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レポート:金沢プライドウィーク2022(1)豪華ゲストのトークイベント

9月16日〜19日、4日間にわたって開催された金沢プライドウィーク2022のレポートをお届けします。第1弾は「HIV/性の健康 トークセッション」「LGBTQ+映画上映会」「にじのまカフェ特別版」という豪華ゲストを迎えたトークイベントの模様です。

レポート:金沢プライドウィーク2022(1)豪華ゲストのトークイベント

昨年、北陸初のプライドイベントとして金沢プライドウィークが開催され、(コロナ禍の影響で日程変更を余儀なくされたにもかかわらず)初回にして大成功を収めました(レポートはこちらこちら)。今年も9月16日(金)〜19日(月祝)の4日間にわたって金沢プライドウィーク2022が開催されました。2回目となる今回は、金沢が誇る伝統文化の数々とコラボし、昨年を上回る大勢の方々がパレードを歩き、ドラァグクイーンと行く観光ツアーなども行なわれ、実に楽しく、充実した、素晴らしい4日間となりました。レポートの第1弾として、1日目の「HIV/性の健康 トークセッション」、2日目の「LGBTQ+映画上映会」「にじのまカフェ特別版」という豪華ゲストを迎えたトークイベントの模様をお届けします。


HIV/性の健康 トークセッション
 
 16日(金)の夜、昨年と同じ片町(繁華街)のパーティスペース「JIM HALL spazio」(松中権さんの親戚の方のお店で、趣旨に賛同して会場提供してくださったそう)を会場に「HIV/性の健康 トークセッション」が開催されました。「地元地域在住のHIV陽性者および陽性者支援団体、啓発団体、医療/製薬関係者の方をお招きし、HIV/STIの最新の情報や実際の治療と生活、HIV/STIへの啓発と差別・偏見の解消につながるようなトークセッション」で、後半は八方不美人のお二人のライブでした。お酒を飲みながらくつろいだ雰囲気で楽しめるイベントでした。

 初めに感染症専門医で日本エイズ学会指導医でもある渡邉珠代さんとぷれいす東京の生島嗣さんから、PrEPや月に1回の注射ですむ治療薬などHIVに関する最新の情報についてお話がありました(月に1回の注射の治療がすでに始まっていること、初めて知りました)

 そのあと、松中権さんの司会で、生島さん、エスムラルダさん&ちあきホイみさん(八方不美人)、奥村兼之助さん(一般社団法人金沢レインボープライド事務局長)による「地方においてスティグマをなくしていくには」というパネルトークが行なわれました。初めに自己紹介がてらそれぞれがHIVとの関わりについてお話。エスムラルダさんが「HIVのこと以前にセックスがご無沙汰で…」と言って場をなごませてくれたりました。それから地方に暮らす方のHIVをめぐる現状について、病院で知り合いに会ったら…との不安から、検査も治療も都会に出て行なっている方もいる、偏見や差別意識(スティグマ)が強い、といったことが語られ、どうしたらなくしていけるんだろう、というところで話し合いが行なわれました。石川テレビでも放送されたように、奥村さんはこの場で自身がHIV陽性者であることをカムアウトしつつ、治療がどんどん進歩していることやU=U、PrEPのことなど、最新の知識をメディアの方も世間の方もアップデートしてほしいと、また、(奥村さんは石川県内のHIV陽性者のネットワークも運営していますが)コミュニティの方たちがお互いに「見舞ったり、慮ったり」していくなかで、スティグマも軽減されていくのではないかと、目を背けて棚上げにするのではなく、語っていきましょう、と話しました。

 後半は、八方不美人のエスムラルダさんとちあきホイみさん(ドリアンさんは札幌に行っていたので合流できず)によるライブ。ふだん3人で歌っているのに2人で歌うとなると、それぞれドリアンさんのパートも担当することになるわけですが、エスムラルダさんは「最近記憶力の低下が激しくて…」とチラチラ歌詞を見ながら歌っていて、面白かったです。代表曲『愛なんてジャンク』『罰をくらえ愛で』の恨み節ソングメドレー、前向きソング『その日を摘め』、ホイみさんの『愛燦燦』、そしてエスムさんのソロ曲『魔法時間』、アンコールで『地べたの天使たち』というたっぷりしたラインナップで、ファン大喜びなライブでした。これを無料で観れるなんて、なんとお得な!という感じでした。






LGBTQ+映画上映会

 2日目の17日(土)は、ホテル「EIGHT POINT INN KANAZAMA」のカフェ&バーで『ジェンダー・マリアージュ 〜全米を揺るがした同性婚裁判〜』『I Am Here 〜私たちはともに生きている〜』『私はワタシ over the rainbow』という3本のLGBTQ+映画の上映&トークが行なわれました。このイベントは金沢大学のLGBTQ+&アライ学生団体「SELF」のみなさんが中心になって運営していたようです。

 『I Am Here 〜私たちはともに生きている〜』のトークセッションは、「SELF」の方が司会をつとめ、監督の浅沼智也さん(トランス男性)とダイアログ瞬さん(トランス女性、「新宿ダイアログ」スタッフ)というトランスジェンダーの方たちが登壇し、映画でも伝えられていたトランスジェンダーのリアリティについて話が深められました。浅沼監督は「当事者目線の映画がないので、自分で作った。トランスジェンダーの可視化や人権、当事者のエンパワーメントが主眼」「この映画に登場した人たちが全てではありません。僕は性別適合手術を受けたけどそれで人生薔薇色になったわけではありません。いろんな問題があります」と語り、瞬さんは「トランス女性はあまり集って話す機会がないのですが、いろんな方の声を聞けて勉強になりました」「LGBTQのことを語るとき、明るく描かなきゃっていう圧のようなものがあると思いますが、自分らしく生きていけない死にそうな人たちのこと、トランスジェンダーの生きづらさを伝えていてよかったです」と語りました。最後に浅沼さんは「僕らは昔から共に生きてます。SNSでのバッシングに苦しむ方もいると思いますが、仲間がいるということを忘れないで。あなたは素敵です。自分の生き方を否定せずに胸を張って」と、瞬さんは「全ての人が自分のために生きています。周りの目とかどうでもいい。夢を叶えて。自分を労わりながら生きて」と語りました。

 続いて『私はワタシ over the rainbow』ですが、5年前にレインボー・リール東京で観たときとはまた違う感慨がありました(少し出演者も追加され、上映時間も長くなっていました)。何よりも、メインアクターである長谷川博史さんが今年亡くなられたので、追悼の気持ちが強かったのですが、長谷川さんが女装して詩を朗読するシーンの「他人様に何と言われようと、世間様に後ろ指をさされようと」とか「私の血は喜びの血、生きる力を与える」「幸福の血」といった言葉には、改めて魂が揺さぶられるような感動を覚えました。
 上映後のトークショーでは、「まぜこぜの社会」を謳って活動する一般社団法人Get in touch代表の東ちづるさん、映画にも出演している「GOLD FINGER」の小川チガさん(金沢にルーツがあるそう)、「SELF」の方も登壇し、映画について語りあいました。東さんがこの映画を製作しようと思ったきっかけは「レインボーリールを観に行ったLGBTQの人たちが自分たちをリアルに描いた映画がない、ねえさん作ってよと言われたこと、長谷川さんに出会って、生きているうちに撮りたいと思ったこと」だったそう。そのおかげで、こうして長谷川さんの生前の姿を映像として観ることができてよかったですし、東さんも「撮ってよかった」とおっしゃってました(ちなみに東ちづるさんは7月の「ジューシィー!」にも足を運んでくださっていました)。それから、東さんが、とあるトランスジェンダーの方が恋人にカミングアウトした際、たまたま相手の方がこの映画を観ていたおかげで理解してもらえたという話を聞いて感動で「泣いた」と語っていたのも印象的でした。50名を超えるLGBTQが登場する『私はワタシ over the rainbow』、今後も上映され続け、多くの人に観ていただけるといいなと思いました。
 



にじのまカフェ特別版

 映画上映会のトークが押したので、大急ぎで会場の「ハイアット ハウス 金沢」に向かいました。少し遅れて到着した会場はすでに超満員で、熱気を感じさせました。
 「にじのま」は、金沢の古民家で、多様な性について気軽に語れる場として数年前から開かれているお茶会で、特に自身のSOGI(性的指向・性自認)について、また周囲の偏見や無理解について悩んでいるような若い方たちなどが安心して集える場として大切な役割を果たしてきました(現在、この「にじのま」を常設化しようとするプロジェクトが進行中です)。プライドウィークに開催される「にじのまカフェ特別版」は、豪華ゲストを迎えたトークイベント&交流会で、今年は小島慶子さん&ブルボンヌさんがMCを務め、ロバート キャンベルさん、阿武虎さんらをゲストに迎え、開催されました。
 最初に、今回「ハイアット セントリック 金沢」「ハイアット ハウス 金沢」PRIDEキャンペーンで提供していた「True Colors」というカクテル/モクテルが登壇者に振る舞われました(クランベリージュースとライムジュースがベースだそう)。両ホテルの総支配人である高橋慶氏からのご挨拶もありました。
 トークセッション第一部。ゲストの1人目は、アライとして松中権さんに協力し、金沢でのパレード実現にも大きな役割を果たした永井みきこさん(元国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティングユニット事務局長。先の金沢市長選にも出られています)。昨年パレードに参加してみて、その楽しさやインパクト、メディアを通じての発信力などをまざまざと感じたと語っていました。ご両親がパレードのことを知って「そんなことがあるんやね〜」とほのぼの話していらしたそうです。
 2人目のゲストは、25年も前から(時に飲みかけのペットボトルを投げつけられたりしながら)金沢の地でドラァグクイーン文化を守り続けてきた阿武虎さん。昨年初めてパレードに参加してみて、「絶対に罵声浴びると思ってたのに、意外とみんなに手を振ってもらえたりして驚いた」とのこと。「沿道でずっとフロートについてくる若い同性カップルがいて、私の子どもくらいの年で、なんか母性に目覚めちゃった。私も変わらなきゃと思った」という素敵なコメントをくださいました。「お店のお客さんも、今年は一緒に歩きますって言ってくれたり。変わりましたね」「一方で、ご年配の方の中には“余計なことをするな”とおっしゃる方も多い。私はその間をつないでいこうと思います」(拍手)
 休憩をはさんで第二部には、あのロバート キャンベルさんが登場。ブルボンヌさんが「ドラァグクイーンもかすんでしまいそう」とコメントするほどのオシャレないでたちで登場し、今回金沢レインボープライドが頑張った伝統産業とのコラボのことを絶賛するトークを繰り広げました。曰く、「金沢に来てビックリ。東京のプライドは企業の協賛がスゴいけど、金沢は今歩み始めたばかりなのに、関心した。伝統文化とレインボーの掛け合わせを体験して、とてもチャーミングでクリエイティブで素晴らしいと感じました。400年の歴史ある和菓子屋や加賀友禅、金沢の人々のアイデンティティのコアのところ、一丁目一番地、お爺さんの世代からの空間で無理なく協働する。綺麗じゃないですか? 虹色って知ってますか?と会話が生まれる。幸せの掛け算ですね」(こちらの記事にあるように、キャンベルさんはこの日、老舗和菓子店「森八」でレインボーの上生菓子作りを体験していました)。キャンベルさんは「ハイアット ハウス 金沢」がプライドに向けて作ったオリジナルうちわの「STAY AS YOU ARE(あなたはあなたのままでいて)」というフレーズも褒めていらっしゃいました。
 ブルボンヌさんがときどき笑いをとるトークをはさみつつ、小島さんはしっかりしたコメントでいろいろフォローしてくださって、とても有意義な、楽しいトークイベントとなりました。







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