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ゲイ旅コラム:WORLD PRIDE NYC(7)ホイットニー美術館、グッゲンハイム美術館、ブロードウェイミュージカル『プロム』

街中がレインボーカラーに彩られ、世界中から集まった400万人がストーンウォール50周年を祝った2019年のWORLD PRIDE in ニューヨークを体験する旅。7日目(7/1月曜)は、ホイットニー美術館、グッゲンハイム美術館、そしてブロードウェイミュージカル『プロム』を堪能しました。

ゲイ旅コラム:WORLD PRIDE NYC(7)ホイットニー美術館、グッゲンハイム美術館、ブロードウェイミュージカル『プロム』

ストーンウォール50周年を記念して初めてワールド・プライド(世界的なLGBTの祭典)として開催されたニューヨーク・プライド。この機会を逃すときっと後悔する、行くなら今だ!という思いで、半年以上前から準備をして、約1週間ほどニューヨークに行って来ました。一生の思い出となるようなパレードから一夜明けた7月1日(月)は、もうプライド月間も終わり、ゲイイベントなどもほとんどありませんので、まだ観ていなかったホイットニー美術館、グッゲンハイム美術館、そして夜はブロードウェイミュージカル『プロム』を堪能しました。(後藤純一)


ホイットニー美術館

 実質的にニューヨーク滞在最終日です(翌日は帰るだけ)。今度いつ来れるかもわからないし、悔いが残らないよう、できるだけ美術館を観ておこうと思いました。
 まずは、泊まってたホテルから歩いて1分のところにあったホイットニー美術館。アメリカの近現代美術作品を主に展示しています。最後の日くらい贅沢しようと思い、ここの併設のレストランでブランチをいただきました(めっちゃ高級でした…)
 売店には、レインボーフラッグやトランスジェンダーフラッグなどが並び、プライドを祝っていました。
 ゴリゴリのBeefyなゲイ集団なども訪れていました。
 ちょうど「ホイットニー・ビエンナーレ」という歴史ある展覧会(ジョージア・オキーフやジャクソン・ポロックらがこのビエンナーレで発掘されたと言われています)の期間中で、女性やマイノリティのアーティストの作品が大半を占めていたそうです。ウォーホールやリキテンシュタインもありましたし、ゲイの姿を描いた絵や、男性のヌード写真もありました。日本で同様の展覧会があったとして、あからさまにゲイエロティックな作品が選ばれることはないでしょうから、さすがだなぁ、スゴいなぁと思いました。
 屋上やテラスに出ることもできて(眺めが良かったです)、座る場所もたくさんあり、自由に、のんびりと過ごすことができ、素敵な場所だなぁと思いました。












Stonewall@50 Photographs Online
 
 昼過ぎ、グッゲンハイム美術館へ向かう途中、マジソンアベニュー56丁目辺りに、ハーブ・リッツのマッチョなドラァグクイーン(メイク途中で裸の)がタバコを吸ってる写真とレインボーカラーをバーンと掲げて、ストーンウォール50周年記念写真展やってますよっていうギャラリーがあるのを見つけて、ラッキー♪って感じで、ふらりと立ち寄りました。
 高級感あるちょっと敷居が高いギャラリーでしたが、旅の恥はかき捨てで、オーナーらしき人に「ストーンウォール50の写真展はどこですか?」とできるだけ丁寧に聞いて、地下の展示室に行きました。
 ギャラリーって日本だと、小さめの部屋にちょっと展示しておしまい、というところが多いと思うのですが、びっくりするくらい広くて、たくさん展示されてました。ハーブ・リッツ、メイプル・ソープ、ナン・ゴールディン…有名な写真もそうでない写真も、いろいろあって、見応えがありました。映像とかも独自に作られてて、ワールドプライドに便乗してちょっとやってみました、ではない、ちゃんとした企画展になってるなぁと思いました。






 
 
グッゲンハイム美術館
 
 そこから、もう乗り慣れたバスに乗り、グッゲンハイム美術館へ。本当は同じアッパーイーストサイドにもう1軒、フェルメールを3点所蔵するフリック・コレクションという美術館もあったのですが、あいにく月曜は休館だったので、グッゲンハイム美術館に的を絞ることにしました。
 ひときわ大きな白くて丸い建物に到着(あとで知ったのですが、フランク・ロイド・ライトがデザインしたんですね。で、この7月、世界遺産になったそうです。ひゃー)。早速チケットを購入。ホイットニーもそうでしたが「あなたはニューヨークに住んでる人?」と聞かれました。「いいえ」と言うと、「どこからですか?」と聞かれます。たぶん統計を取ってるんでしょうね。ワールドプライドの期間中、日本から来た人がグッと増えたということがデータになると素敵かもしれません。
 真ん中が吹き抜けで大きな螺旋状の展示スペースになっている館内は、とてもユニークです。まずエレベーターで最上階に上がります(そうじゃないと登っていくことになるので)。エレベーターを降りた所のさらにちょっと上に行列ができていましたが、なんとなく並ぶのが面倒だと思い、そこから下り始めました。そしたら、偶然、オープニングレセプションで席が前後だった方に会って、いちばん上のところ観ました?と聞かれて、バスキアとかキース・ヘリングとかの黒人差別をテーマにした部屋があるのでぜひ、と言われて、慌てていちばん上に戻りました。殺される黒人の悲痛な叫びが伝わってくるような展示でした。
 それから、ゆっくり螺旋ループを下って行きました。時々、ループにつながった部屋でも展示が行われていて、「アーティスティック・ライセンス」という現役アーティストたちが作品を選ぶ企画展も面白かったですが、なんと、メイプルソープの代表作が一堂に会している大回顧展的な写真展のスペースもあって、感激しました。なかなかこんなにたくさん観れる機会はないです。お年寄りも若い人も、ズボンのチャックからベロンとイチモツが出てる写真や、全身ゴムだったりレザーだったりのキンキーな写真や、鞭をケツ穴に突っ込んでるポートレイトをまじまじと観ている光景が、とてもよかったです。これもワールドプライドだなぁと思いました。











ブロードウェイ・ミュージカル『プロム』

 ニューヨーク最後の夜は、何かブロードウェイ・ミュージカルを観ようと思っていたのですが、「あなたはこれを観たほうがいい」とオススメされた『プロム(The Prom)』に決めました。会場はロングエーカー劇場です。例によっていちばん安い席(3階)を取ったのですが、十分、楽しめました。というか、これはヤバいです。とんでもない名作、キターッ!って感じです。
 
 インディアナ州の小さな町の高校に通う主人公・エマは、レズビアンであることをオープンにしていて、学年の最後に開かれるダンスパーティ「プロム」に彼女同伴で参加したいとして、学校側がこれを拒否、さらに、学校側やPTAはレズビアンカップルをプロムに参加させないため、プロム自体を中止にしてしまったのです(これは2010年にミシシッピ州で実際にあった話で、訴えを起こした彼女のFacebookには10万人を超えるサポーターがつき、プロムを開催しましょうか?といったオファーも殺到したそうです)
 この学校側の対応がニュースになるや、落ちぶれたブロードウェイ俳優たち(ゲイ2人と女性2人)が、かわいそうなエマを救おう、ついでに自分たちも注目されたいと、インディアナ州の高校に乗り込み、すったもんだが起きます。4人の過剰な"応援"にちょっとウンザリしたりもしつつ、エマは、ゲイとして親身になってくれるバリーたちと心を通わせ、頑なに同性愛者を排除しようとするPTA会長(実は、このPTA会長の娘のアリッサこそが、エマの彼女でしたが、そのことは秘密でした)と向き合い、なんとか状況をいい方向に変えていこうと奮闘しますが……
 
 この『プロム』という作品が偉大なのは、エマという愛すべきキャラクターを生み出したことです。エマは決してスカートをはかない、割とわかりやすいレズビアン(どちらかというとブッチなタイプ)。ちゃんとかわいらしさもあって、本当にいい子なのです。エマが初めてプロム用のドレスを着る場面では、その似合わなさに思わず笑ってしまいますし、エマがダンスをする場面では、意外と上手いじゃん!と拍手が起こりますし、学校に拒絶され、傷つき、アリッサとの関係も危うくなるエマを、みんなが応援したくなるのです。
 たまたま隣りが若いレズビアンの方たちの集団だったのですが(ワールドプライドのために他所の街から来てて、この『プロム』を観るのが楽しみで仕方ない!みたいな雰囲気でした)、もう、みなさんエマに夢中で、ものすごい勢いで拍手したり、号泣したりしてました。
 
 シリアスになりがちなお話であるにもかかわらず、この作品は全体としてコメディで(笑わせるのは主にバリーをはじめとする4人の俳優たち)、素晴らしいのは、決してセクシュアルマイノリティを嘲笑したりせず、LGBTをリスペクトした上での笑いを追求している、当事者が心から楽しめるような笑いを生み出していたことでした。本当に幸せな気持ちになれました。
 
 この作品、ライアン・マーフィが映画化し、来年9月にNetflixで公開されることになっていますので、ぜひみなさん、ご覧いただきたいと思います。



最後の夜は「ストーンウォール・イン」で

 夜、お友達のHさんからお誘いがあり、最後にまた「ストーンウォール・イン」に行ってきました。
 深夜になっていましたが、ものすごい人出で、前夜にTRPフロートに参加した方たちも集団で来られたのですが、あまりの混雑に、入るのをあきらめたくらいでした。
 僕とHさんは、頑張って中に入り、30分くらい待ってようやくお酒を買って(今回はラベルがレインボーカラーになってるボトルがカウンターに置かれてたので、それください、と頼みました。ラベルに「TRUE COLORS」と書かれたワインでした)、初日には気づかなかった奥の部屋に行って(世界中からのいろんな人が次々に見に来てました)、マーシャ・P・ジョンソンやシルビア・リベラの写真が飾られているのを眺めながら、ワールドプライドのいろんな経験を語ったり、日本のLGBTの今後について語ったりしました。
 「ストーンウォール・イン」で始まり、「ストーンウォール・イン」で終わる、とても素晴らしいニューヨーク滞在になりました。



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