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レポート:年忘れお楽しみイベント「gaku-GAY-kai 2022」

2022年12月29日・30日、ゲイの劇団フライングステージとその愉快な仲間たちによる年末恒例お楽しみイベント「gaku-GAY-kai 2022」が新宿の「シアター・ミラクル」で開催されました。素敵な年忘れイベントの模様をレポートいたします。

レポート:年忘れお楽しみイベント「gaku-GAY-kai 2022」

1997年から毎年(ハコを変えながらも)開催され続け、東京のゲイシーンにおける最長寿イベントの一つとなっている「gaku-GAY-kai」。2022年は、マスク着用などのコロナ対策はしつつも、控えめなコール&レスポンスはアリ、という少し規制緩和されたかたちでのリアル開催となり、ゲイテイストな芝居やパフォーマンスの数々が繰り広げられました。「gaku-GAY-kaiを見ずに年は越せない」というファンのみなさんも、今回初めてという方も、きっと楽しい時間をお過ごしになったことでしょう。2022年12月30日14時〜の回の「gaku-GAY-kai 2022」のレポートをお届けします。



第一部「贋作・テンペスト」

 第一部は「贋作・テンペスト」。『テンペスト』といえば、デレク・ジャーマンの『テンペスト』やピーター・グリーナウェイの『プロスペローの本』など、シェイクスピア作品のなかでも最もゲイテイストに映画化されてきた作品です。関根さんがこの作品をどのようにゲイテイストに再構築するのか、楽しみにしていましたが、クィアフォビアを告発し、二丁目へオマージュを捧げるような、同性婚のシーンもある、素晴らしく感動的な舞台になっていました。ざっとこんなあらすじです。

 渋谷王アロンゾー(水月アキラさん)、新宿大公アントーニオ(関根信一さん)らを乗せた船が大嵐に遭って難破し、一行は絶海の孤島に漂着する。その島には12年前にクィアフォビアのアントーニオによって大公の地位を追われた兄プロスペロー(エスムラルダさん)とその娘ミランダ(モイラさん)が暮らしていた。プロスペローは長い島暮らしの間に魔術を習得し、妖精などを操る力を身につけていた。プロスペローの手下となっていた妖精エアリエル(加村啓さん)は、遭難した一行が誰も亡くなったりせず、また、別々に島に漂着するよう計らっていた。
 王の一行と離れ離れになった渋谷王子ファーディナンド(井手麻渡さん)はミランダに出会い、二人は一目で恋に落ちる。プロスペローに課された試練を勝ち抜いたファーディナンドはミランダとの結婚を許される。
 一方、さらなる野望を抱くアントーニオは渋谷王の弟セバスティアン(和田好美さん)と唆し、渋谷王と顧問官ゴンザーロー(中蔦聡さん)の殺害を計り、また島に棲む怪物キャリバン(オバマさん)は漂着した渋谷王の執事(酒飲みの賄い方)ステファノー(岸本啓孝さん)と道化師(シュウさん)を味方につけプロスペローを殺そうと企む。しかし、いずれの計画もエアリエルの力によって未遂に終わる。
 アロンゾーの一行は魔法によって錯乱状態となるが、プロスペローはそれ以上の復讐を思いとどまり、過去の罪を悔い改めさせて赦すことを決意する…。









 今回は歌舞伎町vs二丁目じゃないのか〜と思ったら、「二丁目という街がどうやって生まれたのか」のお話になっていたところがよかったです。自由や平和や豊かさを象徴する国・二丁目。
 また、このアントーニオが兄プロスペローを島流しにしたのは、プロスペローが女装に没頭していたことを憎んでのことだったという設定が関根さんらしくてよかったです(そのアントーニオを演じていたのが関根さん自身というところもミソです) 
 ミランダはプロスペローと同様、女装した息子なので、ファーディナンドとミランダの結婚は同性婚でした。そして、虹色のウィッグをかぶった妖精たちが「レインボーの輝きのもと」と唱えながら二人を祝福するシーンは、これまでになかったような幻想的で宗教的な趣があり、とても感動的でした。
 原作にはないと思いますが、登場人物が(必要以上に)女装をするシーンがふんだんに盛り込まれていて、そこは「gaku-GAY-kai」らしさだなぁと。
 きちんと原作を踏まえながらも、随所にクィアな要素を入れて、エンタメでありつつ、感動もある、とても幸せな気持ちになれるお芝居でした。
 
 主役のプロスペローを演じたエスムラルダさんは貫禄を感じさせる堂々とした魔女装っぷりで(魔法をかけるときに「マジマジマジ〜ック」と唱えるのは八方不美人ネタですね)、モイラさんは相変わらずの美貌で、皆さんとても素敵でした。今回、オバマさんがいつものグレイス・ジョーンズみたいな女装じゃなく、割と男臭い感じの男役で登場していたのも新鮮でした。
 
 
第二部 パフォーマンスタイム
 
 15分の休憩をはさんで、第二部のパフォーマンスタイムが始まりました。今年も司会は岸本啓孝さんです。

 最初に、つい最近結婚が報じられた佐藤達さんが登場。いつもと変わらないほんわかした雰囲気で、たぬきの恩返し的な物語の紙芝居を披露しました。

 続いて関根さんがドラァグクイーンとして「日本近代プレBL短篇選」から小川未明の「野薔薇」という短篇を朗読しました。国境を守る衛兵二人が親しくなり、友愛の感情が芽生えるが、ある日突然戦争が始まり、二人は引き裂かれ…というお話で、タモリさんの「新しい戦前」ではないですが今の状況に警鐘を鳴らすような、そして戦争というものがいかに同性の愛を無残に踏みにじるかということをしみじみ感じさせるようなお話でした。

 水月モニカさんは、オスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』を(おそらく自身で解題・抄訳したかたちで)リーディング。衣装もサロメに寄せていて素敵でしたし、音楽も使われていて(リヒャルト・シュトラウスの楽劇「サロメ」より7つのヴェールの踊り)本格的な朗読劇になっていました。キリストへの愛という新しい解釈が興味深かったです。

 モイラさんの「小夜子なりきりショウ リヴァイタル:メテオール」。今回はお着物で登場し(着付けとか大変そう…)、相変わらずの美しさで観客を魅了していました。

 それから、「gaku-GAY-kai」の誕生とともに毎年毎年ほのぼのした昭和歌謡ドラァグ・ショーを披露してきたジオラママンボガールズが、今回は欠場ということで、たいへん残念でした(体調が悪かったのかな? どうぞお大事に)

 こちらも14回連続出場というご長寿出し物になっている「中森夏奈子のスパンコール・チャイナイト」。夏奈子さんが冒頭、中森明菜を知らなくて何をやっているのかわからない世代の方がついに登場しましたと言って「企画趣旨」の説明を始めたり、今年は明菜様もTwitterを始められたということでその投稿文を明菜として読み上げたり、紅白出場の願いを込めて架空の紅白ラストを演じてみたりして、抱腹絶倒の楽しいパフォーマンスでした。今年もこれを見れて本当によかったです(一方、客席の若い方たちは無反応…戸惑いすら感じられ、なるほどこれがジェネギャプなのね…と思いました)

 大トリを飾るのはエスムラルダさん。たしか「つんパラ。」でもやっていたと思うのですが、ソニンさんのあの名曲によるマジック・ショー(オトコに捨てられ、悲しみのどん底で包丁を持ってカレーを作り始め…)を披露し、続いて、第一部の冒頭でもやっていたディアボロ(中国ゴマ)を活かすべくピーナッツの「恋のフーガ」ショーを披露し、最後に恒例の「エスムラルダ・デ・マンボ」を歌い、出演者のみなさんも舞台に再び登場し、華麗なフィナーレとなりました。


 
★「gaku-GAY-kai 2022」のフォトアルバムはこちら

 
 
 今回、新宿駅から会場の「シアター・ミラクル」に向かって歩いていたら、「シアター・ミラクル」や昔よくゲイインディーズのライブイベントをやっていた「MARZ」の向かい側の工事中だったエリア(かつてフィンランドサウナとかがあった場所)にバカでかいビルができているのが見えて、ビックリしました(歌舞伎町タワーとかいう娯楽施設だそうです)。新宿の街も、コマ劇場がなくなってゴジラビルが登場し、こうして新しいビルも建ち、少しずつ姿を変えていくのだなぁと感慨を覚えるとともに、変わらないものの良さやありがたみというものもあるなぁと思ったり。「gaku-GAY-kai」もまた、会場が変わったり、出演者の方なども少しずつ変わったりしていますが、それでも、ゲイテイストなお芝居やドラァグクイーンなどのパフォーマンスによる年末のお楽しみ会というコアの部分は変わらずにあって、安心感やファミリー感のようなものを感じさせ、心を和ませてくれます(女装紅白とかも同様だと思います)
 年末年始という、帰省が憂鬱で仕方ない方や、帰省せずに独りで家にいて寂しさを感じる方なども多い時期にこうしたコミュニティ的なあたたかさを感じさせるイベントがあるのはとてもありがたいですよね。
 これからも「gaku-GAY-kai」が末長く続いていくことを祈ります。
 
 
<お知らせ>
 めっちゃ仕事が早くてビックリしたのですが、gaku-GAY-kai 2022「贋作・テンペスト」がYouTubeのFLYINGSTAGE公式チャンネルにアップされました。チケットが売り切れてて観れなかったという方も、ご興味のある方も、ぜひご覧ください。
 劇団フライングステージ 2022年11月公演「Four Seasons 四季 2022」の動画もこちらにアップされています(「Four Seasons 四季 2022」のレビューはこちらです。ご参考になさってください)

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