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ゲイ旅コラム:「世界最高峰のゲイリゾート」バルセロナ(1)バルセロナプライド

6月末に開催されたバルセロナプライドをレポートします。パーティ会場のロケーションが素晴らしく、ラテンの国らしい陽気なお祭り感も最高で、本当に楽しい「フィエスタ」でした。併せて、世界有数の観光地であるバルセロナの街の魅力や、「欧州の夏のゲイの首都」とも称されるゲイシーンの充実度、おまけで「欧州一のゲイリゾート」シッチェスの様子もレポートします。

ゲイ旅コラム:「世界最高峰のゲイリゾート」バルセロナ(1)バルセロナプライド

2018年6月30日(土)、スペインのバルセロナで開催されたプライドパレードを体験しました(しかもフロートに乗って)。サンパウロのパレードに近いと思うのですが、何十人ものキャストが乗った巨大なフロートが次々にやってきて、その周りを約6万人の人々が埋め尽くし、市内の大通りを陽気に練り歩く「フィエスタ」感あふれるパレードでした。まるで宮殿のようなカタルーニャ美術館を仰ぎ見る会場で行われたハイヒールレースなどのプレイベントも、楽しかったです。バルセロナ旅行記の第1弾は、バルセロナ・プライドです。(後藤純一)

 

はじめに 

 バルセロナ、と聞いてフレディ・マーキュリーとモンセラ・カヴァリエの『バルセロナ』(1988年)を思い浮かべる方は、そんなに多くないかもしれません。バルセロナ五輪のテーマ曲となり、開会式で歌われる予定でしたが、フレディ・マーキュリーが五輪の前年にエイズで亡くなったため幻となった曲です(さらに、京都のドラァグクイーン・ユニット「OKガールズ」がこの歌でショーをやっていたのを思い出すのは、私だけかもしれません…)
 そんなバルセロナに、いつか行ってみたい…と漠然と思っていたのですが、念願かなって、今年のプライドの時期に行く機会を得ました。
 
 世界第2位の観光大国・スペインの中でも最も観光客数が多く(約1600万人=バルセロナの人口の約10倍)、年間約300万人もの※ゲイが訪れているバルセロナ。サグラダファミリアをはじめアントニ・ガウディが手がけた建築群(そのうち7つが世界遺産に指定されています)、美しい教会や美術館や博物館や歴史的建造物がひしめき、歴史や文化の香り高い素敵な公園や広場や通りがいたるところにあって、ふつうに観光するだけでも何週間も楽しめるような街なのですが、それに加えて、ゲイ的にもたいへん魅力的で素晴らしい街でした。

※厳密にLGBTの旅行者をカウントするのは難しいことですが、こちらの記事によると、スペインの観光客の18%がLGBTだと算定されているそうなので、約300万人と推定されます。ちなみに、LGBT旅行客が1年間にスペインにもたらす観光収入は(年々増加していますが2016年時点で)90億ユーロ=1兆1700億円と試算されていたそうです。スゴくないですか?

超大規模クラブ・パーティ「サーキット・フェスティバル」が8月に開催されます
超大規模クラブ・パーティ「サーキット・フェスティバル」が8月に開催されます
 バルセロナは「欧州の夏のゲイの首都」とも称されるそうで(夏に限定しなければ、ベルリンがその称号にあずかっています)、Adam Groffmanという有名なゲイブロガーも欧州のLGBTフレンドリー都市のNo.1に選んでいます。いったいバルセロナのゲイシーンの何がそんなに多くの人たちを魅了するのか、プライドに参加して、ナイトライフを体験して、また欧州一のゲイリゾートと言われるシッチェスにも足をのばしてみて、よくわかりました(とはいえ、3~4日しかいられなかったので、次回はぜひ、もっとゆっくり堪能したいです)。8月9日~19日には、欧州全域から70,000人が集まる世界最大級のクラブパーティ「サーキットフェスティバル」も開催されるそうです。

バルセロナのゲイ事情

 ここでざっとバルセロナの歴史(LGBTのことを中心に)をお伝えしてみます。街を散策しながらバルセロナのLGBTの歴史についてレクチャーするツアーが実施されているのですが、そのツアーの内容をダイジェストにしたものです。
 街自体は、紀元前200年頃にカルタゴのハミルカル・バルカ(ハンニバル将軍の父親)がイベリア半島に入植し、いまのバルセロナの地に植民都市・バルキノを建設したところから始まります(バルセロナの愛称「バルサ」は、バルカに由来します)。古代ローマでは、同性愛は特に問題視されていませんでしたので、当然、バルセロナでも同性愛が謳歌されていました。中世に入ると、他の地域と同様、キリスト教の影響で、犯罪扱いされるようになります。15世紀にスペイン王国を樹立し、大航海時代の礎を築いたイサベル女王は、同性愛に寛容だったと言われていますが、その後のハプスブルグ朝、ブルボン朝の時代は、厳しい弾圧に遭いました。時代が下って1920年頃になると、バルセロナにもベルリンと同様のキャバレー(ゲイバーではないですが、映画『キャバレー』に描かれているような、女性とゲイが主役のデカダンな雰囲気のショークラブ)ができ、ゲイカルチャーが花開いたそうです。しかし、フランコ政権下では同性愛者が逮捕されるなど、再び冬の時代を迎えましたが、バルセロナが国内で最も寛容な都市としてゲイ解放運動の拠点となり、フランコ体制の終焉後、1977年にスペインで最初のパレードがバルセロナで開催されました。そして、80年代、90年代を通じてコミュニティの長い運動、闘いが繰り広げられ(こちらにまとめられています)、2005年の同性婚承認へと結実します。

バルセロナ観光局が後援するゲイ向け特設サイト「VISIT GAY BARCELONA」。SEX SHOPやサウナ、フェティッシュ・バーの情報もきちんと盛り込まれていて、素晴らしいです
バルセロナ観光局が後援するゲイ向け特設サイト「VISIT GAY BARCELONA」。SEX SHOPやサウナ、フェティッシュ・バーの情報もきちんと盛り込まれていて、素晴らしいです
 カトリックの国として初めて、スペインが同性婚を認めたのは、国際的にも大きなインパクトを与えました。
 もともと観光立国だったスペインは、これをチャンスとして、海外からもっとLGBTの旅行者を呼び込もう(インバウンドに力を入れよう)ということで、政府観光局と観光産業、そしてマドリッドやバルセロナのゲイコミュニティが連携して、よりゲイフレンドリーな旅行先になるような改良を進め、伝統的な観光地も大きく変化し、魅力的なサービスの提供に努めてきました。「今日のスペインはオープンマインドで、偏見の無い国である。寛容で、どんな旅行者も歓迎する。そこが、世界中から訪れるLGBTにとってのベストな旅行先と確信する理由だ」(アントニオ・ベルネイブ政府観光局主任 UNWTO「Global Report on LGBT Tourism AM Reports: vol.3」より)
 バルセロナ観光局も「VISIT BARCELONA」サイトの中でゲイタウンを紹介してますし、バルセロナ観光局が後援する「VISIT GAY BARCELONA」という特設サイトもあります。官民コミュニティが一体となって、海外のゲイ&レズビアンにアピールしているのです。

 というわけで、バルセロナの旅行記をお届けしてまいります。

 


バルセロナプライド
 ~笑顔はじけるコミュニティの「フィエスタ」~


 バルセロナプライドは毎年20万人以上の参加者を誇る、地中海地域最大のプライドイベントです。今年は6月23日から30日までの間の約1週間、様々なイベントが開催され、フィナーレとしてパレードとパーティが行われました。NYなどとはパレードの日程が少しずれていて、6月の最終土曜か7月の最初の土曜に開催されており、参加しやすくなっています。

 6月28日(木)の夜、大学広場(プラサ・ウニベルシュタット)でオープニングパーティが行われました。ステージで「双子か?」と思うようなお揃いの衣装を着たゲイDJさんが、参加者を盛り上げていました(かかっていた曲が、わかりやすいゲイアンセムが多くて、楽しかったです)。途中、ドラァグクイーンや、地元で有名な歌手の方が登場したり。スコール的に雨がザーっと降ってくる瞬間もあって、むしろシャツとか脱いで雨のなかで踊ってる方たちもいたりして。そんな感じで延々、深夜までパーティが盛り上がっていました(遅い時間のほうが人が多かったです)。このパーティ、屋外の広場でやっているため、簡易トイレが設置されていたのですが、女性たちが長大な列を作っていて、そのトイレの横に、四方からおしっこができる超簡易トイレ(まる見えではないが、角度によってはスペイン産の長大なペニスが見えてしまう)が置かれていて、男子のみなさんはわりと普通に利用していたので、軽くカルチャーショックを覚えました。



 29日(金)の夕方、ハイヒールレース(マドリッドのが有名ですね。スペインで人気のアトラクションなのでしょうか)を皮切りに、前夜祭パーティが行われました。スゴいのはその会場で、エスパーニャ広場に隣接するレイナ・マリア・クリスティナ大通りが全面的に歩行者天国になっているのですが、ステージの背後の高い丘の上に、まるで宮殿のような建物(MNAC=カタルーニャ美術館)が浮かび上がっていて、ちょっと文章だけでは伝えきれないのですが、素晴らしすぎるロケーションでした。レイナ・マリア・クリスティナ大通りの入り口にそびえ立つ2つの大きな塔の間からその光景を観た瞬間、鳥肌がたち、ちょっと涙さえ出ました。ハイヒールレースやドラァグクイーンのショー、スペインが誇るアンダーウェアブランドのショー…いろいろな演目が次々と繰り広げられていたのですが、20時半頃にパーティを離脱し、お食事に出かけました。エスパーニャ広場の反対側のショッピングモールの最上階のレストランだったので、会場の様子も眺められるし、音も聞こえてきてたのですが、カタルーニャ美術館の手前のマジカ噴水が音に合わせて何十メートルもの水を噴き上げたりしてるのが遠目からも見えて、それもまた感動的でした。予想よりも早く登場したため、近くで観ることができず、本当に悲しかったのですが、ヒゲの歌姫、コンチータ・ヴルストのライブもありました(もちろん、ユーロビジョンで優勝した時の「Rise Like A Phoenix」を歌っていました)。そして実はこの前夜祭パーティの会場、冒頭でお伝えしたフレディ・マーキュリー&モンセラ・カバリエのあの映像の舞台でもあったんです(ドラァグクイーンショーのオープニングが、モンセラ・カヴァリエに扮した方だったのですが、そういう意味もあったのか!とあとでわかりました)







 30日(土)、いよいよプライド最終日、パレードの日です。東京や台北とは異なり、ハデなクイーンやセクシーなGOGOが何十人も乗っている巨大なDJフロートが何十も大通りをゆっくり行進し、周りで人々がお祭り騒ぎのように踊ったりするタイプの、たぶんですが、サンパウロ型のパレードでした(さすがはラテンの国!)。実は今回、縁あって「AXEL」というゲイホテルのフロートに乗せていただいたのですが(バスの車体にセクシーな男の子の絵が描かれていて、よくみると「heterofriendly」と書いてあって、超ウケました。なんて気の利いたコピー!)。16時過ぎ、Jardins de les Tres Xemeneies(3本の煙突の公園)という市の東寄りにある公園に集合し、フロートに乗り込みます。バスの屋上のデッキの部分に、ドラァグクイーンやモデルみたいな男の子や、黒人の方や、レズビアンの方や、いろんな人たちが何十人も乗って、DJさん(木曜のオープニングパーティでDJしてたお二人)が盛り上げて、お酒を飲みながらパーティをしています。そうこうしているうちに、17時頃にパレードがスタート。用意された水鉄砲で、道行く人たちにピューピュー水をかけてみたり、音楽に合わせてイェイイェイ盛り上がったり。沿道でパレードを楽しんでる人たちも、フロートの音楽に合わせて踊ったり、水がかかってキャーキャー喜んだり。ゲイも女性も、トランスの人も、子どもも、車椅子の方も、みんな心からの笑顔で楽しんでいました。街全体が「フィエスタ」に沸いている、揺れている、ハッピープライド!な感じでした。正直、パレードをこんなにナチュラルハイ状態で楽しめたのは初めてかも…ゲイクルーズ以来の興奮でした。
 パレードが2/3くらい進んだところで、フロートを降りて、他のフロートがどんな感じなのか、観てみました(全体にゆっくり進んでるので、それが可能)。だいたい20人くらいマッチョなGOGOさんやドラァグクイーンが乗ってるフロートが多かったのですが、なかには沿道にキャンディを配るお母さんたちのフロートもあって(おばちゃんが飴をくれるっていうのは万国共通?)微笑ましかったり、マーチングバンドだったり、生演奏でライブをしてるフロートもありました。そうしたフロートと、一緒に歩いてきた人々が、ゴールのエスパーニャ広場に到着すると、そこにはたくさんの人たちが汗をキラキラ輝かせながら、くつろいだりしていました。マリア・クリスティナ大通りでは、そこから深夜2時までアフターパーティが開催されました。
















 
 パレードのメイン会場であるマリア・クリスティナ大通りでは、道の両サイドにたくさんのブースが設けられていたのですが、東京と違って、コミュニティ関係のブースのみで、企業ブースはほとんど見当たりませんでした(でも、たくさんの企業がスポンサーになっているのは確かです)。全体的に、ゲイをはじめとするLGBTQ+コミュニティの、コミュニティによる、コミュニティのためのお祭りになっていると感じました。主役はあくまでも当事者たち(でもヘテロフレンドリー。笑)だよ、ドラァグクイーンとかGOGOとかが派手に盛り上げるから、ノンケの人たちもこのアタシたちのノリについてきな、という感じなのです。
 そしてもちろん、プライドはただのお祭りではなく、メッセージ性を持っています。「ALL MY LOVING」という素敵なキャッチコピーのほかに、「LGBTI Refugees」というスローガンも掲げられていました。世界の約80の国で、同性愛者や異性装者が迫害されており、難民としてバルセロナにやってきたLGBTIの人たちがいる、ということを知ってほしい、という趣旨でした。
 いろんな人たちが参加できるように、たとえば夜のパーティには参加しづらい車椅子の方なども楽しめるように昼間のイベントもいろいろ用意されていましたし、ブースにはレインボーフラッグと交互にトランスプライドフラッグがはためいていました(実際、トランスの旗を背負って参加してる若い方たちがとてもたくさんいました) 
 分厚いパンフレットを見ると、プライドが主催するイベントだけじゃなく、期間中に開催されるあらゆるゲイイベント(クラブパーティはもちろん、サウナでのSEX PARTYとかも)が等価に載っていて、セクシーめな広告も堂々と掲載されていました。 
 あらゆる意味で理想的な、素晴らしいプライドでした。
 
☆バルセロナプライドのフォトアルバムはこちら




協力:スペイン政府観光局
協力:スペイン政府観光局

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