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『彼らが本気で編むときは、』が日本映画として初めてテディ賞を受賞

2017年02月20日

 2月9日に開幕し、19日に閉幕した第67回ベルリン国際映画祭。17日にはテディ賞(クィア・ムービーに贈られる賞)の受賞作品が発表され、全37作品の中から荻上直子監督の『彼らが本気で編むときは、』がテディ賞審査員特別賞に選ばれました。日本映画がテディ賞を受賞するのは初めてのことです(アジア映画としては台湾映画の『Tattoo-刺青』が2007年に受賞)
 
 テディ賞はベルリン国際映画祭の中の独立賞のひとつで、優れたクィア・ムービーを表彰するものです。1987年に創設されて以来、『欲望の法則』(ペドロ・アルモドバル)、『ラスト・オブ・イングランド』(デレク・ジャーマン)、『ポイズン』(トッド・ヘインズ)、『パリ、夜は眠らない』(ジェニー・リビングストン)、『セルロイド・クローゼット』(ロブ・エプスタイン&ジェフリー・フリードマン)、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(ジョン・キャメロン・ミッチェル)、『キッズ・オールライト』(リサ・チョロデンコ)といったクィア・ムービー史上の重要作が多数、受賞しています。メインは長編映画、ドキュメンタリー、短編の3部門ですが、これに、審査員特別賞や、『ジーゲスゾイレ』読者賞(現在は『メナー』読者賞)、そしてスペシャル賞が加わることもあります。

 『彼らが本気で編むときは、』は、母親が家出して独りになった小学5年生の女の子・トモが叔父であるマキオの家に身を寄せ、マキオとその恋人であるトランスジェンダー女性・リンコと3人で暮らしはじめるというストーリー。多様な生き方や価値観を尊重することの大切さを描いた作品です。強い意思を持ちながら優しさにあふれているトランス女性のリンコを生田斗真さんが、そして、リンコのすべてを受け止めようとする叔父の役を桐谷健太さんが演じています。
 『彼らが本気で編むときは、』はそもそもパノラマ部門およびジェネレーション部門に出品されており(両部門に選ばれるのはスゴいことだそうです)、15日に上映された際は、約800人の観客から8分間にわたるスタンディングオベーションを受けたそうです。そして、パノラマ部門の観客賞の第2位にも選ばれました。

 テディ賞の受賞が決まったあと、荻上監督は舞台であいさつし、「日本はいまだに保守的な国だが、性同一性障害の人たちをめぐる状況がよくなることを望みます」と語りました。
 選考した審査委員は、「女の子の目線を通じて、観客に日本の文化や家族愛への視点を与えてくれた。役者の演技に説得力があり、自然な対話やユーモアですばらしい映画に仕上がっている」とコメントしています。 
 同映画祭唯一の日本人審査員・今井祥子さんは「審査員全員一致での決定でした」と明かしました。「審査員の中でも一番絶賛されたのが、『彼らが本気で編むときは、』が、子どもの目を通してセクシュアルマイノリティの家族を描いた点です。日本作品でありながら、世界に十分アピールできる『家族の物語』になっていました。その証拠に、一般の観客の評判が最もよい作品でした」
 授賞式のあと荻上監督は、NHKの取材に対して「LGBTの映画のための賞なので、受賞できてとてもうれしいです。この映画は、社会にいろいろな人がいてもよいということを確認したかった作品で、日本も欧米のように日常生活の中でLGBTの人たちと普通に出会い、友達になれる社会になってほしいです」と語りました。
 また、監督は以下のようなコメントを発表しています。
「ベルリン国際映画祭の全作品の中で、LGBTを題材にした映画に贈られる特別な賞なので、このテディ審査員特別賞は、非常にうれしいです。でも私は、正直、トランスジェンダーの人がトランスジェンダーのことで悩んでいるだけの映画を作るつもりは最初からなくて、「女性として普通に」恋愛をし、仕事をし、生活を営んでいる「普通の女性」を描きたかったんです。差別されたり、理解されなかったり、陰口をたたかれたり、傷つけられたり、大きな悩みを抱えながらも、前向きに生きる「ひとりの女性」を、です。トランスジェンダーの人でも心は女性なのだから母親になれるかもしれないという夢を見れることや、血のつながりがなくても親子になれる希望が持てることや、子供を産まなくても母性を持てることや、さらに「その恋人」や「その家族」「母親と子供」の関係性を一番描きたかったんです。この映画が「さまざまな家族のカタチ」を受け入れたり、考えたりすることのきっかけになってほしいんです。今まで持っていた「普通」の概念を見直すきっかけになれればうれしいです。この映画を観て、LGBTに対する理解を深めてほしいと心から願っています。ベルリン、Danke schön!(ありがとう!)」
 
 荻上直子監督は、『バーバー吉野』『かもめ食堂』『めがね』などの作品を撮ってきた方で(『かもめ食堂』をご覧になった方は多いのではないでしょうか)、ゆったりとした不思議な雰囲気の中に独特の味わいがある作風で知られています。

 
彼らが本気で編むときは、
2017年/日本/脚本・監督:荻上直子/出演:生田斗真、桐谷健太、柿原りんか、ミムラ、小池栄子、門脇麦、りりィ、田中美佐子ほか/配給:スールキートス/2月25日より新宿ピカデリー・丸の内ピカデリーほかで公開



ベルリン映画祭 LGBTなど題材の優秀作品の賞に邦画(NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170218/k10010881391000.html

荻上監督作品に2賞=ベルリン映画祭(時事通信)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017021800502&g=soc

生田斗真主演「彼らが-」、ベルリン映画祭でテディ賞審査員特別賞(サンスポ)
http://www.sanspo.com/geino/news/20170219/joh17021905030002-n1.html

生田斗真、主演映画がベルリン国際映画祭で日本初・テディ審査員特別賞に(マイナビニュース)
http://news.mynavi.jp/news/2017/02/18/148/

生田斗真主演「彼らが本気で編むときは、」ベルリン映画祭でLGBT映画の賞獲得(ナタリー)
http://natalie.mu/eiga/news/221317

生田斗真、初のベルリン映画祭 上映後に8分間のスタンディングオベーション(オリコン)
http://www.oricon.co.jp/news/2086110/full/

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