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中野区議・石坂わたる氏にインタビュー

今年のGW、東京レインボーウィークの一環として、中野区の後援で、中野駅前で素敵なイベントが行われ、区長さんがとてもいいことを言ってくれました。その背後には区議の石坂わたる氏の尽力がありました。「議員さんが1人いると、こんなに変わるんだな」ということを実感させてくれた石坂区議に、お話をお聞きしてみました。

中野区議・石坂わたる氏にインタビュー

今年のGW、東京レインボーウィークの一環として、中野駅前が今までになく素敵なことになっていたのをご存じの方も多いと思います。中野区の後援で、サンプラザ前の広場にドラァグクイーンや中野区長が来てトークをするというイベントが行われ、高架下ではレズビアンカップルの結婚式の写真などが展示され、道行く人の目を引いていました。その後、区長さんが中野のゲイバーや「LOUD」に足を運び、ゲイやレズビアンと対話するミニ集会を開いたり、7月の区議会ではLGBT支援と言ってよい答弁を行ったり、画期的な動きを見せています。その背後には、ゲイであることをオープンにして区議会議員に当選した石坂わたる氏の姿がありました。「議員さんが1人いると、こんなに変わるんだな」ということを実感させてくれた石坂区議に、お話をお聞きしてみました。(聞き手:後藤純一)

——石坂区議はもともと養護学校教諭で、AGPの活動にも参加していた方。どちらかというとおとなしい、控えめな印象の方でした。議員を志したきっかけは何ですか?

一つは養護学校や障害児教育の公立と私立の差の問題がありますが、ここでは、glad xxさんでの掲載記事ですので、セクシュアリティに関する点で回答をしたいと思います。
私には13年前からつきあっている赤杉というパートナーがいるのですが、つきあいはじめた頃から二人とも政治への関心が高くて。赤杉は政治学を専攻していたくらいで。それで、選挙のときに、選挙広報を見てもポスターを見ても、どの人がゲイフレンドリーなのかよくわからなかったので、東京メトロポリタン ゲイフォーラム(TMGF)を立ち上げて、立候補者にアンケートをとりはじめました。

——TMGFの立ち上げは2001年で、当時、候補者アンケートって誰もやってなかったので、画期的!と思いました。

だいたいの候補者は、返答がなかったり、十分な回答とは思えない回答であったり、党でまとめた文言をそのまま、という反応が目立ちました。中には自分で考えて書いたと思われも候補者もいるけれども、そういう人はなかなか当選しない。それから、ゲイバッシングもなくならない…。それで、アンケート調査だけではだめだよね、という話になりました。周りからも「選挙でたら?」という声があり、どちらかといえば、福祉とか教育とかの面で石坂のほうがいいんじゃないか、ということで、私が出ることとなりました。

——そうして2007年にゲイであることをオープンにして初めて中野区議会議員選挙に立候補。そのときは、さまざまな方の応援もありながら、届かず。そして4年後の2011年に初当選しました。最初は議員というだけでいろいろ大変だったと思いますが、この3年余の議員生活のなかで、できる範囲で、地道に、LGBTのことでも活動してきたと思いますが、これまで中野区議としてLGBT関係で行ってきた実績について教えてください。

まず、同性カップルは区営住宅に入居したくてもできないという実情があり、当時の公営住宅法は国レベルの法律で入居用件を定めていたので、担当者と話をし、法律ではダメだけど、必要な人には住宅を提供する義務があるはずだし、中野区で何ができるか考えましょうということになり、中野区の住み替え支援事業が使えるんじゃないかと。住み替え支援事業というのは、民間の不動産屋と協力して、高齢者や障がいを持つ家族がいるなどの困難を抱えた世帯を区の方でバックアップする制度ですが、対象者のなかに「その他住宅に困難に抱えてる人」という記載があって、男性どうしは困ると言われたケースなどもこれに該当するのではないかと。そこで、議会で取り上げて、同性カップルも住み替え支援事業の枠の中に入れ込むことができました。

——区がバックアップするというのはどういう?

区が提携している不動産屋をに行って、区の紹介で来ましたと言うことができて、きちんと対応してもらえる。ただ、大家さにダメと言われて、物件が見つからないこともありえます。その場合、あらためて区役所に行って事情を説明すると、あとは、区が、管轄するエリアの不動産屋に一斉送信して、条件の合う物件があったら紹介してもらって、そのリストを当事者の方に渡す。という仕組みです。

——仲介をしてくれるわけですね。

区がサポートして、見つかるまで手伝ってくれる。区の職員とやりとりする際、同性カップルですと言っても問題ないですし、そこは触れずに、同性どうしでルームシェアがしたいという言い方でも大丈夫です。いずれの場合も対応してくれます。

——なるほど、その他に何かLGBT関係でありますか?

私が議員になってから、実際に区の仕組みとつながったケースとして、同性間のDVの問題があります。とあるゲイの方が、パートナーから暴力を受けていると相談してくださって、区の担当者に話を持っていきました。区としてもゲイのDVというケースは初めてで、相談には乗ってくれたのですが、ただ、被害者を保護するシェルターが、都の管轄なのですが、男性を想定していなかった。男性だと、低所得で家を失った人のための簡易宿泊施設が利用できるのですが、そこが埋まってて使えず、結局、個人的なつてで、障がい者のための施設に避難していただくことになりました。

——東京では、もしかしたら全国どこもそうかもしれませんが、ゲイカップルの間でDVが起きたとき、避難先がないということですね。すべて男女間を前提に作られている。

区の方は、相談には乗ってくれるけど、その先には壁がある。行き場がないというのが実情です。ただ、そういうことがわかったので、今後の課題としていきたいと思っています。

——わかりました。では、区長さんとの関係についてお話を聞きたいと思います。今年のGWに、中野区の後援で、トークイベントや写真展示(写真右)が実現し、イベントには区長さんも参加して、お話をしてくれました。イベントでしゃべるだけでなく、5月末頃、「ZATTA」や「Proud」といった中野区のゲイバーに区長さん自ら足を運び、区民との対話の場を設けてくれたことです。ぼくは「ZATTA」に行ったのですが、どんな話にも耳を傾けて、自分なりに答えていて、素晴らしいと思いました。

5月1日のイベントで出演者の方たちが言っていた「納税者としても、有権者としてもたくさんいるんですよ」ということを、区長がきちんと受け止めたということでしょうね。区長が中野区にあるLGBTの施設、「LOUD」や「OCCUR」の事務所、「スクウ」「シニカルボンド」「ZATTA」「Proud」などであいさつ回りをし、「LOUD」と「ZATTA」ではLGBTの区民とのミニ集会を開いたというのは、特筆すべきことだと思います。また、日本の首長で選挙においてLGBTの有権者の存在をここまで意識した現職首長はおそらくいなかったと思います。

——たとえば札幌の市長さんは、10年も前からパレードに登場し、「皆さんを歓迎します」と、とてもいいことを言ってくれて、それも本当に感動的でした。でも、自らゲイバー回りをして、LGBTと対話するというのは、なかなかできないこと。きちんと区民として敬ってくれているというか、大事な存在だと思ってくれてるんだなあと感じました。そこまで区長さんが動いてくれるようになったのは、石坂さんの存在が大きいと思います。中野区長とはどのように関係を築いてきたんですか?

まず、セクシュアルマイノリティの議員が議会に入ってきたときに「どう行動するんだろう」というのは、他の議員や職員とかも気になってたところだと思うのですが…。

——最初の反応はどうでした?

逆に、何も触れないですね。

——腫れ物に触る感じ。

中野区は当事者も多いし、他の議員にも周囲にセクシュアルマイノリティがいるという人がいる。いろんな議員がいて、話してみると、理解してくれる。困ってる人たちを放置してはいけないという同意がある。担当の職員も、引いたりせず、一区民として扱ってくれていました。

——イメージ的には、保守派とか、年配の男性って偏見を持ってて、「オカマみたいなやつのためになぜ支援が必要?」って言いそうですが…。

理解の仕方がそれぞれ。人権として認識してる人もいるし、人権ってワードを反射的にいやがる人もいる。社会の中で弱い人を叩いたりいじめたりするのはいけないよね、と言うと、それはそうだね、と同意してくれる。どこまで手を差し伸べるのかは、さまざまだけど。

——なるほど。で、新人の1年生議員が、そうそう簡単には区長と仲良くなれないと思うのですが、個人的に二人きりでお話したり、飲みに行ったりとかもあったんでしょうか?

区内のいろんな会合で、いろんな区民、議員、区長もいる立食の懇談会・懇親会のような場だったり、着席でもたまたま隣の席になることもあり、お話をする機会がけっこうあったんです。あと、区の職員の説明が納得いかないときは、区長に「これでいいんですか?」と確認をします。区の職員の対応の責任者としてどうか、と。そういうときに話をします。

——真面目に議員活動をやっていった結果、自然と話をする機会が生まれたと。

そうですね。あとは、無所属の議員としてフラットに話ができたということもありますし、私も区長も、どちらかというと不器用でパフォーマンスがうまくないタイプなので、もしかしたらその辺で共感してもらえたのかもしれません。

——GWのイベントはあまり準備期間がなかったそうですが、後援はすんなり決まったんですか? 区議会の承認は要らないんでしたっけ?

要らないんです。後援は、区長部局がOKすれば下ります。

——区民のなかには「オネエが集まってヘンなことやってたけど」といういちゃもんをつける人もいるかもしれませんが、そういう可能性も織り込み済みで、OKしてくれたわけですよね?

そうなんです。主催はこういう人たちで、こういう内容で、という企画書を出して。石坂と同様な(セクシュアリティの)人たちだから大丈夫だろう」という信頼もあって。

——7月2日に議会で行われた答弁でも、区長さんがいいことを言ってくれましたね(議事録をこちらでお読みいただけます)。まず、石坂さんが、5/1の中野駅前のイベントで区長が「中野区では誰もが差別されることなく、社会参加が平等に保障される取り組みを進めています。全ての人々が権利行使の機会を奪われず、地域社会の中で自己実現することができ、全ての人々が個の大切さを互いに尊重し、地域社会を構成する一員として地域の中で生き生きと暮らしていけるまち、そんな活気のあるエネルギッシュなまちづくりを目指しています」と語ったことを挙げ、区長の施政方針演説における「全ての人々に社会貢献ができる社会の構築」「全ての区民が参加し、支え合うまちの構築」という部分にレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーといった性的マイノリティも含まれていますね?ということを確認しました。これに対し、区長は「生き方の個別性、あるいは個性といったことによって、不当に社会参加の機会が損なわれたり不利益な取り扱いを受けたりといったようなことは絶対にあってはならないということだと認識しております。当然ながら全ての人々、全ての区民といった場合に、いわゆる性的マイノリティの方についても当然含まれているという認識です」と回答しました。「すべての区民」にセクシュアルマイノリティも含まれている、という回答を得たことの意義を、もう少し詳しく教えていただけますか?

極端に言えば、区がさまざまな事業を行うとき、いつでも対象にセクシュアルマイノリティの区民がいるんだと。そして、抜け落ちたときは、それを指摘できる。地域の中で、セクシュアルマイノリティであるということで孤立感を覚えている人を支援していくことが区の責務であるというわけです。区民どうしの支え合いを地域でやっていこうとするときに、その助け合いの中にセクシュアルマイノリティもいるということ。

——今後、何か困ったことがあったときや、地域のなかで問題が起きたときなど、区が責任をもって、セクシュアルマイノリティの人をサポートする、差別されずに参加できることを保証します、というわけですね。

そうですね。職員にセクシュアルマイノリティとして相談しても大丈夫ですし、何か対応がおかしかったら、問題なので、言っていたければ改善しますよ。

——議会の答弁の続きですが、石坂区議は「性的マイノリティの当事者と実際に接して区長が感じられた目を開かれることの大切さについて、これを中野区を代表とする区長個人の体験とせず、区全体、すなわちより多くの区職員や区民に知ってもらうことも大切だと思われますが、いかがお考えですか?」「LGBTの区民が社会参加をしていくために、区は具体的な施策として何をすべきと思われますか?」と質問し、これに対して区長は「今回ご質問にあったイベントへの参加を通じて、さまざまな方が触れ合って言葉を交わし合って理解を深め合うことが、全員参加型社会をつくっていくということでも大変重要なことだというふうに認識いたしました。より多くの区民の皆さんと言葉を交わす、そうした機会の重要性を再認識したところであります。また、区長としてこれから人権をテーマとした啓発事業や区の職員研修などを通して、広くマイノリティについて区民あるいは職員が理解する機会をふやし、偏見を排して多様性を認め合える社会をつくっていくための努力を行っていきたい」と述べました。区の職員向けに研修を行うことで、ずいぶん変わるでしょうね。今回の区長のコメントは、事実上「LGBT支援宣言」と言ってよいのでは?

そうですね。そう言っていいと思います。ただ、区長も職員も、まだまだLGBTが具体的にどんなことに困っているのかということについて十分にはわかっていないので、私だけでなく、いろんな区内の団体などがアプローチして、何が問題かを伝えていくといいと思います。

——スタートラインに立った。支援するよという気持ちは表明したわけですよね。ちなみに、区役所で「なかのまちめぐり博覧会」のパンフレットを見ていたら、石坂さんが一人のゲイとして出演する「今日、世界がカラフルになる。」っていうイベントもありますね。

ヒューマンライブラリーですね。社会的マイノリティであるために偏見や差別を受けやすい人、人との違いを受け入れ、その違いを楽しんでいる素敵な人たちを「本」に見立てて約30分間の貸し出しを行うというものです。トランスジェンダーの春日あめりさんという方もいらっしゃいますよ。

——それと、「LOUD」で「How-to LGBT」なんてイベントも。これも区長さんのLGBT支援と関係あります? 具体化のひとつ?

GWにイベントをやったときに、都市観光・地域活性化分野(以前の、産業・都市振興分野にぎわい・文化担当)の職員も通りかかって見てくれてて、あとで「街のにぎわいでいいですね」と言ってくれていました。それで今回、「なかのまちめぐり博覧会」に参加できるようになった。もちろん、区長の議会での発言が後押しとなっているからこそ、です。

——地方自治体として、中野区で他にセクシュアルマイノリティについてできることって何でしょうか? そこまで予算も大きくないでしょうし…。それに、区議会もあるから、これ以上のことはそうそう自由にできない感じ?

国が一人一人の国民を見ているかというと、そうではない。でも、中野区は、区民一人一人を見て、相談に乗ったりできる。新たな仕組みをつくることは難しいけど、生活面の困りごとに対応できる。

——権利擁護とか制度改変というより、支援的な部分。どんどん頼っていいよ、と。声をあげる。

区は、数人の働きかけで動いたりもする。一人一人の声が反映されやすいんです。

——そういう意味では、相談のしがいがありますね。今後、セクシュアルマイノリティのことに関して、何かビジョンとか、夢とかってあります?

カミングアウトはしていようがいまいが、ゲイであることをバレたらどうしようとビクビクすることなく、安心して暮らせるように。カミングアウトしようと思えばできるし、することによって孤立したりヘンな目で観られたりしない地域づくりをしていきたい。

——これまで3年半、議員をやってきて、つらかったことがあれば、教えてください。

つらかったこと…あまりないです。議会でヤジを飛ばされても、セクシュアルマイノリティであるからというわけではないと思うし、セクシュアルマイノリティであることで表だって何か言われたこともないですし。 

——では、議員をやってきてよかったと感じたことを教えてください。

定例議会が終わると、お茶会や学習会をやってるんです。セクシュアルマイノリティや障がい者やその家族の参加も多く、そういう場で、マイノリティにあまり会ったことないような人が、「頭の中で想像していたのと違って、ふつうの人なんですね」と言ってくれたり、横のつながりが生まれたり。当事者から相談を受けたり。

——最後に、LGBT議員を目指している方、その他、全国のLGBTに向けて、何かメッセージをお願いします。

私がゲイであることをオープンにしたとき、周りの人はそれがどうしたの?という反応が多かった。きちんと議員としての仕事をしてくれさえすればよいと。もっといろんな人と関係をもつことができるし、自信を持ってほしい。セクシュアルマイノリティだからとあきらめないでほしい。

——どうもありがとうございました。