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COLUMN

先行き不透明な状況でもメンタルヘルスを良好に保っていくためのヒント

依然として猛威を奮う新型コロナウイルス。いったいいつになったら収束するのか…と落ち込んだり、やりたいことができないストレスがつのる方も多いことと思います。そこで、メンタルヘルスの専門家や、鬱の経験者による、少しでもメンタルヘルスを良好に保っていくためのさまざまなアドバイスをご紹介。希望を失わず、この閉塞的な状況をなんとか耐え抜いていきましょう。

先行き不透明な状況でもメンタルヘルスを良好に保っていくためのヒント

 長い長い緊急事態宣言が昨年10月に解除され、ようやく二丁目が賑やかさを取り戻し、友達に会ったり遊んだりできる日々が戻ってきたと思ったら、オミクロン株のせいで再びマンボウ時代に逆戻りか…とガックリきている方も多いことと思います。寒い季節ということもあり、週末、独りで家にこもっていると、だんだん気持ちが落ちてきて…心身の不調を感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。なかなか先行きが見えず、いつになったら収束するのか…という思いや、自分自身が感染してしまわないかという不安や、経済的な問題などが、どうしても気分を重苦しくさせたり、ネガティブな思考につながってしまいがちだと思います。
 今は耐えるしかないのかもしれませんが、できるだけ希望を失わず、心身の健康を保ちつつ、この状況を乗り切っていきたいですよね。
 コロナ禍という現代社会が経験したことのない災厄に見舞われ、世界中の人たちが自宅隔離のしんどさを味わっているなかで、内外のメンタルヘルスの専門家によるさまざまなアドバイスも聞かれるようになってきました。ここでは、そうした知見を援用しつつ、(また、鬱を経験した方のお話なども紹介しつつ)少しでもメンタルヘルスを良好に保っていくためのヒントをお届けしてみたいと思います。


<未来を空想し、希望を抱き続ける>

 クーリエ・ジャポンの「コロナ収束後にやりたいことを妄想すると、気分が前向きになる」という記事が、たいへん示唆に富むものでした。

「多忙な日常において、次の長期休暇で何をしようかとあれこれ考えたり、白昼夢に浸ることは、非生産的なことのように映る。だが、空想や、未来について考えること、想像力を働かせることは、終わりの見えないコロナ渦を耐え抜くうえで、強力な武器になると専門家は説く」
 
 ペンシルベニア大学心理学教授であり、同大学のポジティブ心理学センターのディレクターでもあるマーティン・セリグマン氏は「想像力を働かせる点で重要なのは、楽観的になれることです」と語ります。
 セリグマン氏は、自己効力感(自分がある状況において必要な行動をうまく遂行できると自分の可能性を認知していること)、楽観、想像力に基づいた人間の能力の研究に貢献してきました(1998年、アメリカ心理学会会長だったセリグマン氏は、人生で間違っていると感じることに集中するよりも、生きる価値があるものに意識を移すことの重要性を訴えました)
 「未来の計画について空想したり、妄想したりする時間は重要だ」とセリグマン氏は語ります。その時間を持つことで、人々は決まりきった日常から逃れ、希望と立ち直る力を育むことができます。また、想像力は、人々が「よい人生」を送ることを可能にしてくれます。
 セリグマン氏は、「未来を空想するスキルを、私たちはプロスペクション(見通し)と呼んでいます。プロスペクションは、時間と空間を並べて、いまより先の未来を想像する一連の脳回路によって促進されます」「未来について考え、耐え抜くことができるかどうかのカギは、プロスペクションを鍛えることにかかっています」と語ります。

 ハーバード医科大学院で心理学を教えるディアドラ・バレット博士は、「人々はみんな、いま恋しく思っているものについて空想しています」「こうした空想は、実際の体験の代用として、その体験がもたらす喜びに似た満足感を与えてくれるのです」と語ります。(なお、ディアドラ・バレット博士は現在、コロナ禍で悪夢や奇妙な夢を見る「パンデミック・ドリーム」における心理的ストレスを研究しています)

 ミネソタ州グスタフ・アドルフス大学のペグ・オコナー教授(倫理学)は、「空想とはポジティブでいることではないということを、私たちは忘れがちです」「空想とは常に良いことであると考えることは危険です。多くの人々は、素晴らしく、楽しく、希望に満ちた出来事について考えることができません。彼らにはその気力もなく、日々の生活が危機に瀕しているため、空想をばかばかしいと感じてしまうのです」と語っています。

 ニューヨーク・ブルックリンのメイモナイズ・メディカル・センターで子どもやティーンエイジャーを専門に診ている精神科医エイプリル・トゥールも、「希望がないことは、うつ状態の中核症状と見なされているわけではありませんが、多くの人々に共通しています」と語ります。未来について考えること、あるいは「想像力や、素敵なことが訪れるはずだという強い信念」は、困難な時期を乗り越えるためにきわめて重要なのです。「シンプルで凡庸な望みでもいい。希望を抱き続けることは、大きな支えになってくれる」「私はなにも豪華旅行を空想しているわけではありません」「母にハグできる日を待ちわびています」

 では、皆さんが、コロナ収束後にやりたいと思っていることは何でしょうか? 大勢でクラブに集まって最高にハッピーな曲で踊って盛り上がること? 海外に旅行に行くこと? 友達と居酒屋で大騒ぎして酔っ払うこと? セクシーなイベントでハグとかチューとかしまくること? 「シンプルで凡庸な望みでも」構いませんし、どれだけ派手でも、どれだけ奇想天外でも構いません。空想はノールール。自由です。例えばクラブだったら、どんな服を着て行こうかな、とか、セクシーイベントだったら、どんなパンツをはいて行こうかな、と考えたり、そのために服やパンツを今から準備したりするのも楽しいと思います。旅行だったら、世界一周でもいいですし、なんなら具体的に行ってみたい場所、泊まってみたいホテル、航空会社なども選んで、旅程表を作ってみたりしてもいいのです。
 「コロナさえ終わったら、あんなこともできる、こんなこともできる」とあれこれ空想しましょう。家族や友達とそれを共有するのもいいでしょう(いま流行りのClubhouseとかで?) Twitterとかに書いてもいいと思います。きっと「いいね」がたくさんつくと思いますよ。

 たぶんこれまでにも、週末になったらデートがあるから、楽しいイベントがあるから、二丁目で飲むから、ということを楽しみに1週間仕事を頑張った、ハードワークを乗り切った、というような経験を、すでに皆さんしてるのでは?と思います。いまのこのコロナとの闘いは、あと何ヶ月かかるのかわからないような長いスパンにはなってしまうのですが、楽しみな出来事を思い浮かべることで頑張れる、ということは同じだと思います。
 


<ゲイの精神科医が教えてくれる、不安を減らすコツ>

  「ゲイの精神科医Tomyのつ・ぶ・や・き♡」でおなじみのTomy先生は昨年、メディアにひっぱりだこでしたね。MAQUIA ONLINEの記事「コロナ禍の不安に! ブレない自分をつくる簡単テクニックを、精神科医 Tomy先生が解説!」では、公認心理師の山名裕子さんと一緒に、不安を軽減していくためのテクニックを解説しています。
「先のことばかり考えても不安になるだけなので、その日にできることに焦点を当てて過ごすことが不安を減らすコツです。また、不安を煽るような情報はなるべく遮断することもポイントです」 
 これからの時代に必要なのは変化に対応できるレジリエンス(何かあったときにも、順応し、回復していける力)だといいます。レジリエンスを身につける方法としてTomy先生は、「テレビやSNSなどのネガティブ情報はとにかくスルーすること」「普段から何か起きたときに備えて、いろいろなパターンをイメージしておくことも大切」と語っています。確かに、テレビで延々とコロナ禍の報道を観ていると気が滅入ってきますよね…コロナ対策の予防方法に変わりはありませんので、あまり感染者数とかにとらわれないほうがよいのかも。また、山名裕子さんは、「過去や未来でなく“今” に集中して生きること」「思いをとにかく書き出すことで頭がスッキリ」「迷っていないでまず動くことで心も変わる」とおっしゃっています。
 それから、「ブレない私をつくる、15のテクニック」として、お二人は「いらないものは捨てて部屋をキレイにする」「最悪なパターンだけでなく 最高のパターンも考える」「軽い運動を取り入れる」「リモート中でもお気に入りの服に着替える」「生活リズムを整える」「五感に心地いいことを取り入れる」「夜は照明を暗めにする」「朝起きたら手の平に太陽の光を当てる」「お風呂につかって呼吸に集中」「好きなものを食べる」「眠れないときはあえて寝ない」などのアドバイスをしています。
  
 Tomyさんはほかにもメディアに多数登場し、様々なアドバイスをしています。気になる記事があったら読んでみてくださいね。
ツイッターでの至言が話題の精神科医Tomyさん「言葉は薬」(NEWSポストセブン)
コロナ禍でわかったストレスに「強い人」と「弱い人」、その決定的な違いとは?(ダイヤモンド)
もしかしてうつ病? 最悪の状況で心が危うくなったときの3つの対処法(ダイヤモンド)
最悪の事態を想定して最高の人生を生きる「ポジティブ悲観」のススメ(ダイヤモンド)
コロナ後に人の心は変わるのか? 「後悔しない生き方」を選ぶ人の条件(ダイヤモンド)
 


<心身の不調を感じたら…>

 なかには、すでに未来への楽しい想像をする「気力もなく、日々の生活が危機に瀕しているため、空想をばかばかしいと感じてしまう」方もいらっしゃるかと思います(そういう方のほうが多いのかもしれません)
 ただ、「気分が沈みがちなのはコロナのせいだから、仕方がない」「みんなしんどいんだから、我慢しないと」などと思い込み、心身の不調にフタをして無理をし続けていると、うつを発症してしまうかもしれません(「気分の落ち込み」と「うつ」の違いについてはこちらをご覧ください)
 
 もし、落ち着きがない、やる気が出ない、心が晴れない、落ち込む、胃痛がある、食欲がない、性欲がない、寝られない、睡眠の質が悪い、イライラする、パニックになる、いつも好きだったことに興味が持てなくなる…などの症状が2週間以上続き、仕事や日常生活に支障が出てきたりするようでしたら、心療内科や精神科のクリニックを受診したり、「よりそいホットライン」などに電話して相談してみましょう(「よりそいホットライン」はLGBT専門チャンネルもあり、ゲイであることに関連する悩み(親との関係性、職場で差別にあったりという問題)なども相談できます)
 うつ病は早めに受診して重症化を防ぐことが大事です(うつ病に関する基本的な情報はこちらにまとまっています。チェックシートなどもあります)
 
 うつ病が発症しないようにするために効果がある(「予防」法のような)こととして、一般的に有効だと言われているのは、できるだけ太陽の光を浴びること(太陽の光とうつ病には密接に関係があり、冬になると季節性の「冬うつ」も増えます)、適度に運動すること、入浴、良質な睡眠などです(【コロナストレス&うつ 3つの予防法】医学博士が教える入浴・睡眠・運動の極意という記事が参考になるかもしれません)
 
 プレジデントの「激増中「コロナうつ」を避けるための5つの予防法」という記事では、(1)自分の症状を冷静に見つめ「これはコロナのせい」と自覚する、(2)ニュースの追っかけをやめる、(3)規則正しい生活をして、できるだけ体を動かす、(4)明るい未来を予測する、(5)感謝の気持ちを持つ、という5つのことを推奨しています。(4)などは、最初の章でお伝えした「未来を空想すること」と通じるものがありますね。
 
 ちなみに、一般社団法人日本産業カウンセラー協会の「大変なときほどいいことを探そう~捉え方を変えてみる~」によると、上述のセリグマン教授が、毎晩寝る前に良かったことを3つ書く習慣をつけるといい、とおっしゃっているそうです。睡眠時に嫌なことや不安なことを思い出すのではなく、良かったことの記憶を定着させることで、幸福度が向上し、うつ状態が回復していくことにつながるそうです。
  
 その他、心身を整え、コロナうつを防ぐために役立ちそうな記事をご紹介します。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行下における、こころの健康維持のコツ(日本うつ病学会)
https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/2020-04-07-covid-19.pdf

精神科医推奨の“コロナうつ”対策!こころのコンディションを整える5つの生活術(FNNプライム)
https://www.fnn.jp/articles/-/31805

コロナで毎日が不安な人へ 心理カウンセラーからメッセージ(NEWS ポストセブン)
https://www.news-postseven.com/archives/20200519_1564476.html

コロナで増える「メンタル不調」…1万人の健康を守る産業医が教える「3つの対策」(現代ビジネス)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/79694



<MASH大阪発:心を軽くするための3つのヒント>
 
 MASH大阪が発行している中高年世代のライフプランを考える新聞『南界堂通信』第35号の記事をご紹介します。2020年に行なった調査で、ゲイ・バイセクシュアル男性の抑うつや不安、孤独感が高い傾向にあることがわかりました。慣れない生活様式や行動制限による閉塞感といった新型コロナウィルス流行に伴うストレスの影響もあったのではないかと推測される、とのことでした。
 依然として収束の見えない状況ゆえ、こうしたゲイ・バイセクシュアル男性のメンタルヘルスの問題はおそらくこれまで以上に深刻になっているのでは…と心配されます。
 この号の『南界堂通信』では、名古屋市立大学大学院看護学研究科の澤田華世さんが、心のモヤモヤを軽くするための方法を3つ紹介しています。少しでもみなさんの心が軽くなるといいな、と思います。
 
①まずは基本的な生活を大切にしましょう。
 睡眠は、体の疲労回復だけでなく、頭の働きもクリアにさせてくれます。食事は、活動のエネルギーにだけでなく、気分転換にもなります。しかしながら、睡眠や食事は、優先度を低くしがちです。週に一回でも良いので、自分へのご褒美や心を満たす時間として、自分が理想とする睡眠や食生活を心掛けてみましょう。

②気分が乗らなくても、何かしてみましょう。
 気分が乗らない時、何もしないことも大切です。しかし、そんなときだからこそ、“あえて”簡単な作業や活動をしてみませんか。近所の散歩、料理を一品手作りしてみる…など、楽しめる、やりがいのある健康的な活動をやってみましょう。後から気分がついてきます。私個人のお勧めは、掃除です。雑然とした部屋をきれいにすることや、要らなくなったものを捨てる作業は、見た目はもちろん、心のモヤモヤも一緒にスッキリさせ、気分が揚がります。ただし、単なる楽しいだけの活動は、一時的な解消に終わってしまうこともありますので、お気をつけください。

③ネガティブなことに目を向けるのではなく、ポジティブなことに目を向けてみましょう。
 人は、ストレスが溜まりすぎると脳も疲労し、デメリットや否定的に物事を捉えてしまう傾向になります。確かに、当たり前に出来ていたことができなくなり、窮屈に感じることが増えました。とは言っても、色々なグッズが開発されたり、新しいアイデアが提案され、窮屈さの中でも不便さを感じる生活が減ってきていることも事実です。是非、ポジティブなことを受信するアンテナを意識して張ってみましょう。





<ロブ・ハルフォードが語る、鬱状態が訪れたときの対処法>

 BARKSに「ロブ・ハルフォード、鬱状態が訪れたときの対処法を語る」という記事が掲載されていました。
 「メタル・ゴッド」という愛称でリスペクトされているジューダス・プリーストのロブ・ハルフォード(Vo)は、1996年頃にゲイであることをカミングアウトしていますが(ヘヴィメタルコミュニティのLGBTQの方たちから感謝の手紙をたくさんもらったそうです)、2020年に出版した自伝『Confess』の中で、鬱や薬物乱用、自殺未遂について赤裸々に明かしています。数年前、音楽の世界で自殺が相次ぐのを目にし、自身の体験を語るのが重要だとの思いを強くしたといいます。
 そんなハルフォードは、スペインの『MariskalRock』のインタビューで、こう語っています。
「ただ感じるんだ……。ネガティブな思考だよ。悲観の循環のようなものだ。出口を見つけたり感じることはできない。ブラックホールみたいだ。逃れる方法が見つからない。成功したバンドにいて経済的にも安定していて、いい友達も家族もいる、全て順調だって、自分の置かれている状況がわかっていたとしても、自分自身は内心、とてもダークな場所にいるわけだ」
「俺は、長い間、依存症の一因になっていた自分の性的指向について、いまはオープンでいる。でも、それで終わりってわけじゃないんだ。俺は多くのことに困惑していたんだと思う。自分の存在意義や目的とまではいかないが、ちょっとした思いが、自分の中でどんどん増幅していき、打破できなくなるんだよ。理性や合意的な考えでは打ち破れないんだ」
「答えを探り、見つけようとするのは人生においてとても重要なテーマだ。それを100%振り払うことはできない。いまでも鬱の瞬間は俺に訪れる。前ほど悪くはない。でも、来るんだ。でも、俺にはわかってる……。“オーケー”って思うんだよ。俺にとっては、(脳の)化学的不均衡なんだと。そういうのは起きるんだ。そして、俺はこれが永遠に続くわけじゃないのはわかってる。それはいいことだ。“オーケー、嫌なこと考えてる。何が起きてるのかわからないが、これは一過性のものだ”って思うようにする。その通りなんだよ。どうしてこんな思考になるのか、理解することだ。身体に取り入れたものが原因かもしれないし、脳の化学的機能が原因かもしれない。そして、逃げ場っていうものはあるんだよ。君と共にあり、一緒に乗り切ろうとする素晴らしい人々がいる」

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