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COLUMN

脅かされる性の自由(2)ハッテン場の未来

一昨年10月、新宿区のハッテン場が摘発され、経営者らが逮捕されたのに続き、昨年2月にも大阪のハッテン場が摘発事件が起こり、ゲイシーンに衝撃が走りました。こうした摘発をどう受けとめたらいいのでしょうか?

脅かされる性の自由(2)ハッテン場の未来

一昨年の10月末、新宿区のハッテン場が摘発され、「公然わいせつほう助」にあたるとして経営者らが逮捕されました。そして、昨年2月にも大阪のハッテン場が摘発される事件が起こりました。この問題は、ゲイである僕らにとっては、決して他人事ではない、身近でリアルな問題です。エスカレートする摘発に対し、何かできることはあるのか? そもそもこの問題をどう考えたらいいのか? 今回は、そうしたことについて書いてみたいと思います。(後藤純一)



ハッテン場摘発事件の概要

 2011年10月末、ハッテン場(クルージングスペース、いわゆるヤリ部屋)で逮捕者が出たというニュースが大きな衝撃を与えました。新宿区のハッテン場「D」に警察が踏み込み、「公然わいせつほう助」にあたるとして経営者および従業員が逮捕されたのです。

 2012年2月1日付の朝日新聞の記事では、ハッテン場は「現在、全国に約170店あり、都内には新宿区を中心に約70店ある。常連の男性会社員(42)は『ネットでの出会いよりリスクが少なく、男同士の希少な出会いの場だ。まだ同性愛者に対して偏見を持つ人がおり、数年前に公園などで『ゲイ狩り』のような暴行事件が相次いだことも、店舗型のハッテンバが増えた理由だと思う』と話す 」「捜査幹部は今回の事件について『立ち入り権限がない中、公然わいせつほう助容疑を適用したのは苦渋の選択だったが、薬物だけでなく、性感染症が広がる恐れがあった。何らかの規制が必要だ』と話す」と報じられました。(薬物はともかく、性感染症は越権だろうと批判されました)

 この記事からも、そもそもこの摘発は、違法な薬物の使用(および性感染症の広がり)の摘発を目的としたもので、実際踏み込んだものの何も出なかったので、捜査容疑を急遽「公然わいせつほう助」に切り替えたものだということが窺えます(真偽はわかりませんが、事件直後に、九州在住の方が麻薬所持で逮捕され、その薬物の出所が新宿区の「D」店であると供述したことからこの摘発につながったのだという話がネット上で広まっていました)。そのため、警察はこれ以上「公然わいせつ」での取り締まりを行うつもりはなく、他の店に摘発が及ぶこともないのでは?とも見られていました。
 
 ところが昨年2月、大阪市のハッテン場「T」でも摘発が行われ、店長とお客さんの計5人が「公然わいせつ」容疑で現行犯逮捕されました。これにより、「公然わいせつ」によるハッテン場摘発が一過性のものではなく、さらに他の場所でも行われるかもしれない…という不安が広がることになりました。
 

南弁護士の連載『「ハッテン場摘発事件」について語る』

 大阪で摘発された「T」店の経営者の弁護人をつとめる南和行弁護士が、『バディ』6月号〜8月号で『「ハッテン場摘発事件」について語る」という3回の連載を行っています(オープンリーゲイの弁護士として、こうしてゲイの権利を守ってくれる、強力な味方となってくれる方がいらっしゃることは、本当に心強く、素晴らしいことです)

 『バディ』6月号に掲載された第1回連載によると、最初は大阪の警察署に「ハッテン場Tで客が全裸でセックスをしている」旨の匿名の投書があり、それを受けて、警察官が店から出て来た客に事情聴取し、裏付けを得たため、証拠を押さえるために公然わいせつの捜索差押令状を取り、踏み込んだんだそうです。
 捜索を担当した警察官は風営法違反などを取り締まる部署の人でしたが、風営法は異性間の性風俗店を対象としており、同性間の性風俗店については規定がないため(「むしろハッテン場は、現状では警察などに風営法の届出をしたくてもできない、というのが現状です」)、強制捜査も風営法ではなく公然わいせつ容疑で行われたんだそうです。(※公然わいせつと風営法については、のちほど詳述します)

 南和行弁護士は「警察にとっては、風営法の届出義務もないハッテン場は、中でどんなことが起こっているのか全くわからず、場合によっては覚せい剤など違法な薬物のやりとりの現場になる危険があるお店のようにも見えるかもしれません。だからこそ、とにかく中を把握し、監視したいということから、お客さんが全裸であることに着目し、公然わいせつ罪に当たるという理由をつけて強制捜査に踏み込んだのでしょう。ただ、公然わいせつ罪は、そもそもハッテン場でお客さんが全裸になるような場面を想定している犯罪とは言いがたいもので、それを全裸系のハッテン場に適用することには疑問を持たざるをえません。また、全裸系のハッテン場については、警察は全裸であることを理由に公然わいせつ罪を使って強制捜査をすることができましたが、着衣系の店については、今のところ公然わいせつ罪は使えません。しかし、警察にとって、ブラックボックスであることは着衣系の店も同様で、そうなると、仮にハッテン場がすべて着衣系になったとしても、警察にとって中がどうなってるのかわからないお店である以上、またしても何らかの理由をつけて強制捜査が行われる怖さはずっとつきまといます」と綴っています。
 その上で、「『こういう形態なら大丈夫』『ここまでだったら大丈夫』ということがわかる法律の基準や制度の枠組みがあれば、ハッテン場を経営する人も、ハッテン場を利用する人も、それぞれ安心できるでしょう」とも述べています。 

 『バディ』7月号では「公然わいせつ」について、そして8月号では、先頃行われた「T」店経営者に対する第一審判決について語られています(必読!) ぜひお買い求めください。

公然わいせつとは?

 憲法で性行動の自由は保障されているというのは前編でお伝えした通りですが、僕らは人前で全裸になると逮捕されるということも知っています。
 日本には以下のような法律があります。

・刑法174条 公然わいせつ罪
「公然とわいせつな行為をした者は、6ヶ月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。」

 「わいせつ」とは「いたずらに性欲を興奮又は刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反すること」でした。
 そして、「公然と」は、人がいる公の場所で、というイメージだと思いますが、現状は、実際に見た人がいたかどうかは関係なく「人が見てもおかしくないような状況で」という拡大解釈がされています。

 これによってたとえば、TV番組にAV女優が登場してあられもない姿で視聴者を挑発しても(性器さえ見えなければ)おとがめなしなのに、夜の公園で酔っぱらって全裸で寝てしまった方は、たとえ誰も見ていなくても、いっさい性欲を刺激していなくても逮捕される(「人が見てもおかしくないような状況」で「性器を露出」していたという理屈です)という不条理が生じます。
 また、ほとんど下着にしか見えないキャミソール姿の女性が路上で通行人を誘惑しても(激しく性欲を刺激するにもかかわらず)別に逮捕されません。一方で、完全に合意の上で集まった閉ざされた空間で誘惑しあっていた方たちは(誰も被害者がいないのに)逮捕されるのです。
(ちなみに、意図せず見えてしまった「ポロリ」の場合は、「過失は罰せず」で、軽犯罪法と同様、罪に問われないそうです)
 
 海外(欧米)ではヌーディストの権利が認められていて、特定の場所で全裸になることがOKになっているだけでなく、時にはデモンストレーションとして全裸の男女が街を駆け巡るイベントなども行われています(詳しくはこちら

 対照的に、日本では、ますますヌードに対する取り締まりが厳しくなっているように見えます。

 「公然わいせつ」容疑での摘発は、何もハッテン場だけに限ったことではありません(ゲイに対する弾圧とは言えません)。これまでにハプニングバー男女の乱交パーティも摘発を受けてきました。そうしたニュースを読むにつけ、いずれはハッテン場にも…?という危惧を抱いていた方もいらしたかもしれません。とうとうそれは現実化してしまった…ということなのです。
 
 こうした「不特定の人に見られる可能性」があるかどうかという基準を杓子定規に用い、誰も被害者がいないのに検挙するというあり方に対しては、「行き過ぎでは?」「そういう店がアングラ化するだけでは?」という疑問の声も上がっていました(詳しくはこちら


踊ってはいけない国で、
踊り続けるために

磯部涼:編著/河出書房新社

 南弁護士が語ってくれたように、警察はそもそも風営法の埒外にあることから届け出が出ていない業種の店舗がどうなっているのか実態を把握したいのだ、という事情もあるでしょうが、どうやら他にも事情がありそうです。
 たとえば、『踊ってはいけない国で、踊り続けるために』(河出書房新社)で、社会学者の永井良和さん(『風俗営業取締り』の著者)は、「警察組織も、折々に『自分たちも仕事してるぞ』という面を見せなきゃいけない。そのために、ここぞという時に摘発に入ってアピールするのです」と書いています。
 また、『踊ってはいけない国、日本』(河出書房新社)では、ライターの松沢呉一さん(パレードに参加したり、尾辻さんの選挙を手伝ったり、名誉ゲイと呼んでいいほどゲイコミュニティを支援してくださっている方です)が、もともと「風営法は新しい業種を積極的に取り込むことで合法領域を作り、と同時にそこからはみ出る違法領域を作り出す役割を果たしてきた。その上で、極端にはみ出さない限り、違法領域にある店を黙認するという方法を警察はとり続けた」、つまり、警察はグレーゾーンの黙認によってうまく管理してきたのに、2004年、「歌舞伎町浄化作戦」と題した違法風俗店の一斉摘発を行い、以降、今までグレーだったものがクロだとして摘発されるようになったと語っています。
 

風営法とは?

 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(略して風営法)は、1948年に売春を黙認的に管理するために作られた法律で、1984年の大きな改正など、たびたびの改正を経て、今の形になっています(最終改正は昨年)。第一章第一条(目的)「この法律は、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため、風俗営業及び性風俗関連特殊営業等について、営業時間、営業区域等を制限し、及び年少者をこれらの営業所に立ち入らせること等を規制するとともに、風俗営業の健全化に資するため、その業務の適正化を促進する等の措置を講ずることを目的とする」から始まり、かなり長い条文になっています。(全文はこちら

 内容をごく簡単にまとめると、飲食店やナイトクラブ、キャバレー、バー、カフェ、パチンコ屋、麻雀店、ゲームセンター、性風俗店などについて、届け出の義務、営業時間(深夜12時まで、都道府県によっては1時まで)、営業できる地区、宣伝方法(客引きの禁止など)、店舗の構造、未成年の制限などを規定した法律です。
 
 この風営法の中で、いま最も注目されているのがクラブ(条文では「ナイトクラブ」)に関する部分です。正規に届けを出してクラブと認められるためには、店の広さや構造、照明の明るさなどの細かい条件を満たし、深夜12時まで(地域によっては1時まで)という営業時間の規制が課されます(朝までやってこそのクラブなのに…)。こうした事情から、これまで多くのクラブは、届け出を出さず(出せず)、無許可での営業を行ってきましたし、警察も「グレーゾーン」として黙認してきました。が、前掲のような事情もあり(永井良和さんは「警察がアピールに使える、いつでも取り締まれる場所として把握してるのは、もうクラブくらいしかなかったんじゃないか」と述べています)、摘発が行われはじめ、現在に至っています。しかし、相次ぐ摘発に対し、風営法見直しを求める運動が盛り上がりを見せています(多くの著名人も改正を支持し、すでに15万人以上もの署名が集まり、国会議員のダンス議連が発足するなど、着実に動いています)

 その他の部分でも、風営法はさまざまなゲイ産業に関わっています。
 第四章第一節第三款「映像送信型性風俗特殊営業の規制等」(たとえば、わいせつな映像=全裸動画や児童ポルノ映像を送信してはいけない、十八歳未満に見せてはいけない、うんぬん)は、ネットでのビデオ配信業者に関わってくるものです。
 第四章第二節「深夜における飲食店営業の規制等」(たとえば、深夜にお酒を提供する場合は届けを出さなくてはいけない)は、ゲイバーにも適用されます。2011年5月、二丁目の有名なショーパブが、無許可営業で摘発を受けました。また、昨年7月、二丁目でかなりの売上げを誇っていたゲイバー(およびグループ店)が、やはり無許可営業の疑いで摘発されました。
 同章第四節「特定性風俗物品販売等営業の規制」(たとえば、児童ポルノ法に違反する物品は販売してはならない)は、ゲイ向けのバラエティショップに関わってきます。(ショップについて言うと、これまで、風営法というよりも、RUSHを販売していたショップが薬事法違反で摘発されたり、また、たいへん遺憾なことに、レスリー・キーさんの写真集に関しても、二丁目のショップで摘発がありました)
 
 このように、ゲイシーンの多くの産業は、風営法(やわいせつ物頒布罪など)を無視しては営業できないものです。
 そして、今まで「なあなあ」で見過ごされていた部分や、これまで風営法の枠組みに収まっていなかった業態に関しても白黒はっきりさせる、そういう時代にさしかかっていると言えそうです(なにしろ「男女の享楽的雰囲気が過度にわたる」という名目でアルゼンチンタンゴまで規制対象にするという時代錯誤っぷりなのです)。もしかしたら今後、ここでは挙げていない他のゲイ向け性風俗の業種も摘発にあうかもしれない…という危惧が現実のものにならないことを祈ります。

二丁目のお店を安心してご利用いただくために

 ここまで読んでくださった方の中には「もし自分がハッテン場にいる時に摘発があったら、逮捕されるんだろうか…」とか、「二丁目で遊んでて大丈夫なんだろうか…」などと心配している方もいらっしゃるかもしれません。この章では、何が危険でどうしたら安心に遊べるのか、というガイドラインをお伝えしたいと思います。

 まず、クラブやゲイバーなどでは、万が一何らかの摘発があったとしても、お客が逮捕されることはまずありませんので、ご安心ください。また、お店の側も未成年を入場させないためのチェックを厳しくしたり(クラブの入場の際、必ずIDの提示を求められるのはそのためです)、外で大声で騒がないよう注意を促すなどの自助努力をしています(こうした自助努力は警察との交渉において非常に重要ですので、「うるさいなあ」「面倒だなあ」と思わず、ご協力をお願いします)
 
 それから、ハッテン場についてですが、一昨年の摘発以降、ほとんどすべての脱ぎ系ハッテン場では「全裸禁止」の断り書きが出されるようになりました(また、ミックスルームをすべて個室にするなどの改装を行うお店もたくさんありました)。それは「DOCK」をはじめ何軒ものお店の方が警察署に赴き、指導を仰いだ結果です(地下に潜るのではなく、堂々と名乗り、話し合った方が何人もいらしたということに感動しました)。そこで示された指針とは、館内を歩く際は何か穿く、個室の中で1対1のセックスするのはOK(ミックスルームや、個室内でも3人以上だと「公然」にあたるという説も?)というものだったはずです。そういうお店はちゃんと警察の指導を遵守していると見なされるので、大丈夫だと思います。
 しかし、万が一(ものすごく確率は低いと思いますが)摘発の場に居合わせたとしても、その際に全裸でなければ大丈夫です(大阪のケースがそうでした)。運悪く全裸で逮捕されたとしても、公然わいせつは強盗や殺人などのような重犯罪とは比べるべくもない、超軽いものなので、調書を取られて終わり(不起訴=無罪)だと思います。客の名前が新聞に出たりすることもまずありません。
 むしろ、不審な薬物※1を所持していることの方がはるかに危険です。(また、レイプなどの暴力行為=強制わいせつは、問答無用でアウトです。念のため)
 
 もう1つ、ハッテン場がらみでお伝えしたいことがあります。万が一、夜の公園など野外で全裸になっているときに暴漢に襲われたり金品を盗られそうになった場合は、迷わずその場で110番通報してください。人目につかない場所で全裸になったことなんて法的に見ても取るに足らない些細なことですが、暴行・強盗事件は重犯罪。暴漢の方こそ逮捕されて厳重に裁かれるべき犯罪者なのです。「公園でハッテンしてるゲイだってバレるのがイヤ…」と思うかもしれませんが、ゲイだからどうのこうのということは一切ありませんし、氏名が公表されることもありませんし、被害者としての調書を取られたらすぐに帰されるはずです。自分は悪くない(ちょっと露出しちゃっただけ)、暴行を受けた被害者なんだと、堂々としてください。

※1 不審な薬物
ハッテン場に限らず、道ばたで職質された際なども同じですが、小さな容器や小袋に白い粉を入れて持ち歩くと、たとえそれが小麦粉であっても「署までご同行願えますか?」ということになる可能性があります。そこで調書が取られ、不審な粉が検査に回され、もし覚せい剤や5meoなどの違法な麻薬であることが判明すれば、あとで「お迎え」が行くことになります。ちなみに、誤解している方が多いのですが、RUSHは(あやしいダイエット食品などと同様、薬事法違反で販売が禁止されているだけで、麻薬ではありませんので)単純所持では罰せられません。なので、もしRUSHについて問い質されることがあったとしても、違法ではないと主張してください。

 

ハッテン場の未来のために

 クラブに関する風営法見直し(「ダンス」の項目の削除)を求める運動が世間で盛り上がっていますが、それと比べると、ハッテン場に関する規制の見直しを求める運動はそれほど盛んではないかもしれません。が、これまでにいくつか動きがありました。

 昨年、関西で「ハッテン場摘発を考える会」が立ち上げられ、7月、大阪大学コミュニケーションデザイン・センターのレクチャー&対話イベント「ラボカフェ」の企画として「ハッテン場摘発事件から考える」というセミナーが開催されました。講師として二丁目の「DOCK」の吉野さんが招聘され(これ以上適任な方はいないのでは?)、定員30名のところ70名を超える方が参加し、関西のゲイコミュニティの方たちも集い、有意義な議論が行われたようです(こちらに吉野さんの感想が載っています)
 たぶんこの場に、南和行さん&吉田昌史さんの弁護士カップルも参加されたのではないかと思います。
 南和行弁護士の活躍は、先にお伝えした通りです。
 また、「DOCK」の吉野さんが、この時の話し合いにいい刺激を受け、ハッテン場連絡協議会を作り、自助努力もしながら警察との交渉に臨めるような態勢を作っていきたいと語っています(素晴らしい!)

 風営法とクラブの問題についてまとめた『踊ってはいけない国、日本』(河出書房新社)の続編として今年4月に発刊された『踊ってはいけない国で、踊り続けるために』(同)という本には、ロビーイングや請願書のことなど、問題を解決するために具体的にどう行動していけばいいかという事例が豊富に示されていて、たいへん参考になります。
 その中で荻上チキさん(先日『探検バクモン』のセクシュアルマイノリティ特集にも出演していたアライ=支援者の方。荻上さんが主宰するジャーナリズムサイト「SYNODOS」には、セクシュアルマイノリティについての多くの記事が掲載されています)は、「そもそも風営法が誰のための法律なのか、不透明化している」と指摘したうえで、非合理な排除に抵抗しようとするとき、「白書」(その分野の実情を取りまとめた事例&統計集)を作ること、「窓口(業界団体)」を作ることが重要だと強調しています。また、「自助努力」が大切、とも。「たとえばクラブでも『自分たちでこういった啓発をしてきたので、この5年間で明らかに問題が減っている。それなのにさらなる規制が必要なのですか』と言えるようになれば、規制をめぐる議論に一石を投じることができるでしょう」。ちなみにこの原稿の最後は「セクシュアルマイノリティたちの、各地でのレインボー・アクション」の意義を引き合いに出し、「では、ダンス文化を愛する者たちは、どう応答するのか。これからが問われてくるのだと思います」と締めくくられています。(なんと光栄な…という気持ちとともに、僕らのパレードをはじめとした活動と、風営法見直しの運動、ハッテン場のことが、地続きであり、大きな流れの中にいっしょにいるんだなと感じることができました)
 
 さて、摘発はあったものの、ハッテン場の経営者の方たちも、警察と話し合い、迅速に柔軟な対応をして、安全にやっていけるようになった、利用者側が気をつけるべきことも明らかになった、めでたしめでたし、と締めくくりたい気持ちもある一方、そうとも言いきれないのではないか…という、ある「思い」が筆者の中で湧き上がっています。
 実は、ハッテン場の摘発による最大の問題は、ハッテン場が「よくないもの」として世間に広まり、スティグマ(社会的不名誉、汚名)を付与されたということなのではないかと思うのです。次回、詳しく述べたいと思います。

(つづく)



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