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絢爛豪華な舞台版『大奥』、ゆめゆめ観逃すなかれ

ゲイのバイブルと言われる『大奥』。2003年にフジテレビでドラマ化され、二丁目で話題沸騰!でしたが、2007年、ドラマの主要キャストが出演する豪華な舞台が明治座で上演されました。今回はその再演です。舞台版はまだという方は、この機会にぜひ!

絢爛豪華な舞台版『大奥』、ゆめゆめ観逃すなかれ

 『ガラスの仮面』『吉原炎上』『Wの悲劇』『疑惑』などと並びゲイのバイブルと言われている『大奥』。2003年にフジテレビでドラマ化され、時代に翻弄される女たちのドラマティックな生き様や女どうしのドロドロした戦いがビンビン琴線に触れて、「まずはおするすると」などの大奥用語も流行し、二丁目で話題沸騰!でした。そして2007年、ドラマの主要キャストがほとんどそのまま登場し、皇女和宮が嫁いで来るところから大奥の最後までを描くという舞台が明治座で上演され、好評を博しました。今回はその再演となります。
 すでにご覧になっている方も多いこととは思いますが、舞台はまだ、という方は、この機会にぜひ、ご覧ください。


夢のような女優陣の競演に酔いしれて

 なんと言っても、浅野ゆう子(瀧山)、安達祐実(和宮)、大奥スリーアミーゴスなど、ドラマ版と同じ豪華キャストが揃って出演しているところが最大の見所です。
 昼ドラ『娼婦と淑女』で日々ダークでハードなキャラをお茶の間に届けている安達祐実が、この舞台では最高に女らしくてかわいらしい皇族の姫君を演じているわけで、そのギャップのスゴさに驚かされます(北島マヤを演じただけのことはあります)
 瀧山が当たり役となった浅野ゆう子は、この役を演じてすでに7年が経っているわけで、貫禄十分。これはもう、森光子の「放浪記」をめざすしかないと思います。
 大奥スリーアミーゴス(葛岡、吉野、浦尾)はとにかく笑わせてくれます。文句ナシ。大好物です。
 今回の舞台で初めて『大奥』に登場することになったのが、実成院役の多岐川裕美。野際陽子(テレビドラマ)や江波杏子(2007年の舞台)に比べると、どうしても迫力とか毒に欠けるイメージがありますが、どうしてどうして。瀧山との確執も、和宮に対する嫁いびりも、実に堂に入っていました。それだけでなく、一度ならず、泣かされました。本当に上手いんですよね。さすがはベテラン女優。感服いたしました。
 客席のおばさんたちだけでなく、ゲイにもフェロモンをふりまいているのが、『ママはニューハーフ』で記憶に新しい金子昇(将軍家茂)です。病弱で小鳥を愛するような優しい上様がハマっています。ある意味、王子様ですね。
 おそのを演じた松尾れい子の鬼気迫る演技もなかなか素敵でした。


衣装の絢爛豪華さに目を奪われて

 舞台装置などもスゴイのですが、やはり、目を奪われずにいられないのは、その衣装の豪華さ。
 明らかにそういう演出なのですが、瀧山が袖から入ってきて、ただその場に座るのではなく、わざわざ舞台の前に出てきて後ろを向きざま、足で裾をひらりと蹴って打掛け(着物の上に羽織り、裾を引きずりながら歩くあれ)をわざわざ見せるようにしています。まるでランウェイをキャットウォークするモデルのようです。
 瀧山が羽織る鳳凰柄、滝を昇る鯉柄、鶴の柄、秋草の蒔絵風を筆頭に、和宮が着る満開の桜、実成院の大輪の菊、初島の扇柄など、とにかくどの打掛けも本当に目も眩むばかりの美しさです。
 極めつけはカーテンコールのときに瀧山が着る孔雀柄の打掛け。爪掻き本綴れ織りという超絶技巧を駆使した着物地に京都竹屋町刺繍で孔雀を描き、その上にプラチナ箔を施し、ダイヤで装飾したというプレミアもので、なんと総額1億円以上だそう…
 これが「豪華絢爛」というものです。


メッセージの素晴らしさに感動して

 大奥は「女の牢獄」。一度入ったら出られず、厳しいしきたりでがんじがらめにされながら、自由に男を愛することもできず、嫉妬や足の引っ張り合いの中で生き抜かなくてはいけない、時には命さえ落としかねない…ある意味『吉原炎上』と同じです(「足抜け」は許されないのです)
 しかし、その窮屈さに耐え、瀧山や初島のようにキャリアを積めば、家老などよりも強い権力を奮い、とんでもない巨額の(億単位の)富を得て、きらびやかな着物を着て贅沢に暮らすことができます(江戸時代のセレブなのです)
 そんな「女の牢獄」にあってさえも、どうしても捨てられない「女の業」…それは、男を愛さずにはいられないということです。キャリアに生き、「会社」のためならどんな犠牲も厭わず、「女」を捨ててきたかのように見える瀧山でさえ、そうでした。そこに世の女性たち(特に「負け犬」世代)は激しく共感したことでしょう。
 ゲイ的には、意地悪キャラ全開で女のドロドロを盛り上げる実成院、愛を奪われたショックで狂気に陥っていったおその、最高に愛らしくもけなげな和宮などのほうが「アガる」かもしれません。
 でも、どの女性も「そういうふうにしか生きられなかった」のだし、それぞれに自分の生き様を重ねてみて、共感せずにはいられない…というあたりは、まるで『SATC』のようでもあります。

 時代劇である『大奥』を、そのように、現代の人たちにも共感できるようなテーマ設定で見事にリメイクしたのが、『ラスト・フレンズ』なども手がけた脚本家、浅野妙子さんでした。ドロドロした部分をまじえながらも人間関係の真実を伝え、時代に鋭く切り込むような、才能ある方だと思います。

 (確かに客席はおじさんおばさんだらけですが)下町の大衆演劇だなどと侮ることなかれ、女たちの舞台にかける情熱(情念?)がビシビシ伝わってきます。

 もちろんブロードウェイの『ドリームガールズ』なども素晴らしいのですが、日本だってこんなに素晴らしい舞台を生み出せるじゃないか!と誇らしく思えます。3時間の長丁場であるにも関わらず(休憩も長いので全部で4時間)、観終わったあとでとても元気が出るような、晴れ晴れとした満足感が得られる舞台でした。

 

大奥
日程:~6月27日(日)昼の部11時 夜の部16時
会場:明治座
料金:A席12,000円 B席5,000円 
チケットはこちら(座席のブロックも選べます。B席=3階席でもステージからそれほど遠くはありませんが、けっこう疲れます…)