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REVIEW

ドラマ『女子的生活』

今を生きるMtFトランスジェンダーのあれこれを明るくポップに描くドラマ『女子的生活』が始まりました。とても面白いです!

ドラマ『女子的生活』

金曜夜10時放送の「NHK ドラマ10」という、主に女性をターゲットにして「話題性あるテーマと高品質のエンターテインメント」を目指した作品を制作している枠で、この1月、MtFトランスジェンダーを主人公としたドラマ『女子的生活』(全4話)が放送されます。第1話のレビューをお届けします。(後藤純一)

<あらすじ>
見た目は美しい女性だが、実は男性で、女性が恋愛対象というトランスジェンダーのみきはファストファッション会社で働くOL。同僚のかおりや仲村といっしょに、忙しいながらも充実した「女子的生活」を満喫していた。ある日、同級生だった後藤が訪ねて来る。みきの姿を見て驚く後藤だったが「お金がなく頼る人間がいないので泊めてほしい」と言い、みきは合コンのセッティングを条件に、渋々承諾することに。合コン当日、みきの前に、ゆいという自然派気取りの女が現れる。みきとゆいは、女どうしのバトルを繰り広げることになるのだが…。

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 「いやあ、これは面白い!」と思いました。
 これまでのLGBTの文脈では、LGBは性的指向のマイノリティ、Tは性自認のマイノリティという説明で、トランスジェンダーのセクシュアリティについてはあまり語られてこなかったと思いますが(男性から女性に性別移行したら女性として生きていくから男性と恋愛しますよね、くらいの)、みきのようなMtFレズビアンの場合、一体どうやって女性と出会い、恋愛にいたるのか…というところがリアルに描かれていました。ちなみに主人公のみきは体をいじることなく女性として暮らし、ファッション関係のお仕事に就くことができていて(「男の娘」もそうですが、今どきの男子の中には女装しただけでパスできる方、結構多いのかもしれません)、ジェンダーの部分についてはあまり悩んでいません。同僚の女子たちといっしょに上司の噂話をしたり、恋愛したいと騒いだり、という感じなのです。ここでみきが男好きな(性的指向としてはマジョリティな)女性という設定だったら、他の女性と同じだね、で終わってしまうのですが、そうではなく、レズビアンであるというところで、ジェンダーとセクシュアリティがともにマイノリティであるみきが、一体どうやって彼女を受け入れてくれる女性と出会い、恋愛にいたるのか?という話になります。そこが新しく、また、面白いところです。

 世間のLGBTブームに乗って、なんか興味本位で面白おかしく描いてるんじゃないの?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、このドラマは、MtFトランスジェンダー(トランス女性)の西原さつきさんの指導のもと、ステレオタイプだったり不自然なことになったりしないよう、気をつけて制作されています。みきの高校の同級生で部屋に転がり込んでくる後藤がオネエ?ニューハーフ?性同一性障害?と不躾に聞いてくることに対して、「初回特典」として、最近は性別違和※って言うのよ、トランスジェンダーって呼んでくれるとうれしいなと返す、そういう説明もさらりと入ります。

※性別違和:日本では「性同一性障害」として医師の診断を受けないと戸籍上の性別変更ができないことになっていますが、世界的に見ると、医師の診断や性別適合手術なしにID上の性別変更を認める流れになっています(「第三の性」の登録を認める国もあります)。アメリカ精神医学会が発行する「精神障害の診断と統計マニュアル」第5版(2013年)では、すでに性同一性障害という名称が「性別違和」に改められており、今年出る予定のWHO(世界保険機関)の「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」最新版でも、精神疾患としての性同一性障害という概念は廃止され、「Gender Incongruence(性別不一致)」に改められ、トランスジェンダーの非病理化が達成される予定です。

 でも、ゲイじゃなくてトランスジェンダーなんでしょ、あまり共通点ないんじゃないかな…と思う方もいらっしゃることでしょう。
 みきは、「年をとったら女装がキモくなって誰も相手にしてくれなくなるんだから、今を精一杯楽しむの」と言って、知り合った女の子と一夜を共にします。その陰で、生き方のモデルになる人がいない、将来どうなるのかわからない…と涙を流します。ゲイと共通の部分も多いと思います。
 また、合コンで、男子ウケする完璧な設定を演じ(自分で梅酒とか浸けちゃう「丁寧な暮らし」系女子)、その場にいる男子を総取りにする女子に対し、「いっちょやるか」と言って、みきと同僚のかおり(ももクロの玉井詩織さん)が彼女の化けの皮を剥がす作戦に出る…というくだりも、割とゲイテイストだと思います(全体的にポップなテイストで作られています)
 『彼らが本気で編むときは、』のリンコ(生田斗真さん)が性を超越した「天使」だとすれば、みきは「小悪魔」系です。よりリアルにセクシュアルマイノリティのあれこれを体現し、今ココを精一杯生きている、共感できるキャラクターなのです。

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主演の志尊淳さん。
本当にキレイ!

 それから、実際にドラマをご覧になった方のなかで、みきが女の子を上手に誘ってホテルに連れ込むことに対して、MtFトランスジェンダーって女性なわけでしょ?元々男性だったかもしれないけど…リアルじゃない気がする、実際どうなの?と思う方もいらっしゃるかもしれません。
 女性は自分からナンパしたり手を出したりしないというのは思い込みで、女性だって積極的に行動する方はいらっしゃいます(これはよくない例ですが、私は以前、入院していた時にナースさんに襲われそうになったことがあります。世の中には「痴女」と呼ばれる方たちもいるのです)。みきのように性的に活発なトランス女性だって、当然いると思います。
 少し話がズレるかもしれませんが、女装した方が集まる二丁目のとあるお店で、自分はノンケだと言い張る女装男性の方(行為としてはトランスジェンダー的ですが、性別および性自認は男性)が、やはり女性が好きで、でもなかなか女性との出会いはなく、今は男性から女性にトランスした方とつきあっているという話を聞いたことがあり、今回のドラマに似てるかも…と思いました。ジェンダーとセクシュアリティの奥深さよ、という感じです。
 
 このドラマを成立させているのは、みき役の志尊淳さんによるところが大きいと思います。仕草、表情、声の出し方など、本当にリアルです(眉毛がくっきりしすぎているところだけが不自然かな…)。ぜひドラマを観てみてください。


ドラマ『女子的生活』
NHK総合 毎週金曜夜10時(連続4回)2018年1月5日(金)〜1月26日(金)に放送
原作:坂木司『女子的生活』
脚本:坂口理子
音楽:鈴木慶一
トランスジェンダー指導:西原さつき
出演:志尊淳、町田啓太、玉井詩織、玄理、小芝風花、羽場裕一ほか

 

【追記:全話を観終わって】

 全話を観終わって、これはいいドラマだったなぁと思いました。
 イマドキの女子感から外れることなく、言いたいことを言い、やりたいことをやるみきの日々は痛快だし、すがすがしいものがあります。
 それぞれの回でカラーが違うというか、いろんな人(厄介な人)が登場し、必ずトランスジェンダーであるみきを「普通じゃない」とけなすのですが、でも、身の回りの誰かがかばってくれたりして、そこがいいなぁと。
 第2話では、仕事がうまくいかなくてうつっぽくなっているという高校の同級生(ミニーさんと呼ばれるさえない男)が無理やり部屋にやってきて、悩み事の相談かと思いきや、みきに対して「ばけもの」って悪態をつきはじめます。みきは「あんた、ただ自分より下がいるって思いたかっただけなんじゃないの」って言いながら、ミニーさんが実は、自分のことをうらやましく思ってるんだと悟り、メイクをしてあげて、女物の服を着させて、いっしょに街を歩くのです。ミニーさんは満足げでした。
 第3話でみきは、仕事で地元の香住町に行くことになります。海辺の、何にもない田舎町。駅でお父さんに偶然会って、話をすることになります。そこにトランスフォビアなお兄さんがやってきて、みきを罵倒します。「お前のせいでみんなが恥かしい思いをする、チャラチャラしやがって」。父は、「お前は幸せなのか?」と聞きます。「お前が幸せならそれでいい」と。横で後藤が号泣します。最後にお父さんは「体に気をつけてな、みき」…泣けました。
 最終回でみきは、セレブカップルが主催するパーティに呼ばれ、お嬢様なマナミさんに気に入られてしまい、調子が狂う日々。マナミさんはみきのバースデーイブに家に来て、高級志向な手料理をプレゼントします。そこにマナミのフィアンセの男がやってきて、やっぱり「普通じゃない」と見下した態度をとり、後藤にも「そっち系?」などと言ったりして…。後藤は「お前に何がわかる。みきはすごいやつなんだ」「えらそうに」と熱くなります。みきは恥ずかしさに耐えきれず、家を飛び出します。あとで聞くと、なんとマナミさんはフィアンセを殴ったそうで…。
 最初からみんながトランスジェンダーを受け入れてるわけではなく、世間のリアルとして偏見とかイヤなことに直面するのですが、友達やお父さんみたいに守ってくれる人もいるのです。ぬるくもないし、絶望させるわけでもない。友情とか家族の愛情は本物で、大切な輝きを放っているのです。
 あと、男って単純だけど、後藤みたいないいやつだったらいいよな、と思わせます。安易に恋に発展しないところもいいです。
 ちゃんと男のいいところと女のいいところ、男のいやなところ(DVだったり)と女のいやなところ(マウンティングとか)を描いているのもいいな、と思いました。
 トランスジェンダーも含めて、ジェンダーというもののリアリティをポップに描いている、ありそうでなかなかない、いいドラマでした。

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