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COLUMN

世界のLGBTはパンデミックに対してどのような影響を受け、どのように動き出しているのか

感染が急速に拡大し、深刻な状況になってきている欧州や北米のLGBTを中心に、世界的に見てパンデミックがLGBTにどのような影響をもたらしつつあるのか、コミュニティがどのように動き出しているのか、といったことをお伝えしたいと思います。

 WHOがパンデミックだと表明してから10日が経ち、イタリアをはじめとする欧州各地やアメリカでも感染が急速に拡大し、ニューヨークやカリフォルニアなどでも自宅待機命令が出されるなど、緊迫した状況になっています。
 幸い、日本では、欧米ほど深刻な状況ではありませんが、予断を許さない状況ではあります。感染を完全に封じ込めることは難しくとも、クラスター感染が起こらないように気をつけていくことが重要だと言われています(こちらに重要な情報がきちんと説明されています)。自分自身が感染しないために日常生活での手洗いや消毒をこまめに行うこと、密閉・密集・密接を避けること、知らずに感染していて他の人にうつす可能性もあるということを考慮すべき(マスク着用や咳エチケットなど)、といったことは、みなさんご存じの通りです。
 ここでは、世界的に見て(主に北米・欧州ですが)新型コロナウイルスのパンデミックがLGBTコミュニティにとってどのような影響を与えているのか(まだまだ先行き不透明で本当のところはわからないかもしれませんが、とりあえず)、コミュニティがどう動き始めているのか、といったことについて、お伝えしたいと思います。
(2020.3.24までの情報です。新たに大きな動きがあれば、更新していく予定です)
 
 

 
感染を公表したり、亡くなったりしたゲイの方
 
 まず、アメリカやヨーロッパのゲイコミュニティで、(わかっている範囲で)新型コロナウイルスに感染して肺炎で亡くなった方がすでに数名いらっしゃいます。ご冥福をお祈りします。
 ゲイの著名人の感染もニュースになっています。

 アメリカでは、テレビ司会者として有名なアンディ・コーエンや、ウェスト・ハリウッドのジョン・ダミコ市長が新型コロナウイルスに感染したと報じられました。
 また、ニューヨーク・ニュージャージーのLGBTの法律家の団体で活躍していた弁護士で、ニュージャージー州メッチェンの市議会議員も務めていたRichard Weber Jr.が亡くなったと報じられました。

 イギリスでは、労働党の下院議員、ラッセル・モイルが感染したと報じられました。
 また、ロンドンのLGBT活動家、ポール・キグリーが亡くなり、「みんなに愛されていた人だったのに…」といった悲しみの声が伝えられています。
 
 ブリュッセル在住で、ECMC(欧州バイカークラブ)の秘書を務め、レザーコミュニティに貢献していたダニエル・ドゥモントも新型コロナ肺炎で亡くなりました。 Folsom Europe Berlin(欧州最大のレザーイベント)の参加者の間ではとても有名な方だった(鞭使いの達人だった)と伝えられています。

 
【追記】2020.3.25
 アメリの劇作家、テレンス・マクナリーがフロリダ州の病院で亡くなりました。享年81歳でした。
 テレンス・マクナリーは1993年、ミュージカル『蜘蛛女のキス』でトニー賞を初受賞、その後も『Love! Valor! Compassion!』『Master Class』『Ragtime』で受賞し、昨年は功労賞を授与されています。また、『恋のためらい/フランキーとジョニー』をはじめ、その舞台作品が映画化されたケースが多数あり、『フル・モンティ』や『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』などの映画のブロードウェイ舞台化版の脚色も手がけてきました。2003年、舞台プロデューサーのトム・カーダヒーと結婚していました。
 この突然の悲報を受けて、ソーシャルメディアには、舞台や映画の関係者からお悔やみのメッセージが寄せられています。舞台版『フル・モンティ』に出演したパトリック・ウィルソンは、「僕が初めて演技で賞をもらったのは、高校生の時。初めてトニー賞にノミネートされたのは『フル・モンティ』。どちらもテレンス・マクナリーの作品です。彼は、僕のキャリアに多大なる影響を与えてくれました」と、現代のブロードウェイを率いるリン=マニュエル・ミランダは「僕らの世界の巨人でした」と、アンソニー・ラップは「彼はアメリカ舞台界の声。特に、アメリカにおけるLGBTQの体験を、大きな声で語ってくれた人です」とのメッセージを寄せています。カーダヒーと大学時代のルームメートだったニューヨーク市長ビル・デ・ブラジオは、コロナ感染の現状報告をする記者会見の冒頭で、「私たちは優れたニューヨーカーをひとり亡くしました」と語り、追悼の意を表しました。


【追記】2020.3.26
 NYのクラブシーンのレジェンド、Nashom Woodenが24日、新型コロナウイルスによる肺炎で亡くなりました。享年50歳でした。
 Nashom Woodenは、Mona Footという名前のドラァグクイーンとしてクラブやゲイバーでパフォーマンスしてきたNYのナイトライフのアイコンで、The Onesという音楽ユニットにも参加し、2001年に発表した「Flawless」は、UKダンスチャートで1位、オーストラリアのクラブチャート年間1位となるヒットになり、2004年のジョージ・マイケルの「Flawless (Go to the City)」にもサンプリングされています。たくさんのニューヨーカーたちが「ゴージャスな生き物で、驚くべきアーティストだった」「光り輝くような笑顔でみんなにハグしていた」など、追悼のコメントを次々にSNSに投稿しています。


【追記】2020.3.26
・『ウォーキング・デッド』等に出演してきた俳優・モデル・ミュージシャンでバイセクシュアルとカミングアウトしているダニエル・ニューマンが、現在ERに入っていて感染の兆候が見られるのに、検査を受けられずにいる、と報じられました。
・元NBAのジェイソン・コリンズが、パートナーと共に新型コロナウイルスと闘っていることを公表しました。
・聴覚障害を持つモデルのナイル・ディマルコも、おそらく感染したと思う、と発表しました(検査不足の現状に鑑み、まだ検査を受けてないそうです)
 
【追記】2020.3.27
 NYのマウント・サイナイ・ウェスト病院のアシスタント・ナース・マネージャーを務めていたオープンリー・ゲイのカイオス・ケリーが3月24日、新型コロナウイルスによる肺炎で亡くなりました。享年48歳でした。
 NYではPPE(医療関係者を保護するマスクやガウン)の不足が深刻で、カイオスの妹は「PPEが十分にあれば死なずにすんだのに」と訴えています。
 病院の方によると、カイオスは同僚のナースや医師にチョコレートやキャンディを配り歩くような優しい方だったそうです。「彼は、まさに今世界が必要としているような喜びや愛を振りまく人で、患者や同僚たちのヒーローでした」「レインボーのピンバッジを着けていて、おだやかで礼儀正しくて、苦しんでいる人たちに献身的に尽くしていた」「黒人の子どもたちやホームレスの人たちにも優しく接する天使のような人だった」

 
【追記】2020.3.29
 マイアミ在住でゲイナイトの人気者だったイズラエル・カレラスが、亡くなりました。享年40歳でした。
 イズラエル・カレラスはキューバ出身で、ゲイナイトではGOGO BOYのようにステージで踊り、人々を楽しませていました。彼のパートナー、フランコ・コンキスタによると、3月初旬にマイアミで開催された1万人規模のクラブイベント「Winter Party」に参加した後、イズラエルは体調が悪くなり、病院に着いた時には呼吸困難だったといいます。フランコ自身も感染し、自宅待機中だそうです。
 マイアミのクラブ「Score South Beach」はインスタグラムに「誰かを喪うといつも辛いが、今回は本当にダメージが大きい。彼はコミュニティの一部で、私たちを笑顔にし、楽しませてくれた」との追悼コメントを投稿しています。


【追記】2020.4.1
 フロリダのLGBTコミュニティのキーパーソンであったロン・リッチの訃報が伝えられました。享年65歳でした。
 彼はマイアミのクラブイベント「Winter Party」でボランティアで参加していて、感染したようです。このイベントの参加者としては、イズラエル・カレラスに続き、2人めの犠牲者となります。
 ロン・リッチは音楽の才能に長け、高校でバンドの顧問をしていたこともありました。70年代から続く歴史的なLGBT権利擁護団体である「ナショナルLGBTQタスク・フォース」や「ラムダ・リーガル」などのイベントの常連で、フロリダのLGBTコミュニティの顔だったそうです。ナショナルLGBTQタスク・フォースは「彼の豪快な笑顔やあたたかさが偲ばれる。彼の家族や友人と、お悔やみを分かち合いたい」と追悼しています。高校時代にロンの指導を受けた方は「彼は素晴らしい指導者だった」とコメントしています。


【追記】2020.4.2
 ニューヨークやニュージャージーの病院のER(緊急救命室)に勤務していたフランク・ゲイブリン医師が亡くなったと報じられました。享年60歳でした。
 パートナーのアーノルド・ヴァルガスによると、フランク・ゲイブリン医師は、ニューヨークで感染爆発が起こっていたさなか、PPE(医療用の防護服やマスクなど)の不足で、マスクやガウンの再利用を余儀なくされていたといいます。最初の症状が出てから1週間後、フランクは朝、胸の痛みで起きて、突然呼吸困難になり、アーノルドの腕の中で亡くなりました。アーノルドも現在、初期症状が出ているそうです…。
 アーノルドはCNNで「フランクは人々の命を助けることだけを考えている人だった」と語っています(その番組のアンカー、クリス・クオモも検査で陽性でした…)


【追記】2020.4.6
 フロリダ州ブロワード郡の保安官補、シャノン・ベネットが亡くなりました。享年39歳でした。
 シャノン・ベネットは2007年から郡保安官事務所に勤務し、昨年からは小学校の保安任務にも就いていました。ブロワード郡保安官は、「彼のレガシーは我々の職務に受け継がれるだろう」と弔意を表し、学校の関係者からも追悼コメントがたくさん寄せられました。
 同時に、彼は、ウィルトンマナーズのプライドでも制服を着て、お酒を飲まず、コミュニティを守るような人だったそうです。彼はそれをとても誇りに思っていたといいます。
 オーランドのゲイバーの銃撃事件のあと、シャノンは「誰にも俺の仲間を汚させない」と言って、ウィルトンマナーズのゲイバー街の入り口にパトカーを停めて、みんなが安心して週末の夜を楽しめるようにしてくれていたそうです。
 彼は、昨年12月、オーランドのディズニー・ワールドでパートナーのジョナサン・フレイにプロポーズしました。二人は生涯を共に過ごそうと決めていました。しかし、その夢は叶いませんでした…
 フィアンセだったジョナサンは、「彼は僕の人生の愛だった。彼のレガシーはずっと生き続けるだろう。本当に美しい魂の持ち主だった」と語っています。



世界各地のプライドイベントが中止や延期を発表
 
 東京レインボープライドが中止を発表しましたが、マニラのプライドや、シンガポールのピンクドットも中止を発表しています。サンパウロのパレードが11月に延期され、ロサンゼルスプライドも延期(時期未定)です。欧州のプライドはほとんどが中止または延期です。前代未聞の事態です。


 これを受けて、ワールドプライドを主催するInterPrideと、European Pride Organisers Association(EPOA)が、世界レベルでプライドをコーディネートしていくための新しい組織「COVID19 / Pride International Coordination Group (CPICG)」を立ち上げるべく、3月20日に会合を持ちました。
「世界のプライドイベントが壊滅的な打撃を受けており、新型コロナウイルスが私たちのプライドのムーブメントに巨大な損害を与えようとしています」と、EPOAのクリスティーヌ・ガリナ代表は声明で述べました。
「私たちは、まず自身の健康や周囲の人々のケアに注力しなくてはなりませんが、プライドへの情熱も失ってはいません。私たちはともに動き、ベストを尽くし、この組織を通じて、プライドの主催団体をサポートしたいと思います」
「世界中のそれぞれのプライドの主催者は、プライドに参加することで救われたり、人生が変わったり、初めてコミュニティの愛やセンスに触れたり、といった体験をお持ちのことだろう。本当にたくさんの人々が、今年、そんな機会に触れることができないのは、悲しいことです。しかし、私たちは、プライドを続け、多くのLGBTの未来につなげていくことを決意します」
 
In The Midst Of A Pandemic, Where Do Our Annual Pride Events Stand For 2020?(instinct)
https://instinctmagazine.com/in-the-midst-of-a-pandemic-where-do-our-annual-pride-events-stand-for-2020/





LGBTにとってのパンデミックの脅威

 米国最大のLGBTQ擁護団体「ヒューマン・ライツ・キャンペーン(HRC)」は、新型コロナウイルスのパンデミックがLGBTの人々にとって、独自の困難をもたらすことが予測されるとの緊急声明を発表しました。
「私たちは世界規模での公衆衛生の危機に直面している、そして全ての緊急事態と同様に、最も周縁化された人々がリスクにさらされる」と、HRCの代表、アルフォンソ・デヴィッド氏は述べました。
「LGBTコミュニティの多くの人々は、このウイルスと闘うためのリソースを欠いている、病院にかかることもできず、医療保険もなく、最もパンデミックの影響を受けるような現場で働いている可能性がある。多くのホームレス化したLGBTの若者たちにとっては試練以外の何物でもないということを理解すべきだし、シニアの当事者も孤立する可能性がある。LGBTコミュニティに与える独自の影響を知り、理解することは重要だ。これまでの危機と同様、備えること、コミュニティが連帯し、困っている人への支援に乗り出すことが重要だ」 
 例えば、アメリカのLGBTは、レストラン、飲食業、病院、学校の先生、そして小売業など、この危機に影響を受けやすい職場で働いている可能性が高いといいます。これらの職業に就いているストレートが22%であるのに対して、LGBTでは40%を占めているそうです。
「3月19日、少なくとも15州でレストランの閉鎖が命じられた。そこで働いていた人は仕事を失う。それだけでなく、病院で働く人は感染の危険の最前線に立たされている。さらに、LGBTの10人に1人は、仕事がなく、貧困状態に置かれている。病院に行くこともできない」
 ウィリアム・インスティチュートの2019年の調査では、22%のLGBTが貧困状態にあり、ストレートより6%高くなっています。トランスジェンダーのに至っては29%で、さらに黒人のトランスジェンダーは40%、ヒスパニック系のトランスジェンダーは45%にも上ります。これらの貧困の割合の高さは、差別とリンクしています。多くのLGBTは宗教の名の下に差別を容認する州法が制定されている州で暮らしていて、この州法は特にトランスピープルを直撃しています。
「医療保険を持っている企業で働くLGBTでさえ、5人に1人は、差別を恐れて病院に行けない(2018のHRCの調査結果)。LGBT差別を禁じる連邦法がなく、州によっては雇用が保障されていないため、解雇される恐れもある。これは、もし新型コロナウイルスへの感染の疑いがあっても、病院に行けない、家族にもうつす可能性があるということを意味している」
 黒人やヒスパニック系のLGBTの17%は保険がない(ストレートより5%高い)という現状だそうです。

LGBTQ People Face Unique Challenges in COVID-19 Crisis(Advocate)
https://www.advocate.com/health/2020/3/20/lgbtq-people-face-unique-challenges-covid-19-crisis



HIV陽性者にとって

 英国を代表するHIV関連団体「テレンス・ヒギンズ・トラスト」は、「HIV陽性者がコロナウイルスに感染しやすいというエビデンスはない。一般の人と同じようなアドバイスに従うべきだ」と述べています。
「治療中でHIVがすでに検出値以下になっていて、CD4(免疫の状態)の値が良ければ、一般の人々よりも危険ということはない。ただし、もし検出値以下までは達しておらず、CD4の値が低い場合、感染しないように努めることは、より重要であると言える」
 しかし、HIV陽性者の中には、健康上の他の問題で苦しんでいる人もいるかもしれません。心血管の疾患を持っている方、がんを患っている方、慢性呼吸器疾患を持っている方、高血圧の方、喘息の方、糖尿病の方などは、感染しないよう、細心の注意を払う必要があります。

Spreading hope: LGBT+ people are organizing to fight coronavirus together(GayStarNews)
https://www.gaystarnews.com/article/spreading-hope-lgbt-people-are-organizing-to-fight-coronavirus-together/

IS COVID-19 RISKIER FOR HIV-POSITIVE PEOPLE?(attitude)
https://attitude.co.uk/article/is-covid-19-riskier-for-hiv-positive-people-1/23095/

【追記】2020.4.3
<PrEPユーザーへのアドバイス>
 ロンドンの有名な感染症クリニック「Dean Street」によると、自宅待機の期間に入ったらPrEPは中断してもいいそうです。もちろん、彼氏と同居していて、うつる可能性がある(彼氏が100%陰性と断言できない、彼氏が陽性で、まだHIV検出値以下ではない)場合は、続ける意味があります。安全にやめるには、最後にセックスした日から数えて2日後までは薬を飲んだほうがいいそうです。

Latest advice on gay sex, hook-ups and stopping PrEP during coronavirus(GSN)
https://www.gaystarnews.com/article/latest-advice-on-gay-sex-hook-ups-and-stopping-prep-during-coronavirus/



 
LGBTコミュニティ内で支援活動が始まっています

 一方、アメリカやイギリスでは、このパンデミックを受けて、お互いにサポートしあうための組織が作られはじめました。
 
 アメリカのLGBTセンター・ネットワークは、LGBTがとりわけ感染の危険にさらされやすいと見て、HIV団体の協力のもと、LGBTピープルがコロナウイルスを何とかやり過ごすことができるよう、有益な情報を提供する活動を始めました。
 アメリカには300万人以上のLGBTの高齢者がいると推計されていますが、彼らは、ストレートの高齢者に比べ、支援が受けられないという現状があり、感染しないようにすることが本当に重要だと言われています。
 
 一方、イギリスのLGBT団体「Queercare」は、他の団体と共同し、手助けが必要な人がボランティアを頼んだりできるよう、支援体制を整えようと努めています。
 例えば、独りで暮らしている人への食べ物の提供、さらには、メンタルヘルスに不安がある方にチャットでサポートできる、といった具合に。
 
 イギリスの新しいソーシャルグループ「Queer Voices Heard」は、LGBTの人々がパンデミックにどのように反応しているか、コミュニティがどのようなことを求めているか、さらに、プライドのキャンセルや延期についてどのように感じているか、といったことを把握するためのリサーチを始めました。
「Queer Voices Heard」の共同創設者、Stu Hosker氏は「一般的な世論調査は、LGBTを取り巻く状況の独自性をいつもカバーできていない。それゆえ、この調査が、人々にLGBTのニーズを知ってもらう手段にもなる」と語っています。
  
Spreading hope: LGBT+ people are organizing to fight coronavirus together(GayStarNews)
https://www.gaystarnews.com/article/spreading-hope-lgbt-people-are-organizing-to-fight-coronavirus-together/

 

 
米LGBT団体が訴訟を起こしました

 Family Equality(LGBTQの家族が平等に扱われるよう法的な支援をする団体)、True Colors United(ホームレス化したLGBTの若者を支援する団体)、SAGE(高齢のLGBTを支援する団体)というアメリカの3つのLGBT団体が合同で、国の補助金を受け取る資格のある連邦法(差別禁止法)のLGBTへの拡大を拒絶したトランプ政権への抗議としてアメリカ合衆国保健福祉省を訴えました。

「コロナウイルスのパンデミックは急速にアメリカ全土に広がっている。LGBTの人々は、トランプ政権の不法な措置によって、感染の危険にさらされている。というのは、差別的な業者がLGBTへのサービス提供を拒むことを暗黙に許容しているからだ」
「この国が法制度の面でLGBTコミュニティを見捨てていることは、現在のような事態においては、命の危険につながり、破局的なことになりかねない。差別を許容することによって、必要なサービスが受けられない人が出てくる。例えば、自宅に食べ物を届けるサービスや、避難所に入ることや、ホームレスの若者を保護する施設などにおいて、LGBTが排除される可能性だ」
 
 トランプ政権は昨年11月、宗教的なアンチLGBTの人たちの声を採用し、オバマ政権時代の平等ルールを強制しない(差別を許容する)ことを通達しました。 

 『ワシントン・ブレイド』紙によると、3団体は、差別禁止法で守られていないことによってLGBTが被るネガティブな影響、どんな差別や拒絶がありうるかといったことをリスト化した39ページも及ぶファイルを提出しました。LGBTの児童・学生たちは、学校が閉鎖されて家にいなければいけなくなった際、LGBTを認めない親からの虐待を受けて家を出たとしても、避難所(シェルター)の保護を受けることができない、高齢者のLGBTが家に食べ物を配達してもらえない、といった事柄です。

Trump Administration Putting LGBT Lives in Jeopardy Amid Coronavirus Crisis: Lawsuit(Towleroad)
https://www.towleroad.com/2020/03/trump-administration-putting-lgbt-lives-in-jeopardy-amid-coronavirus-crisis-lawsuit/




 
まとめ
 
 10代のLGBTが(宗教的に同性愛嫌悪が強い)家族に虐待されたり、家を追い出されて行き場を失ったり、というケースは欧米では決して少なくありません(アメリカのホームレス・ユースの約1/4がLGBTです)。行き場を失った若者のために、米保険福祉省が避難プログラム(シェルター)を用意していますが、住んでいる地域によってはLGBTを差別して入所を断ったり、他の利用者に暴力を受けるようなこともありえます。トランスジェンダーの方が医師の理解を得られず診察が受けられないとか、そもそも貧困状態にあって(アメリカは保険がない人も多いです)病院に行けない、高齢者のLGBTが家に食べ物を配達してもらえないという話も、深刻です。
 欧米では厳然とLGBT差別があり(特にトランスジェンダー、その中でも有色人種のトランスジェンダーは深刻です)、今回のようなパンデミックに際しては、特に危険にさらされやすく、命にもかかわる、ということが今、問題になっているのです。
 
 日本の状況とは異なる部分も多いため、もしかしたら、あまり参考にならなかった、自分事として感じられなかったという方もいらっしゃるかもしれませんが、海外の現状を知っておいていただけるだけでも、きっと何かしらのサポートの一歩につながると思います(無関心がいちばん悲しいことです)
 それに、日本でも、戸籍上の性別変更ができないトランスジェンダーの方が、見た目と保険証の性別が異なるがゆえに、偏見を恐れて病院に行きづらいという話もありますし、HIV陽性者の方が未だに病院で診療を断られるケースなどもあり、もしそういう方たちが新型コロナウイルスへの感染の心配があるような場合、病院に行けるのだろうか、大丈夫なのだろうか…といった心配もあります。
 また、日本にも、留学や仕事の関係で近年来日したばかりの外国人LGBTの方もいるわけですが、そういう方たちのなかには、感染の不安を感じつつ、言葉の壁があって情報がうまく伝わっていない、サポートを必要としている方もいるかもしれません。
 日本ではLGBTも世間一般の人たちと何も変わらない、LGBTに固有の課題や懸念があるわけではない、ということでは決してないのです。
 
 3.11の後、被災したLGBTの方たちが声を上げ、各地でシンポジウムが行われたり、新たに団体が立ち上げられたりしました。 
 今回のパンデミックに関しても、これからLGBTに固有の課題が見えてくるかもしれません。上記の「Queer Voices Heard」のような、影響を受けた方々の声を掬い上げるようなリサーチが求められるかもしれません。
 そういう意味でも、このような、海外の動きをお伝えしておく意味があるのではないかと思いました。少しでもお役に立てる部分があれば幸いです。

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