REVIEW
同性愛者を含む4人の女性たちの恋愛やセックスを描いたドラマ『30までにとうるさくて』
タイプの違う4人の女性の恋やセックスを描いた(間違いなくSATCを意識している)AbemaTVのドラマです。4人のうち1人がレズビアンというところも素敵です。
100万人以上の女性の共感を呼んでいることで話題のAbemaTVのオリジナルシリーズ新作ドラマ『30までにとうるさくて』が面白いです。タイプの違う4人の女性の恋やセックスを描いた作品で、間違いなく『セックス・アンド・ザ・シティ(SATC)』を意識していると思われ、けっこう性に奔放な方もいたりします(サマンサほどではないですが)。そして、4人のうちの1人がレズビアンであるというところもイイです(ミランダ?)。地上波ではないのですが、かなりきちんと作られたドラマで、ふつうに面白いですし、レズビアンのリアリティの描き方も好感が持てます。
『30までにとうるさくて』は、それぞれ異なった感性や価値観を持つ、現代の東京を生き抜く29歳独身女性たち4人組の恋、キャリア、セックス、友情を描いたドラマです(婚活女子、恋愛・出産要らない派、など)。子どもを産むなら年齢は気にした方がいいのかな…とか、仕事と恋愛、どう両立させたらいいのか…とか、彼氏とセックスレスになってるけど、どう解決したら…など、30歳という節目の年齢を意識する女性ならきっと誰もが一度は感じたことがあるであろう、悩みやあせり、怒りを抱えながらも、お互いに励ましあいながら乗り越えていく姿をユーモラスかつ痛烈に描いた作品です。
4人のキャラクター造形が「あるある」で、きっと誰かには感情移入してしまうというところや、セックス・恋愛や結婚・出産に対するスタンスがそれぞれ違っているところ、セックスがらみで「ウソ、マジで?」と思ってしまう手に汗握る展開、いろいろあっても、仲良し4人組で愚痴をこぼしたり励ましあったりしてなんとか乗り越えていこうとする姿なども素晴らしくSATC風味です(今のじゃなく、昔のサマンサがいた頃のSATC)。セックスレス・カップルが二人でセラピーを受けるシーンなども興味津々でした(これのゲイ版があってもよさそう、と思ったり)
そして、4人のうちの1人、知的な雰囲気を漂わせる詩(うた)という女性がレズビアンであるところがイマドキで、ごく自然に(「禁断の」とかじゃなく)リアルに女性カップルの姿が描かれているところも素敵でした。
詩は真琴というモデルの女性とつきあっているのですが、こちらの記事にも書かれているように、真琴が交通事故で病院に運ばれ、面会はできたのですが、二人の関係を知ったマネージャーに仕事に差し支えると止められた真琴が別れを切り出し…(「レズビアンとして生きていくって、想像しただけで大変なことのほうが多すぎる」「私、もう傷つきたくないんだよね…ごめんね…」という切ないセリフが…)という、悲しい展開を迎えます。そして2月10日に配信された第5話で、失意の詩が久しぶりに実家に帰り、お母さんが「好きなのに別れるっていちばん辛いよね」「二人は何も悪くないのにね」と言いながらみかんを渡す(そしてホッケを焦がす)シーンがあって、泣かせます(なんと、石野真子さんがお母さん役を演じています)。第1話〜4話はダイジェストでいいので、このシーンだけでもぜひ観ていただきたいなぁと思いました。
視聴者からは詩の姿に「素敵すぎて泣いた」「自分を隠さずに生きられる世界がいい」「身の回りから変えていこうとする姿がかっこいい」といった声が多数寄せられ、またお母さんに対しても「いいお母さんすぎて泣ける」「支えてくれるお母さんがいるって幸せ」という声が集まったそうです。ものすごい視聴数を上げているドラマで、このように同性愛者の置かれている不条理な境遇に対して共感を呼ぶようなシーンが描かれていることには、少なくない意義があると感じます。
AbemaTVでの配信なので(1話〜4話のダイジェストはTVerで配信中)、いつでも無料で視聴できます。お時間ある時にどうぞ。
30までにとうるさくて(SPダイジェスト)
https://tver.jp/corner/f0096888
#5 29歳、結婚相手の条件って?
https://abema.tv/video/episode/90-1620_s1_p5
INDEX
- マジョリティの贖罪意識を満たすためのステレオタイプに「FxxK」と言っちゃうコメディ映画『アメリカン・フィクション』
- クィアでブラックなミュージカル・コメディ・アニメドラマ『ハズビン・ホテルへようこそ』
- 涙、涙…の劇団フライングステージ『こころ、心、ココロ -日本のゲイシーンをめぐる100年と少しの物語-』第二部
- 心からの拍手を贈りたい! 劇団フライングステージ 『こころ、心、ココロ -日本のゲイシーンをめぐる100年と少しの物語-』第一部
- 40代で性別移行を決意した人のリアリティを描く映画『鏡をのぞけば〜押された背中〜』
- エストニアの同性婚実現の原動力になった美しくも切ない映画『Firebirdファイアバード』
- ゲイの愛と性、HIV/エイズ、コミュニティをめぐる壮大な物語を通じて次世代へと希望をつなぐ、感動の舞台『インヘリタンス-継承-』
- 愛と感動と「ステキ!」が詰まったドラァグ・ムービー『ジャンプ、ダーリン』
- なぜ二丁目がゲイにとって大切な街かということを書ききった金字塔的名著が復刊:『二丁目からウロコ 増補改訂版--新宿ゲイ街スクラップブック』
- 『シッツ・クリーク』ダン・レヴィの初監督長編映画『ため息に乾杯』はゲイテイストにグリーフワークを描いた素敵な作品でした
- 差別野郎だったおっさんがゲイ友のおかげで生まれ変わっていく様を描いた名作ドラマ『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』
- 春田と牧のラブラブな同棲生活がスタート! 『おっさんずラブ-リターンズ-』
- レビュー:大島岳『HIVとともに生きる 傷つきとレジリエンスのライフヒストリー研究』
- アート展レポート:キース・へリング展 アートをストリートへ
- レナード・バーンスタインの音楽とその私生活の真実を描いた映画『マエストロ:その音楽と愛と』
- 中国で実際にあったエイズにまつわる悲劇を舞台化:俳優座『閻魔の王宮』
- ブラジルのHIV/エイズの状況をめぐる衝撃的なドキュメンタリー『神はエイズ』
- ドラァグでマジカルでゆるかわで楽しいクィアムービー『虎の子 三頭 たそがれない』
- 17歳のゲイの少年の喪失と回復をリアルに描き、深い感動をもたらす映画『Winter boy』
- 愛し合う美青年二人が殺害…本当にあった物語を映画化した『シチリア・サマー』
SCHEDULE
記事はありません。