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「レインボーパレードくまもと2016」共同代表の川口弘蔵さん

11月12日(土)に初開催された「レインボーパレードくまもと2016」。共同代表の川口弘蔵さんに、パレード開催に至るまでの経緯や、大変だったことなどについてお話をお聞きしました。

「レインボーパレードくまもと2016」共同代表の川口弘蔵さん

11月12日(土)に初開催された「レインボーパレードくまもと2016」で共同代表を務めていた川口弘蔵さんにお話をお聞きしました。川口さんは熊本という地方の街にいながら、西日本新聞にも登場するなど、カミングアウトしてLGBTの権利を訴えてきた方です。親しみやすい人柄で、地元のコミュニティにもとけこんでいます。パレードで初めてお会いしてご挨拶しただけで、感じのいい方だなあと思い、じっくりお話を聞いてみたくなりました。ということで、「レインボーパレードくまもと2016」についてのインタビューをお届けします。(聞き手:後藤純一)

——レインボーパレードの運営、本当におつかれさまでした。初めてということで、いろいろご苦労もあったかと思います。最初に、なぜ熊本でパレードを開催することになったのか、お聞かせいただけますか?

 最初は、「熊本でパレードをやって果たして人が来るのか?」という不安しかありませんでした。そんな不安を抱えながら、なぜ熊本でパレードをやろうということになったかというと。パレード実行委員の一部メンバーと、アメリカの同性婚裁判を描いたドキュメンタリー映画「ジェンダー・マリアージュ」の上映会を5月に計画していました。しかしながら4月の熊本地震で予定していた会場も使えなくなってしまい、みな落ち込み、取りあえず集まってみようということになりました。5月の中頃だったでしょうか。みんなまだ大変な状況だけれど、このまま何もできないのは悔しいね、何か今だからできることはないかという話になり。そこで出たひとつの案が、熊本でレインボーパレードをやろうということでした。

——やはり震災も関係してたんですね…。僕的にはパレードほど大変なことはないというイメージなのですが、そこでパレードやろう!ということになったのがすごいなあと思います。

 予算があるわけではないので、あまり予算がかからなそうだし、開催の意図として人数が集まらなくてもやる意味はあるのではないかと。昨今、ニュースなどでもLGBTを含むセクシュアルマイノリティの話題が以前よりも目に見えて多くはなってきていますが、未だ、地方では身近な問題として捉えられていないような空気があります。シンポジウムなどの方法もあったかもしれませんが、その形式だとどうしても、そもそも関心がある人へしか届かないのではないかと。レインボーパレードを熊本でやることで、セクシュアルマイノリティの存在を今よりも少し、身近な距離間で捉えてもらえればいいなと。「わかってほしい理解してほしい」の前の段階である「知ってほしい」という部分へ効果があるのではないかと考えました。

——なるほど、そうかもしれないですね。とはいえ、初めて開催するにあたり、いろいろご苦労があったかと思います。

 大変なこともたくさんありました。熊本で初なのはもちろん、他県でのパレード開催に携わった人が実行委員会にいるわけでもなく、手探りの状態でのスタートでした。ルートを決める際、どこを歩くかということもいろいろと考えました。熊本の街はアーケードを中心として人が集まるようになっているので、先導車両など使えなくなるデメリットはあるけれど、やはりメインストリートであるアーケードを歩きたいということになりました。それにあたり、警察への申請や商店街への申請など、こういうことが必要なんだなと、ひとつずつ学びながら進めていきました。
 楽団もどうやって準備をしようかと悩みました。都会で開催した例を見てみると、有志の当事者で演奏できる人々が集まっていたりするのを見ました。地方で同じことをしようと思うと、どうしても難しく。幸い、パレードの話をしたら自分の友人が、「そういうことならばぜひ協力したい」と声をあげてくれ、当日は楽団で参加してくれました。
いろんな企業も参加してもらったらにぎやかになるかもねと案も出しましたが、「現在地元の企業で賛同して動いてくれる会社がおそらく少ないだろう」「大きな企業に依頼すれば協力してくれるかもしれないが、熊本で都会と同じ事をしても意味があるのか?」、「企業色が強く出ると反感を買うのではないか?」などの意見があり、今回は企業の力は借りずにやろうという方向性になりました。
 応援メッセージもいろんな人へお願いし、パレードの主旨に賛同いただける人を探しました。その際も、都会で活躍している人たちの声ばかり集まると、「熊本に寄り添った表現」が上手く表せないのではないかと。できる限り、熊本に縁のある方たちにお願いしました。
 政治家の方達からもメッセージをいただいたら、それを心強くポジティブに受け取ってくれる人もいると思ったのですが、応援メッセージのお願いの案は会議後期に自分が思い付いて始めたので開催まであまり時間がなく、実行委がどこの政党に肩入れしているとかないのですが、全般的に全ての政党からメッセージをいただけないと与える印象に偏りが出てしまうということで今回は見送りました。
 いろんな活動の形に、全てとはいいませんが目的に悪意はないと思うのですが、表現の仕方でどうしても反感を受けてしまったりすることはネットで多く見ているので。全てに公平にとういのは理想であり難しいことですが、できるだけ素直に伝えたいメッセージを多くの人に受け取ってほしいなという気持ちがありました。そういう意味で、できるだけ偏らないパレードをと考え、あーじゃないこーじゃないと、計画をみんなで進めていきました。

——いろいろなところに配慮しつつ、いい形で進めてこられたんですね。

 それから、熊本はLGBTを含むセクシュアルマイノリティの問題に対して、行政が積極的な姿勢を表明しているとはまだ言えない状況にあると思っています。パレード開催にあたり、市長から反応がなかったりと残念ではありましたが、ここも、何かするにあたり積極的に自分達から面会依頼を出したりとするという姿勢を取っていかないといけないのかなと思ったり。熊本地震も未だ継続しており、行政のパワーを他にさく余裕がないのだと思うので、ただ残念と思うのでなく、継続して情報を発信していくことが重要なのだと思います。

——僕もそうですが、震災で大きなダメージを受けた熊本でパレードが開かれるということ自体に「希望」を感じ、応援に行かなきゃと思って県外から集まった方たちも多かったと思います。関東や東海、関西の方もお見かけしました。熊本の復興を支援したいという気持ちで全国からセクシュアルマイノリティが駆けつけたんですよ、ということも街の皆さんに伝わるといいですね。
 
 他県の人々に話を聞き、熊本でレインボーパレードを開催したことが僕らが想像していた以上に驚かれ、注目していただいていたことに気が付きました。都会でも表立って歩くことを憚られる当事者がいる中、まさか熊本でやるとはと、驚いていただけたのは嬉しかったです。今回は、熊本地震後の注目ということもあり多くの方々に関心をもっていただけた部分もあると思います。

——来年も同様に開催する予定ですか?

 次年度以降のことはまだ何も決まってはいませんが、今回、幸いにして多くの方々に注目いただき目にしていただくこともできたかと思うので、またやるとしたら、今回は様子見で歩かなかったけれど次は歩きたいと思ってくれた人たちも多くいるのではないだろうかと考えています。
 パレードなど、当事者と支援者への情報発信もそうですが、LGBTを含むセクシュアルマイノリティの中でも各セクシュアリティの問題は多岐に渡り様々です。例えば、ゲイコミュニティ内でもトランスジェンダーについてどれだけ知識があるかというと、あまり説明できない人が多くいると思います。必ずしも一緒に何かをしなければいけないわけではありませんが、セクシュアルマイノリティの問題に関しては、ひとつのセクシュアルのこと、自分達だけのことを伝えても解決できない場面も出てきます。そういう意味では、一枚岩になり、みんなが幸せになれる社会を目指していけるよう、各セクシュアルマイノリティ間で情報を共有し、時には協同できるような活動の継続も必要だと思います。

——わかりました。最後に、一言お願いいたします。

 今回の熊本でのパレードの開催が、地方での活動の活発化の一助となれば大変嬉しく思います。各地より応援いただいたみなさまへ、実行委員の一人として、改めて感謝いたします。ありがとうございました。

——どうもありがとうございました!