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REVIEW

フライングステージ「OUR TOWN わが町 新宿2丁目」

8月27日(火)、下北沢OFF OFFシアターで劇団フライングステージの新作「OUR TOWN わが町 新宿2丁目」が幕を開けました。初日レポートをお届けします。

フライングステージ「OUR TOWN わが町 新宿2丁目」

8月27日(火)、下北沢OFF OFFシアターで劇団フライングステージの新作「OUR TOWN わが町 新宿2丁目」が幕を開けました。今回は初の試みで、初日の前にプレビュー公演(ゲネプロ的なもの?)が行われました。あまり完成度が高くないだろうことは容易に想像できる公演だったにもかかわらず、実にたくさんの方が詰めかけ、行列をつくっていました。舞台のレポートをお届けします。(後藤純一)




 江戸時代、内藤新宿という宿場町として栄え、戦後は赤線地帯だった新宿二丁目。そこには、いろんな人が生き、いろんな人の思いが去来してきました。旅籠(という名の女郎宿)で働いていた芸者や女郎もいましたし、夏目漱石も幼少時代をこの街で過ごしていましたし(太宗寺の向かいが生家だったそうです)、赤線で働いていた売春婦たちもいました。赤線が廃止された後は、たくさんのゲイバーができて世界有数のゲイタウンとなり、この街で大勢のゲイたちが出会い、さまざまなドラマを繰り広げ、レインボー祭りを開催し、今も夜ごと楽しいパーティを繰り広げているわけですが、一方で、ずっとこの街に住んでいる人たちもいます。そういうふうに、必ずしもゲイだけじゃなく、新宿二丁目という街を俯瞰し、歴史をひもときながら、この街に生きてきた人たちの日常の1コマを少しずつ切り取っていくような、そんな作品でした。

 二丁目という町はある意味、ハコであり、それ自体がテーマというわけではなく、そこに生きてきた人たちをどう描くか、何を表現するか、ということが大事だと思いますが、僕は、たくさんの亡くなった方たちが実は二丁目という街を見守っているんじゃないか、という視点が素晴らしいと思いました。
 かつて二丁目で生き生きと活躍し、二丁目という街に華やかさや笑いや感動や色気や文化を生み出していた、けど、残念ながら今はもうこの世にいない方たち――たとえば、バー『クロノス』のクロさん、川口昭美さん、隼人さん、春日亮二さん、伊達ロザンナさん、真崎航さん、そしてフライングステージの羽矢瀬さん――そんな方たちへの追悼の気持ちが込められている舞台だと感じました。 
 お盆に限らず、折にふれて亡くなった方のことを思い出し、その声に耳を傾け、思いを受け継ぐこと…それはとても大事なことなんじゃないかと思います、ゲイとかノンケとか関係なく、人間として。そのことを、この舞台は思い出させてくれたような気がします。

 それでいて、ゲイたちの生き生きした青春が描かれ、実にさまざまなタイプのゲイバーの様子(ゲイの生態)の紹介があり、レインボー祭りの感動が再現され、とても楽しい舞台でした。個人的には、「赤線最後の日」のシーンで岸本さん&石関さんが実に生き生きとパンパンを演じていたのがツボでした。

 舞台美術はとてもシンプルでしたが、照明を効果的に用い、キャストの方が全員、トップスが純白、ボトムスが黒という衣装で統一されていたこともあり、さわやかで清潔感のあるステージになっていたと思います。

 もしかしたら、激しいケンカの場面もないし、女装も出てこないし、妙に舞台進行の語りが多いし、いつものフライングステージの芝居とはちょっと違うてかも…という印象をもつ方もいらっしゃるかもしれません。それは、ソーントン・ワイルダーの「わが町」を下敷きにした作品だから、というのも一つの理由だと思います。逆に、「わが町」を知っている方には、より面白く観ていただけると思います。

 フライングステージ「OUR TOWN わが町 新宿2丁目」は9月8日まで上演中です。ぜひ足をお運びください。

フライングステージ第38回公演「OUR TOWN わが町 新宿2丁目」
日程:8月27日〜9月8日
会場:下北沢 OFFOFFシアター
チケット: 前売3,500円、ペアチケット6,500円、トリプルチケット9,000円、学生2,500円、当日券3,800円、当日学生券3,000円、プレビュー公演 全自由席2,500円(予約・前売り、当日とも)
作・演出: 関根信一
出演: 石関準、遠藤祐生、岸本啓孝、木村佐都美、小林高朗、水月アキラ、関根信一

(画像は、劇団フライングステージから提供していただきました。Photography : Joshia Shibano)

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