g-lad xx

FEATURES

レポート:年忘れお楽しみイベント「gaku-GAY-kai 2024」

年末恒例のお楽しみイベント「gaku-GAY-kai 2024」。今年も二丁目の「スターフィールド」で12月29日・30日に開催されました。笑いとゲイテイストがあふれる楽しい一夜をレポートします

レポート:年忘れお楽しみイベント「gaku-GAY-kai 2024」

年末恒例のお楽しみイベント「gaku-GAY-kai」が、今年も二丁目の「スターフィールド」(旧タイニイアリス)で開催されました。第一部のお芝居は贋作シリーズ第8弾で、これまではシェイクスピアだったのですが、今回初めてチェーホフの『桜の園』が二丁目の物語に翻案されました。そして第二部では、いつものように、「gaku-GAY-kai」しか見られないパフォーマンスの数々が繰り広げられ、笑いとゲイテイストがあふれる楽しい一夜となりました。レポートをお届けします。


 12月30日(土)13時半頃、二丁目仲通りに面した地下の劇場「スターフィールド」へ。入る前に隣のシャインマートのところでタバコを喫っていたら、徹夜で飲んでいたという友人にバッタリ。さすがは年末だなと思いました。
 お客さんが続々と詰めかけ、14時前には満席状態に。関根さんが開始のご挨拶をして、「gaku-GAY-kai 2024」がスタートしました。

 第一部は『贋作・桜の園』。チェーホフの『桜の園』はロシア革命の前夜、1903年に書かれた作品で、貴族階級の没落と新興階級の勃興という時代のリアリティを描いた傑作悲喜劇ですが、それを関根さんは、二丁目(正確に言うと、新宿御苑から二丁目にかけての一帯)を桜の園に見立てて翻案し、性的マイノリティの悲哀や、ドラァグクイーンのようなゲイカルチャーという新たな視点を加え、感動的な作品に仕上げました。主演のエスムラルダさんをはじめとする役者さんの演技も素晴らしかったです。ラストシーンにはハッとさせられ、感動が押し寄せてくるような作品になっていました。
 ざっとこんなストーリーです。

女地主・ラネーフスカヤ(エスムラルダさん)が娘・アーニャ(木村佐都美さん)の付き添いで神戸から5年ぶりに自分の土地・桜の園と呼ばれる内藤新宿へと戻って来る。女装の兄・ガーエフ(関根新一さん)や養女・ワーリャ(モイラさん)たちが帰還を喜ぶ。昔からこの家に仕えてきた執事のフィールス(中蔦聡さん)はさらに老いていた。
今はかつてのように裕福な暮らしはもはや望めず、金に困る一家。桜の園は借金返済のため売りに出されている。新興の商人・ロパーヒン(石坂純さん)は土地の一部を別荘用地として貸し出せば、難局は避けられると助言する。しかしラネーフスカヤは散財する癖が抜けず、破産の危機も真剣に受け止めようとしない。ガーエフは知人や親戚からの借金を試みる。
小間使いのドゥニャーシャ(坂本穏光さん)は執事・エピホードフ(水島和伊さん)にプロポーズされていたが、ドラァグクイーンの召使い・ヤーシャ(オバマさん)にすっかり惚れてしまう。ロパーヒンは桜の園を別荘用地にする必要性を執拗に説いているが、依然としてラネーフスカヤは現実を直視しようとしない。ワーリャとロパーヒンは前々から互いのことを想っているが、どちらからも歩み寄れないままでいる。アーニャは新しい思想を持った大学生・トロフィーモフ(さいとうまことさん)に憧れているが、トロフィーモフにはすでにパートナーがいた。それはロパーヒンの部下・ヤーコフ(水月アキラさん)だった。
ガーエフとロパーヒンは桜の園の競売に出かけ、ラネーフスカヤは不安に駆られている。彼女は別れた神戸の恋人とよりを戻すことを考えており、金を巻き上げられるだけだと警告したトロフィーモフと口論になる。そこへガーエフが泣きながら帰宅する。ロパーヒンが現れ、自分が桜の園を買ったと宣言する。貧しい農夫の身分から桜の園の地主にまで出世したことに感動するロパーヒン。泣き崩れるラネーフスカヤ。アーニャが新しい人生を生きていこうと母を慰める。
桜の園の最後の日。ドゥニャーシャは主人と共に神戸に戻ることになったヤーシャに捨てられる。ロパーヒンはワーリャへのプロポーズを決意するが、土壇場でやめてしまう。皆は荷造りを終え、この家を出て行く。と、病院に行ったと思われていたフィールスが独り、屋敷に残されていた。横たわったまま身動きひとつしなくなるフィールス。外では桜の幹に斧を打ち込む音が聞こえる…。
















 主演のエスムラルダさんが貴族階級の女主人の役を見事に演じていたのがまずスゴいと思いました。(昔は貧乏女装と呼ばれる集団の一員だったのに)いかにもお金持ちのマダムといったいでたちで、衣装も何度も着替えていましたし、演技も堂々としてて実に立派でした。エスムラルダさんや関根さんが演じる有閑マダムは、過去の栄光にすがり、プライドを捨てきれず、気に入らないわ〜と言いながら打つ手もなく、桜の園を奪われ、没落していくわけですが、その「気に入らないわ〜」と言う言い方が二丁目のオバサンっぽい口調で素敵でした。
 そんな没落していく貴族たちに代わってこの土地の所有者となる商人・ロパーヒンは、新たな時代に適応し、現実を見て行動していますが、彼もまたゲイであり、下品で無思想な「成り上がり」などではなく、性的マイノリティのために何ができるかということを考えている人だった、という描かれ方がとても素晴らしかったです。(それ以前に、桜の園が性的マイノリティのセーフスペースとして活用されていたというエピソードもあって、素敵でした)
 ビッチなドラァグクイーン役のオバマさんにもたくさん笑わせていただきました。みなさんとてもいい演技で、二丁目にオマージュを捧げるこの名作を見事に形にしてくれました。
 
 今回はYouTubeに上がったりはしないそうですが、こちらに脚本が掲載されています。気になる方はぜひご覧になってみてください。 


 
 第二部は、いつも通りのキャストながら、みなさんいつもよりも気合の入ったパフォーマンスを見せてくれた気がします。

 今年も岸本さんがゴージャスないでたちで司会を務めてくれました

「佐藤 達のかみしばい 僕の話をきいてください」佐藤達
 秋田の小学校のスキーレースでビリになったとおるさんのお話で、しずちゃんがちょいちょい出てきたり、馬に乗った将軍様が出てきたり、実に面白かったです

「ドラァグクィーン ストーリータイム」関根信一
 漱石の『猫』の中編の序文。友人の正岡子規に宛てた文章で、病と闘い(編注:子規は野球でキャッチャーをやるようなガタイのいいスポーツマンだったのですが、結核がひどくなり、脊椎カリエスを発症してしまったのです…)、若くして亡くなってしまった親友に対する友愛の情というか、友情を超えていると思えるような情が感じられる名文でした。そして最後に、先日亡くなった谷川俊太郎の「きみ」を読みました。それは、関根さんが何度も漱石の『こころ』を取り上げ、男どうしの友情と同性愛の境目の曖昧さをテーマとしてきたことと地続きだと感じました。

「水月モニカのクイアリーディング」水月モニカ
 冷たい岩山の語り。ある日、小鳥がやってきて、初めて生き物の暖かさに触れ、どうかここにとどまるようにと懇願するが、草木も生えてない、生き物もいないここでは暮らせないと、その代わり、毎年春にやってくると約束して小鳥は去っていきます。毎年小鳥の訪れを楽しみにして、恋のような熱い思いを抱いていた岩山は…というお話でした。ちょっと『幸福の王子』を思わせながら、悲しい結末ではない、心に小さな暖かい火がともるような、素敵なお話でした。

「ふんわり小夜子ショウ リヴァイタル:レシタル」モイラ
 長年、山口小夜子に扮して、踊りというか、舞というか…を美しい音楽と照明と衣装で表現してきたモイラさんが、今回、初めて生歌に挑戦しました。女装の俳優としての活躍の幅を広げてきたモイラさんの、新たな一面が垣間見えた気がしました。

「ジオラママンボガールズの明鏡止水」ジオラママンボガールズ
 こんな歌、どっから見つけてきたの?と思うような昭和歌謡を、これでもかと披露してきた独特な世界観のドラァグ・ユニット、ジオラママンボガールズ。今回も、チーターってこんな歌も歌ってたんだ?と驚かされました。関根さんがほぼ動かなかったのも逆に斬新で面白かったです。

「中森夏奈子のスパンコール・チャイナイト vol.16」中森夏奈子
 もう16回にもなるんですね。今年は本家の明菜様の話題が本当にたくさんあったので、夏奈子さんもうれしそうでしたし、明菜ファンである私もうれしかったです。そんな今年は初めてピアノの生伴奏がついて(なんでも、クイーンさんに大人気の方だそう)新しかったですし、『Tattoo』では、なんと、『ザ・ベストテン』で本物の明菜様のバックダンサーを務めたことがある方(中嶌聡さんでした)が登場し、当時のダンスを再現してくれて、とっても新鮮で面白かったです。(実はここでカメラの調子が悪くなり、急遽i-Phoneで撮ったので、画質がよくないです…すみません)


「今年もアタシ、第二部で何かやろうかねえ」エスムラルダ
 エスムラルダさんはミポリンへの追悼として『ツイてるね、ノッてるね』ショーをひさしぶりに披露。そして定番の魔女っ子メグショー(手品)、エスムラルダdeマンボで締めくくりました。最後は出演者のみなさんが一斉にステージに上がり、にぎやかで楽しいフィナーレとなりました。



★「gaku-GAY-kai 2024」のフォトアルバムはこちら 


 たぶん欠かさず毎年参加していて(一度は出演もして)、これを観ないと年を越せないと真剣に感じている「gaku-GAY-kai」を今年も堪能できて、よかったです。たくさん笑って、感動もあって、ひさしぶりの方にも会えて、最高によい年忘れイベントとなりました。
 よく考えると、お酒を飲めない方や、朝までクラブはつらいという方が、昼間に座ってドラァグクイーンのショーなどを楽しめるってなかなかないことで、そういう意味でも「gaku-GAY-kai」は貴重なイベントだなぁと思いました。
 興味のある方は次回(1年後)ぜひ、足を運んでみてください。
 
(取材・文:Junchan)

INDEX

SCHEDULE