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アカデミー賞ノミネーションが発表され、トランスジェンダーとして初のカルラ・ソフィア・ガスコンをはじめ『エミリア・ぺレス』が最多12部門13ノミネートを果たしました

2025年01月24日
『エミリア・ぺレス』のカルラ・ソフィア・ガスコンがアカデミー賞にノミネート、トランスジェンダーとして初

 ロサンゼルスの大火事の影響で発表が遅れていた第97回アカデミー賞のノミネーションが1月23日に発表されました。ジャーナリストの伊藤詩織さんが性被害を実名で告発した『Black Box Diaries』が長編ドキュメンタリー賞にノミネートされ、日本人監督史上初ノミネートとなったこととともに、トランスジェンダー映画『エミリア・ペレス』が最多12部門13ノミネートを獲得し、主演のカルラ・ソフィア・ガスコンがトランスジェンダー俳優として初めてアカデミー賞にノミネートされたことが大きなニュースになっています。

 『エミリア・ペレス』はメキシコの麻薬王が悲願の性別適合手術を受けてエミリア・ペレスという名の女性として新たな人生をスタートさせるというスペイン語のミュージカルスリラー映画で、昨年のカンヌ国際映画祭で9分ものスタンディングオベーションで称えられ、カルラ・ソフィア・ガスコンがトランスジェンダーとして初の女優賞に輝いただけでなく審査員賞も受賞しています。今月のゴールデングローブ賞では映画部門(ミュージカル/コメディ)の作品賞と、助演女優賞(ゾーイ・サルダナ)、主題歌賞(「El Mal」)、非英語映画賞に輝きました(主演女優賞にもノミネートされ、そちらもトランスジェンダーとして初でした)。作品賞を受賞する際、ステージでジャック・オーディアール監督からマイクを手渡されたカルラは、社会から疎外されているコミュニティに向けて「光は常に闇に勝ります。捕えられようとも、殴られようとも、私たちの魂や反骨心、尊厳を奪うことはできません。声を上げましょう。私は私、自分が何者であるか知ってください」という感動的なスピーチをしました。
 今回の第97回アカデミー賞では、主演女優賞のほか、作品賞、監督賞、助演女優賞、脚色賞、国際長編映画賞など、最多12部門13ノミネートを獲得しました。
 
 その他のクィア関連作品のノミネートは以下の通りです。

 不朽の名作ミュージカルとして20年以上愛され続けてきた『ウィキッド』の初の映画化作品で、アリアナ・グランデとシンシア・エリヴォ(2022年にカミングアウト)が演じることでも話題を呼んでいる『ウィキッド ふたりの魔女』が作品賞、主演女優賞(シンシア・エリヴォ)、助演女優賞(アリアナ・グランデ)、編集賞、美術賞、衣装デザイン賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞、オリジナル作曲賞、音響賞、視覚効果賞の10部門にノミネートされました。

 『ラスティン:ワシントンの「あの日」』に主演したゲイの俳優コールマン・ドミンゴが『シンシン/SING SING』で主演男優賞にノミネートされました。同作は脚色賞、歌曲賞にもノミネートされています。

 エルトン・ジョンのドキュメンタリー映画『エルトン・ジョン:Never Too Late』は、歌曲賞にノミネートされました。

 今年6月にカムアウトしたマレン・モリスが主題歌「Kiss The Sky」を歌っている(作品の内容としても、ジェンダーが不明瞭なロボットが家庭を築いていくところがクィアであると言われている)映画『野生の島のロズ』が長編アニメーション賞にノミネートされました。一方、マレン・モリスの歌曲賞でのノミネートはなりませんでした。

 ウィリアム・S・バロウズの自伝的同名小説の映画化で、『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノが監督し、ダニエル・クレイグが主演した『Queer/クィア(原題)』は、残念ながらノミネートされませんでした。
 『Out』誌は、『Queer/クィア(原題)』のダニエル・クレイグや、マレン・モリス、『チャレンジャーズ』、『ウィル&ハーパー』などがノミネートされなかったことについて、「私たちのお気に入りが冷たくあしらわれた」と評しています。
 
 第97回アカデミー賞の授賞式は3月2日(現地時間)、ハリウッドのドルビー・シアターで開催されます。
 
 
 なお、トランスジェンダーが主人公の映画でこれまでにオスカーを獲得した作品としては、『蜘蛛女のキス』(主演のウィリアム・ハートが主演男優賞を受賞)、『ボーイズ・ドント・クライ』(主演のヒラリー・スワンクが主演女優賞を受賞)、『リリーのすべて』(アリシア・ビカンダーが助演女優賞を受賞)などのほか、2018年の第90回アカデミー賞で外国語映画賞を受賞した『ナチュラルウーマン』があります。『ナチュラルウーマン』はトランスジェンダーの俳優が演じたトランスジェンダー作品として史上初めてオスカーに輝きました。主演のダニエラ・ヴェガはプレゼンターも務め、アカデミー賞初のトランスジェンダーのプレゼンターとなりました。『ナチュラルウーマン』のダニエラ・ヴェガは俳優賞にはノミネートされておらず、今回のカルラ・ソフィア・ガスコンがトランスジェンダー俳優として初のノミネートとなります(なお、『ナチュラルウーマン』以前の作品では、シスジェンダー俳優がトランスジェンダーの役を演じていました)
 ドラマとしては、『POSE』のMJロドリゲスがゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞し、トランスジェンダーとして史上初の快挙を成し遂げています。
 
 


参考記事:
米アカデミー賞、「エミリア・ペレス」が最多13部門ノミネート(ロイター)
https://jp.reuters.com/life/oscars/6CIVTRMSQFIG5GPOV6SEGJLPNM-2025-01-23/
カルラ・ソフィア・ガスコン、トランスジェンダー公表俳優として初のアカデミー賞候補に(VOUGE JAPAN)
https://www.vogue.co.jp/article/karla-sofia-gascon-oscars-first-openly-trans-actor-nomination
アカデミー賞2025(第97回)ノミネート一覧 各作品日本公開情報付き(Esquire)
https://www.esquire.com/jp/culture/g63339467/academy-awards-2025-97th-oscar-nomination-list/
第97回アカデミー賞最終ノミネーション完全リスト~『エミリア・ペレス』が最多13ノミネート!(SCREEN)
https://screenonline.jp/_ct/17745117
アカデミー賞候補が発表に! 『エミリア・ペレス』が最多12部門13ノミネート(ぴあ)
https://lp.p.pia.jp/article/news/411054/index.html
第97回アカデミー賞ノミネート発表!『エミリア・ぺレス』が最多13、日本からも3作品(クランクイン!)
https://www.crank-in.net/news/160237/1
【全リスト掲載】第97回アカデミー賞最多ノミネートはジャック・オディアールの「エミリア・ペレス」(映画ナタリー)
https://natalie.mu/eiga/news/608738

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