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「なぜ父親になれない」女性から男性にトランスした方が代理出産でもうけた子が無戸籍状態に

2010年11月26日

 女性として生まれ、性別を男性に変えた大阪府東大阪市の会社員・前田良さん(28)が、第三者の精子を使った人工授精で妻(28)との間に男の子をもうけてから1年が経ちましたが、嫡出子(婚姻関係にある男女から生まれた子)としての出生届が認められず、男の子には今も戸籍がないままだといい、夫婦は20日、大阪市内で初めて講演会を開き、「医療は進んでいる。法律も変わるべきだ」と訴えました。
 
 前田さんは平成16年に性同一性障害と診断され、20年に戸籍の性別を変更し、結婚しました。その後、実弟から精子の提供を受けて昨年11月、妻が出産しました。夫婦は当時住んでいた兵庫県宍粟市に出生届を出しましたが、宍粟市は「生物学的に親子関係は認められない」として受理を拒否。非嫡出子(婚姻関係にない男女から生まれた子)として届けるよう指示しました。

 夫以外の精子を使った人工授精は日本でも約60年前に始まり、すでに1万人以上が生まれたといいます。夫が生来の男性の場合は、一般的に嫡出子として出生届が受理されています。

 今年1月には当時の千葉景子法相が「嫡出子で認める方向で検討する」と表明しましたが、その後、「生殖医療全体にかかわる案件で法改正も含めた検討が必要」と見解を翻しました。

 一向に議論が進まない状況に、夫妻は「国が動くのを待つだけではいけない」と自ら講演会を企画。「なぜ僕は父親になれないのか?」と題して、問題提起することにしました。  
 この日は、夫婦を支援する国会議員のほか、前田さんと同じ立場で妻が出産を控えている人たちなど、約30人が意見交換しました。

 前田さんは父親になれないつらさを吐露。男児の出生届の受理を拒否された際には涙が止まらなかったといい、「性同一性障害で悩んでいたときでも泣かなかった。国に(自分たちの存在を)否定された気がした」「法律と運営する機関がどれほどずさんかを思い知った」と語りました。

 将来、息子に「父親」についてどう説明するのかと尋ねられると、「ありのままに伝えたい。息子が誰を父親と思うかは、息子が決めること。たとえ息子が(自分から)離れていくことになっても…」と声を詰まらせました。

 二人の子どもが嫡出子として認められない根拠となっているのは、明治時代に制定された民法。前田さんは「医療は進んでいるのに、古い時代の状況に合わせたままなのはおかしい」と批判。全国で相次いだ高齢者の所在不明問題で、死亡後も戸籍上は生存している人が多数いた点に触れながら、「今を懸命に生きる息子には戸籍がない」と無念の思いを語りました。

 最後に前田さんは「父親になりたい。国に認められるまで頑張りたい」と決意を表明。妻も「私たちのような家族もあるのだと受け入れ、理解してほしい」と訴えました。
 
 
「なぜ父親になれない」 性同一性障害男性、悲痛な叫び(産経関西)
http://www.sankei-kansai.com/2010/11/21/20101121-046365.php

「子は無戸籍」 性同一性障害の男性が対応批判(神戸新聞)
http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0003626407.shtml

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