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アル・パチーノの『ワイルド・サロメ』が、ヴェネチア映画祭でクィアライオンを受賞

2011年09月19日

 世界的な映画祭でゲイ映画に贈られる賞(クィアな要素を持つ映画の中での最優秀作品賞)と言えば、ベルリン国際映画祭のテディ賞が有名ですが、5年前からヴェネチア国際映画祭でクィアライオン賞が、昨年からカンヌ国際映画祭でクィアパルム賞が設けられるようになりました。(ちなみに第3回のクィアライオン賞はあの『シングルマン』が、そして栄えある第1回クィアパルム賞は、今年の東京国際レズビアン&ゲイ映画祭でも上映される『カブーン』でした)

 先日開催された第68回ヴェネチア映画祭でクィアライオンを受賞したのは、アル・パチーノ主演/監督の『ワイルド・サロメ』でした。この映画は「戯曲『サロメ』とオスカー・ワイルド自身の複雑性にアル・パチーノが独自の解釈を与えた」作品で、同映画祭のコンペ外部門の目玉作品として注目されており、アル・パチーノには現代映画において創造的な功績を収めたアーティストに贈られる「ジャガー・ルクルトグローリー・トゥー・ザ・フィルムメーカー・アワード」が授与されていましたが、同時に第5回目のクィアライオン賞を受賞したかたちです。
 今年のクィアライオン賞は全12作品の中で競われ、9月9日、3人の審査員が受賞者と選考理由を発表しました。「『ワイルド・サロメ』は、ユニークなカリスマ性をもつ俳優であり監督であるアル・パチーノが、濃厚で複雑で新たな映像言語を通じて、一人の天才の並外れた情熱的な愛の行為を巧みに映像化し、オスカーワイルドの作品世界を完璧に作りあげることに成功している。ウィットと自虐的なアイロニーをもち、カテゴリー不能で革新的な芸術の創造を感じさせ、強く、明確なやり方で、このアイルランドの作家の人生、愛、成功、そして転落の経験を見事に再現した」
 映画祭でアル・パチーノは『ワイルド・サロメ』をどういう作品か説明することの難しさに直面したそうです。「これはドキュメンタリーではない。なぜなら映画ではないからだ。私自身が困惑してもいる。私がしようとしたのは…一種のコラージュで、同時に…たぶん、私が何をやろうとしているかと考えるみんなの想像を裏切るようなものなのだ。私は、オスカーワイルドが何者だったのか、彼が経験したことを表現したかった。ただし、強烈ではないかたちで。ドキュメンタリーとしてでもなく」

 アイルランド出身の作家、オスカー・ワイルドは、1891年、有名な『サロメ』という戯曲を書きました。そして6年後、猥褻であるとして、また同性愛者であることを理由に有罪判決を受け、2年間も投獄されました。 

 実はアル・パチーノは、スクリーン上ではたいへんゲイに縁のある俳優です。『狼たちの午後』(1975)ではゲイの銀行強盗犯を、『クルージング』(1980)では囮捜査のためにゲイバーに潜入する警官を、エミー賞やゴールデングローブ賞に輝いた不朽の名作『エンジェルス・イン・アメリカ』(2003)ではロイ・コーンを演じました。


Al Pacino's 'Wilde Salome' Wins Fifth Queer Lion In Venice(ONTOPMAGAZINE)
http://www.ontopmag.com/article.aspx?id=9473&MediaType=1&Category=27

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