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劇団フライングステージ第40回公演『Friend, Friends』

10月28日、フライングステージの新作公演『Friend, Friends』が幕を開けました。もともとフライングステージが持っていた「人情」の魅力と関根さんの「ゲイ魂」が結晶した最高傑作です。脚本が本当に素晴らしい! ダメ押しのように次々と…号泣必至です。

劇団フライングステージ第40回公演『Friend, Friends』

10月28日、フライングステージの新作公演『Friend, Friends』が幕を開けました。もともとフライングステージが持っていた人情(ベタな泣かせ)と、関根さんのゲイ魂が結晶した、渾身の傑作です。脚本が本当に素晴らしい。ダメ押しのように次々と…号泣必至です。レビューをお届けします。(後藤純一)

 

 奇しくも渋谷区で同性パートナー登録の受付が始まった2015年10月28日、下北沢のOFF OFFシアターでフライングステージの新作公演『Friend, Friends』が幕を開けました。
 『Friend, Friends』は、「渋谷区や世田谷区で同性パートナーシップ制度が認められるつつある2015年、パートナーシップと友情について描いた書き下ろし戯曲」。同時に上演される「8」(同性婚を禁じたカリフォルニア州「提案8号」を違憲とした歴史的裁判を、映画『ミルク』の脚本家ダスティン・ランス・ブラックが再現した朗読劇)と対をなす作品で、「初めは「8」の影響でかなりシリアスな構想からスタートしれたのですが、せつなくもおかしい物語になっていると思います」と紹介されていました。

 …なんとなく、どんな芝居になるか、想像がつきそうですよね? 同性パートナーの権利が認められていない日本において、ゲイカップルが何か困りごとに直面する、でも、渋谷区または世田谷区で(下北沢でやるから、世田谷かな)証明書が発行されるようになって、カップルの悩みも解決され、めでたしめでたし、最後は結婚式のシーンかな?みたいな。
 ところが、想像と全然違っていました。予想のはるか上を行く展開で(ゲイが路頭に迷ってホームレスに…というくだりは、うならされました)、まさかの設定(え?あの人がこんな役を?笑)、まさかの顛末(ネタバレになるので詳しくは言いませんが…「未来」を感じさせました)、少しも飽きさせず、あっという間の1時間半でした。笑えるシーンもたくさんありましたし、正直、何度となく、泣かされました。

 フライングステージはかつて「寅さんをゲイでやったらどうなるか」的な下町人情モノの『ひまわり』という作品を上演していたのですが、今回の『Friend, Friends』には、その『ひまわり』の時のスピリットが流れていると感じました。ゲイのパートナーシップや友情も、男女の夫婦の情も、親子の情も、職場の上司と部下との間の情も、「人情」であることに変わりはない。いたってシンプルなことかもしれませんが、そこにこそ、マジックがあるのです。脚本が本当に素晴らしかったと思います。

 脚本だけでなく、役者さんも素晴らしかったです。今回、初めて本格的なパパっぽいパパ役の方(若林正さんという方です)が登場しましたが、昔かたぎの石頭な「日本の父親」を見事に演じていました(いかにも理解がありそうな父親だったら、泣けなかったかもしれません)。そんな石頭と連れ添ってきた母親の役を何の違和感もなく(女装で)演じた石関さんの熟練っぷり(初めて観た方は、もしかしたら男性だと気づかなかったかもしれないですよね)。小浜さん(主人公である雅人)と岸本さん(その彼氏の下島)の、安定のゲイっぷり(安心して楽しめました)。そして、ひときわ不憫なゲイの役を演じた阪上善樹さん(こういう人いるよね、と思わせるリアリティ)。地味に見えながら、実はものすごく計算された演技だったんじゃないかと思います。極めつけは関根さん! 今までにない役柄なので、みなさんぜひ、注目してください。
 
 さて、もう少し、「涙の理由」を書きたいと思います。
 
 今回の新作『Friend, Friends』に寄せてフライングステージの座長・関根信一さんがこんなご挨拶を書いていました。
「フライングステージでは、旗揚げ間もない頃、偽装結婚を題材にした作品を上演しています。90年代、ゲイの結婚といえば偽装結婚が思い浮かび、ゲイ同士の結婚ということはなかなかイメージできませんでした。それから20年、時代は変わりましたが、忘れないでいたいと思うのは「変えよう」と努力した人たちがいたということです」
 
 渋谷区の同性パートナーシップ条例案が発表されたとき、ゴトウはまっ先に、これまで矢面に立って活動を続けて来られた先人の方々とか、パレードで汗や涙を流しながら頑張ってきたスタッフの方々とか、上川さんや尾辻さんや石坂さんや石川さんの選挙を手伝ってきた方々の顔を思い浮かべました(元パートナーも同じことを言ってました)
「変えよう」とする努力は、本当に尊いものですが、先端に行けば行くほど飛んでくる矢も多く、多くの人たちは挫折したり、トーンダウンしたり、何か違う道に進んだりします。そんななか、関根さんは、旗揚げの時から一貫して、1mmもブレず、真っ直ぐに、舞台で「ゲイ」(「ゲイのリアル」「ゲイへの祝福」「ゲイの未来」)を表現してきました。2002年にはパレードの実行委員長もつとめました(終わったあと「うつ」を発症するくらい、大変だったそうです)。どこかで挫折してもおかしくありません。でも、やめなかった。2015年10月28日という祝福の日(日本で初めて同性パートナー登録が公に受理された日)に至る道には、関根さんの「変えよう」とする努力もまた、にじんでいるのです。
 
 大事な友達が、親に勘当されたり、パートナーシップが制度的に認められないがゆえに、路頭に迷ってホームレスになるかもしれない、最悪、死んじゃうかもしれない、そんなの黙って見てられないよ!っていう叫びなんです。
 長年連れ添ったり、いっしょに暮らしたり(いっしょに暮らすこと自体、ハードルがあったりするわけですが)、苦楽を共にしてきた、世界でいちばん大切な人に何かあったとき、病院で付き添いたいよ、亡くなったときは(別に遺産とかいらないから)せめて親族として葬式に出たいよっていう、心からの叫びなんですよね。
 突き詰めるとそういうことなんだって、この芝居が再確認させてくれました。
 普遍的な「人としての情」なのです。
 男女のカップルなら労せず手に入れられるものを、ぼくらは血のにじむような「変えよう」とする努力によって、ようやく、それに近いものをもらえるようになりました。今はそのことを祝福しようじゃありませんか。そう思えるのも「人情」です。
『Friend, Friends』は、関根さんらしい「人情」と「ゲイ魂」が結晶した渾身の傑作だと思いました。

 

 ※『Friend, Friends』は11月2日(月)まで、下北沢OFF OFF シアターで上演されます。