g-lad xx

FEATURES

レポート:年忘れお楽しみイベント「gaku-GAY-kai 2021」

2021年12月29日・30日、ゲイの劇団フライングステージとその愉快な仲間たちによる年末恒例お楽しみイベント「gaku-GAY-kai 2021」が新宿の「シアター・ミラクル」で開催されました。今回もコロナ対策を講じながら、ゲイテイストな芝居やパフォーマンスの数々が繰り広げられ、大満足の年忘れイベントになりました。

レポート:年忘れお楽しみイベント「gaku-GAY-kai 2021」

 1997年から毎年(ハコを変えながらも)開催され続け、もはやゲイシーンにおける最長寿イベントの一つとなっている「gaku-GAY-kai」。2020年は、もしかしたら初めて中止になるのでは…と心配されたのですが、その頃は緊急事態宣言なども出ていませんでしたし、ステージから座席までの距離を取る、席数を減らす、お客さんはマスク必須&手指消毒、コール&レスポンスはナシ(笑うのはOK)、終演後の出演者とのお話の時間もナシ(その代わりステージ上から出演者がお見送りする)という徹底したコロナ感染防止策を講じながらリアル開催が実現しました。今年も全く同様の対策がとられたうえでめでたく開催され、ゲイテイストな芝居やパフォーマンスの数々が繰り広げられました。「gaku-GAY-kaiを見ずに年は越せない」という多くのファンのみなさんもきっと満足したことでしょう。
 2021年12月29日(水)18時半〜の回の「gaku-GAY-kai 2021」のレポートをお届けします。
 

第一部「贋作・終わりよければすべてよし」

 シェイクスピアの舞台劇を現代に(二丁目に)翻案する贋作シリーズ。今年は「終わりよければすべてよし」という作品でした。ストーリーはこんな感じでした(これで3分の2くらいです)
 
 近頃父を亡くしてロシリオン伯爵の地位を継いだばかりの神楽坂のバートラム(芳賀隆宏さん)が、家臣のペローレス(岸本啓孝さん)とともに二丁目の王(さいとうまことさん)のもとへ伺候することになります。バートラムの母であるロシリオン伯爵夫人(関根信一さん)に拾われた美しい娘(女装)ヘレナ(エスムラルダさん)は幼馴染のバートラムにひそかな想いを寄せていましたが、身分の違いからそれを告げることができずにいました。
 折しも二丁目の王が深刻な病気に悩まされていたことから、ヘレナは優れた医師であった父から受け継いだ秘伝の処方箋で王を治療して差し上げ、その代わり、王の力でバートラムと結婚させてもらうことはできないものかと考えます。ヘレナのバートラムへの想いに感づいた執事(シュウさん)の注進を受けてロシリオン伯爵夫人はヘレナに問い質し、息子バートラムに対するヘレナの強い愛情を確かめ、分不相応な望みを抱いたことに恐縮するヘレナに許しを与えたばかりか、二丁目行きの費用なども負担すると申し出ます。
 知人たちが練馬の戦役へ赴くのを横目に、若いからという理由で出陣を許されないバートラムが気落ちしています。ヘレナは二丁目へ到着し、貴族ラフュー(オバマさん)の取り計らいで王に会い、「成功したら私の選んだ男性を国王の力で私の夫にしてほしい」という条件で国王の治療に当たることに。治療は見事に成功し、国王は約束通り宮廷にいた若い男たちを呼び集めてヘレナに選ばせ、ヘレナはバートラムを指名します。バートラムは貧乏医者の娘(しかも女装)との結婚など考えられないと断固拒否したが、主君の顔を潰すのかと国王に叱責され、しぶしぶ承諾します。やむをえず結婚はしたものの、どうしてもヘレナとの初夜の床を共にする気になれないバートラムは、用事があるから先に帰宅しろとヘレナに言いつけ、国王にも無断でその日のうちにペローレスを連れて練馬へ出陣します。
 ヘレナから首尾よくことが運んだという知らせを受けて喜んでいたロシリオン伯爵夫人の元へ、バートラムからの手紙が届きます。絶対にヘレナとベッドを共にすることなどできないので自分は逃げると述べたその手紙を読んで、伯爵夫人は義憤に駆られます。ヘレナもそこへやってきて、「もしも私の指輪を手に入れて、私の子を産んでみせればお前を私の妻と認めよう」との無理難題を記したバートラムからの手紙を伯爵夫人に差し出します。手紙を届けた貴族からバートラムの近況を聞き、息子がこのような不実な人間になったのはペローレスの悪影響に違いないと確信します。落胆しきったヘレナは、自分さえいなくなればバートラムは危険な戦場から戻ってこられるだろうからと言い残して谷中七福神の巡礼の旅に出ます。ヘレナは旅先で知り合ったキャピレット未亡人(坂本穏光さん)の家に泊めてもらうこととなり、当地でバートラムが大きな戦功を上げたこと、未亡人の娘ダイアナ(モイラさん)がバートラムから言い寄られていることなどを知ります。ヘレナはダイアナとキャピレット未亡人に協力を願い出て、ある作戦を練るのでした――





 "学芸会"と言いつつ、今回はみなさんかなり力を入れて取り組んでいた様子で、特にヘレナ役のエスムラルダさんが、お客さんを笑わせるだけじゃなく、俳優として真っ当な演技を見せ、このお芝居の言わんとするところを表現し、重要な見せ場を絶妙な表情で的確に演じていたことで、これまでの「gaku-GAY-kai」のシェイクスピアシリーズの中でも最もハイクオリティなお芝居になっていたように感じました。モイラさんの美しさや演技力、オバマさんのグレイス・ジョーンズ風味な女装+二丁目系キャラ、岸本さんのゲイとしての演技(野郎系から女装まで)などもますます磨きがかかり、とても楽しく観ることができました。
 そして何より、キャストを上手に活かしながら、随所にギャグを盛り込んだ関根さんの脚本が素晴らしかったです。捕らえられ、後ろ手に縛られ、目隠しをされたペローレスが「言葉責め」を受けるシーンが特に爆笑でした(「フェラガモ」って言ってみろ、みたいな。ちなみに「フェラガモ」は津軽・秋田では放送禁止用語です…「ガモ」って男性器の意味なので)
 そうして時々笑いを交えながらも、シェイクスピア作品の風格や、あのシェイクスピア作品に特有のエンディングの余韻や味わいがきちんと感じられて、良いお芝居を観たと思えました。
 
 以前は歌やダンスがたくさんあるミュージカル仕立てでしたが、昨年からストレートプレイになって(十分面白いし、ストーリーが頭に入ってくるし、演劇としてのクオリティが上がったように感じました)、その代わり1時間ちょっとで終わるので、疲れませんし、コロナ対策の面でもGOODじゃないかと思いました。
 

第二部
 
 今年も第二部では、いろんな方たちのパフォーマンスが次々に繰り広げられました。

 毎年アイハラミホ。さんは29日のみ出演なのですが、ずっと何年も30日に観に行っていたので、アイハラミホ。さんのショーは本当にひさしぶりでした。相変わらずパワフルでダイナミックで、衣装替えも楽しく。レディ・ガガのバージョンは初めて観ました(どうしても渡辺直美さんを思い浮かべてしまうのはご愛嬌)。楽しかったです。
 
 佐藤達さんの紙芝居。たぶん2013年から出演していると思うのですが、最初はほんわかした若い男の子が子どもの頃の思い出を語っていた新鮮味があったのが、いつの間にか中年に差しかかり、紙芝居もちょっと渋みを感じさせる味わいに。同時に、風格が増したというか、より芸術的な作品になっていたと思いました。よかったです。

 水月モニカさんもずっと前から出演している方です。今回は、ナイチンゲール(鳥のほう)が真実の愛のために我が血を差し出し、赤い薔薇の花を咲かせるというお話をリーディングしていて、沁みました。まるでオスカー・ワイルドの『幸福の王子』のようだなぁと思ったら、まさにその童話集に入っている作品でした。

 関根信一さんは、今年も素敵な絵本を読んでくれました。周囲とは違う色をしたらくだが、空や夜や海の本当の価値や素晴らしさを「普通の」色のらくだに伝え、交歓する『あおいらくだ』という作品。「こどまっぷ」の長村さと子さんと茂田まみこさんカップルがつくった絵本でした。

 モイラさんも毎年、山口小夜子になりきった「リヴァイタル」シリーズを披露していますが、もはや芸術とも言うべき境地に達していて、美しいの一言でした。動きのあるダンスより、こうした静的なパフォーマンスのほうが、片時も気を抜けない、一瞬一瞬の美しさを表現するための神経の尖らせ方が必要になるのかな、と思ったり。

 ジオラママンボガールズのお二人は「gaku-GAY-kai」の最長老ユニットかと思いますが、昨年から空気で膨らませるタイプのエイリアンの衣装?装置?を使い、見た目のインパクト、お子さんも楽しめるような面白さもありつつ、昭和歌謡と相まって独特の味わいを醸し出していました。長らく使っていたサテンのパジャマがついに変わりましたね。ちょっとずつ進化していくジオマンに今後も期待!

 毎年楽しみにしている方も多いと思われる中森夏奈子さんの明菜ショー。今年も大いに笑わせてくれました。歌ったのがまさかの「うっせぇわ」(もともと明菜は「少女A」とか歌ってた人だし、意外とハマる!)と「君が代」(どうして私があの会場にいないのかなと思いながら、というベシャリも本当に面白かったです)。「君が代」を聴いて爆笑したのは生まれて初めてかも(笑)

 大トリはもちろんエスムラルダさん。金子由香利さんの「再会」と山崎ハコさんの「呪い」というベタで昭和テイストでエスムラルダさんらしいショーをひさしぶりに観れて、大満足でした。そして最後は、お約束の「エスムラルダ・デ・マンボ」(さすがは八方不美人でならしてるだけあって、歌唱力の向上具合がスゴいと思いました)。出演者のみなさんが登場し、にぎやかなフィナーレとなりました。



★「gaku-GAY-kai 2021」のフォトアルバムはこちら

INDEX

SCHEDULE