COLUMN
社内制度づくりのその先へ−−「work with Pride 2019」に参加して感じたこと
2019年10月11日(金)、東京ミッドタウン日比谷内「BASE Q」で「work with Pride 2019」が開催されました。そのレポートをお届けしつつ、参加して感じたこと(「LGBTと企業」のこれから)について、書いてみました。
国際的なカミングアウト・デー※に当たる10月11日(金)、東京ミッドタウン日比谷内「BASE Q」で「work with Pride 2019」が開催されました。そのレポートをお届けしつつ、参加して感じたこと(「LGBTと企業」に関するこれからのテーマ)について、書いてみました。
※カミングアウト・デー:1987年10月11日、ワシントンD.C.でレズビアン&ゲイの権利を求める「第二のワシントン大行進」が行われ(言うまでもなく、第一は人種差別撤廃を求めた1963年のワシントン大行進です)、多くのLGBT活動団体が生まれるきっかけとなりました(ACT UPが初めて全国規模でHIV/エイズの問題(SILENT=DEATH)を訴えることができたのもこのマーチでした)。翌年、この10月11日という記念すべき日を「National Coming Out Day」と定め、LGBTのことを広く認知してもらう日にしようと提唱されました。この呼びかけの根底には「ホモフォビアは、沈黙や無視の雰囲気の中でこそ蔓延するのであり、当事者はひとたびありのままで愛されるということを知れば、ホモフォビアや抑圧的な言説に惑わされなくなる」という信念がありました。
work with Prideとは
https://workwithpride.jp/about-us/
PRIDE指標とは
https://workwithpride.jp/pride-i/
「work with Pride 2019」レポート
今回のwork with Pride 2019(以下、wwPセミナー)は、「ブレークスルー! 〜新時代に向け、LGBTの取り組みをもう一歩進めるには?〜」をテーマに掲げ、全ての社員が働きやすい環境の構築に向け、これから施策に取り組む、制度はできたがさらに利用者を伸ばしたい、さらなるイノベーションのために革新的なことに挑戦したい、など、それぞれの企業・団体における様々なシチュエーションからのブレークスルーとなるディスカッション、提言が行われました。
総合司会に、LGBTやダイバーシティに関する記事や情報を数多く執筆・配信されているエッセイストでタレントの小島慶子さんを迎え、経営者および当事者が参加するパネルディスカッションや、企業のLGBTに関する取組みの評価指標「PRIDE指標2019」の結果発表、そして、企業の関心が高い「社内風土づくり」「制度づくり」の2つのテーマに沿ったサブセッションも行われました。
厚生労働省、東京都、一般社団法人日本経済団体連合会(略称:経団連)、日本労働組合総連合会(連合)、全国中小企業団体中央会が後援についていたということもお伝えしておきます。
冒頭、小島慶子さんがご挨拶したあと、今年も小池東京都知事からのメッセージが紹介されました。
そして早速、経営者パネルと当事者パネルが実施されました。
経営者パネル「〜経営者宣言〜 企業で、社会で、LGBTの取り組みをさらに進めるために必要なことは。」
現状や課題を踏まえ、次のブレークスルーのために成すべきことを経営者宣言として発表、そこから社会や企業のさらなる取組みを提言するという趣旨のトークセッションでした。
パネラー(登壇者)は、EY Japanリージョナル・チーフ・オペレーティング・オフィサーの貴田守亮さん、日本アイ・ビー・エム株式会社取締役専務執行役員インダストリー事業本部長の福地敏行さん、そしてライフネット生命保険株式会社代表取締役社長の森亮介さんでした。
貴田さんは、16年も前から社内でゲイであることをカミングアウトしていて、社内で当事者のミーティングを開き、TRPに参加したり、経営者と話す機会を設けたり、ロバート・キャンベルさんを招いて講演を行ったりなどの活動をしてきました。地方の方などにはeラーニング研修を行うなど、広く行き渡るように努めてきましたが、なかなかまだ社員の方が自分自身の言葉で語れるくらいになっていない、とおっしゃっていました。
福地さんは社内LGBTネットワークの役員スポンサーとなり、ニュートラルな立場で当事者と話し、その声を会社に届けるという役割を果たしてきました。IBMはOUTしているエグゼクティブが世界に30名ほどいるほか、OUTロールモデル(若い人で一定の基準を満たした人)も150人くらいいるそうです。今は「Be equal」というキャンペーンを展開中で、ハチ(bee)をかたどったバッジを着けていらっしゃいました。
小島さんの「採用に際して、御社がアライだからということで来られた方がいますか?」との質問に、福地さんは「いらっしゃいます」と、「ただ、あまりLGBTだからと意識してはいない。人間を見ている」とおっしゃっていました。
一方、ライフネット生命の森社長は、「意図せざるところで同性カップルがあおりを受けていたが、2015年、運用を改正し、同性のパートナーも受取人に指定できるようにしたところ、大きな反響があり、業界にも広がった。新規の申込みもすごく増えた」「TRPのブースで、写真を1枚撮るごとに100円プラスするかたちで参加していただき、貯まった金額分で児童学生向けのLGBTへの理解につながる本を購入し、学校に寄付するというプロジェクトを展開した」と、自社の取組みを紹介しました。
小島さんの「社内での働きやすさはどうでしょう?」との質問に対して、「社内に4名のカミングアウトしてくれた当事者がいます。彼らを中心に、LGBTのことを発信していきながら、でもまだ社内にも温度差があるので、底上げを図っていきたい」と語っていました。「ダイバーシティの話は、海外では、よく氷山に喩えられると思います。人種や性別に比べて、国籍や宗教やSOGIは水面下で、見えにくい。一方、LGBTが天使の輪として表現されることがある。「LGBTに配慮できるなら、私もきっと受け入れられる」と思える方がいらっしゃる、ということなんですね」(素敵なお話でした)
それから、ブレークスルーのための経営者による宣言ということで、貴田さんは「目に見えない違いにも配慮できる文化を醸成する」という言葉を掲げました。「海外では、カミングアウトできる人を増やすということに取り組んでいますが、日本ではなかなかそうはいかないところがあります」
福地さんは「社長直属のシニアリーダー全員にアライ宣言させます!」という目標を掲げました。「お客様にも必ずLGBTの話をするようにしている。最初は怪訝そうにしていた方も、少しずつ変わってきている。風を感じます」
森さんは、「誰もが誰かを支えるアライに」という言葉を掲げました。「自分と異なる他者への想像力を持つこと。あたたかな組織づくリ。アライというマインドとスキルを、いろんなところで生かしていくようにする」
最後に、オープンリー・ゲイである貴田さんからお二人に「当事者だって自分を受け入れるのが大変なのに、どうしてお二人はアライになれたのか?」という質問がありました。福地さんは「以前はよく知らなかった。4年前に今のような仕事を始めるようになり、二丁目にも行ったり、当事者の方と接することを心がけました」と、森さんは「大学のとき、周りにLGBTの人たちがいたので、自然に接していました」と語りました。
トークセッションの後、経営者宣言のボードを、お三方だけでなく、会場の前方の席にいらしたPRIDE指標ゴールド受賞企業の皆さんも宣言のボードを掲げ、記念の写真を撮りました。
当事者パネル「当事者が自分らしく働くことができる職場」
カミングアウトしている人、してない人にとって自分らしく働くことができる職場とは何か?ということを、当事者の方たちで話し合うトークセッションでした。
パネラー(登壇者)は、エクスペディアホールディングス株式会社代表取締役のマイケル・ダイクスさん、株式会社日建設計のサリー楓さん、東日本旅客鉄道株式会社の佐藤海人さん、麗沢大学の山城結愛さんでした。
マイケルさんは、日本人は「所属する組織に迷惑がかかるのではないか」と思いがちである、と指摘。例えば取引先の人にセクハラを受けることが往々にしてありますが、エクスペディアではそういう場合、注意しても治らなければ取引を停止する、毅然と対応するとおっしゃって、「LGBTへの差別も同じです」と語りました。
サリーさんはMtFトランスジェンダーの方ですが、履歴書の性別(戸籍上の性別)と見た目が異なっていたこともあり、就職の際、人事の人に伝えたそうです。「カミングアウトは、本人だけでなく周囲の問題でもある。困ったとき、こうすればいいんだ、というロールモデルが出てこない。私はOKだけど他の人がダメかも、取引先がダメかも、とか。LGBTはどこにでもいると思っていない」と指摘しました。
FtMトランスジェンダーである海人さんは、教育実習の際、ネクタイを締めて行ったそうですが、若い方たちは全然ふつうに受けとめてくれたそうです。しかし、会社の面接の際に告げると「社内の年配の人たちは受け入れられないかも」と言われたそうです。小島さんは「ちゃんと会社が守ってほしいですよね」とフォローしました。
結愛さんは学内でバイセクシュアルであるとカミングアウトした瞬間、性的な質問を突然ぶつけられるようになったと語りました。小島さんは「特に親しくもないのに、ズケズケ聞いてきたり。LGBTなら失礼に当たらないと思っているのでしょうか。これはメディアの責任でもあると思います」とフォローしました。
続いて、「自分らしく働けるようになるために、職場で必要なこと」というテーマで、話し合われました。
マイケルさんは、「同性パートナーにも福利厚生を適用する企業は増えているが、渋谷区や世田谷区のように証明書を発行してくれる自治体に住んでいないとパートナー関係を証明できないということがある、これは制度面の課題だ」と述べました。一方で、自身がカミングアウトしていることが社内でインパクトを与えていて、例えば取引先の人が失礼な質問をしてきたとき、部下が自分に代わってたしなめてくれたというエピソードを語りながら「社内一人ひとりの考えや行動も大切だと思う」と語りました。また、アジアの他の国から「日本ならカミングアウトできる。希望が持てる」と感謝のメッセージが来た、日本は注目されている、ということもおっしゃっていました。
サリーさんは、会社が、当事者が何に困っているか理解していないと語りました。サリーさん自身は性別適合手術を受けていなくて(ちなみに彼女はバイセクシュアルだそうですが)もし男性とパートナー関係にあった場合、結婚ができないので、社内では「未婚」扱いとなり、転勤に影響する(地方に転勤させられやすい)という問題を挙げました。
結愛さんは、就職活動に際して、カミングアウトしたとき受け入れてくれそうかどうかを慎重に見ていると、昇格が男女平等かということを一つの判断材料にしていると語りました。
それから、会場にいらっしゃる方たちから質問を挙げてもらって「それ聞きたい」と思う質問に「いいね」していくと最も「いいね」が多い質問が上位に来るという投票システムを利用して、「上司からのサポートでうれしかったことは?」という質問が採用されました。海人さんが「健康診断のとき、男性の時間、女性の時間以外の枠をわざわざ設けてくれたのがうれしかった」と語りました。
最後に小島さんが「そっとしておいてほしい、という声もありますが、どうでしょう?」と尋ねると、サリーさんが「そういう声は周りにも多い。別にふつうだから、わざわざ言うことじゃない、という意見」と語り、「それでもあえてアライだと名乗るのは、LGBTのことをよく知らない人への啓発の意味だと思ってます」と語りました。小島さんは「私は今回、初めてアライだと名乗ったのですが、同じ理由です」と語りました。
PRIDE指標2019 ベストプラクティス
職場でのLGBTに関する取組みを評価する『PRIDE指標』の結果が発表されました。今年で4回目となるPRIDE指標2019には、全国の194の企業・団体から応募がありました(昨年は153社でしたので、約1.3倍に増えたことになります)。各賞の内訳は、ゴールドが152社(昨年は130社でしたので、22社増)、シルバーが28社、ブロンズが12社、選定なしが2社となりました(全受賞企業はPRIDE指標2019レポートに掲載されています(PDFです))
受賞企業・団体の中から特に先進的で顕著な活動を行った下記4社が、今年度の「ベストプラクティス」として選出され、各社からプレゼンが行われました。
・TOTO株式会社
性的マイノリティの公共トイレに関する調査結果を公表。当事者の定性的な意見と調査結果に基づく定量的なデータを、誰もが使いやすいトイレの提案へと繋げると共に、広く公開しました。
・日本航空株式会社
国内初のLGBT+ALLYチャーター便を運航。本業で社会全体への理解促進への機会を提供し、その試みが社内外のアライ拡大に貢献しました。
・東日本旅客鉄道株式会社
当事者社員を対象とした「LGBTネットワーク交流会」を実施。カミングアウトしていない当事者社員へも参加を促すため、全社員向けに告知して実施し、社内当事者コミュニティ形成をサポートしました。
・株式会社LIXIL
オフィストイレのオールジェンダー利用に関する調査結果を公表。性自認に関わらず、オフィスで働く誰もが「安心して快適に利用できるオフィストイレ環境」を明らかにすることを目的に、国立大学法人金沢大学、コマニー株式会社と共同で調査を実施し、その結果を広く公開しました。
サブセッション(1)風土づくりのブレークスルー「PRIDE指標からみる、ブレークスルー・ポイント」
PRIDE指標の応募企業データを横断的に見て各評価項目を分析したところ、達成度が有意に低い評価項目がいくつかありました。その中から今回、「社内コミュニティづくり」と「無記名の意識調査」に焦点を当てて、各社の事例も交えながらディスカッションが行われました。この項目の取組みが次の一手(ブレークスルー・ポイント)となりえるのではないかという趣旨です。
登壇してくださったのは、株式会社オリエントコーポレーション、シスコシステムズ合同会社、ソフトバンク株式会社、株式会社 丸井グループ、株式会社ゆうちょ銀行、株式会社リクルートの皆さんでした。
最初に「社内コミュニティづくり」について、話し合われました。
リクルートの社内コミュニティは、当事者:アライが4:6くらいで、レズビアンとゲイの社員の方が代表を務めているそうです。職場のファミリーデイに同性パートナーを連れて参加したりという素敵なお話もありました。
ソフトバンクの社内コミュニティは、月1で社内にメルマガを配信したり、TRPや映画祭に参加したり、社外の人から話を聞いたり、という活動をしてきたそうです。
次に「無記名の意識調査」について話し合われました。
社内でカミングアウトしている人が少ないので、無記名の社内アンケートで、当事者が回答しやすいように工夫して、声を聞くようにしている、というお話が複数の会社から出ました。
ゆうちょ銀行からは、アンケートをとる直前にLGBT研修(eラーニング)を実施した結果、回答数が高まったというお話もありました。
シスコシステムズからは、「問題として捉えてほしくない」「このような調査をしなくても、フレンドリーだから」といった声も上がった、というお話がありました。
サブセッション(2)制度づくりのブレークスルー「ここが変だよ!LGBT人事制度–当事者の本音–」
現状、企業で整備されつつあるメジャーなLGBT施策について、当事者がどう思っているか、アンケート、インタビューで把握。その結果を踏まえ、LGBTの登壇者が本音を語るセッションでした。
登壇してくださったのは、日本オラクル株式会社(レズビアン)、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社(MtX)、有限責任監査法人トーマツ(FtM)、野村ホールディングス株式会社(ゲイ)の方々でした。
はじめに、制度があっても使う人が少ない(窓口に相談に来ない。同性パートナーも使える福利厚生を利用しないなど)という現状について。「パートナーがいないので、利用できない」「現状の制度だと使える項目が少なく、メリットがあまりない」「利用するメリットと、カミングアウトのリスクを天秤にかけてしまう」「制度を使うために上司に言うと、アウティングされるのではないかと恐れてしまう」などの声が上がりました。
続いて、どうしたら制度を利用する人が増えるのか?について。「アウティングを防ぐため、どこまで知らせるか、範囲を決めて、きちんと守っていただく」「システム設計を見直すことも有効」「経営層レベルでカミングアウトしている人がいると安心感が増す」「社内風土づくりも大切」などの意見が出ました。
それから、トランスジェンダーへの施策について。「性別以降前、途中、後というフェーズによってニーズが変わることを理解してほしい」「トイレについては、男、女、ジェンダーレスがあるとうれしい」「周囲が混乱しないよう、アライの方がトイレに一緒に来てくれるとうれしい」「当事者と対話してほしい」といった声が上がりました。
締めくくりとして、LGBT施策・制度づくりのポイントについて、各々述べました。「決してL、G、B、Tの4パターンではない」「当事者自身が正解に迷う、100点がわからないこともある」「トップがLGBTについて発信してほしい」「特別な権利ではなく、マイナスを平等にするのだということを理解してほしい」「制度利用実績がまだない会社もあると思うが、認めてもらえてるという安心感や感謝はあるので、ぜひ制度を整えてほしい」といった声が上がりました。
最後に、今回の「work with Pride 2019」の開催に尽力したグッドエイジングエールズの方がご挨拶し、ひときわ大きな拍手が贈られていました(これに限らず、当事者の方が登壇した際は、拍手が大きくて、会場のあたたかさを感じました)
閉会後、同じ「BASE Q」内で懇親会が開催されました。
「work with Pride 2019」を振り返って
今年のwwPセミナーは、テーマ設定や、話の流れなどもわかりやすく、説得力があり、パネラーの方々も皆さん、いい話をしてくれたと思います。多様なLGBTQの登壇者(Xジェンダーの方など)も増えて、エクスペディアのCEOのマイケルさんのようなOUTエグゼクティブな方もいらして、「当事者だからこそ言えること」がたくさん聞けたのもよかったと思います。熱心にLGBT支援を行ってきたような企業でも、社内でカミングアウトしている人はまだほとんどいなかったりするという現状もあるそうですが、このセミナーが、たくさんの当事者の多様な声を一気に聞ける貴重な機会になっていたと思います。
総合司会の小島慶子さんが、有名なタレントであるということ以上に、不安障害を患い、世間のメンタルヘルスに関する偏見に直面したという自身の体験も交えながら、性的マイノリティと同じ目線で親身にお話を勧めてくださったことにも、ジーンときました。素晴らしい方だなぁと感じました。
経営者パネルの最後に、オープンリー・ゲイの貴田さんが他のお二人に「どうしてそんなに熱心にLGBTのことに取り組んでいらっしゃるのか?」という素朴な疑問を投げかけておられて、「わかりみ深い」と思いました。ストレート男性といえば、ゲイに偏見を持ってたり、侮辱的だったりというのが「普通」という状況…長年そんな環境でずっと耐えてきた(慣れてしまった)方にとってみれば、なぜ急に、そんなに親身になって支援してくれるアライ(味方)になったのか、ちょっと聞いてみたくなるんですよね…(要は、軽く不信感を覚えているわけです。それだけ、今までがキツかったということですよね…)
2015年に渋谷区が同性パートナーシップ証明制度を盛り込んだ新条例を制定すると発表したことがブレイクスルーとなり、今回も登壇したライフネット生命が生命保険の受取人に同性パートナーも指定できるようにしてくれたり、携帯電話の家族割や、航空会社のマイル共有、銀行のローンなど、多くの企業が次々と、パートナーが同性である人々を配偶者(家族)と同等に扱うような商品・サービスの見直しを行うようになり、並行して2016年からPRIDE指標が策定され、社内でのLGBT施策も急速に進められてききました。
昨年の「work with Pride 2018」では、着実に企業のLGBT施策が進んでいる様子が伝わってきました。
しかし、今回のwwPセミナーでは、例えば従業員が何万人もいて全国展開しているような大きな企業では、隅々までLGBT支援を浸透させるのが難しかったり、また、カミングアウトはまだ難しいと感じている当事者も多く、社内でパートナーシップ制度を利用しづらい現状があるという点もフォーカスされました。制度を整えればOK(おしまい)ではないということが共有され、新たな問題意識が生まれたと思います。
制度づくりをある程度達成した(ゴールドを受賞した)企業のみなさんは今後、社内に当事者がいないはずはないという前提で、LGBTの従業員がカミングアウトできない現状をもっと真剣に受け止め、深く考えていこうとする、そういうフェーズに入ったと思います。社内風土づくりということに当てはまるのでしょうが、まだまだ職場に「ホモネタ」で笑いをとったりするような人たちがいて、とてもじゃないけど言えないと感じているのかもしれませんし、この人には打ち明けて相談してもいいかなと思える人が誰もいないということかもしれません。あるいは、先に挙げた「不信感」が拭えないということなのかもしれません。何が「壁」になっているのかもよく見えないため、難しいものがあるでしょうが、無記名アンケートなどを活用して当事者の声を掬い上げようと努めている会社もあって、すでにトライが始まっています。
本当は、そういう、カミングアウトがまだ難しいと感じている方々にこそ、あの会場の雰囲気を味わっていただけたらいいのに…とも思いました。勇気を出して実名・顔出しで登壇した当事者に心からの拍手を贈るアライの方たちの姿に、きっと励まされることと思います。
確かに世間にはまだまだ差別的な人たちもたくさんいるのは事実ですが、僕らが思っている以上に味方(アライ)も多いということを肌で感じ、そんなアライの方々と触れ合えたら、自信が持てるというか、「世の中捨てたもんじゃない」と思える、前向きな気持ちになれると思います。
この記事が、「なんでそこまでLGBTのために頑張ってくれるの?」と言いたくなるほど奮闘しているアライの方々と、(そういう方たちがたくさんいるということが伝わっておらず)自信を持てないでいるLGBTの方々をつなぐ、一つのきっかけになることを願います。
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