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ポルトガルのゲイの映画監督、ジョアン・ペドロ・ロドリゲス

ポルトガルのゲイの映画監督、ジョアン・ペドロ・ロドリゲスの作品が特集上映されています。世界的に評価の高いインパクトある映像で、ゲイやドラァグクイーンを主人公とした作品もあります。ぜひご覧ください。

ポルトガルのゲイの映画監督、ジョアン・ペドロ・ロドリゲス

 ポルトガルのジョアン・ペドロ・ロドリゲスという映画監督のことは、日本ではまだほとんど知られていないと思います。
 処女長編『ファンタズマ』がヴェネチア国際映画祭にコンペ作品としてノミネートされ(新人監督としては異例なこと)、二作目の『オデット』は、カンヌ映画祭に出品されたほか、各国の映画祭でさまざまな賞を受賞、三作目『男の死』も各国の映画祭に出品され、フランスの権威ある映画誌『カイエ・デュ・シネマ』の年間ベストテンにランクイン、2012年にはカンヌ国際映画祭批評家週間短編部門で審査委員長をつとめるなど、気鋭の映画監督としての評価を不動のものにしています。
 この『ファンタズマ』『オデット』『男の死』は、すべてゲイ映画と呼べる作品で、監督自身もオープンリー・ゲイです。ゲイの青年の欲望のエスカレートを描いた衝撃作『ファンタズマ』は、ニューヨーク・レズビアン&ゲイ映画祭で最優秀賞を受賞していますし、『オデット』は素晴らしくゲイテイストかつイッちゃってる作品、『男の死』は中年のドラァグクイーンを主人公とした作品です(トップ画像がそうです)。ジョアン・ペドロ・ロドリゲスは、ペドロ・アルモドバルやフランソワ・オゾンに続く(世界的評価を得た)ゲイの映像作家です。アルモドバルと言えば、ジョアン・ペドロ・ロドリゲスは、ラテン特有の情熱的な人々が登場するところ、欲望や死を描くところ、ちょっとキテレツな感じも含め、アルモドバル監督を彷彿させるものがあります。が、アルモドバルよりももっと現代的でクールな(オフビートな)テイストなので、よりとっつきやすく、若い人たちにも支持されやすいだろうなと思います。

 そのジョアン・ペドロ・ロドリゲスのレトロスペクティブ上映(主要な作品を網羅し、これまでの歩みを振り返るような特集企画)が現在、アテネフランセ文化センターと川崎市市民ミュージアムで開催中です。京都・大阪でも4月に『オデット』『男として死ぬ』が上映されます(シモーヌ深雪さんによるドラァグメイク講座も開かれるそうです)
 公式サイトにはジャン=マルク・ラランヌ(映画評論家。元『カイエ・デュ・シネマ』編集長)が推薦コメントを寄せていて、「ジョアン・ペドロ・ロドリゲスは、現代映画において、アピチャッポンと共に最も重要な映画作家である。その作品は神秘的で、力強く、詩的な力が漲っている」と絶賛しています。(ちなみにアピチャッポンとは、2010年に『ブンミおじさんの森』でカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した映画監督アピチャッポン・ウィーラセータクンのことで、彼もオープンリー・ゲイの方です)
 
 先に挙げた三作品について、簡単にご紹介しましょう。


『ファンタズマ』O Fantasma(The Phantom)(2000年)
リスボンのゴミ清掃員として働く青年・セルジオの日常が、抑えがたい欲望によって、次第に暴力と堕落へと染まっていく様相をとらえた初の長編作品。ポルトガル映画で初めて明確かつ過激にホモセクシュアルを描いた革新的な作品として知られる。


『オデット』Odete(Two Drifters)(2005年)
『ファンタズマ』で国際的知名度を得たロドリゲスが、前作における過激な身体表現とは異なる方向性で撮りあげた長編第2作。交通事故によってボーイフレンドのペドロを失ったルイと、子ども欲しさのあまり妄想に取りつかれるオデットの交錯を描いた異色のラブ・ストーリー。


『男として死ぬ』Morrer Como Um Homem(2009年)
過去20年間女性として生きたものの、性転換の外科手術は受けなかったリスボンの中年ドラァグ・クイーン、トーニャ。彼女の健気で繊細な姿が、すでに性別適合手術を終えている友人や、ヤク中のボーイフレンド、そして同性愛を嫌悪する軍隊を脱走した疎遠な息子といった人物たちとの交錯を通じて鮮やかに描かれた長編作品。ペドロ・アルモドバル『オール・アバウト・マイ・マザー』なども想起させる傑作。


ジョアン・ペドロ・ロドリゲス レトロスペクティブ 
※短編やドキュメンタリーを含め、多数の作品が上映されますが、ここではゲイ色の濃い上記三作品を中心にご紹介します。
■アテネ・フランセ文化センター
3/23(土)   
14:50 『ファンタズマ』
17:30 『男として死ぬ』+監督ティーチイン   
3/25(月)   
17:20 『オデット』
3/28(木)   
19:00 『オデット』
3/29(金)   
15:20 『男として死ぬ』
3/30(土)   
13:10 『オデット』
15:20 『男として死ぬ』
■川崎市市民ミュージアム
3/23(土)   
12:30 『オデット』
3/24(日)
12:30 『オデット』
14:15 監督ティーチイン
■京都・同志社大学寒梅館ハーディーホール
4/18(木)
15:30 『男として死ぬ』
■大阪・シネ・ヌーヴォ
4/19(金)~26(金)『オデット』レイトショー上映
■大阪・中之島デザインミュージアム
4/12(金)19(金)19時 シモーヌ深雪さんらによるドラァグ・クイーンメイク講座開催(詳しくはこちら

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