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レポート:金沢プライドウィーク(2)金沢プライドパレード
18日から始まった金沢プライドウィーク。その締めくくりとして20日、第4回を数える金沢プライドパレードが開催され、約450人が市内を行進しました。VENさんのレポートをお届けします
2024年10月20日(日)、金沢市で第4回を数える金沢プライドパレードが開催されました。10月18日(金)から始まった金沢プライドウィークのメインイベントでした。
前夜は雨が降っていて、パレードは大丈夫かな?と心配していたのですが、一夜明けたら青空が広がるパレード日和となりました(金沢レインボープライドのみなさんの行ないの良さのおかげだと思います)
ご存知のように、今年の元日、能登半島地震が起こり、甚大な被害を被った能登地方だけでなく、石川県の加賀地方や富山県、新潟県も被害を受けました。金沢プライドパレード開催場所のしいのき迎賓館の近くでは、金沢城の石垣が崩れて補修工事をしており、地震の大きさを物語っていました。特に被害がひどかった能登地方では、9月の大雨で仮設住宅が浸水するという二重の災害に見舞われ…目も当てられない状況でした。その他にもいろいろなことがあり、今年はパレードを開催しないほうがいいのではないか、という意見も出たそうです。スタッフが何度も話し合いを重ね、結果、今年も開催することになったそうです。個人的には「こんな時だからこそ開催してほしい」と思っていました。同じ気持ちの人は私だけではなかったと思います。
開催されることになってよかった、晴れてよかったという思いを胸に、9時30分前に集合場所のしいのき緑地へ行きました。みなさんブースの準備やステージのマイクテストなどに忙しそうでした。雨も上がり、風はやや強かったものの、青空が広がり、晴れていました。前日の雨で季節が動いたのか、さわやかな秋を感じさせる朝でした。
9時30分からしいのき迎賓館1階カフェ&ブラックリー ポール・ボキューズで能登支援企画「伝統工芸ワークショップ」が開催されました。「九谷焼陶片を活用した箸置きづくり」「能登ひば使用の「ふうふ箸」袋づくり」の2つのコースがありました。参加者のみなさんは心を込めて作品を作っていました。被害を受けた九谷焼の陶片を使用するなど、能登への支援の思いが詰まったワークショップでした。
10時になり、ブースがオープンしました。早速、パレード受付をする方やブースを回る方たちが集まってきました。
まずはブースから紹介していきましょう。
画像はありませんが、フードブースも充実していました。デザート、軽食、ガッツリ系までフードトラックが6台、並んでいました。
11時になり、ステージイベントがスタートしました。総合司会の小島慶子さんが登場し、共同代表の松中権さんとダイアナさんがオープニングのご挨拶をしました。松中さんは「晴れて良かったです」と嬉しそうでした。ダイアナさんは「今年のスタッフTシャツはオレンジ。オレンジにはヒーリング、癒しという意味があります。能登地震、大雨で被災された方々のことなどを考え、オレンジに決めました」と語っていました。
ステージパフォーマンスのトップバッターは、地元金沢を中心に活躍している「BLUE AREA」のお二人。ラストに歌ったオリジナル曲「ありがとう」を聴いて涙する方もいらっしゃいました。素敵なアコースティックライブでした。
続いて、数多くのレインボーイベントに出演している天道清貴さんが登場。おなじみの曲と、新曲「人生の交差点」を披露。MVも公開されているそうです。ラストは名曲「虹の向こうへ」を歌ってくれて、感動した私の友人が泣いていました。
前夜から来られていた八方不美人のエスムラルダさん、ちあきホイみさん。今年も加賀友禅の美しいコートを着て登場しました。イヤリングはブース出店していた紫桜さんのものでした。歌はノリのよいメドレーから始まりました。歌詞が強烈だったのですが、ラストはパレードスタートに向けてプライドソング「地べたの天使たち」を歌ってエールを送ってくれました。
前日の金沢レインボー茶会を全面的にバックアップしてくださった十一代大樋長左衛門さんが登場。金沢レインボーお茶会では伝統文化と現代の多様性が交差するような素敵な時間を提供してくださいました。来年もぜひ開催したいといううれしいお言葉もいただきました。
金沢出身で二丁目の「GOLD FINGER」を経営しているチガさんと、阿武虎さんほかドラァグクイーンのみなさんが登場しました。前日のお誕生日祝いで朝まで呑んでいたという阿武虎さんは、なんとInstagramのライブ配信をしながら登場し、場を沸かせました。チガさんは会場にお母様もいらしていることを明かし、出身地でこういったイベントができるのがうれしいとおっしゃっていました。
続いて金沢大学のダイバーシティ推進担当学長補佐である長谷部徳子氏が登場。金沢大学では、LGBTサポートガイドを作成したり、共生社会の実現に向けた取組みを進めているそうです。ブースでも詳しい取組みについて展示されていました。
石川県の馳浩知事は「今年は地震や大雨で、石川県は被害を受けました。金沢プライドウィークも開催できるかわからなかったですが、こうして開催されてよかった、価値観を認め合いながら、みなさんが住みやすい石川県にしていきたい」「被害のあった地域の復興に全力を注いでいきたい」とスピーチしました。公務のためパレードには参加できませんでしたが、時間を作って駆けつけてくださったそうです。
今年初参加となる俳優の篠井英介さんが登場。「地元金沢で、パレードをみなさんと一緒に歩きます。頑張りましょう」と言って盛り上げてくださいました。
続いてロバート キャンベルさんが「昨日と変わって、晴れて気持ちいいですね。パレード頑張りましょう」と語り、エールを送ってくれました。
こちらも今年初参加となるSHELLYさん。「当事者だけでなく、アライの人が声を上げなくてはいけないと思います。同性婚や選択性夫婦別姓がなぜ認められないのかがわからない。今日は、みんなでアピールしましょう」と力強く語りました。
登壇者全員で記念撮影。この方々がパレードを一緒に歩いてくれるのはとても心強いと感じました。
そうして、パレード出発に向けて整列が始まりました。今年は地震や大雨などいろいろなことがあったことに鑑み、派手なフロートは出展せず、シンプルに歩くかたちのパレードとなりました。歩くコースも、しいのき緑地→兼六園下→橋場→武蔵→香林坊→市役所前と少し短くなっていました。
私がスタートを待っていた場所が、ちょうど石垣の修復工事をしている場所の近くだったので、崩れた石垣を見て地震の被害の大きさに思いを馳せていました。
13時半、いよいよ、パレードがスタートしました。
先頭は横断幕を持ったロバートさん、SHELLYさん、篠井さん、十一代大樋長左衛門さん、小島さんが歩きます。その後ろに共同代表のダイアナさんと松中さんが続きます。
しいのき緑地から出発したパレードは、大勢の観光客でにぎわう金沢城と兼六園の間を進んでいきます。あちらこちらで「Happy Pride!」と聞こえてきます。
先頭から最後尾まで、かなりの長い列になっていました。
天童清貴さんやチガさんも歩いています。
阿武虎さんらドラァグクイーンのみなさんは、今回はフロートではなく歩きなので、さすがにハイヒールではなくスニーカーを履いて参加していました。それでも歩いてくださるところに、強い思いを感じました。
金沢大学のみなさんは、お揃いの黄色いバンダナをつけて歩いていました。
金沢ITクリエーター専門学校のみなさん、のうか不動産のみなさん、杉山文野さん、隠れズのみなさん、チェリオのみなさん、Transgender Japanのみなさん、LGBTの家族と友人をつなぐ会の浦狩知子さん、NTTグループのみなさん、京都レインボープライドのみなさん、ぷれいす東京のみなさん、山口レインボープライドの方なども歩いていました。
途中、エスムラルダさんと阿武虎さんが、レンタル自転車で沿道に登場し、みなさんを驚かせました。
和菓子の老舗・森八の前では、お店の方が外に出てきてレインボーフラッグを振って応援してくださり、とてもうれしかったです。
風がほどよく、時には強く吹いて、レインボーフラッグが風にたなびいて、先頭から後部までとてもきれいでした。
武蔵交差点にやってきました。バス停や商業施設があり、人通りの多いスポットです。みなさん、「Happy Pride!」と声を上げます。選挙活動をしていた政党の方もレインボーフラッグを振って応援してくれました。街の反応は人それぞれでしたが、車の助手席から手を振ってくれたり、ビルの窓から、あるいはお店の前に出てきて手を振ってくれる人たちなど、うれしい反応をしてくれる人が多かったです。
エスムラルダさんがカフェのオープンテラスでコーヒーを飲みながら優雅に手を振ったり、イリュージョンのように要所要所に現れるので、パレード参加者のみなさんもびっくりしていました(笑)
パレードは金沢の中心地・香林坊へと進んでいきます。ヴィトンやアルマーニなどのショップや百貨店が並ぶ香林坊もたくさんの人で賑わっていましたので、ここぞとばかりに、みなさん「Happy Pride!」と声を上げてアピールします。沿道では、笑顔で手を振ってくれる人、驚いている人など様々な反応がありました。
交差点を曲がったところで、お召し物を替えてヒールを履いたエスムラルダさんが立って手を振っていました。瞬間移動&早着替えの技にみなさん、驚愕していました。エスムラルダさんのサービス精神に脱帽です。
パレードはゴールに向かって進んでいきます。会場の隣の(第1回の会場だった)いしかわ四高記念公園ではマルシェも開催されていて、その来場者の方々もパレードに注目していました。
そうしてパレード参加者のみなさんは、しいのき緑地にゴールしました。なかがわさんが「故郷を帰れる街にしたい」ののぼりを持ってお出迎えしてくれました。
★パレードのフォトアルバムはこちら
しばらくして、エンディングイベントが始まりました。
ゲストの方々がステージに上がり、感想などを自由にお話しました。みなさん共通しておっしゃっていたのは、街の反応が温かかったということでした。公務で歩けなかった知事の代わりに副知事の方が歩いてくださり、ステージ上で「楽しかった」とおっしゃっていました。ゲストのみなさんが口を揃えて、カメラマンの秋山理央さんの撮影する姿勢が素晴らしかったおっしゃっていて、秋山さんがステージに上がっていろいろと質問に答えていました。
共同代表のお二人から閉会のご挨拶があり、最後に記念撮影をして、パレードは終了しました。
みなさん、お疲れ様でした。今年はいろんなことがあり、開催に至るまで大変だったと思います。それでも開催してくださってありがとうございました。また来年お会いしましょう。
なお、金沢のパレードの前日・11月19日に福井県鯖江市で開催される予定だった「さばえダイバーシティパレード」は、残念ながら雨のため中止となりました。翌日に開催された鯖江まつりには予定通りブース出展し、「ゾンビな練り歩き」には横断幕を持って参加したそうです。来年は晴れて開催されてほしいですね。
また、金沢のパレードと同日、同じ中部地方の愛知県豊橋市では、第1回豊橋レインボーパレードが開催されました。西三河レインボーフラッグスのみなさんが主催し、Transgender Japanの方など11人が参加したそうです。このパレードは「ええじゃないか 豊橋まつり」のTOYOHASHI BIG PARADEに一つのグループとして参加する形のパレードでした。参加したお一人の劉靈均さんは「あまりパレードのようなイベントがない三河でパレードを歩けてうれしいです」とおっしゃっていました。
11月以降も各地でプライドパレードやレインボーフェスタが開催されます(スケジュールはこちら)。参加の仕方は様々あると思います。ぜひ興味のあるイベントに参加してみてください。
【追記】2024.10.31
台風の接近に伴い、11月2日(土)の九州レインボープライドが中止となる可能性があるそうです(詳細はこちら)。3日(日)は予定通り開催される見込みです。雨が降らないことを祈りましょう。
(取材・文:VEN)
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