g-lad xx

FEATURES

特集:2021年8月、アツい夏のLGBTQ映画

実り豊かだった7月に続き、8月も様々なLGBTQ関連作品が上映、配信されます。情報をまとめてお届けします。

特集:2021年8月、アツい夏のLGBTQ映画
(『Summer of 85』より)

レインボー・リール東京(東京国際レズビアン&ゲイ映画祭)も無事に終わり、『片袖の魚』も満員御礼で各地での開催が決まり、良質な映画がたくさん上映され、この7月は本当に実り豊かでした。引き続き、8月も様々なLGBTQ関連作品の上映や配信、イベント(!)が行なわれます。遠出したりプールに行ったりなどは気がひけるという方も、映画館で静かに涼しくエンターテイメントを楽しんではいかがでしょうか。(コロナ禍の影響で、地域によっては今後、映画館の状況も変わってくるかもしれません。また、どの映画館も感染防止策はとっているとは思うのですが、日に日に感染拡大が深刻に…十分お気をつけください)
(最終更新日:8月17日) 
 

上映中
スーパーノヴァ

 コリン・ファースとスタンリー・トゥッチがゲイカップル役を演じ、20年の歳月をともにしてきた二人が思いがけず早く訪れた最後の時間に向き合う姿を、イギリスの湖水地方の美しい風景とともに描いたヒューマンドラマです。無口で不器用ながらも熱い情熱を胸に秘めたピアニストのサムを、『アナザー・カントリー』で鮮烈なデビューを飾り(舞台版『アナザー・カントリー』では主人公のゲイの青年を演じていました)、『シングルマン』や『マンマ・ミーア!』でゲイ役を演じてきたコリン・ファースが、人をひきつける才能を持ち周囲に笑顔をもたらす作家のタスカーを演じるのは、『プラダを着た悪魔』でメリル・ストリープの右腕のゲイを、『バーレスク』でショーの舞台監督を務めていたゲイの役を演じていたスタンリー・トゥッチです。タイトルの「スーパーノヴァ」のように、二人の愛のエンディングのきらめきが、観るもの全てに降り注ぎ、生きて、笑い、愛し合うことの素晴らしさを祝福する新たなる傑作、と称されています。(レビューはこちら
 
<あらすじ>
ピアニストのサムと作家のタスカーは互いを思い合う20年来のパートナーで、ともにユーモアや文化を愛し、家族や友人にも恵まれ、幸せな人生を歩んできた。ところが、タスカーが不治の病に侵されていることがわかり、2人で歩む人生は思いがけず早い終幕を迎えることとなる。最後の最後までともに生きることを願うサムと、愛しているからこそ終わりを望むタスカー。それぞれが相手を思う2人は、ある決断をするが……。

スーパーノヴァ
原題:Supernova
2020年/英国/95分/監督:ハリー・マックイーン/出演:コリン・ファース、スタンリー・トゥッチほか





上映中
親愛なる君へ

 第57回台湾アカデミー賞(金馬奨)で最優秀主演男優賞、最優秀助演女優賞を含む3部門を受賞した作品。世界的評価を受けた「一年之初(一年の初め)」「ヤンヤン」など、人と人のつながりや人生模様、アイデンティティを描くことに長けたチェン・ヨウチェが5年ぶりに監督を務めた作品。監督が緻密で繊細なストーリーラインで描いたのは「極限の愛」です。ミステリアスで重厚なサスペンス調の展開を匂わせつつ、徐々に真実が解き明かされていくと、温かな情感あふれる結末まで一気に導かれます。(レビューはこちら

<あらすじ>
老婦・シウユーの介護と、その孫のヨウユーの面倒を見る青年・ジエンイー。血のつながりもなく、ただの間借り人のはずのジエンイーがそこまで尽くすのは、2人が今は亡き同性パートナーの家族だからだ。彼が暮らした家で生活し、彼が愛した家族を愛することが、ジエンイーにとっては自分の人生のなかでパートナーが生き続ける唯一の方法。何よりの弔いになると感じていたから。しかしある日、シウユーが急死してしまう。病気の療養中だったとはいえ、その死因をめぐり、ジエンイーは周囲から不審の目で見られるように…。警察の捜査によって不利な証拠が次々に見つかり、終いには裁判にかけられてしまう。しかし弁解を一切せずに、なすがままに罪を受け入れようとするジエンイー。それは、愛する家族を守りたい一心で選択したことだった…。

親愛なる君へ
原題:親愛的房客 Dear Tenant
2020年/台湾/106分/監督:チェン・ヨウチェ/出演:モー・ズーイー、ヤオ・チュエンヤオ、チェン・シューファン、バイ・ルンインほか
7月23日から東京・シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次公開




上映中
日常対話

 台湾の女性監督ホアン・フイチェンが自身に娘が誕生したことをきっかけに、ひとつ屋根の下で暮らしながら親子らしい会話のなかった母親と向き合う様を、自らカメラを回して記録した家族ドキュメンタリー。母の作る料理を食べること以外に何の接点もない、赤の他人のように暮らす母アヌと娘チェン。チェンは勇気を出して母との対話を決意する…。母本人のほか、親族、母のかつての恋人など、身近な人へのインタビューや対話を通じて、元夫から受けたDV、同性愛者であることの思い、社会からの抑圧など、母アヌの苦悩が浮き彫りとなっていきます。そして、チェン自身も過去と向き合い、心に秘めた思いを母に伝えます。第67回ベルリン国際映画祭でテディ賞(最優秀LGBTQ作品賞)に輝き、2017年アカデミー外国語映画賞の台湾代表作品にも選出された作品です。名匠侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督が製作総指揮を務めました。(レビューはこちら

日常対話
原題:日常対話 Small Talk
2016年/台湾/88分/監督:ホアン・フイチェン/出演:ホアン・フイチェンほか
7月31日から東京・ポレポレ東中野で公開




上映中
イン・ザ・ハイツ

 2008年のトニー賞で作品賞、楽曲賞、振付賞、編曲賞に輝き、グラミー賞でもミュージカルアルバム賞を受賞したミュージカル作品の映画化。アリアナ・グランデをして「美しく完璧」、ヒュー・ジャックマンをして「圧倒された。演技もダンスも音楽も演出も驚くほど素晴らしい」と言わしめ、早くも来年のアカデミー賞の最有力候補との声さえ上がっている話題作です。もともと人種的マイノリティにフォーカスした作品なのですが、映画化にあたり、舞台版にはいなかったゲイのキャラクターを登場させ(ほんのちょっとです。申し訳程度)、LGBTQへの配慮がなされていたりします。全体としてゲイテイストではないのですが(美容室のシーンだけゲイテイストかも)、現代的な感覚の新しいミュージカルであり、また「映画の夢」を感じさせる傑作でもあり、観てソンはない作品だと思います。監督のジョン・M・チュウはアジア系アメリカ人で、『イン・ザ・ハイツ』の次は『ウィキッド』を手がけるそうで、ミュージカル映画の巨匠として大成するのではないかと期待されています。
 
<あらすじ>
ニューヨークの「ワシントン・ハイツ」は、道端に置かれたラジカセ、アパートの窓、カーラジオなどからいつも音楽が流れる、実際にある賑やかな移民の街。その街で育ったウスナビ、ヴァネッサ、ニーナ、ベニーはつまずきながらも自分の夢に踏み出そうとしていた。ある時、街の住人たちに住む場所を追われる危機が訪れる。これまでも幾度と様々な困難に見舞われてきた彼らは今回も立ち上がるのだが…。突如起こった大停電の夜、街の住人たち、そしてウスナビたちの運命が大きく動き出す。

イン・ザ・ハイツ
2021年/アメリカ/監督:ジョン・M・チュウ/出演:アンソニー・ラモス、コーリー・ホーキンズ、レスリー・グレース、メリッサ・バレラ、オルガ・メレディス、ジミー・スミッツほか
7月30日(金)全国ロードショー
(c)2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved




8月15日 
クロスローズ

 YouTubeで『すいか』や『TIME』といったゲイの恋愛を描いた素敵な短編映画(や、たくさんのセクシーな動画)を発表し、世界中にファンを獲得しているちくわスタジオが、RainbowEventsとのコラボでGOGOさんなどもキャストに加え、本格的な自主制作映画『クロスローズ』を製作、クラファンで出資を募り、2日間限定で上映イベントを開催(出演者にも会える、ライブもある)という、今までになかったタイプの映画上映企画です。1日の上映にも大勢のゲイのファンの方が参加したようで、熱いコメントがTwitterにあふれています。この夏のゲイシーンの大きな話題のひとつであることは間違いないでしょう。残すところあと1日、8月15日の12時/15時/18時の上映となります。(※映画にしてはチケット代が高いのですが、出演者に会えるファンミーティング的なイベントと捉えていただければ)
 
クロスローズ
8月15日(日)、イベントスペースDAIA(渋谷)にて上映
チケットはこちらから




8月17日から配信
IT'S A SIN 哀しみの天使たち

 1980年代のロンドンを舞台にHIV/エイズに翻弄される3人のゲイ男性の姿を描いたドラマ『It’s a Sin』。英国のチャンネル4で今年初めに放送され、驚異的な大ヒットを記録し、HIV検査を受ける人が4倍にも急増しました。製作したのは、ゲイドラマのさきがけとして異例の大ヒットを記録した金字塔的作品『Queer As Folk』を手がけたラッセル・T・デイヴィス(ゲイの方です)で、自身の実体験をベースにしてこの作品を作り上げました。『POSE』がトランス女性を多数起用したのと同様、このドラマも、リアルなゲイの俳優を起用することにこだわったそうで、イヤーズ・アンド・イヤーズのオリー・アレクサンダー、ニール・パトリック・ハリス、スティーヴン・フライのほか、たくさんのゲイの俳優たちが活躍します。主題歌はもちろん、ペット・ショップ・ボーイズの『It’s a Sin』です。

「IT'S A SIN 哀しみの天使たち」(全5話)
Amazon Prime Videoチャンネル「スターチャンネルEX DRAMA & CLASSICS」で8月17日から配信開始
第1話がアマプラで無料でご覧いただけます)




8月20日公開
Summer of 85

 フランソワ・オゾン監督の最新作で、16歳と18歳の少年の人生を変えたひと夏の初恋を描いた作品。10代の頃の感情を投影し、運命的な出会いを果たした美しき少年たちの初恋と「永遠の別れ」を描き出しています。フランソワ・オゾン、ひと夏のゲイのロマンス、1980年代のヒットソング、ノスタルジックな映像、とくれば、オゾンのデビュー作『サマードレス』(シェイラが歌う『バン・バン』に合わせて金髪マッチョがドラァグクイーンのように踊るシーンが最高に素敵な、自由でユーモラスな青春の1シーンを描き出した傑作クィア短編映画)を思い出す方もいらっしゃることでしょう。『Summer of 85』は、オゾンが10代の時に出会い、「いつか長編映画を監督する日が来たら、その第1作目はこの小説だと思った」という『おれの墓で踊れ』という小説を、35年の時を経て、満を持して映画化した作品です。オゾンのファンならマストですし、そうでなくてもきっとハマること間違いなしの、要注目!必見!のゲイ映画です。
 
<あらすじ>
1985年、夏のフランス。ヨットで沖に出た16歳のアレックスは、突然の嵐に見舞われ、18歳のダヴィドに救助される。急速に惹かれ合い、恋に落ちる二人。アレックスにとっては、それが初めての恋だった。互いに深く思い合う二人は、「どちらかが先に死んだら、残された方はその墓の上で踊る」という誓いを立てる。その後、ダヴィドの不慮の事故死で、恋焦がれた日々は突然終わりを迎える。悲しみと絶望に暮れ、生きる希望を失ったアレックスを突き動かしたのは、ダヴィドとあの夜に交わした誓いだった……。

Summer of 85
2020年/フランス/監督:フランソワ・オゾン/出演:フェリックス・ルフェーヴル、バンジャマン・ヴォワザン、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、メルヴィル・プポー、イザベル・ナンティほか
8月20日から新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamura ル・シネマほか全国で順次公開
(c)2020-MANDARIN PRODUCTION-FOZ-France 2 CINÉMA–PLAYTIME PRODUCTION-SCOPE PICTURES




8月21日 オンライン
出櫃(カミングアウト)- 中国 LGBTの叫び(第2回にじいろシネマ)

 レインボーさいたまの会が開催するLGBTQ映画鑑賞会「にじいろシネマ」の第2回として、2019年東京ドキュメンタリー映画祭短編部門グランプリを受賞した『出櫃(カミングアウト)―中国 LGBTの叫び』が上映されます。中国には7000万人とも言われるLGBTQが暮らしていますが、いまだに世間の理解を得ることが難しく、苦悩しています。若者たちによる家族への「出櫃(カミングアウト)」の過程、そして、予想だにしなかった我が子からの「出櫃」を受けて、戸惑いと、我が子を愛する気持ちとの間で戸惑う親たちの姿を映し出したドキュメンターです。
 上映後には、同作品の監督を務めた房満満氏のトークセッションや、参加者どうしのディスカッションで、映画が問いかけるテーマについて理解を深めるとともに、LGBTQが直面る社会的課題について、アライの方も「自分ごと」として捉えられるようになることを目指しているそうです。

出櫃(カミングアウト)―中国 LGBTの叫び
2019年/日本/54分/監督:房満満
8月21日(土)14:30〜 第2回にじいろシネマとしてオンライン開催、チケットのお申込みはこちら

INDEX

SCHEDULE

    記事はありません。