ、窃盗、流血…仮にもフランス政府が関係する映画祭でこんな作品が上映されるなんて!とビックリするような内容です(褒めてます)
  
<あらすじ>
22歳の青年レオは、街娼をして僅かな金を稼いでいた。次から次へと行き交う男たちに、彼は愛を求め、身体を差し出す。明日がどんな日になろうとも、それはレオの知るところではない。彼は今日も街に繰り出してゆく。胸に高鳴る鼓動を感じながら……

 パリの郊外、ブローニュの森かヴァンセンヌの森だと思われますが(空港に近いのでヴァンセンヌかも)、夜な夜な男性の街娼(立ちんぼ)が通りに立ち、客が車をゆっくりと走らせながら品定めして、気に入ったら近づいていって交渉し、話がまとまったら車に乗せて…という光景が繰り広げられます。
 22歳のレオも、そんな男娼の一人です。家もなく、持ち物もほとんどなく、毎日同じパンツをはいて、ホームレス同然の生活です。でも、レオが恋したマッチョ兄貴が「早くこんな生活から抜け出したい」と言い、しっかり現実を見て行動しているのとは対照的に、レオはこの自由気ままな生活を気に入ってるように見えます。そこが、この映画のメインテーマです。
 映画をご覧いただくと実感できると思いますが、街娼というのは決して楽な仕事ではなく、本当にイヤな客もいるし、時にはトラブルもあります。フランスでは2016年に買春が非合法とされ(男女ともに)セックスワーカーが安全に働くことができなくなり、こうして街娼という不安定で危険なやり方しかできなくなったという事情があります(今までに何人ものトランスジェンダーの街娼が殺されているそうです)。レオもまた、危険やトラブルに直面します。でも、自分の力では解決できません…。
 レオはそんなにマッチョじゃないし、すごいイケメンというわけでもないし(金子國義さんが描く少女のような、ちょっと悪い顔をしているのはアガります。フランスっぽい)、若いということ以外、取り立てて魅力もない、学もない、腕力もない、コミュ力もない、情けない、脆い22歳です。だけど、自由に生きる権利はあります。誰にも飼い慣らされず、憐れみや施しも受けず、好きなものは好き、嫌いなものは嫌いと言える自由。 
 
 もし自分が同じように、自由だけど危険もいっぱいな街娼という立場に置かれたら、最初は気ままでいいやと思うかもしれないけど、すぐに、誰でもいいから早く救ってくれる人をつかまえて「足抜け」しようとするだろうな、と思います。だから、レオを本気で心配し、世話してくれる人が現れたら、それこそが幸せだろうと、勝手に決めつけていました。でも、そうじゃなかったんです…自分のものさしを当然のように他人に当てはめることの傲慢さを思い知らされました。
 それなりの仕事に就いて、雨露をしのげる家に住んで、安定した生活を営むことを当たり前だと感じ、できればもっといい生活をしたいとか、旨いもの食いたいとか、スマホがない生活なんてありえないと感じるのが「常識」となっている今の時代において、そんな「俗事」を一切スルーして、本能の赴くまま、原始的に(SAUVAGE)セックスと恋に生きるレオは、スゴイと思います。純粋だとも言えますし、何か「イデア」的な存在であるとも言えます。人は皆、レオという鏡に反射した自分の姿を見て、なんと不純で、打算的で、ずる賢いんだろう、と思わされるのではないでしょうか。
 そういう意味で、レオはゲイである必然性があった…ゲイじゃなければ成立しなかった気がします。
 
 心理描写とかほとんどなく、叙情性もなく、乾いたテイストで見せていきます(時々、展開の速さに面食らいます)
 主演のフェリックス・マリトーは素晴らしい演技を見せていると思います。
 そして、ラストシーンの美しさが際立っています。
 個人的に、レオス・カラックスの映画みたいだな…と思いました(偶然か必然か、「マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル(myFFF)」でカラックスの『汚れた血』が上映されていました)。実にフランス映画らしい映画だと思います。
 ただし、流血や暴力的なシーンが苦手、主人公が犯罪を犯すシーンで胸が苦しくなる、イヤな奴を見るのが耐えられない、といった方は、観ないほうがいいかもしれません。

 


 
『ソヴァージュ』SAUVAGE
2017年/フランス/1時間39分/監督:カミーユ・ヴィダル=ナケ/主演:フェリックス・マリトー、エリック・ベルナール
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