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COLUMN

杉田議員問題について

『新潮45』の「『LGBT』支援の度が過ぎる」という論稿で「生産性がないLGBTに支援は必要ない」などと述べ、各方面から非難を浴びている杉田水脈衆議院議員。実は以前からこのような主張を繰り返していたことがわかりました。議員辞職を求める声も上がっています。

 7月19日、衆議院議員の杉田水脈氏が『新潮45』2018年8月号に「『LGBT』支援の度が過ぎる」という論文を寄稿し、「LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がないのです」「トイレはどうなるのでしょうか。自分が認識した性に合ったトイレを使用することがいいことになるのでしょうか」「「LGBT」を取り上げる報道は、こうした傾向を助長させることにもなりかねません」「『常識』や『普通であること』を見失っていく社会は、『秩序』がなくなり、いずれ崩壊していくことにもなりかねません。私は日本をそうした社会にしたくありません」などと述べていたことがわかり(尾辻さんのTwitter投稿から火がつきました)、大きな波紋を呼び、各方面から非難の声が上がりました。

 有識者の方たちの見解をいくつかご紹介します。
 まず、日刊ゲンダイ連載「ここがおかしい 小林節が斬る!」では、「人権の意味をわからず 「LGBT支援は必要ない」という暴論」と題して、「これらの認識は、全て間違っている」とバッサリ斬り捨てられています。「「人権」論の本質が分かっていない」「人間は皆、先天的に「それぞれ」に個性的な存在であるが、それをお互いに許容し合う温かい心こそが人権論の土台」「自分とは異質な者を内心では見下しておきながら、それを単なる「区別」だと言い張り、その上で「優先順位が低い」という見下し発言をして恥じない者が権力側にいては、いけないのである」。この新聞記事を紹介したツイートは万を超えるバズり方となっており、多くの方々の共感を呼んでいる様子が窺えます。
 それから、常見陽平氏による「自民党杉田水脈衆議院議員の『新潮45』への寄稿は不適切発言の特盛である」では、詳細な分析が行われ、「珍妙な状況認識がこれでもかと開陳された、不思議な百貨店のようなものであった」と結論づけられています。そして「私は声を大にして警鐘を乱打したい。これは野党支持者だけではなく、むしろ自民党支持者が怒るべき案件ではないか」「党派性を超え、生きやすい世の中を勝ち取ろう」と述べられています。
 

 なお、こちらの動画の拡散によって、杉田氏の「生産性」の有無に基づく危険な思想は−−ナチスの優生思想に基づく施策(社会の「お荷物」となる障害者や傷病者、ユダヤ人などの少数民族、同性愛者を安楽死させることで、「劣等」な人間を減らし、ドイツ民族全体の浄化を図ろうとするもの。ホロコースト)にも通じると指摘されていますが−−なにも今に始まったことではない、ということが広く知られるところとなりました。この動画は、2015年、渋谷区のパートナーシップ条例に反対する(同性愛ヘイトとも言える)集会を開いた極右団体が関与しているYoutube上のチャンネルで、杉田氏がゲストとして自説を開陳しているのですが、「テレビの討論番組から『LGBTの知識を学校教育で教えるべきかどうか』という意見を聞かれまして、私は当然『そんなものは必要ありません』と。そう言ったら、『同性愛の子供は自殺率が6倍高い それでも良いのですか?』って言われまして笑 あの~私はそれでも優先順位は低くて」と言って同性愛関連の教育は必要ないと否定しています。「ゲイ・バイセクシュアル男性の自殺率が異性愛男性の6倍も高い」ということの重みを1ミリも顧みず、(横にいた人たちもいっしょに)せせら笑いながら語る姿は、人間性のかけらも感じられない、残酷な(悪魔的な)ものです。呪いの言葉を聞かせているようです。Twitterで回ってきて思わずこの映像を見て、深く傷ついてしまった…という方もいらっしゃるようです(まだご覧になっていない方は、十分ご注意を…ある意味「猛毒」です)
 
 このような杉田氏の主張は、自由民主党がまとめた「性的指向・性自認の多様なあり方を受容する社会を目指すためのわが党の基本的な考え方」をはじめ、理解増進法の制定を目指してきた党の方針に明らかに反するものであり(それ以前に、基本的人権を保障する憲法にも反しますし、日本がオリンピック開催国にふさわしくないと国際問題になりかねません…)、党としてこれを処分しないのか、容認するのか、とも指摘されてきました。がしかし、7月24日、二階俊博幹事長は記者会見で「人生観もいろいろある」などと述べ、放置・容認する立場を示しました。こうした党の姿勢にも批判の声が上がってきています。
 
 こうした状況で、いくつかのLGBT関連団体やアライの方たちが、正式に抗議する声明を発したり、議員の辞職を求めはじめました。
 7月23日、LGBT法連合会は「当事者が直面する困難の現実を無視した差別的論考で、大変に問題がある」「人権侵害であるだけでなく、同氏が所属する自由民主党の方針にも反するものである」として、抗議声明を発表しました(全文はこちら
 7月24日、にじいろほっかいどう、NPO法人L-Port、さっぽろレインボープライド、Q’wereなど北海道内8団体2個人が「北海道LGBT市民の連合」(代表:鈴木賢北海道大学名誉教授)として、自由民主党の二階俊博幹事長宛に「杉田水脈議員の除名と議員辞職勧告を行うことに関する要望書」を送付しました(内容はこちら) 
 同日、LGBT支援法律家ネットワーク有志もまた、抗議声明を発表しています(全文はこちら
 また、7月27日(金)19時〜には自民党本部前(地下鉄永田町駅3番出口)で、#0727杉田水脈の議員辞職を求める自民党本部前抗議が行われます。東京レインボープライドなど多くのLGBT団体もこれを支持しています。札幌福岡大阪などでも抗議集会が行われるそうです。
 
 こうした抗議運動に対して、一部、批判的な声も上がっているようですが、国民を代表して国政を議する立場にある衆議院議員が、「LGBTに人権はない」という、もはやヘイトスピーチとも言うべき、一線を越えた差別発言を行っているわけですから、党派などは関係なく(たとえどの党の議員だろうと)、人道主義の見地から、国会議員にふさわしくないという声が上がるのは当然ではないでしょうか(海外では即辞任ですよね…。このようなファシズムまがいの発言は本当に厳しく糾弾されます) 
 逆に、このような、真っ向からLGBTを貶める発言に対して、何も言わずに放置してしまうと、どうなるでしょうか…? 彼女のような人たちが勢いづき、ヘイト発言を繰り返したり、同性婚実現はおろか、既存のLGBT支援施策に対して待ったをかけたり、かつてのような、異常で変態だから差別されて当然、という空気が再び蔓延しはじめ(杉田氏は「異性愛=正常」「同性愛=異常」と断定し、なぜ異常な人たちに権利を認めなきゃいけないんですか?と、人々の差別心、ホモフォビアに訴える物の言い方をしています)、せっかく前に進んできたいろいろなことがダメになり、侮辱や差別や排除が正当化されてしまう、そういう時代に逆戻りする可能性もあると思いますが、考え過ぎでしょうか…?(そうならないことを願いますが…)
 
 おそらく史上最悪の公人によるLGBTヘイトスピーチ(石原元都知事の発言がかわいく思えます)となった今回の事件。まだしばらく炎上が続き、いろいろな出来事が起こっていくと思います。また続編をお届けするかもしれません。
 みなさんもぜひ、この問題を自分ごととして捉え、考え、行動してみていただきたいと思います。


(2018.7.25 後藤純一)

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